[図説]暦年課税制度の贈与税申告書の書き方
自分以外の人から財産を譲り受け、贈与税の申告が必要となった場合には、期限内に所轄税務署へ贈与税申告書を提出しなければ…[続きを読む]
相続税対策として、孫への生前贈与が注目されています。
しかし、たとえ受贈者が未成年者であっても、贈与された財産が基礎控除額110万円を超えれば、贈与税の申告・納付が必要になります。まだお金や税金についてよくわからない年端もいかない未成年者が贈与を受けた場合は、どうすればいいのでしょうか?
そこで、ここでは、受贈者(贈与された側)が「未成年者」の場合の贈与税申告について解説します。また、未成年者に対する贈与についての注意点も併せてご紹介します。
目次
税金の申告は、原則として、納税義務を負った者、または税理士が行わなければなりません。したがって、申告書を理解し書けるのであれば、未成年者であっても、贈与税を申告・納付することができます。
しかし、贈与を受けた未成年者には、申告書の作成はもとより、贈与が何を意味するかわからない乳幼児もいるかもしれません。
そこで、非課税枠を超えた贈与を受け、未成年者に贈与税の申告義務が発生する場合は、「親権者」が代理人となって贈与税の申告をすることができます。親権者が贈与税申告を代理できる理由は、親権者が子の財産を管理する権利義務を持つからです。
通常は父親や母親が親権者となりますが、子に両親がいなければ、両親以外の者が親権者になることもあります。
納税義務を負っているのは、あくまで受贈者である未成年者です。代理人である親権者が未成年者に代わって申告をする場合には、以下の点に注意が必要です。
親権者が未成年者を代理して贈与税を申告する際には、申告書を作成し、未成年者に意思能力がある場合(10歳前後)は未成年者の、ない場合は親権者の記名・押印を行います。
申告書に添付すべき必要書類は、あらかじめ準備しておきます。
代理人である親権者は、贈与税の申告書を、受贈者である未成年者の住所地を所轄する税務署に提出して申請・納付します。
税金の納付は、申告者の財産から支出します。
したがって、代理人が未成年者の代わりに贈与税を納付する際には、未成年者の財産から贈与税を支払わなければなりません。
親権者が納付金を負担してしまうと、未成年者が支払わなければならない税金を肩代わりしたことになり、贈与とみなされて、金額によっては贈与税が発生する可能性があるからです。
したがって、贈与税の納付金は未成年者の名義である銀行口座などから支出すべきです。
贈与は、贈与者(贈与する側)と受贈者の両者による契約であることから、必ず受贈者の「もらいます」という意思表示が必要になります。そこで、問題となるのが乳幼児のようにまだ意思表示のできない未成年者に対する贈与です。
しかし、未成年者に対する贈与であっても、親権者の同意があれば成立するとした次の裁決があります。
平成19年6月26日国税不服審判所 名古屋支部 裁決
「親権者から未成年の子に対して贈与する場合には、利益相反行為に該当しないことから親権者が受諾すれば契約は成立し、未成年の子が贈与の事実を知っていたかどうかにかかわらず、贈与契約は成立すると解される。」
実際、未成年者に対する贈与について、贈与といえるのかについて税務署と争いになることがあります。
そこで、以下のような対応が必要となります。
贈与の事実を証明するために、贈与契約書を作成します。
贈与自体は契約者がなくても、贈与者と受贈者の合意があれば成立しますが、口頭では贈与についての証拠が残りません。
一方で、贈与契約書を作成しておけば、税務署に対して贈与の事実を確実に証明することが可能です。その結果、税務署に贈与を否認されることもなくなります。
契約書には、親権者が契約書の署名・押印します(受贈者である未成年者の記載も必要です)。可能であれば、親権者に加えて、受贈者である未成年者も署名します。
贈与と認められるには、契約以外に、実際に贈与した事実を客観的に証明することも必要です。
そこで、金融機関を通じた「振込」によって贈与をし、未成年者名義の口座に振込をすることで、資金の移動を客観的に証明することが可能になります。
では、実際に未成年に年間110万円を超える贈与をした場合には、いくらの贈与税が発生するのでしょうか?
贈与税には、一般税率と特例税率とがあり、以下の通り、特例税率は一般税率より税率が低く抑えられています。
基礎控除後の課税価格 | 特例税率 | 一般税率 | ||
---|---|---|---|---|
税率 | 控除額 | 税率 | 控除額 | |
200万円以下 | 10% | - | 10% | - |
200万円超~300万円以下 | 15% | 10万円 | 15% | 10万円 |
300万円超~400万円以下 | 20% | 25万円 | ||
400万円超~600万円以下 | 20% | 30万円 | 30% | 65万円 |
600万円超~1,000万円以下 | 30% | 90万円 | 40% | 125万円 |
1,000万円超~1,500万円 | 40% | 190万円 | 45% | 175万円 |
1,500万円超~3,000万円 | 45% | 265万円 | 50% | 250万円 |
3,000万円超~4,500万円 | 50% | 415万円 | 55% | 400万円 |
4,500万円超~ | 55% | 640万円 |
特例税率は、受贈者が、贈与を受けた年の1月1日に18歳以上の者が、父母や祖父母などの直系尊属から贈与を受けた場合に適用され、一般税率は、それ以外の贈与に適用されます。そのため、未成年者への贈与には、一般税率が適用されることになります。
確かに一般税率は特例税率より高い税率になります。しかし、相続税には節税効果の高い未成年者控除があり、受贈者が贈与者の未成年の相続人となれば、財産を生前に移転し、相続財産を減らしたた上で、相続開始時には、効果的に相続税をも節税することができます。
尚、相続税の未成年者控除について、詳しくは、次の記事をご一読ください。
例えば、未成年の子供が、父親から1年に1,000万円の贈与を受けた場合にかかる贈与税は、次の通りになります。
(1,000万円ー110万円)×40%ー125万円=231万円
受贈者が未成年者の場合に、贈与された財産を親権者が管理することが往々にしてあります。
そこで気を付けたいのが、贈与された財産は、受贈者である未成年者のものであり、親権者が自由に使える財産ではないということです。
親が自分のために子供の財産を使ってしまえば、横領となりかねません。しかし、子供が欲しがるおもちゃを買う時や、子供と映画や遊園地に行く際など子供のために使うことは問題ないでしょう。ただ、一番いいのは、成年になるまで管理し、財産をそのまま子供に渡してあげることではないでしょうか。
たとえ親子であっても、あくまで、受贈者である未成年者の財産であることを忘れないでください。
未成年者であっても、申告書を書けるのであれば、贈与税の申告・納付をすることは可能です。
しかし、乳幼児のような未成年者の贈与税申告については、親権者が法定代理人となって申告・納付手続きをする必要があります。その際、納付金は受贈者である子供の財産から納めることが必要です。
生前贈与を使えば、効果的に相続財産を減らして、相続税対策をすることも可能です。
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