韓国の相続の仕組み

韓国

「外国の相続」シリーズの1番目として、まずは日本のお隣の韓国のケースを見てみましょう。

原則として、韓国人の方が亡くなった場合は韓国の法律に従います。ただし、被相続人が遺言で「相続は日本の法律による」と指定した場合は、日本の法律に従います

韓国のTVドラマで「相続者たち」という財閥の後継者の苦悩を描くドラマがありますが、ご覧になる際には参考にしてみて下さい。

相続人

①直系卑属、②直系尊属、③兄弟姉妹、④4親等以内の傍系血族です。日本と比較した場合、4親等以内の傍系血族が追加になります。4親等以内の傍系血族となると範囲はかなり広がります。

まず、3親等の傍系血族として、おじ・おば、おい・めいが該当します。4親等の傍系血族としては、いとこ、祖父母の兄弟姉妹、兄弟姉妹の孫が該当します。

【参照】「親族」『ウィキペディア日本語版』

相続の順位

相続の順位は次のようなります。

第1順位:直系卑属
第2順位:直系尊属
第3順位:兄弟姉妹
第4順位:4親等以内の傍系血族

第1順位は直径卑属(子、孫、・・・)で、被相続人からの親等が近い者が優先されます。同じ順位の直系卑属が複数人いる場合は共同相続となります。日本の場合と異なり、子だけでなく孫も含みます
通常はまず子が相続人となりますが、子が一人もおらず孫がいる場合は、孫が相続人となります。孫が複数人いる場合は、共同相続となります。
子がいても全員相続放棄した場合には、孫が相続人となります。ただし、これは代襲相続とは異なります。

注: 代襲相続とは、本来は相続人ではありませんが、相続人が相続する資格を失うことで、代わりに相続する権利を得ることをさしています。韓国の場合は、孫はもともと相続人に含まれますので、代襲相続ではありません。

第2順位は直径尊属(父母、祖父母、・・・)であり、直系尊属が複数人いる場合は、被相続人からの親等が近い者が優先されます。同じ順位の直系尊属が複数人いる場合は共同相続となります。

第3順位の兄弟姉妹は、直系卑属・直系尊属がいないだけでなく、配偶者もいない場合にのみ相続人となります。兄弟姉妹の直系卑属にも代襲相続が認められています。

第4順位の4親等以内の傍系血族については上記で示したとおり、3親等の傍系血族としては、おじおば・甥姪が該当し、4親等の傍系血族としては、いとこ、祖父母の兄弟姉妹、兄弟姉妹の孫が該当します。

配偶者

配偶者は、直系卑属や直系尊属がいる場合には、それらの者と同じ順位で共同相続人となります。どちらもいない場合には、単独相続人となります。兄弟姉妹との共同相続はありません。日本では、兄弟姉妹が配偶者と共同で相続しますので、そこが異なります。

代襲相続

代襲相続は直径卑属と兄弟姉妹に認められています。配偶者も代襲相続人となります。
つまり、本来、相続人の子がすでに亡くなっていたら、その子の配偶者と子(孫)が相続人となりえます。

代襲相続は、相続開始前に死亡または相続欠格となった場合に発生します。相続の廃除はありません。胎児も出生したとみなされ、代襲相続の権利があります。

相続の承認・放棄

相続開始があったことを知った時から3か月以内に、限定承認または相続放棄の申し出ができます。日本の家庭裁判所だけでなく、韓国のソウル家庭法院に対しても申告する必要があります。

相続分

相続分は、配偶者を除いてすべて均等です。配偶者のみ他の人の1.5倍になります

例)
・配偶者と子供2人の場合 → 相続分の割合は、配偶者:子供:子供 = 1.5:1:1 = 3:2:2 → それぞれの相続分は、配偶者は7分の3、子供はそれぞれ7分の2
・配偶者と長男・次男、ただし、次男はすでに死亡していて、配偶者と子供がいる場合 → 配偶者:長男:亡き次男 = 1.5:1:1 = 3:2:2
亡き次男の配偶者:子 = 1.5:1 = 3:2 → 亡き次男の配偶者と子は、次男の相続分をこの割合で分けるので、配偶者は(2/7)×(3/5)=35分の6、子は(2/7)×(2/5)=35分の4

特別受益・寄与分・遺留分

生前に特別受益がある場合、その分を相続開始時点の評価額で、相続財産に足します。

寄与分がある場合、相続財産から控除します。

遺留分は、直系卑属・配偶者は法定相続分の2分の1、直系尊属・兄弟姉妹は法定相続分の3分の1です。

遺言

遺言の「成立や効力」については母国の法律が適用されますが、「方式」については、以下の複数地のいずれかの法律に則っていれば、有効です
・遺言を作成した地、国籍地、住所地、日常的に居住している地、不動産について不動産所在地
つまり、韓国での正しい遺言の方法を知らなかったとしても、日本で正しい方法で遺言をすれば、まずは遺言として認められるということです。

共同遺言は禁止されていません。録音による遺言が認められています。

準拠法の指定

死亡前に「相続は日本の法律による」と遺言で指定した場合は、日本の法律を準拠法とすること、つまり日本の法律に従って相続を行うことが可能です

詳しくは次の場合に日本の法律を準拠法とすることができます。
・日本に常時居住している被相続人が遺言で「相続は日本の法律による」と指定し、死亡時まで日本に住んでいた場合
・不動産について、被相続人が遺言で「相続は不動産の所在地法による」と指定した場合

韓国と日本の違い

韓国の法律と日本の法律で大きく違うのは、妻の相続分の違いと、兄弟姉妹にも遺留分が認められていることです。

たとえば、配偶者と子供3人が相続人の場合、韓国の法律では配偶者の相続分は3分の1ですが、日本の法律では、配偶者の相続分は2分の1です。
また、子供や親がいない場合、韓国の法律では、配偶者だけが相続人ですが、日本の法律では、配偶者と兄弟姉妹が共同で相続人です。

可能であれば、韓国と日本のどちらの法律で相続をするのが良いか考えて、被相続人が亡くなる前にどちらの法律で相続を行うか遺言をしてもらうのが良いでしょう。

監修
税理士相談Cafe編集部
税理士ライター、起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)、行政書士資格者を中心メンバーとして、今までに、相続税や相続周りに関する記事を500近く作成(2023年4月時点)。
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