相続発生後に家族が必要な手続き

相続の手続きというと遺産分割と相続税の申告・納税が大きなテーマになりますが、それとは別に、残された家族には、いろいろやらなければいけない手続きが多く発生します。これらの手続きは、相続人だけでなく、一緒に住んでいた家族や扶養されていた家族が関係してきます

発生してからだと、慌ててしまい重要なことを忘れてしまうこともありますので、普段のうちから整理しておきたいものです。
相続が発生した後に必要な手続きについて、多くのケースで必要となるものを、まとめてみました。

1.相続発生後に必要な手続きと期限

まず、相続発生後に必要な主な手続きと期限を簡単に整理してみます。
なお、準確定申告遺産分割協議相続税の申告・納税など相続人だけが絡む内容については、ここでは省略しており、どちらかというと、故人の身近であった家族や親戚が必要な手続きに内容を絞っています。

手続き内容期限(死亡した日から)
世帯主の変更14日以内
健康保険の資格喪失の手続き14日以内(国民健康保険)
5日以内(健康保険)
葬祭費・埋葬料の申請2年
公共料金等の変更・解約速やかに
公的年金の手続き
住宅ローンの抵当権抹消

2.世帯主の変更

世帯主が亡くなり、残された世帯員が2人以上の場合は、世帯主が亡くなった日から14日以内に「世帯主変更届(住民移動届)」を提出して、世帯主を変更する必要があります。
残された世帯員が1人か、妻と幼児というように新しく世帯主になる人が明らかな場合は、届出の必要はありません。

例えば、世帯主が夫、世帯員が妻と子(15歳以上)で、夫が亡くなった場合は、世帯主が誰だか明らかではありませんので、届出が必要です。
世帯主が夫、世帯員が妻だけで、夫が亡くなった場合は、世帯主は妻と明らかですので、届出は不要です。

世帯主変更届(住民移動届)の提出方法
届出書世帯主変更届(住民移動届)
提出先故人が住んでいた市区町村の戸籍・住民登録窓口
届出人新世帯主、同一世帯の方、代理人
必要なもの・国民健康保険証(加入者のみ)
・本人確認できる証明書類(免許証など)
・印鑑
・委任状(代理人の場合)

なお、死亡届を提出すると、亡くなった方の戸籍に「死亡」と記載され、住民票が消されます。

3.健康保険の資格喪失の手続き

健康保険の被保険者(健康保険に加入している人)が亡くなると、被保険者としての資格を失うので、死亡した翌日から健康保険証は使えなくなります。資格喪失の手続きと健康保険証の返却が必要です。

以下、国民健康保険と会社の健康保険に加入していた場合の手続きについて、それぞれ分けて解説します。

(1) 国民健康保険に加入していた場合

亡くなった方が国民健康保険に加入していた場合、亡くなった日から14日以内に「国民健康保険資格喪失届」を提出します。75歳以上(65~74歳で障害のある方を含む)であった場合は、「後期高齢者医療資格喪失届」を提出します。あわせて、健康保険証を返却します。

国民健康保険は世帯単位で加入しますので、世帯主が亡くなりその家族も国民健康保険に加入していた場合は、亡くなった方の国民健康保険証だけではなく、世帯全員の国民健康保険証を持参して、世帯主の書き換えが必要になります。

国民健康保険資格喪失届の提出方法
届出書・国民健康保険資格喪失届(75歳未満)
・後期高齢者医療資格喪失届(75歳以上)
提出先故人が住んでいた市区町村の国民健康保険の窓口
届出人世帯主
必要なもの・国民健康保険被保険者証(保険証のこと)
・後期高齢者医療保険者証(対象者の場合)
・死亡を証明する戸籍謄本等
・本人確認できる証明書類(免許証など)
・印鑑

世帯主の変更をする場合は、その届出と一緒に行うと良いでしょう。

(2) 会社員で健康保険に加入していた場合

亡くなった方が会社員で健康保険に加入していた場合、亡くなった日から5日以内に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を会社経由で年金事務所に提出します。基本的には会社側で行う手続きであり、亡くなった方が勤めていた会社から案内や指示が来ますので、その指示に従ってください。健康保険証は勤務先であった会社に返却します。

残された家族が、亡くなった方の健康保険の扶養に入っていた場合は、その保険証は使えなくなり亡くなった方の保険証と一緒に返却しなければなりません。保険証がないと病気になったとき困りますので、すぐに、国民健康保険に加入するか、会社員である他の家族の健康保険の扶養に入るかの手続きが必要です。

その他、死亡した日が退職日となり、退職の手続きもあります。社員証、セキュリティカード、携帯電話など会社から貸与されていた物の返却をしたり、未払給与、退職金を受け取る手続きをしたりします。これらも、その会社に指示に従いましょう。

(3) 葬祭費・埋葬料の申請

健康保険に関連して、亡くなった方が国民健康保険・後期高齢者医療制度に加入していた場合、喪主に対して葬祭費が支給されます。また、亡くなった方が会社員で健康保険に加入していた場合は、喪主に対して埋葬料が支給されます。葬儀・埋葬を行っている場合は、資格喪失届と合わせて申請すると良いでしょう。

国民健康保険・後期高齢者医療制度に加入していた場合

葬儀を行った喪主に対して「葬祭費」が支給されます。金額は自治体により異なりますが、2~7万円ほどです。請求期限は葬儀日より2年です。

葬祭費の申請方法
申請書国民健康保険葬祭費支給申請書
提出先故人が住んでいた市区町村の国民健康保険の窓口
申請人葬儀を行った喪主など
必要なもの・国民健康保険証
・死亡診断書
・葬儀費用の領収書
・印鑑
・受取人名義の預金通帳
期限葬儀を行った日の翌日から2年

会社員で健康保険に加入していた場合

故人に生計を維持されていて、埋葬を行った人に対して、「埋葬料」が一律5万円支給されます。故人に家族や身寄りがない場合、埋葬を実際に行った人に対して「埋葬費」が支給されます。埋葬料(5万円)の範囲内で実際に埋葬にかかった費用になります。請求期限は死亡日より2年です。

被保険者の家族(被扶養者)が亡くなった場合は「家族埋葬料」として5万円が支給されます。
埋葬料の申請は故人の勤務先であった会社が行うこともありますので、会社に確認して下さい。

埋葬料(費)の申請方法
申請書健康保険被保険者埋葬料(費)支給請求書
提出先被保険者の勤務先を管轄する社会保険事務所または健康保険組合
申請人生計を維持されていて埋葬を行った人(または実際に埋葬を行った人)
必要なもの・健康保険証
・事業主による死亡の証明
・埋葬費用の領収書
・印鑑
・受取人名義の預金通帳
・生計維持を確認できる書類(住民票など)
期限・埋葬料:死亡日の翌日から2年
・埋葬費:埋葬を行った日の翌日から2年

4.公共料金・各種サービス等の変更・解約

亡くなった方の銀行口座が凍結されると、公共料金などの自動引落が止まりますので、支払い方法の変更や解約を速やかに行う必要があります。
また故人が利用していたサービスについて、残された家族が利用しないのであれば、早めに解約したほうが良いでしょう。今まで故人が支払っていたものを確認するには、銀行の通帳やクレジットカード明細を確認したり、郵便物をチェックしたりします。

電気・ガス・水道

電気・ガス・水道の契約者変更・解約や支払い方法の変更は、電話やインターネットで行うことができます。詳しくは、各供給会社のサービスセンターに連絡してください。

携帯電話・インターネット回線

各携帯電話会社のショップの窓口に行って、承継または解約の手続きをします。戸籍謄本など相続関係がわかる書類が必要です。契約事務手数料や違約金はかかりませんが、解約では解約日までの利用料金を請求されることが多いですので、なるべく早めに解約したほうが良いでしょう。ときどき、ショップの店員が手続き方法を理解していないこともありますので、事前に携帯電話会社のホームページを見ていくことをお勧めします。

【参照】ドコモ:ご契約者の死亡による承継または解約
https://www.nttdocomo.co.jp/support/mortality/
【参照】au:契約者が死亡したためauケータイを解約したい
https://www.au.com/support/faq/view.k1112050690/
【参照】ソフトバンク:契約者死亡に伴い解約する場合の手続き方法を教えてください
http://faq.mb.softbank.jp/detail.aspx?cid=9658&id=9658

インターネット回線やプロバイダーの解約は、電話やインターネットなど各社毎に方法が異なりますが、たいていサービス会社のウェブサイトに方法が掲載されていますので、ウェブサイトを確認してみましょう。

WEBサービス

インターネットの普及に伴い、Facebook、Twitter、gmail、楽天、YahooなどのWEBサービスを利用している人が増えています。これらのアカウントは身分証などの書類がなくても簡単に作成できてしまうだけに、亡くなった人がどんなサービスを利用していたか把握が難しく、またアカウントを消したくても難しいケースが多いです。
ただ、大手のWEBサービスであれば、故人のアカウントの削除方法を案内していることがありますので、各WEBサービスのウェブサイトで確認してみましょう。

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NTTの固定電話(電話加入権)

NTTの固定電話を利用するには電話加入権という権利が必要ですが、これは財産の一つであり、相続では相続財産となります。といいましても、現在の評価額は、1,500~2,000円程度です。かつては、電話加入権の購入価格が70,000円くらいだった時代もありましたが、今や、単行本一冊分くらいの価格になってしまいました。

戸籍謄本などを添付してセンターへ郵送すれば手続きができます。

【参照】NTT東日本:承継
https://web116.jp/shop/meigi1/mei1_02.html
【参照】NTT西日本:承継
https://www.ntt-west.co.jp/denwa/mousikomi/name/syoukei.html

NHK

電話やインターネットで行うことができます。

株式

被相続人が所有していた株式も、手続きを終えなければ株式の売却、配当金の受け取りや株主優待などの株主としての権利が行使できません。

株式は被相続人の取引口座のある証券会社に問い合わせましょう。上場株式であれば証券会社へ、非上場株式は発行会社へ問い合わせます。手続きは各証券会社で異なってきます。

ゴルフ会員権

ゴルフ会員権を発行しているゴルフ場に問い合わせてみてください。

運転免許証

亡くなった方の運転免許証と死亡の事実が確認できる書類を用意して、最寄りの警察署で返納の手続きを行います。ただし、返納手続きをしなくても、更新手続きを行わなければ自動的に失効します。

パスポート

亡くなった方のパスポートと死亡の事実が確認できる書類を用意して、最寄りのパスポートセンターに返却します。

クレジットカード

各カード会社によって解約方法は異なりますので、電話やインターネットで確認します。
カードを解約しても故人が使用したカードの未払金は、相続人が支払う義務を負います。

手続きのまとめ

内容手続き先
電気・ガス・水道各社
携帯電話・インターネット各社
WEBサービス各サービス会社
NTTの固定電話NTT
NHKNHK
株式上場株:証券会社
非上場株:発行会社
ゴルフ会員権ゴルフ場
運転免許証警察署
パスポート届出
クレジットカード各社

5.亡くなった方の預貯金の凍結解除

人が亡くなって、亡くなった方の家族が金融機関に知らせたり、新聞の訃報欄に掲載されたりすると、金融機関はその名義人の預貯金口座を凍結します
預貯金口座が凍結されると、口座からお金の引き出しができず、公共料金などの自動引落も止まります。
これは、一部の相続人が勝手にお金を引き出して他の相続人の権利を害することを防ぐためです。

通常は遺産分割協議が完了してから口座の凍結を解除してもらいますが、遺産分割協議が完全に完了していなくても相続人全員の同意があり、誰が相続するか、誰がいったん受け取れるか決まっていれば、凍結を解除することができます。

預貯金の凍結を解除するには、金融機関への書類の提出が必要になります。
具体的な書類は、
・亡くなった人の預金通帳
・亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本
・相続人全員の戸籍謄本
・遺産分割協議書
・相続人全員の印鑑証明書
となります。
金融機関は、相続人の特定と、口座を引き継ぐのが、誰であるかを把握したいという事です。

この手続きは時間がかかりますので、金融機関によっては、葬儀費用等の緊急で必要なお金であれば引出しに応じてもらえることもあります。ただ、金額にも限度があり、必ず引出しに応じてもらえるとも限りません。葬儀費用などすぐに必要なお金は、可能な限り、家族や親戚の間で分け合って備えておくようにしましょう

6.住宅ローンの手続

亡くなった方が、まだ現役で働いていたり、退職したばかりの場合は、住宅ローンが残っていることも多いでしょう。
被相続人の住宅ローンについては、住宅ローン契約時に、「団体信用生命保険」に加入しているかどうかが非常に重要なポイントとなります。

団体信用生命保険に加入していれば、被相続人が亡くなると、その保険から残った住宅ローンが全額返済されて住宅ローンは終了します。残された家族は、住宅ローンを引き続き支払う必要はなく、そのまま住み続けることができます。

住宅ローンの借り入れをした銀行に連絡をすると、住宅ローンの担保として建物と土地に設定されていた抵当権抹消のための書類が渡されます。
抵当権の抹消手続きは、自分で行うか、または、司法書士に依頼します。

もし、団体信用生命保険に加入していなければ、住宅ローンはそのまま残り、相続した人が返済する義務を負うことになります。住宅ローンの残額が高額な場合は、将来長い間にわたって返済の義務を負いますので注意が必要です。返済できる余力がないときは、相続放棄の検討が必要です

その他

その他、相続に関してよくわからないことがありましたら、各相談窓口に相談されると良いでしょう。

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監修
税理士相談Cafe編集部
税理士ライター、起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)、行政書士資格者を中心メンバーとして、今までに、相続税や相続周りに関する記事を500近く作成(2023年4月時点)。
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