死亡退職金と相続税対策、生前取得の退職金と所得税

メリット

多くの企業では退職する労働者に対して「退職金」が支払われます。退職金は税務上では「退職所得」として扱い、課税対象になっています。ただし、生前に受取るか死後に受取るかで課税される税金が変わります。

そこで退職金と課税の関係について見ていきます。また、事業継承の観点から、退職金を利用して、節税する方法について言及します。

退職金と税金の関係とは?

退職金には一時退職金や確定拠出年金など複数の種類があります。これらの退職金は誰が、どのタイミングで受取るかによって課税される税金が変わります。

生前に受取った退職金と所得税

通常の退職金は、企業を退職する労働者が退職手当などの形で受取ります。この場合は「退職所得」として扱われ、所得税の課税対象になります。なお、退職所得として扱われる手当金等は以下の通りです。

・勤務先からの退職手当金
・社会保険制度による一時退職金
・生命保険会社による一時退職金

退職手当の課税金額は下記の通りに計算します。

課税退職所得金=(源泉徴収される前の収入金額-退職所得控除額)÷2

上の計算式にある「退職所得控除額」は、勤続年数が20年未満の場合は「40万円×勤続年数」、20年以上の場合は「800万円+70万円×(勤続年数-20)」として計算します。

所得税額は下記の計算式に従って算出できます。

所得税額=(課税退職所得金×所得税率-控除額)×102.1%

この所得税率を確認するには、源泉徴収税額の速算表を見ればいいでしょう。

死後に受け取った退職金と相続税

本来であれば退職金は、退職する労働者に支給されます。しかし、労働者が不慮の事故等により亡くなった場合は、「死亡退職金」として遺族等が退職金を受取ります。この場合は「みなし相続財産」として扱われ、相続税の課税対象になります。課税対象として見られる退職金は、以下の3つに当てはまるものです。

(1)被相続人に支給されるはずの退職金
(2)退職手当金等の名目で支給される現金・現物
(3)被相続人の死亡後3年以内に確定したもの

死亡退職金の課税金額は下記の通りに計算します。

(1)非課税限度額=500万円×法定相続人の数
(2)非課税金額=非課税限度額×(取得退職金額÷死亡退職金の合計額)
(3)課税対象の死亡退職金=取得退職金額-非課税金額

以上の通りに計算し、相続税額を計算します。なお、相続税率は速算表の区分に従って計算するようにしましょう。

事業継承の観点から退職金の設置法

退職金を受け取れるのは労働者だけでなく、経営者・役員も受け取ることが可能です。事業継承の観点からは退職金を利用して節税対策をすることが可能です。

経営者・役員の退職金の計算方法

経営者や役員の退職金は、「最終報酬月額」「役員在籍年数」「功績倍率」の3つによって決まります。計算式にすると下記の通りです。

退職金額=最終報酬月額×役員在籍年数×功績倍率

最終報酬月額とは、退職する前月の報酬金額のことを言います。また役員在籍年数は、役員を経歴した年数の通算です。
そして功績倍率は、役職によって決められた功績度合いのことを言います。功績倍率は企業ごとに決められており、例えば「経営者は2.0倍」「専務なら1.6倍」と言った具合です。
これらの要素によって経営者や役員の退職金は決まり、通常であれば退任時に退職金が支払われます。

節税対策のために退職金を用いる

通常であれば経営者が退任をすれば、退職金を支払う必要があります。しかし、退職金を上手に使えば、事業承継の観点から節税対策に用いることも可能です。具体的には「後継者に社長を譲った後に、前任者は役員にとどまる」方法です。

なぜ、役員としてとどまることが節税対策になるのかと言うと、死亡時に退職金を受け取れば「死亡退職金の非課税枠」を利用できるようになるからです。つまり、法定相続人1人当たり、500万円の非課税枠を適用できます。その結果、相続税の節税対策に寄与します。

退職金のために生命保険を活用する

経営者や役員に退職金を支払う場合、在籍年数や功績倍率次第では数千万円以上もの退職金を支払う必要があります。しかし、一度に多くのキャッシュアウトが発生することは、経営に支障を与える可能性もあります。そこで退職金のために生命保険を活用するといいでしょう。

死亡退職金に備えるべく生命保険に加入する場合は「長期平準定期保険」、もしくは「逓増定期保険」等があります。この保険であれば死亡保障が付いているため、突然の退職金の支出にも対応可能です。

また、長期平準定期保険も逓増定期保険も、通常は「1/2損金」として扱われます。そのため、加入方法次第では法人税の節税対策としても活用可能です。

事業承継のために退職金を設置する場合の注意点

相続税の節税対策のために、退職金をどのように支給すべきかを見てきました。節税は大事な考え方の一つですが、「事業を安定・成長させる」という本来業務から逸れないように注意する必要があります。

したがって、退職金を設定したり、生命保険に加入したりした結果、赤字が発生したら元も子もありません。あくまで本来業務を行い、それでも余力がある場合に節税対策を考えるようにした方が良いでしょう。

 

退職金と税金の関係、また事業継承の観点から退職金を使った節税対策について見てきましたがいかがでしょうか。課税される税金は、退職金の受取人やタイミングによって異なります。また、経営者が役員として残ることで、事業継承の観点から節税もできます。退職金に関する税金がさらに気になる場合は、税理士に相談するのもオススメです。

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監修
税理士相談Cafe編集部
税理士ライター、起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)、行政書士資格者を中心メンバーとして、今までに、相続税や相続周りに関する記事を500近く作成(2023年4月時点)。
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