遺言とは?自筆証書遺言と公正証書遺言と秘密証書遺言の違い
お父さん 「最近、世の中では「終活」というのが流行っているみたいだね。お父さんも何かやっているんですか?」 相続おじ…[続きを読む]
相続人の死亡によって効力が発生するものには、相続の他に、遺贈と死因贈与があります。どちらも相続人の死亡によって効力が発生するのは同じです。ただ、これら2つは似ているようで異なる性質を持っています。
遺贈と死因贈与の主な特徴を抽出しながら違いを確認します。
目次
遺贈と死因贈与がどのように違うのかを次の4つの観点から説明しましょう。
実は、遺贈と死因贈与とでは、法律上の性質がまったく異なります。
遺贈とは簡単に言うと遺言によって特定の人に財産を分け与えることです。
遺贈というのは、遺言者が遺言書に意思表示をするだけで、一方的に法律上の効力が発生する「単独行為」となります。
遺言書に書き記すだけで、被相続人は、誰にでも(相続人以外にも)自由に財産を渡すことができます。
死因贈与とは、相続人の死亡を理由として贈与を発生させることです。法律上は、あらかじめ贈与者(贈る人)と受贈者(もらう人)の間で贈与契約を交わす「双方行為」です。相続人の死亡によって効力が発生します。
遺贈は、遺言作成ができる15歳に達すれば(民法第961条)、誰でもすることができます。
対して、死因贈与の場合、未成年者であれば、法定代理人を立てなければ贈与契約を結ぶことはできません。ただし、単に贈与を受けるだけれであれば受贈者になることは可能です。
遺贈と死因贈与では法的性質が異なるために、遺贈や死因贈与を行う手続きにも差が出ます。
すでに説明した通り、遺贈は遺言によって行います。遺言の場合は原則として遺言内容が他人に公開されることはありません。よって、内容を秘密にしておきたい場合に有効です。
遺言の方式としては、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つがありますが、確実に遺贈したいのであれば公正証書遺言が無難でしょう。
対して、死因贈与の場合は両者の贈与契約によって行います。したがって、少なくとも受贈者には贈与内容を知らせ合意を得ることになります。
贈与契約は口頭でも成立しますが、贈与者が死亡したら何も証拠がありません。書面で契約することが望ましいと言えるでしょう。相続トラブルを防止するためにも、できれば公正証書による贈与契約を締結するのが良いでしょう。
財産を渡す側の立場から、やはりやめたい(撤回したい)場合に、遺贈と死因贈与では差が出ます。
遺言書の撤回は自らの意思で簡単に行うことができます。したがって、遺贈も遺言によって簡単に撤回することができます。
【姉妹サイト】相続弁護士相談Cafe:遺言の種類と特徴|3種の遺言のメリットと注意点、オススメを解説
贈与契約は本来、贈与者/受贈者両者の合意によるものです。しかし、死因贈与の撤回は、遺贈の撤回に関する規定が同じく当てはめられ(民法第554条)、贈与者が自由に撤回することができます。
原則として書面によらなくても口頭でも撤回可能です。ただ、贈与契約を書面で結んでいるのであれば、トラブルのもとになるので、書面で撤回するのが良いでしょう。
民法第554条
贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する。
ただし、負担付死因贈与で、受贈者がすでに何らかの負担をしている場合には、特別な事情がない限り撤回できないとされています(民法550条)。
たとえば、受贈者がすでに贈与者の介護をしているのであれば、撤回すると受贈者にとって不利益となるからです。
民法550条
書面によらない贈与は、各当事者が撤回することができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。
今度は、財産をもらう側の立場から見て、相続発生後、財産をもらいたくない場合です。
遺贈の放棄は、財産を受け取る人(受遺者)が自由にできます。ただし、遺贈の放棄は、遺贈が特定遺贈か包括遺贈かによって方法が異なります。
なお、包括遺贈と特定遺贈の違いについては、以下の記事をご覧ください。
包括遺贈の場合は、相続の規定が準用されるので、受遺者が相続を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述書を提出してします。
特定遺贈の放棄は、いつでも自由に、口頭でもすることができます。
民法550条の規定通り、「書面によらず、まだ履行が終わっていない」ものは撤回可能です。
どの場合に撤回可能かは、意見が分かれる部分がありますので、迷われる場合は弁護士にご相談されるのが良いでしょう。
ここまで解説したことをまとめると、以下の通りです。
遺贈 | 死因贈与 | |||
---|---|---|---|---|
法的性質 | 単独行為 | 贈与者・受贈者による双方行為 | ||
手続き | 遺言書による | 贈与契約による | ||
手続きの可能な年齢 | 15歳に達する者 |
| ||
撤回 (遺言者・贈与者から) |
|
| ||
放棄 (受遺者・受贈者から) | 包括遺贈 |
| ||
相続を知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に申請 | ||||
特定遺贈 | ||||
いつでも可能 |
では、遺贈と死因贈与では、どのような税金が課されるのでしょうか?
遺贈、死因贈与いずれのケースでも相続税が課税されます。
ちなみに、死因贈与は、贈与ですが贈与税は課されません。
不動産取得税とは不動産を手に入れた場合に発生する税金です。税額は、以下の通りです(期限付きで軽減税率制度あり)。
遺贈であれば、原則として不動産取得税は課税されません。なぜなら、相続では不動産取得税は発生しませんが、遺贈は相続と同じように扱われるからです。
ただし、例外として、相続人以外への特定遺贈の場合は、不動産取得税がかかります。
他方、死因贈与では不動産取得税が課税されます。法定相続人であっても課税されます。
登録免許税とは、不動産の所有権移転登記の手続きのために発生する税金です。遺贈と死因贈与のどちらでも発生します。
遺贈での税額は、受遺者が相続人か否かによって以下のように異なります。
受遺者が相続人の場合
固定資産税評価額×0.4%、
受遺者が相続人以外の場合
固定資産税評価額 × 2.0%
死因贈与での税額は一律で、以下の通りです。
遺贈と死因贈与について課税される税金をまとめると、下表の通りとなります。
遺贈 | 死因贈与 | |
---|---|---|
相続税 | 課税される | 課税される (贈与税は課税されない) |
不動産取得税 | 原則 | 課税される |
課税されない | ||
相続人以外への特定遺贈 | ||
課税される | ||
登録免許税 | 受遺者が相続人の場合 | 固定資産税評価額 × 2.0% |
固定資産税評価額 × 0.4% | ||
受遺者が相続人以外の場合 | ||
固定資産税評価額 × 2.0% |
次に、遺贈や死因贈与で不動産が贈られた場合の登記について
仮登記とは現在は登記の移転が発生していませんが、条件がそろえば所有権が移転がすることを指します。
AさんからBさんへの不動産の所有権移転登記に関していえば、仮登記の状態ではまだAに所有権がありますが、順位が保全され将来Bによる本登記が優先されます。
Aさんが仮登記をした後に、別のCさんから借金をしCさんに対する抵当権の登記をしたとしても、Bさんが本登記をすればBさんに所有権が移転し、Cさんの抵当権は抹消されてしまいます。
さて本題ですが、遺贈では仮登記が認められていません。これは、遺言者が死亡しなければ、遺贈の効力が発生しないという解釈に基づくためです。
一方、死因贈与では仮登記が認められています。所有権の移転が、贈与者の死亡という始期によって将来確定するものだからです。
そこで、「始期付所有権移転仮登記」ととして、贈与者と受贈者の両者が共同で仮登記を行います。この仮登記で、受贈者は財産(不動産)の権利を保全することが可能です。
死因贈与契約書が公正証書で作成されており、贈与者が単独申請を承諾する旨の記載があれば、仮登記は、受贈者が、単独で申請することができます。
遺贈、死因贈与が発生したら不動産の所有権を移転させるための手続きを行います。
遺贈の登記は、遺言書の文言に気を付けなければなりません。
登記原因を「遺贈」として、所有権移転登記が可能です。この場合は、受遺者と遺言執行者、もしくは相続人全員との共同申請になります。
ちなみに、登録免許税は、低い方の税率で登記することができます。
相続人以外の者に相続させることはできません。したがって、この場合、「遺贈」を登記原因として所有権移転登記をします。この場合も、受遺者と遺言執行者、もしくは相続人全員との共同申請になります。
当然、登録免許税は、高い方の税率になります。
受贈者と死因贈与の執行者、執行者がいなければ贈与者の相続人全員とで、「贈与」を登記原因として所有権移転登記を行います。
遺贈 | 死因贈与 | |
---|---|---|
仮登記 | できない | 「始期付所有権移転仮登記」としてする |
登記 |
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最後に、もし、遺贈の内容が書かれた遺言書と、死因贈与の契約書の両方があった場合、どちらが優先されるのでしょうか?
この場合、遺贈/死因贈与に関係なく、新しく作成されたほうが優先されます。遺言書には必ず日付が記載されるため作成日付は明確です。
死因贈与契約書には日付は必須ではありませんが、もし日付がなければ、どちらが新しいのか判断することができませんので、遺言書のほうが優先されます。