高級住宅地の相続事情、売却も相続も大変!

高級住宅地

高級住宅地は一般の人からしたら憧れの的かもしれません。しかし、高級住宅地には、高級住宅地なりの問題点もあります。特に相続においては、土地や建物の評価額が高くなり、相続税を払うために先祖代々の土地を売るか借金を背負うかの一大事になることもあります。

ここでは高級住宅地の相続事情について触れてみます。晴れやかなイメージから一変し、相続手続きでは面倒が多く、不利な点もあることがわかります。

1.高級住宅地の相続事情について

高級住宅地は、買い手がつかない…

今後住み続ける予定がないために、高級住宅地を相続する前に、手放そうと考える被相続人がいます。または相続後に売却しようと相続人もいます。しかしながら、現実としては高級住宅地の「買い手が付きにくい」です。

これにはいくつかの事情がありますが、その一番の理由としては、高級住宅地を手に入れるだけの資産を持っている人が少ないことが挙げられます。特に売却を希望する豪邸が豪華、広大になるほど、買い手は見つかりにくくなります。
高級住宅地となると、土地だけでも1億円を下らず、建物まで含めて数億円になるケースもざらです。この金額ですと一般人は借金しない限り購入できません。富裕層であれば購入できますが、富裕層はすでにそういう場所に居住していることが多く引越しなどタイミングが合わないと買い手が現れません。都市中心部の高級マンションであれば、外資系企業が駐在員の社宅として購入することもありますが、郊外ですとビジネス需要がありません

高級住宅地は、税金が高い…

高級住宅地の問題点の一つは、相続するにしても所有するにしても高級住宅地は「税金が高い」ということです。
ご存知の通りですが、相続税は土地の場合、路線価に敷地面積を乗じて固定資産税評価額が算出されます。また、建物評価額に減価率を乗じて計算します。

高級住宅地の場合は、郊外で路線価がそれほど高くなかったとしても敷地面積が大きいために相続税額は相当大きくなり、相続人の大きな負担となります。
また高級住宅地を保有し続ければ毎年固定資産税・都市計画税も発生し、所有者の生活を圧迫します。

高級住宅地に住んでいるからといって年収が高い職業についているとは限りません。年収1000万円以下の人が毎年数百万円の固定資産税・都市計画税を払うのは至難の業です。固定資産税を払うためだけに、高給がもらえる医師になって日夜働いているという話もあるくらいです。

高級住宅地は、維持費がかかる…

敷地や建物の面積が広いということは、税金だけでなく維持費もかかります。建物が老朽化すれば補修が必要ですし、日常から庭木や草木の手入れ、掃除が必要です。家族だけでは手入れが無理なため専門業者に任せることになり外注費用がかかります。庭木など切って丸裸にしてしまえば良いと思うかもしれませんが、取り決めで高級住宅地にふさわしい景観を保つこととされている場合も多く、ある程度の景観を維持する必要があります。

これらのことから、高級住宅地は売却するにしても保有し続けても、厳しい現実があることが分かるでしょう。

2.売却するための工夫

高級住宅地をそのままの状態で売却しようと考えても、買い手は見つかりにくいです。そこで上手に売却するために次のような工夫をします。

高級住宅地を分譲する

高級住宅地を購入してもらいやすくする方法は「土地を分譲する」ことです。
ある程度、広大な土地がある場合にはいくつかの土地に分譲します。例えば1000㎡の敷地であれば、4~5区画(200~250㎡)程度に土地を分割します。そうすれば1つの大きな敷地よりも買い手が付きやすくなります。

高級住宅地を分譲する場合の注意点

高級住宅地の分譲の注意点として、細かく分譲できない場合があります。
高級住宅地ではミニ開発を抑制し一定の高級感を保つために、地域ごとに最低敷地面積が設けられていることが多く、一般の買い手が購入しやすい程度の面積に分割することが認められないことがあります。

また土地を分譲できたとしても、分譲したそれぞれの土地に住宅を建てるためには、建築基準法により建物の敷地が道路に2m以上接していなければなりません。つまり、単純に土地を区切るのではなく、開発道路を作りすべての土地が道路に2m以上接するように開発工事をしなければなりません。開発道路に相当する部分の面積は、当然、住宅には利用できませんので、本来の土地評価額よりも、その分だけ資産価値が低くなります

広大地分割

3.所有し続けるための工夫

高級住宅地をそのまま所有し続けても、維持・管理費や固定資産税、また相続税だけでも相当なコストがかかります。そこで次のような工夫が考えられます。

相続時には「広大地の特例」の適用を受ける

広大な土地を相続する人に向けて、相続時には「広大地の特例」という制度が設けられています。この特例を適用できれば土地評価額を少なくとも40%下げることができます。適用するためには下記の要件を全て満たす必要があります。

(1)標準的な宅地よりも著しく地積が広大である
(2)開発行為を行う際に道路開発等の負担が生じる
(3)大規模工場用地、マンション敷地に該当しない

通常の評価額に、広大地補正率をかけて評価額を算出しますが、広大地補正率は地積によって異なります。

評価額=路線価×地積×広大地補正率
広大地補正率=0.6-0.05×地積/1,000㎡

三大都市圏(東京圏、大阪圏、名古屋圏)であれば500㎡、その他では1,000㎡以上の土地の場合に広大地の特例を受けることができます。

保有時には資産を分譲して運用する

もし高級住宅地を自分で利用していないのであれば、土地を分譲して運用する方法もあります。運用の仕方はアパート経営や駐車場経営等が考えられます。賃貸収入を得られますので、単に土地を遊ばせているよりも負担が少なくなるでしょう。

ただし土地を運用しても、必ずしも成功するとは限りません。中には空室や空車が目立ったり、高級住宅地に相応しくない賃借人が住んで周辺の住民とのトラブルが起きる可能性もあります。運用する場合には不動産管理会社等の専門家に相談しながら進めるのが良いでしょう。

4.相続は事前に税理士に相談を

高級住宅地はお金持ちの人が住んでいて良いイメージがありますが、相続に際しては売却が難しく高額な相続税が発生するなど大変な点もあります。現在、高級住宅地にお住まいで近い将来相続の発生が予想される世帯の方は、できるだけ早めに税理士等の専門家に相談をして事前対策を進められると良いでしょう。

監修
税理士相談Cafe編集部
税理士ライター、起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)、行政書士資格者を中心メンバーとして、今までに、相続税や相続周りに関する記事を500近く作成(2023年4月時点)。
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