沖縄県について
沖縄県と言えば、日本で最も人気のあるリゾート地と言っても過言ではないでしょう。その理由は、なんと言っても本州とは比べものにならないほどきれいな海に他なりません。
最近では、古宇利島にあるハート形をした岩であるハートロックや、世界最大級の大水槽でジンベイザメの泳ぐ姿が見られる美ら海水族館、世界遺産の首里城、観光スポットとしておなじみの国際通りなど、その見所は上げればきりがありません。
また、食の面として全国的にも有名な沖縄そばがありますが、地元の方々は年越しそばとしてこの沖縄そばを食べるそうです。その他にもアグー豚、石垣牛、ゴーヤー、さらにはお土産の定番となっている紅いもタルトやちんすこうなども人気です。
なお、最近では米軍基地の移設をめぐって、緊迫した議論がされていることでも有名です。
沖縄県の相続税課税割合は、九州地方の水準より高い!
沖縄県の相続税については、課税割合は全国平均より低いが、九州地方よりは高くなります。
令和3年度相続税課税状況の調査によると、沖縄県の相続税申告件数は1,265件で、この数字は鹿児島の1,013件や熊本県の1,308件と同じくらいです。
しかし、課税割合(死亡者数に占める申告が発生した被相続人の割合)は7.31%で全国24位であり、福岡の6.78%より高いです。
特筆すべきは、1人当たり納税額で、2,380万でなんと全国で2番前に高い金額です(1位は東京)。
相続税の課税価額を押し上げる原因となる土地についても、本土と比べ極端に高いエリアは少ないのですが、前年に対する路線価の上昇率は4.92%と、なんとこちらも全国ナンバーワンです。
これは、インバウンド外国人をはじめとする観光客の増加で観光収入が潤い、リゾート開発も進んで土地価格も上がったためと考えられます。
沖縄県は相続財産の内訳は土地が多い
沖縄国税事務所の統計データによると、沖縄県で発生した相続税申告における相続財産の金額の構成比を分析すると、最も多い比率を示しているのがやはり土地で、令和3年分で約65%が土地であることがわかります。
全国的に見ると、相続財産に土地が占める割合は年々減っており、令和3年度では33.2%です。現金・預貯金の割合が増えているからです。
全国平均と比較すると、沖縄県の土地の割合は非常に高いことがわかります。
沖縄県の平均地価は1平方メートル当り約10万円台で全国12位です。沖縄県の平均収入が全国最下位であることと比べると、土地の価格が異常に高く、さらに値上がり率も全国1位という状況です。
沖縄県特有の土地:軍用地、島
沖縄特有の土地として軍用地があります。米軍施設・区域の総面積は約24,000haあり沖縄全土の約10%を占めています。さらに沖縄本島に限ってみると、約20%近くの面積が軍用地です。
これらの基地のうち約3分の1は私有地であり地主が貸している土地になります。特に基地が集中する沖縄本島中部地域では、約4分の3が私有地です。
貸している軍用地は、自分たちの生活や事業に利用していない土地ですが、立派な資産ですので相続税の課税対象になります。賃料をとって貸していれば貸宅地ですので、その分の評価減を受けたり、小規模宅地等の特例を利用できる可能性もあります。
また、沖縄は島が多い県です。沖縄本島の面積は沖縄県全体の5割強であり、残りは400個以上ある島の面積です。島の土地は概して評価額が低いため、通常の住宅地程度の面積であれば相続税が発生することはありませんが、大地主のように広大地を抱えている場合は要注意です。それぞれの島に行くためには限られた交通手段を利用するしかなく、本土の場合と比べて土地の調査に時間がかかりますので、早目に税理士に依頼したほうが良いでしょう。
沖縄県の詳細な相続税データ
沖縄県の税務署エリア別の詳細な相続税データ(令和3年度分)をここに掲載します。
税務署名 | 管轄地域 | 申告 件数 | 課税 件数 | 1件当り 納付税額 (万円) | 申告割合 | 課税割合 |
---|---|---|---|---|---|---|
那覇 | 那覇市(※) 糸満市 豊見城市 南城市 八重瀬町 与那原町 南風原町 | 357 | 273 | 2,333 | 8.99% | 6.87% |
宮古島 | 宮古島市 多良間村 | 17 | 13 | 786 | 2.60% | 1.99% |
石垣 | 石垣市 竹富町 与那国町 | 27 | 24 | 486 | 5.15% | 4.58% |
北那覇 | 那覇市(※) 浦添市 西原町 久米島町 渡嘉敷村 座間味村 粟国村 渡名喜村 南大東村 北大東村 | 292 | 220 | 2,340 | 11.07% | 8.34% |
名護 | 名護市 国頭村 大宜味村 東村 今帰仁村 本部町 恩納村 宜野座村 金武町 伊江村 伊平屋村 伊是名村 | 51 | 40 | 1,069 | 3.57% | 2.80% |
沖縄 | 宜野湾市 沖縄市 うるま市 中城村 北中城村 嘉手納町 北谷町 読谷村 | 521 | 423 | 2,712 | 11.93% | 9.69% |
沖縄県計 | 1,265 | 993 | 2,380 | 9.31% | 7.31% |
※死亡者数について、平成27年国勢調査の町丁別人口を基に、那覇市は那覇税務署と北那覇税務署に按分
いくつか主要なエリアの特徴について解説します。
沖縄エリア
沖縄税務署の管轄エリアは、宜野湾市、沖縄市、うるま市、中城村、北中城村、嘉手納町、北谷町、読谷村からなります。
沖縄エリアの課税件数は423件で、県内全体の4割以上を占めています。課税割合は9.69%で県内トップ、全国平均9.33%をも上回っています。
また、1人当り納付税額は2,712万円で、全国平均より1.5倍も高いです。東京の平均3,232万円に狭るくらいの高額な納付税額です。
沖縄エリアは県庁所在地でもなく、また観光地からも離れているのに、課税割合も納付税額も非常に高い理由ですが、このエリアに米軍基地が集中しており、軍用地としての評価額が非常に高くなっているからです。
また、地価は宜野湾市が1平方メートル当り10万円台と、全国的に見ても高い地価で、県内3位です。ほか、北谷町が4位、嘉手納町が8位です。
このエリアで広大な軍用地を所有している人は、高額な相続税がかかる可能性が高いでしょう。
北那覇エリア
北那覇税務署の管轄エリアは、那覇市の一部と、浦添市、西原町、久米島町、渡嘉敷村、座間味村、粟国村、渡名喜村からなります。
北那覇エリアの課税割合は8.34%で県内2位、1人当り納付税額は2,340万円とかなり高い金額です。
この北那覇エリアも、さきほどの沖縄エリアと同じく、北側のほうには軍用地が多く、高額な相続税が発生しやすいです。
那覇市の地価は32万円台/平方メートルと地方としては非常に高く、首都圏近郊のさいたま市に匹敵するくらいです。浦添市の地価は16万円台で県内2位です。浦添市は那覇市から近く、比較的、高級な住宅地が広がっています。
那覇エリア
那覇エリアは、那覇市の一部と、糸満市、豊見城市、南城市、八重瀬町、与那原町、南風原町からなります。
那覇エリアの課税割合は6.87%で県内3位、1人当り納付税額は2,333万円と北那覇エリアとほぼ同じ金額です。
こちらのエリアは那覇市の南方に位置し、畑や林間部が多く、土地価格はやや低めになります。
それ以外の地域
それ以外の地域(名護エリア、宮古島エリア、石垣エリア)は、課税割合も1人当り納付税額も低くなります。これらのエリアでは、軍用地の影響はほとんど受けませんので、ある意味、他の都道府県と同様に郊外は相続税が発生しにくくなることと同じです。
沖縄県は独特の相続文化がある事に注意
沖縄県は戦後アメリカ統治時代が長いため、本土とは違う独自の文化があります。そしてそれは相続においても同じです。
例えば沖縄の相続ではしばしば「トートーメー」という言葉が登場します。
トートーメーとは沖縄で位牌を表す方言とされています。
沖縄では古来からトートーメーと相続財産のすべてがセットで動くような考え方が根付いており、トートーメーとの分離相続が習慣に反するという特殊な地域です。
このような独特の文化があるが故に、沖縄県では相続税よりも遺産分割協議によるトラブルがたびたび発生する傾向にあります。
沖縄県の相続は沖縄県の税理士に相談すべし
このように沖縄県の相続は、他県とは違う独特の土地や、風習や考え方などがあるため、これらを理解している沖縄県の税理士に依頼することをおすすめします。相続税対策よりも、遺言書を書くなどの遺産分割対策などが重要な県とも言えるでしょう。
一定評価額以上の軍用地が含まれている場合は、軍用地パックプランを用意している税理士事務所もありますので、事務所のホームページを見たり事務所に問合せたりして確認してみてください。
参考までに、平成26年経済センサスの調査結果によると、沖縄県内の税理士事務所の数は196個であり、相続税申告件数1,265件との割合で考えると、全国の平均的な割合になります。税理士事務所のほとんどは那覇市に集中しています。