借金やローンの肩代わりに贈与税が課税される!課税されない方法は?
借金などを肩代わりしてもらっうと、肩代わりの額に対して贈与税がかかります。借金などの肩代わりで贈与税が発生するケース…[続きを読む]
夫婦や親子で、連帯債務型の住宅ローンを設定しているご家族もいらっしゃるでしょう。
しかし、住宅ローンの借り換えをする場合に、一定の条件にあてはまると贈与税が課税される可能性があります。
住宅ローンで贈与税が課税されるであろう以下3つのケースを取り上げて、回避する方法までを解説します。
目次
例えば、共働きの夫婦が、夫を主契約者、妻を連帯債務者として連帯債務型の住宅ローンを組み、互いに持分1/2ずつの共有名義の登記をした上で、住宅を購入したとします。その後、子供ができたなどの理由で妻が専業主婦やパートになるケースは、まだ少なくないのではないでしょうか。
そんな時、連帯債務型住宅ローンから夫の単独債務の住宅ローンへの借り換えを検討することが多いでしょう。この借り換え時に、贈与税が問題になるのです。
この状態で住宅ローンの借り換えをすると、返済可能な収入のある夫だけが新たに住宅ローンを組むことができ、夫単独のローン契約となります。
ローンの借り換えは、新たなローンの借入金で古いローンの残金を完済し、そこから新たなローンの返済をします。したがって、夫単独で借入れた新たなローンで、妻持分の住宅ローン残債もまとめて一括弁済したことになります。妻が返済すべき自分の持分のローンを夫が返済したことが、「経済的利益の贈与」を受けたことになり、ここに贈与税が課される可能性があります。
例えば、ローン借り換え時の残債が2,000万円で、1/2の1,000万円が妻の負担すべき金額だったとすると、夫単独で借り入れた新たな2,000万円のローンでこれを完済することになるため、事実上その年に夫から妻に対して1,000万円の贈与があったとみなされて、贈与税の基礎控除額110万円を差し引いた890万円が贈与税の課税対象となる可能性があるのです。
では、どうしたら、住宅ローンの借り換え時に発生する贈与税を回避することができるのでしょうか?
妻にまとまった返済資金があるなら、住宅ローン借り換え前に、妻持分の残債を一括返済してしまいましょう。
妻のローンがなくなることによって、夫がローンの借り換えをしても、「経済的利益の贈与」を受けることがなくなり、贈与税も発生しなくなります。
ただし、あくまで、妻自身の資金で返済する必要があります。
連帯債務から単独債務への変更するタイミングで、住宅の妻持分を夫名義に登記変更し、負担付贈与する方法も考えられます。
妻名義の持分にもローンが残っており、夫が贈与を受けた残りの持分のローンも負担することから「負担付贈与」と呼ばれています。
例えば、妻・夫のローンの負担割合・持分とも1/2ずつの不動産の贈与時の価格が4,000万円で3,500万円のローンが残っているとすれば、妻から夫へは以下の額を贈与したことになります。
通常、不動産の贈与税は相続税評価額に対して課税されますが、不動産の負担付贈与の場合は、上記の通り、通常の取引価額から負担額を差し引いた額が課税価格となります。
さらにこれには、贈与額について譲渡所得税や、登記を移転するための登録免許税、司法書士への報酬なども発生します。
この方法は、贈与額が基礎控除以下でなければ贈与税が発生してしまい、その他の費用もかかるため、慎重に検証する必要があります。
住宅ローンの返済が難しくなった親に代わって、子供がローンの支払いを肩代わりするようなケースを「債務引受」といいます。
住宅ローンの場合は、子供が親と連帯して親と同等の債務を負担する「重畳的債務引受」という方法を取ることになります。
このような債務引受は子供から親に対する「経済的利益の贈与」があることから「贈与税」の課税対象となります。
前述した連帯債務型住宅ローンの肩代わりも例外ではありません。
例えば妻が妊娠や病気で収入が滞った場合に、夫が妻のローンを肩代わりすると、たとえ夫婦間であったとしても、肩代わりされた妻に「経済的利益の贈与」があるとして、支払った額が贈与とみなされ贈与税が発生することになります。
贈与であっても、年110万円までの基礎控除内の贈与であれば、贈与税は課されません。そこで、年110万円以内に収まるように、ローンの肩代わりをします。
このときも、上記で説明したように、贈与は銀行振り込みで行い、証拠が残るようにします。
正確には、贈与税を回避する方法とは言えませんが、債務者である受贈者の親が債務超過など客観的に支払いが不能な状態にある場合は、その扶養義務者が行う債務引受については、本人が弁済困難な金額を限度として贈与税は課税されません。
住宅ローンの支払いを楽にするために、まとまったお金が入った時に、繰り上げ返済することがあります。
この際に、ローンの名義人本人のお金ではなく、親や妻のお金を繰り上げ返済に充当させると、贈与税の課税対象となってしまいます。
このケースでも、ローン名義人が、ローン名義人以外から繰り上げ返済を受けたことが、「経済的利益の贈与」とされてしまうのです。
贈与税が発生するのを回避するには、以下のような方法があります。
贈与税の制度には、年間110万円までの贈与であれば、贈与税がかからない基礎控除があります。この、基礎控除を使い、年間110万円以内の贈与によって、繰り上げ返済をすれば贈与税は課税されません。
このとき、銀行振り込みによって贈与することにより、贈与した・されたことを証明できるようにしておくことを忘れないようにしましょう。
相続時精算課税制度を使えば、2,500万円までの非課税枠が活用できるため贈与税は課税されません。
但し、相続が発生した時点で贈与分も合算して相続税が計算されることを考慮しておく必要があります。
贈与ではなく親や妻からの借り入れにしてしまうというのも一つの方法です。
但し、この場合は金銭消費貸借契約書などの借用書をしっかりと作成しておく必要があります。
では、住宅ローンの借り換え時に、どれくらい贈与税が発生するのかその計算方法を確認しておきましょう。
贈与額から基礎控除額を差し引き、そこに暦年贈与の一般税率をかけ、控除額を引きます。
例えば、ローンの負担割合と住宅の共有持分が1/2ずつで、1,500万円を贈与したとされた場合には、次の通り450万5,000円の贈与税が発生する可能性があります。
一般税率
基礎控除後の 課税価格 | 200万円 以下 | 300万円 以下 | 400万円 以下 | 600万円 以下 | 1,000万円 以下 | 1,500万円 以下 | 3,000万円 以下 | 3,000万円 超 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
税 率 | 10% | 15% | 20% | 30% | 40% | 45% | 50% | 55% |
控除額 | ‐ | 10万円 | 25万円 | 65万円 | 125万円 | 175万円 | 250万円 | 400万円 |
実際の税額を求める場合には、ローンの負担割合や住宅の互いの持分割合によって、さらに複雑な計算が必要になります。
詳しくは、相続税・贈与税に強い税理士にご相談ください。
まず住宅を購入し、不動産を登記した際の情報は、法務局から税務署へと共有されることになります。
次に、相続が発生した際には、税務署が税務調査で被相続人の過去10年にわたる預貯金の移動状況まで調べることができます。相続人が贈与者の場合には、この段階で贈与があったことが明るみに出ます。
実は、贈与税の申告漏れは、相続税の税務調査で発覚することが多いのです。
贈与税の時効は、原則6年、悪質なケースでは7年となっていますが、申告漏れが発覚すると、加算税や延滞税といった厳しいペナルティが課されます。
詳しくは、「贈与税を申告しなかったらバレるの? バレるタイミングは3つ」をご一読いただくとして、贈与税は、正しく申告することをお勧めします。
これらの方法を取る場合には、様々な条件を勘案し、費用を算出して比較しながら検討する必要があります。
これらの状況にあてはまる可能性のある人は、あらかじめ贈与税に強い税理士などに相談するのが得策です。