遺族が知っておきたい相続税の対象になる年金

年金

高齢者が増えると、それに伴い年金受給者も増え、年金受給に関する問題も増えてきます。相続税と関連する問題の一つとして、「年金が相続税の課税対象になるケース」が挙げられます。

年金と一口に言っても、国民年金や厚生年金、遺族年金、個人年金等、いろいろな種類がありますので、相続税と年金が絡むいくつかのケースについて例を挙げながら、どんな年金が相続税の課税対象になるのか、もしくは、ならないのかを解説します。年金受給者が亡くなった際にトラブルにならないようによく確認しておきましょう。

1.公的年金の未支給年金は相続税の対象外

最初に公的年金である国民年金と厚生年金について相続税の対象となるのかを考えてみましょう。

1-1.公的年金の「未支給年金」とは?

国民年金・厚生年金は、偶数月の15日に前月までの2か月分がまとめて支払われることになっています。

例えば、6月20日に死亡した被相続人は、6月15日に4月分と5月分の年金を受け取っていますが、年金は、死亡した月のものまで支払われるので、遺族は、6月分の年金を受け取ることができます。

最後に支払われた時点から被保険者が死亡するまでの年金を「未支給年金」といいます。

公的年金の未支給年金は、被相続人三親等内の親族が請求により受け取ることができます。

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1-2.公的年金の未支給年金は相続税の課税対象とならない

公的年金の未支給年金は、相続税の課税対象にはなりません。

平成7年11月7日付の最高裁判決では「未支給年金の相続性を否定する」という判決が出ており、未支給年金は課税対象にしないことになっています。なぜなら、未支給年金は「遺族の生活保障の一部として支給された」お金と解釈されるからです

ただし、遺族の生活保障のために支給される年金であることから、請求するにはいくつかの条件も定められており、「被相続人と生計を同じにしている」こと、および「既定の請求権者(配偶者、子供、父母など)」に限られます。

こうした条件を満たす遺族には「未支給年金請求権」が与えられ、未支給年金を受け取ることができます。

1-3.未支給年金は「一時所得」として扱われる

未支給年金は、相続税の課税対象ではありませんが、受給に際しては「一時所得」として扱われます。

一時所得は所得税の対象となり、年間の受取金額が50万円を超える場合には所得税の申告が必要になります。なお、未支給年金の受取りだけでは、基本的に一時所得が50万円を超えることはありません。他に所得がある場合には、所得税の申告・納付が必要になる可能性もあるため注意をしましょう。

2.個人年金は相続税の対象となる場合がある

個人年金とは、公的年金以外に老後の生活資金を準備するために保険会社と私的に契約を結ぶ生命保険の一種です。一定期間年金を受け取ることができる確定年金や亡くなるまで受け取ることができる終身年金など様々な種類があります。

個人年金の受給期間中に年金の受給者である被相続人が死亡した場合には、遺族がその権利を承継し、残りの期間の年金を受給できます。これを「年金受給権」と言います。

2-1.年金受給権は相続財産

年金の受給中に被保険者が死亡し、保険契約者(保険料支払者)が被相続人であった(契約者=被保険者)場合は、「年金受給権」は相続財産に含まれるので、この評価額を含めた上で相続税の申告・納付をします。

一方、保険契約者(保険料支払者)が被相続人でなく(契約者≠被保険者)年金受給権を取得した人でもない場合は、贈与税が課税されます。

年金受給権の評価方法には、下記の3つがありますが、これら3つのうち、最も金額が高いものを年金受給権の評価額とします。

(1)年金受給権を取得したときの解約返戻金の金額
(2)年金ではなく一括で給付を受けることができる場合は、その一時金の金額
(3)年金の残り期間に応じ、1年当たりの平均額にその契約の予定利率による複利年金現価率を乗じた金額
(将来もらえる金額を現在の価値に直した金額のこと)

2-2.相続税と所得税の二重課税問題

あれ、相続税と所得税の二重課税では?と気付かれた人がいるかもしれません。

相続で年金受給権を取得した際に相続税がかかり、実際に年金を受け取った際に所得税がかかれば、二重に課税されることになります。この点は実際に問題となり、相続税の課税対象となった部分については、所得税の課税対象にならないとする最高裁判所の判決(平成22年7月6日)が出ています。よって、毎年の年金の受け取りで取得税・住民税が課税されるのは、相続税の課税対象となっていない部分だけです。

平成12年分から平成21年分までの間に二重課税されてしまった方については、所得税の還付の対象となっています。保険会社か税務署にお問い合わせください。

3.遺族年金は相続税の対象外

3-1.遺族年金とは?

一定期間以上、公的年金に加入しており要件を満たす場合、受給者によって生計を維持していた配偶者や子、孫の生活を保障するために年金が支給されます。また、恩給を受けていた人が亡くなった場合には、遺族に恩給が支給されます。これらを「遺族年金」といいます。

3-2.遺族年金は相続税の課税対象とならない

遺族年金は相続財産に含まれず、相続税の課税対象になりません。
遺族年金は「遺族の生活保障のために支給される」年金ですので、課税の対象外とされています。相続税も所得税も課税されません。

なお、相続税・所得税ともに課税対象から外れる遺族年金の種類は下記の法律によるものに限られます。

・国民年金法
・厚生年金保険法
・恩給法
・旧船員保険法
・国家公務員共済組合法
・地方公務員等共済組合法
・私立学校教職員共済法
・旧農林漁業団体職員共済組合法

これらの遺族年金に該当しない場合は、相続税が課税されます。もし遺族年金に切り替える場合は、課税の有無を確認するようにしましょう。

4.寡婦年金は相続税の対象外

4-1.寡婦年金とは?

寡婦年金とは、国民年金の1号被保険者(自営業者)として10年以上保険料を納めた夫が10年以上連れ添った妻に対して支払われる年金です。子どもがいないなど一定の要件を満たすと、支給される年金であり、妻にのみ認められた年金でもあります。

4-2.寡婦年金は相続税の課税対象とならない

国民年金や厚生年金などの公的年金と同様に、寡婦年金は、相続税の課税対象とはなりません。

5.退職年金(企業年金)は相続税の対象

5-1.退職年金とは?

企業年金制度のある会社では、退職金の一部を年金形式にして分割して受け取ることができます。いわゆる「退職年金」です。
退職年金を受給している被相続人が死亡した場合には、残りの期間の退職年金を遺族が受け取ります。

5-2.退職年金は相続財産

退職年金は「相続財産に含まれる」ことになっており、相続税の課税対象として扱われます。退職年金を受ける権利はもともと被相続人が持っているものであり、それを相続や遺贈で取得したものとみなされます。「定期金に関する権利」という枠組みに区分され、評価方法は、すでに説明した「年金受給権」と同様です。

5-3.退職年金の遺族の受け取りでは所得税は課税されない

遺族などが、退職年金を受け取る場合、個人年金とは異なり、雑所得にはならず所得税は課税されません。

相続税と年金のまとめ

年金の内容相続税の課税
公的年金の未支給年金
  • 相続税の対象外
  • 所得税の対象となるが、50万円まで控除可能
個人年金の年金受給権
  • 保険契約者=被保険者の場合、相続税の対象
遺族年金
  • 相続税の対象外
寡婦年金
  • 相続税の対象外
退職年金
  • 相続税の対象

年金にはいろいろな種類があり、その受給方法によって税金の扱いが複雑ですので、実際にはそれぞれの状況に応じた確認する必要があります。相続時に年金関連で不安なことがあれば、税理士やお近くの税務署に相談をすることが大事です。

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監修
税理士相談Cafe編集部
税理士ライター、起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)、行政書士資格者を中心メンバーとして、今までに、相続税や相続周りに関する記事を500近く作成(2023年4月時点)。
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