1.和歌山県の相続税申告の状況
はじめに、和歌山県の相続税申告状況を解説します。
和歌山県では令和元年において、1年間で申告件数1,053件、そのうち相続税がかかった課税件数は874件でした。課税割合は6.81%で全国22位、相続1件あたりの納付税額は1,062万円で29位となっています。
全国平均の課税割合は8.3%、納付税額1,714万円であることから、和歌山県は比較的、相続税がかかりにくい県であることが分かります。
周辺の近畿2府4県の課税割合は、大阪8.4%、京都府9.59%、奈良県9.18%、兵庫8.67%、滋賀県7.72%で、和歌山県は断トツに低い数値となっています。
下記の表を見てください。和歌山県の課税割合は、7エリア中4エリアが4%台となっており、それに対して、海南と和歌山エリアが高いため平均は6.81%に落ち着いている形です。
しかし、和歌山県は課税割合が低いからといって、納付税額も低いわけではありません。県内1、2位の納付税額となっているのは、課税割合4%台の田辺エリア、御坊エリアであり、相続税がかからないと安心していたら、一転して高額な相続税が発生する可能性があるため注意しなければなりません。
エリアによって相続税への構え方も変わってくるため、次項でそれぞれ詳しく解説します。
税務署名 | 管轄地域 | 申告 件数 | 課税 件数 | 1件当り 納付税額 (万円) | 申告割合 | 課税割合 |
---|---|---|---|---|---|---|
和歌山 | 和歌山市 | 477 | 386 | 1,102 | 10.63% | 8.60% |
海南 | 海南市 紀美野町 | 95 | 88 | 1,014 | 10.05% | 9.31% |
御坊 | 御坊市 美浜町 日高町 由良町 印南町 みなべ町 日高川町 | 66 | 54 | 1,113 | 6.06% | 4.96% |
田辺 | 田辺市 白浜町 上富田町 すさみ町 | 99 | 79 | 1,253 | 6.02% | 4.80% |
新宮 | 新宮市 那智勝浦町 太地町 古座川町 北山村 串本町 | 52 | 47 | 1,023 | 4.46% | 4.03% |
粉河 | 橋本市 紀の川市 岩出市 かつらぎ町 九度山町 高野町 | 208 | 172 | 1,040 | 8.40% | 6.95% |
湯浅 | 有田市 湯浅町 広川町 有田川町 | 56 | 48 | 578 | 5.44% | 4.66% |
和歌山県計 | 1,053 | 874 | 1,062 | 8.20% | 6.81% |
【出典サイト】「関連リンク 市町村」 | 和歌山県
2.各エリアの特徴と詳細
それぞれの主要市町村の特徴や地価の状況を、課税割合の高い順に解説していきます。
2-1. 海南エリア
海南市と紀美野町からなる海南エリアは和歌山県の北部、和歌山市の南部に隣接しています。
海南市は、1年を通して温暖な気候に恵まれた地域で、みかん、びわ、桃などの栽培が盛んです。また沿岸部では、シラス、ハモ、ワカメなどの海産物も豊かです。
海南市と紀美野町いずれも大阪からほど近い場所にあり、特に海南駅ではすべての特急列車が停車するためアクセスが良好で、通勤は十分に可能な範囲にあります。
海と山に囲まれた自然豊かな環境は、和歌山市のベッドタウンとして需要があるうえ、特に近年のリモートワークの普及によって、「田舎暮らし」に憧れる人達の注目を集めています。
課税割合は9.31%と県内で圧倒的なトップとなっており、納付税額は1,014万円と県内平均並みです。
地価は県内全30位中、海南市が2位、紀美野町が26位となっていることから、相続税課税の中心は海南市であると考えられます。
しかし、海南市は2位といえども1平米あたり4万円程度で、1位の和歌山市の半額にも満たない金額であるにもかかわらず課税割合が1位という結果から、広い自宅や農地を所有している人を中心に課税されているのでしょう。
また平成27年の課税割合は6.62%であったことを考えると、変動が激しいエリアです。
このような田舎はつい油断してしまいがちですが、交通アクセスが良い田舎は現代人の需要に合っていることから、今後も上昇する可能性があるため注意しましょう。
2-2. 和歌山エリア
和歌山エリアは和歌山市のみからなります。和歌山県の県庁所在地であり、公共施設、医療施設、教育施設などが集結する中心都市ですが、城下町の風情が残る程よい都会感が魅力の市です。
大阪の中心部までは電車や車で1時間程度というアクセスの良さも相まって、人口は約36万人と、和歌山県の人口約96万人の4割近くが和歌山市に居住しています。
課税割合は8.60%で県内2位、納付税額は1,102万円で県平均並みの結果となっています。
そして何より注目しなければならないのは、県の課税件数874件のうち386件が和歌山市で起きているということです。割合にすると4割超となり、人口が多い分当然ではありますが、最も相続税対策が必要とされるエリアであることは間違いありません。
地価は、県内では断トツトップとなる1平米あたり9万円で、2位の海南市が4万円であることからその高さが分かります。
特に和歌山城の南側にある、堀止東、吹上、東高松、西高松などは高級住宅街があることから、海南エリア以上に相続税の要注意エリアといえるでしょう。
2-3. 粉河エリア
橋本市、紀の川市、岩出市、かつらぎ町、九度山町、高野町からなる粉河エリアは、和歌山県の北部に位置しています。多くの市町が集まっていますが、それぞれ面積が小さいため大きなエリアではありません。
橋本市、紀の川市、岩出市、かつらぎ町は大阪に隣接しており、特にこのエリアの中心となる橋本市は、大阪府の難波駅まで南海高野線急行を使って1時間以内で行くことができます。さらに奈良県、和歌山県のいずれにも通勤しやすいことから、ベッドタウンとしての需要が高く、人口は県内3位となっています。
課税割合は6.95%で県内2位、県内平均を超える最後のエリアです。納付税額は1,040万円で上位2エリアと同水準です。
地価はエリア内では和歌山市に近い岩出市が最も高く3位、その他は、6~22位とまばらです。
よって、相続税課税が行われている中心地は橋本市と岩出市であると考えられます。地価の低いかつらぎ町や九度山町が課税割合の平均を下げていることから、橋本市と岩出市のみでの課税割合は、和歌山市に匹敵しているかもしれません。
特に橋本市では、「紀北橋本エコヒルズ」の開発による影響で、その周辺に住む人の平均年収が上昇しており、今後は更に相続課税が増えることが予想されます。
2-4. 御坊エリア
御坊(ごぼう)市、美浜町、日高町、由良町、印南町、みなべ町、日高川町の1市6町からなる御坊エリアは、和歌山県の中央東部に位置しています。
沿岸線の温暖な気候であることから、御坊市では花の栽培が盛んです。
このエリアは大阪府や和歌山市から離れるため、都心部のベッドタウンとしては機能し難く、地価もエリア全域で1平米あたり1~2万円と低くなっています。
その分、課税割合も4.96%と低く、先順位の粉河エリアから一気に下落します。ただ、納付税額は1,113万円と、上位エリアと僅差ながらも県内2位となっているため、課税割合のみで判断するのは危険なエリアです。
事前に自身の相続財産を把握しておき、相続税発生の有無を確認しておきましょう。
2-5. 田辺エリア
田辺市、白浜町、上富田町、すさみ町からなる田辺エリアは、和歌山県の中央南部寄りに位置しています。
中心となる田辺市は面積が1,026.91キロ平方メートルもある大きな市で、和歌山県のみならず近畿地方で最大の市です。田舎ですが市街地もあり、スーパーや病院、飲食店も充実しているため、不自由なく暮らせます。
一歩山間部へ行くと、美しい大自然があり、世界遺産の熊野古道や熊野本宮大社は世界的にも有名で、外国人観光客も多く訪れています。
「特急くろしお」を利用すれば、和歌山駅まで1時間ほどで出られるため、都心部で勤務しながら、美味しい空気を吸える自宅に帰れる健康的な生活が叶います。
地価は田辺市5位、白浜町8位、上富田町12位と中盤より上、すさみ町のみ25位の低さとなっており、自然あふれるエリアにしては高い印象です。
課税割合は4.80%ですが、納付税額は1,253万円と県内1位となっており、田辺市の納付税額が多いと考えられます。
2-6.湯浅エリア
有田市、湯浅町、広川町、有田川町からなる湯浅エリアは、県の北部の中央寄りに位置しています。
温暖な気候を利用して栽培されたミカンは甘くて美味しく、「有田みかん」は地域ブランドとして全国的にも有名です。
農業、漁業がメイン産業の田舎エリアですが、和歌山市へは北へ20キロ程度、「特急くろしお」を使って20分の近さであるため、穴場エリアといえます。
地価は有田市10位、有田川町11位、湯浅町9位、広川町24位となっており、湯浅町が町でありながらエリアトップとなっています。小さな町ですが、熊野詣の宿場町として発展した歴史ある町で、醬油の発祥、シラスの高い漁獲量など魅力が詰まっており、観光客も多いことから地価も比較的高くなっていると考えられます。
課税割合は4.66%、納付税額は578万円で、納付税額は県内で断トツの低さとなっており、油断してはいけませんが、相続税が発生したとても低額な可能性が高いエリアです。
2-7.新宮エリア
和歌山県最後のエリアは、新宮市、那智勝浦町、太地町、古座川町、北山村、串本町からなる新宮エリアです。和歌山県の南東部の海岸線に位置しています。
このエリアになると、新宮市を除いては山林が大半となり、地価も非常に低くなります。
新宮市の地価は県内4位で1平米あたり4万円ですが、その他は1~2万円台で中盤から下位を締めています。
課税割合も4.03%と断トツで低く、相続税の心配は少ないエリアになります。
3.和歌山県の税理士情報
和歌山県の税理士は近畿の2府4県が属している近畿税理士会に所属しており、その会員総数は15,026人(令和3年8月1日現在)となっています。
そのうち和歌山県にいる税理士は351人(平成30年3月31日現在 日本税理士会連合会 平成30年5月発行税理士界)で、2府4県の中で最も少ない人数ですが、人口も最も少ない県であるため当然でしょう。
相続税の申告1件当たりの税理士数を見てみると0.40人で平均的であり、周辺他県に比べて劣る数値ではありません。
ただし和歌山県内の税理士の分布状況には注意が必要です。
近畿税理士会和歌山支部の税理士会員名簿を見てみると、ほぼ100%の税理士が和歌山市にいることが分かります。和歌山市の相続税の発生状況と、大阪府に隣接しているその立地からそうなるのは当然の流れですが、これでは県中央より南部の過疎地域では税理士探しに苦労するといわざるを得ないでしょう。運良く近くに税理士がいたとしても、相続税に関して経験不足である可能性もあります。
また南部は隣県が三重県であり都会ではありません。和歌山市以外に足を延ばしたからといって、相続税に精通した税理士が見つかる可能性は低いです。
和歌山県の税理士は県内の相続税申告を独占している状況にあると考えられるため、その分、経験値が高いともいえます。
相続税に強い税理士を見つけることができれば、他の都道府県よりもクオリティが高いサポートを受けられるかもしれません。
当サイトは、和歌山県のような状況の税理士探しのお手伝いをさせていただきたく、運営しております。相続税に精通した税理士を厳選してご紹介しておりますので、是非ご活用ください。
【参考サイト】「税理士登録者数 」| 日本税理士会連合会、「近畿税理士会とは」│近畿税理士会、「和歌山支部会員名簿」|近畿税理士会和歌山支部