【2024年】子供・孫への住宅取得資金贈与が1000万円まで非課税に

住宅取得等資金贈与

「住宅取得等資金贈与の非課税制度」を使えば、一定金額まで非課税で、子や孫に住宅資金を渡すことができます
住宅資金を子や孫にあげて喜ばれ、また、相続財産も圧縮できて相続対策にもなります。

この非課税特例は、過去何度も延長されてきましたが、令和6年度の税制改正により、2026年12月31日までと3年間延長されることになりました

制度の概要と、2024年(令和6年)以降の最新の状況についてもご紹介します。

本記事の内容は、国税庁のホームページを参照しています。
【参照】国税庁:No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
国土交通省:「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置

目次

1.住宅取得等資金贈与の非課税制度とは

1-1. 住宅に限定した贈与の非課税制度

子や孫に住宅用の家屋の新築、取得または増改築等のための金銭を贈与する場合、一定の要件を満たす時は、非課税限度額まで、贈与税が非課税となる制度です。

正式には「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」といいます。国税庁では、「住宅取得等資金の贈与の特例」とも略されています。

1-2. 住宅取得等資金贈与の非課税限度額は?

非課税限度額は令和4年度の「税制改正大綱」により、非課税限度額が変更されましたが、令和6年の税制改正移行も、この非課税限度額については、変更ありません

新築等をする住宅用の家屋の種類ごとに、契約の締結日に応じた金額となります。

耐震、省エネ又は
バリアフリーの住宅用家屋
左記以外の住宅
1,000万円500万円

住宅取得資金 非課税

過去の非課税限度額

住宅取得等資金の贈与の非課税限度額は、次のように、過去何度か変更されてきました。

消費税等の税率10%で取得していない場合
契約の締結日省エネ等住宅(※)の
非課税限度額
左記以外の住宅の
非課税限度額
~平成27年12月31日1,500万円1,000万円
平成28年1月1日~令和2年3月31日1,200万円700万円
令和2年4月1日~令和3年12月31日1,000万円500万円
消費税等の税率10%で取得した場合
契約の締結日省エネ等住宅(※)の
非課税限度額
左記以外の住宅の
非課税限度額
平成31年4月1日~令和2年3月31日3,000万円2,500万円
令和2年4月1日~令和3年12月31日1,500万円1,000万円

※「省エネ等住宅」とは、省エネ等基準に適合することが証明されている住宅用の家屋のことです。

1-3.2024年度税制改正のポイント

ただし、耐震、省エネ又はバリアフリーの住宅用家屋のうち、要件省エネ要件についてのみ、以下のように変更になっています。

 改正前2024年度税制改正後
省エネ要件断熱等性能等級4以上又は一次エネルギー消費量等級4以上であること断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上であること
耐震要件耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上又は免振建築物であること
バリアフリー要件高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上であること

2023年12月31日までに建築確認を受けた住宅や、令和2024年6月30日までに建築された住宅については、省エネ要件についても、改正前の要件を満たせば制度の利用が可能です。

2.「住宅取得等資金の贈与の特例」制度の条件(要件)

2-1. 「住宅取得等資金の贈与の特例」の期間

この制度を利用できるのは、延長されて令和6年(2026年)12月31日までです。

何度か延長されていますので、再度、延長される可能性はあります。

2-2.贈与者(あげる人)の条件(要件)

贈与者は受贈者の父母や祖父母などの直系尊属に限られます。贈与者である父母や祖父母に年齢等の制限はありません。
あくまで受贈者の父母や祖父母なので、配偶者の父母や祖父母からの贈与はこの制度は利用できません。

2-3.受贈者(もらう人)の条件(要件)

受贈者には以下のような要件があります。

年齢

贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上(令和4年3月31日以前の贈与の場合は20歳以上(※))である必要があります。贈与を受けたときが18歳以上ではありません。
1月1日生まれ以外で、贈与を受けた年に満18歳になるという人は、この制度を利用できないため注意が必要です。

※令和4年度の民法改正により、成人年齢が18歳に引き下げられたため、受贈者の年齢の要件も変更されました。

所得

贈与を受けた年の所得が2,000万円以下でなければなりません。この基準は所得であり、収入(年収)ではないので注意してください。

サラリーマンで収入が給料収入だけの場合は、年収2,195万円以下(令和2年以降)なら利用できます。
個人事業主の場合は収入から費用を差し引いた利益(青色申告特別控除がある場合は控除後)が所得です。

もし、新築等をした住宅の家屋の面積が40㎡以上50㎡未満である場合は、所得が1,000万円以下(給与収入1,195万円)以下でなければなりません。

土地の売却といった譲渡所得などがあると計算が複雑になるため、この制度が利用できるかどうか、税理士などの専門家に相談したほうが良いでしょう。

住宅所得資金の利用期限

贈与を受けた年の翌年3月15日までに、住宅取得等資金の全額を充てて、住宅用の家屋の新築・取得または、増改築等を行う必要があります 。

住宅への居住

贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住すること、または、その後遅滞なくその家屋に居住することが確実であると見込まれることが必要です。

贈与を受けた年の翌年12月31日までに居住していない場合には、この非課税制度を利用できず、修正申告をしなければなりません。

旧制度の利用がない

平成21年から令和3年までの贈与税の申告で、旧非課税制度(過去の、住宅取得等資金の贈与税の非課税制度)の適用を受けていないことが要件です。つまり、過去に一度でもこの制度を利用していると、利用できません。

国籍と住所

贈与者が贈与を受けたときに日本国籍を所有し、かつ日本に住所があれば問題ありません。海外に住所があったり、日本国籍でない場合はその他にも要件があるため注意が必要です。

2-4. 住宅の条件(要件)

住宅の取得または増改築等とともに、その土地等の取得も含みます。
また、対象となる住宅用の家屋は日本国内にあるものに限られます。

この制度の対象となる住宅の主な要件は、次の通りです。

新築または取得の場合

  1. 住宅用の家屋の登記簿上の床面積(マンションなどの区分所有建物の場合はその専有部分の床面積)が40㎡以上240㎡以下で、かつ、その家屋の床面積の2分の1以上が受贈者の居住の用に供されるものであること
  2. 住宅が次のいずれかに該当すること
  • ㋐建築後使用されたことのない住宅用の家屋
  • ㋑建築後使用されたことのある住宅用の家屋で、昭和57年1月1日以降に建築されたもの
  • ㋒建築後使用されたことのある住宅用の家屋で、地震に対する安全性に係る基準に適合するものであることが、一定の書類により証明されたもの
  • ㋓上記㋑㋒のいずれにも該当しない場合は、一定の条件のもと、耐震改修を行い、贈与を受けた翌年3月15日までに耐震基準に適合することが一定の証明書等により証明されたもの

増改築等の場合

  1. 増改築等後の住宅用の家屋の登記簿上の床面積(マンションなどの区分所有建物の場合はその専有部分の床面積)が40㎡以上240㎡以下で、かつ、その家屋の床面積の2分の1以上が受贈者の居住の用に供されるものであること
  2. 増改築等に係る工事が、自己が所有し、かつ居住している家屋に対して行われたもので、一定の工事に該当することについて、「確認済証の写し」、「検査済証の写し」または「増改築等工事証明書」などの書類により証明されたものであること
  3. 増改築等に係る工事に要した費用の額が100万円以上であること
    また、増改築等の工事に要した費用の額の2分の1以上が、自己の居住の用に供される部分の工事に要したものであること

住宅資金の利用期限との関係

受贈者の条件の一つに、「贈与を受けた年の翌年3月15日までに、住宅取得等資金の全額を充てて、住宅用の家屋の新築・取得または、増改築等を行う」という条件がありますが、これを満たすのは次の場合です。

新築の場合

贈与を受けた年の翌年3月15日時点で、屋根(その骨組みを含む)を有し、土地に定着した建造物として認められる時以後の状態にあるもの

増改築等の場合

贈与を受けた年の翌年3月15日において増築又は改築部分の屋根(その骨組みを含む)を有し、既存の家屋と一体となって土地に定着した建造物として認められる時以後の状態にあるもの

取得の場合

贈与を受けた年の翌年3月15日までに、取得した家屋の引渡しを受けていること

建売住宅または分譲マンションを購入したときは、建築中で引き渡しを受けていなければ、非課税制度を適用できません。

3.「住宅取得等資金の贈与の特例」非課税手続き

ここでは、住宅取得等資金の特例の特例を適用する際の手続きについて、解説します。

3-1. 手続きには贈与税の申告が必要

住宅資金贈与の非課税制度を利用するためには、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までに贈与税の申告をする必要があります。

非課税制度を適用した結果、納める贈与税が0円になったとしても、申告の必要があるので注意しましょう。

3-2. 贈与税申告の必要書類

贈与税の申告書のほかに、次の必要書類があります。

贈与税の申告書

  • 贈与税の申告書第一表
  • 贈与税の申告書第一表の二(住宅取得等資金の非課税の計算明細書)

添付書類

  • 受贈者の戸籍謄本と住民票の写し
  • 源泉徴収票など、贈与の年の所得金額が分かる書類
  • 登記事項証明書
  • 新築や取得の契約書の写しなど
  • 省エネ等住宅に該当する場合は、住宅性能証明書など、それを証明する書類

※マイナンバーを記載した申告書等を提出する際には、マイナンバーカード等の本人確認書類の提示または写しの添付が必要になります。

上記以外については、取得する住宅が新築なのか中古なのか、または今の住宅の増改築なのかなどにより必要書類が異なります。

申告期限を過ぎるとこの制度の適用ができなくなるので、どの書類が必要か不明な場合は、出来るだけ早く税理士などの専門家や税務署に相談しましょう。

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贈与税の申告方法については、以下のサイトを参照してください。

【参照】贈与税の申告|国税庁

4.住宅取得等資金の贈与の特例と他制度との併用

贈与には、次の2つの方法があります。そこで、住宅取得等資金の贈与の特例と、贈与の特例との併用について、考えてみましょう。

  • 暦年贈与
  • 相続時精算課税

4-1.暦年贈与

年間(1月1日から12月31日)の贈与額の合計で贈与税を支払う贈与の方法です。暦年贈与には基礎控除額が110万円あり、110万円以下であれば贈与税がかかりません。

ただし、2023年の税制改正により、生前贈与加算の期間が3年から7年に延長されてました。

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4-2.相続時精算課税

贈与された財産を、相続時に加算して相続税を計算し、相続時に税金を清算する制度です。非課税になる制度ではなくて、相続時まで税金の納付が猶予されて、相続時に清算します。

相続時精算課税を選択した場合、贈与時には、2,500万円までの贈与について税金の納付が猶予され、2,500万円を超える部分に20%の贈与税が課されます。
その後、贈与者が亡くなった際に、その贈与財産(贈与時の評価額)を相続税に加算して相続税を計算し、贈与時に支払った贈与税と相殺します。

しかし、2023年の税制改正で、相続時精算課税にも基礎控除110万円が新設されたため、2024年1月1日以後の贈与については、別枠で年間110万円を控除できることになります。

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相続時精算課税との併用時の要件

相続時精算課税制度と住宅取得等資金の非課税制度にはそれぞれの要件があります。したがって、併用する際には、両方の要件をほぼ合わせたような形になります。

ただし、本来の要件とは一部異なる部分もあり、その部分は、「住宅取得等資金贈与に係る相続時精算課税制度の特例」として、特例となっています。

精算課税制度および住宅取得等資金の非課税制度のもともとの要件とは異なる部分だけ列挙しておきます。

贈与者の年齢

相続時精算課税制度では、贈与者の年齢の条件は、1月1日時点で満60歳以上ですが、住宅取得等資金の非課税制度と併用すると60歳未満でも適用可能になります。

そして、一度、相続時精算課税制度を適用すれば、その後の贈与についても年齢に関係なくすべて相続時精算課税制度が適用されます。

受贈者の所得金額

住宅取得等資金の非課税制度では、その年の受贈者の所得金額が2,000万円以下という条件がありますが、相続時精算課税制度と併用した場合は、所得に関する条件はありません

住宅の面積

住宅取得等資金の非課税制度では、対象の住宅の登記簿上の床面積が40㎡以上240㎡以下という条件がありますが、相続時精算課税制度と併用した場合は、40㎡以上という条件だけであり、上限の条件はありません

 相続時精算課税制度住宅取得等資金の非課税制度併用
贈与者の年齢1月1日時点で満60歳以上条件なし条件なし
受贈者の所得金額条件なし2000万円以下条件なし
住宅の面積条件なし登記簿上の床面積が
40㎡以上240㎡以下
登記簿上の床面積が
40㎡以上

5.その他の非課税制度

ここでは、贈与に関して、住宅取得等資金贈与の非課税制度以外の非課税制度についてご紹介します。

5-1. 贈与税の配偶者控除制度

配偶者への贈与に関して、居住用不動産あるいは居住用不動産を買うためのお金のいずれかを配偶者に贈与した場合、一定条件を満たせば、2,000万円までの贈与が非課税となる制度です。

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5-2. 教育資金に係る贈与制度

贈与されたお金を教育目的に利用することを条件に、一定の条件を満たせば、原則として1,500万円までの贈与が非課税となる制度です。

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5-3. 結婚・子育て資金に係る贈与制度

贈与された財産を結婚・子育てに利用することを条件に、一定の条件を満たせば、原則として1,000万円までの贈与が非課税となる制度です。

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住宅取得等資金の贈与の非課税特例に関するFAQ

父と祖父から住宅取得資金として1,000万円ずつ贈与を受け、省エネ等住宅を取得し居住を開始しましたが、どちらにもこの非課税制度を適用できますか?

住宅取得資金の非課税制度では、受贈者1人につき1,000万円が限度となります。

父と祖父から合計2,000万円の贈与を受けていますが、そのうち1,000万円までが非課税の対象となります。

土地は妻の父が住宅取得資金を贈与してくれたため妻名義、土地上の住宅は夫がローンを組んだため夫名義です。住宅取得資金の非課税制度を適用できますか?

この制度では、取得した資金を、住宅用家屋の敷地の用に供する土地等の取得に充てる場合も対象となります。

ただし、贈与を受けた年の翌年3月15日までに、その取得した土地の上の住宅用の家屋を所有する(共有持分を有する場合も含む)ことにならない場合は、非課税制度の適用を受けることはできません。

したがって、この制度の適用を受けられるか否かは、住宅所有のタイミングによります。

2023年12月に父から住宅取得資金として贈与を受け、マンションの頭金に充てましたが、このマンションの完成・引き渡しは、2024年4月の予定です。住宅取得資金の非課税制度を適用できますか?

マンションや建売住宅の場合は、住宅取得等資金の贈与を受けた年の翌年3月15日までにその引渡しを受けていなければ、非課税制度の適用を受けることができません。

まとめ

住宅取得等資金贈与の非課税制度は、一定金額まで贈与税が免除される制度です。子供や孫が住宅を購入・建築する際には、使わない手はありません。

また、この制度以外にも、贈与税の非課税制度はいくつかあります。資産継承(相続)対策の一環で、これら贈与の非課税制度を活用することをお勧めします。

より詳細をお知りになりたい方や、また、実際に制度を利用する予定の方は、最寄りの税務署や贈与税や相続税の詳しい税理士に相談することをお勧めします。

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監修
税理士相談Cafe編集部
税理士ライター、起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)、行政書士資格者を中心メンバーとして、今までに、相続税や相続周りに関する記事を500近く作成(2023年4月時点)。
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