タンス預金を相続税申告しないと税務署にバレるのか?デメリット5つ

こんにちは、山野めぐみです。相続税を払いたくないからといって、タンス預金をしている人、けっこういますよね。でも、タンス預金は税務署にバレるのでしょうか?

今回は、タンス預金の状況、そして、本題、タンス預金はばれるのかどうか、税務署の調査力について。そして、タンス預金のデメリットについても触れておきます。

1.今どきのタンス預金事情

まず最初に、日本のタンス預金の状況についてです。

タンス預金って、タンスにお金を入れるから、そう呼ぶみたいですが、別にタンスじゃなくても構いません。キャビネットや引き出し、金庫、床下、植木鉢、あと、銀行の貸し金庫に預けるのも、タンス預金に入るみたいです。

タンス預金

1-1.タンス預金は50兆円!

日本銀行のデータによると、2021年12月時点で、家計にある現金は107兆円。一人当たりだと、85万円。一時的に現金を家に置いている人もいると思いますので、そのうち、仮に半分がタンス預金だとしても、50兆円もあります。

2022年から、マイナンバーと銀行口座の紐付けが始まりますので、国に財産を知られたくなくて、タンス預金をする人が増えているという噂もあります。

1-2.タンス預金で相続税を脱税?!

タンス預金をすると、相続税がどうなるのか、見てみましょう。

私の家で考えると、私は長女、もしお父さんが亡くなったら、法定相続人は3人、相続財産が現金1億円なら、相続税は315万円となります。さて、この現金1億円をタンスに隠したら、相続財産はゼロになるので、相続税も0円。だから、みんな、タンス預金に興味があると思うんだけど、でも、実際はこうはいかず、むしろ脱税になってしまいます。

2.タンス預金はバレる? 税務署の恐るべき調査力

次に、いよいよ本題、タンス預金はばれるのか。
最初に結論をいってしまうと、税務署の調査力は想像以上にすごいので、絶対にばれるとはいえませんが、タンス預金は、たぶんばれますよ。どうして、バレてしまうのか、詳しく解説します。

2-1.国税総合管理システム(KSK)

税務署には、国税総合管理システム、通称、KSKというシステムがあります。このシステムでは、個人の収入、預金、不動産売買、株式売買、保険契約、相続・贈与などあらゆる情報を把握しています。

どんなものかわかりやすくするために、データベースのイメージをあげてみました。

たとえば、2020年10月24日、私の父の、山野ふきおが、私に300万円を振り込んだと記録されています。
また、12月2日、ふきおが、不動産会社から5000万円で不動産を購入して、その際に、銀行と3000万円の住宅ローン契約をしています。
3月5日は、税務署で確定申告をして、50万円を納税。
4月6日には、生命保険会社から満期の保険金、500万円を受け取り。
5月15日には、証券会社で400万円分の株式を購入。

こんなふうに、すべての取引が記録されていると思ってもらったらいいでしょう。

2-2.タンス預金のお金の流れ

ここで、「銀行にお金を預けなければ、データベースにも登録されないからバレないでしょ」と思った人もいるかもしれませんね。
それでは、タンス預金のお金の流れを整理してみましょう。

現金は突然、空から降ってくるわけじゃないので、もともとは銀行にあって、それをおろしてきて、タンスに入れます。そして、そのお金を使って家を購入すると、取引先の会社はそれを銀行に預けます。つまり、タンス預金で貯金するとき、銀行からの出金記録が残るし、タンス預金を利用すると、取引先に入金記録が残るので、結局、バレてしまいますね。

絶対にばれないタンス預金があるとしたら、すべてのやりとりを現金でやることです。でも、給料の受け取りも、生活費の支払いや財産の購入も、すべて現金でやりとりするなんて、今どき無理でしょう。いちおう、私の知っている限りでは、半分ヤクザみたいなある組織の幹部が、自分や会員の給料を全部現金で払っていたので、一度も所得税を払ったことがないという事例があります。でも、普通の人は、そんなことは無理でしょう。

2-3.税務署の恐るべき調査

タンス預金がばれてしまうのは、単純にシステムに記録されているからだけでなく、税務署の調査力が想像以上にすごいからよ。ここからは、そのお話をします。

(1)相続前からマーク

まず、税務署は、実は相続が始まる前から、ある程度財産を持っている人をマークしています。

たとえば、私の父が、大手メーカー勤務で、20年間の毎年の平均給与が1,000万円だったとします。そして、60歳で退職して、退職金を5000万円もらい、親からの相続でも5000万円もらったとします。税務署は、ここから、財産額を予測します。

生活費を除くと、毎年200万円くらい貯金できるはず、そして、退職金と親からの相続もあわせたら、1億4000万円、老後、20年間生きて、取り崩しても、1億円は残っているはず、という感じです。

そして、亡くなったあと、相続税申告の金額は5000万円だったとすると、予測した金額、1億円よりも少ないので、差額の5000万円はどこにいった、怪しいって思うのよ。

(2)家族・親戚の口座を10年分調査

次に、被相続人がなくなると、税務署は、亡くなった人だけでなく、家族・親戚の全員の口座を、過去10年くらい遡って調査します。この際、本人の同意は必要なく、勝手に調査されます。

ちなみに、ここで、もし過去に申告していない贈与があると、ばれてしまいますね。

(3)自宅での税務調査

そして、家族や親戚の誰もお金をもらっていないということになると、タンス預金の可能性を疑われて、自宅へ税務調査に来られてしまいます。

相続税の税務調査は、こんな感じに進みます。まず、午前中は質疑応答です。

世間話から始まって、被相続人の趣味や交友関係など、相続人の職歴や収入などを聞かれます。ここで、何気なく回答したことから、新たな相続財産が発見されることとかあるみたいです。

そして、午後は現物確認です。通帳・印鑑は必ず確認、重要書類の保管場所や金庫の中を見ます。そして、家の中じゅうを探り、銀行の貸し金庫があれば銀行まで行って確かめ、場合によっては、親戚の家まで行くことがあるみたいです。

そもそも、自宅に税務調査に来る時点で、目星をつけられていると思っていいです。税務調査に来られたうち、87%で追徴課税されています。

2-4.タンス預金がバレるとどうなる?

タンス預金がばれるとどうなるかというと、本来払うべき相続税に加えて、厳しいペナルティが課されます。

簡単にあげておくと、延滞税、無申告加算税、過小申告加算税、重加算税があります。

仮に、タンス預金1億円を故意に無申告で、3年後の税務調査で指摘された場合、どうなるかというと、本来の相続税は315万円ですむところ、追徴課税される相続税は、630万円に、410万円のペナルティを加えて、1040万円にもなってしまいます。

これなら、タンス預金なんかせずに、まじめに申告したほうが良さそうですね。

3.タンス預金のデメリットはバレる? 税務署の恐るべき調査力

タンス預金をしても、ちゃんと相続税申告をすれば問題ないでしょ、という人もいると思いますが、タンス預金には5つもデメリットがあります。

①遺産分割でトラブルになる

デメリットの1つ目、遺産分割でトラブルになること。

タンス預金の存在を相続人の一部しか知らない場合、その人が無断で持ち出すと、他の相続人との争いになります。現金だと証拠がないので、仮に持ち出していないとしても、疑いは晴れずに、一生、尾を引くかもしれません。
ちなみに、家族・親族の間の窃盗は刑事罰にならないので、仮に持ち出したことがわかって、警察に訴えても相手にしてもらえません。

もし、相続人の誰も知らない場合、遺産分割や相続税申告の後に見つかると、遺産分割をやり直しする必要があったり、相続税の重いペナルティを課されたりと、相続人がすごく大変です。

②災害・盗難のリスク

デメリットの2つ目、災害・盗難のリスクがあること。

災害や盗難があっても、現金だと取り戻すことが難しいわ。それに、強盗に入られると、最悪の場合、命を狙われかねません。実際、2009年5月に、板橋区の資産家の夫婦が殺害されてしまって、まだ未解決である事件もありました。

ちなみに、銀行が倒産するとお金がなくなってしまうので、タンス預金のほうが安心だと勘違いしている人がいるみたいですが、そんなことはありません。
預金保険制度というのがあり、普通預金や定期預金などの預金は、金融機関ごとに、一人あたり元本1000万円までと、破綻日までの利息が保証されます。なので、銀行に預けたほうが安心です。

③保管場所を忘れるリスク

デメリットの3つ目、保管場所を忘れるリスクがあること。

たとえば、現金を床下に隠したのはいいですが、本人が隠した場所を忘れた、本人が認知症になった、誰にも知らせずに亡くなった、こんなことがあると、誰にも知られず、そのまま放置されてしまいます。

そして、家を取り壊すときに、土砂と一緒に廃棄されてしまうかもしれません。せっかくお金を隠しても、誰にも使われなければ意味がありません。

④紙幣の価値が下がる

デメリットの4つ目、価値が下がること。

ちょっと経済の話題になりますが、インフレが起きると、紙幣の価値が下がります。2020年から2030年までの日本のインフレ予測は、年1.3%。ということは、10年後の、現金1億円の価値は、8,789万円になり、約1,200万円も価値が減ってしまいます。あと、タンス預金だと、利息もつきませn。

⑤2024年の新札発行で使いづらくなる

デメリットの5つ目、2024年の新札発行で使いづらくなること。

日本では約20年ごとに紙幣が刷新されていて、こんどは2024年に、新しい紙幣が出回ります。1万円札には、日本の資本主義の父、と呼ばれる渋沢栄一が描かれます。そうなると、タンス預金をしている現在の紙幣は、持ち込むと目立ってしまうため、使いづらくなってしまいます。

まとめ

さいごに、今回の内容を簡単にまとめておきます。

まず、タンス預金は推定で50兆円もあります。

そして、税務署は想像以上に調査力がありますので、タンス預金の相続税申告をしないと、おそらくバレてしまいます。

タンス預金のデメリットには5つあります。

  • 遺産分割トラブル
  • 災害・盗難のリスク
  • 忘れるリスク
  • 価値が下がる
  • 新札発行で使いづらく

結局、タンス預金はせずに、相続税申告はちゃんとしたほうが良さそうということね。

山野めぐみ
執筆
山野 めぐみ(やまの めぐみ)
山野家の長女、2人の子供がいる明るく元気な主婦。年齢は30代くらい、昭和生まれ。新宿区に在住。
弟が家を出ていったので、将来、めぐみが家を継ぐことになっていて、相続にはとても関心が高い。
誰とでも仲良くなれるので、街の税理士の先生をはじめ、いろいろな人から情報を仕入れている。
計算は得意ではないので、夫の「たけお」に助けてもらっている。
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