1.愛知県の相続税申告の状況
名古屋市を擁する愛知県は、日本の三大都市の1つです。相続税の課税件数や納付税額、エリア数など、どれを見ても、東京、大阪に並ぶ高い数値となっています。
愛知県の令和元年における相続税の申告件数は12,328件、そのうち相続税が発生した課税件数は9,745件、課税割合は13.93%となっており、課税割合は東京に次いで全国2位の高さです。
相続1件あたりの納付税額も高く、1,707万円で全国5位という結果になっています。
全国における平均は課税割合8.35%であり、愛知県の数値の高さが分かります。納付税額の全国平均は1,714万円となっており、愛知県は平均並みということになりますが、これは東京の3,029万円という圧倒的高さが平均値を押し上げている結果です。2位の大阪が1,881万円であることから、愛知県も十分に高額であることが分かります。
もちろん、中部地方9県の中でも圧倒的トップに君臨しており、相続税の課税について備えておくべき地域であるといえます。
下記の表は、愛知県の税務署の管轄エリアごとの相続税申告状況です。
愛知県の特徴は、名古屋市だけではなく県全域にわたって満遍なく相続税が課税されている割合が高いことです。
東京や大阪では、課税割合が高い地域は中心部と沿岸部に集中し、そこから離れると一気に下がるのですが、愛知県では、岡崎・豊橋・豊田・半田・春日井・一宮・碧南など幅広い地域で課税割合が高くなっています。
20エリア中、19位のエリアまで10%近い割合となっており、全国平均を下回るエリアは、わずか1エリアのみとなっています。
また、総務省統計局が公表している「都道府県別貯蓄現在高」によると、愛知県の平均貯蓄高は約1,900万円(※)で全国5位となっており、全国平均よりも約350万円上回っています。愛知県民は貯蓄に熱心な傾向があり、居住しているエリアがどこであっても、相続時には多くの人が課税される状況へとつながっているとも考えられます。
それでは次項にてエリアごとの特徴を詳しく解説していきます。
※「3 貯蓄・負債」|総務省統計局
税務署名 | 管轄地域 | 申告 件数 | 課税 件数 | 1件当り 納付税額 (万円) | 申告割合 | 課税割合 |
---|---|---|---|---|---|---|
千種 | 千種区 名東区 | 721 | 548 | 3,755 | 25.29% | 19.22% |
名古屋東 | 東区 | 170 | 136 | 2,012 | 22.97% | 18.38% |
名古屋北 | 北区 守山区 | 507 | 397 | 1,677 | 14.36% | 11.24% |
名古屋西 | 西区 清須市 北名古屋市 豊山町 | 582 | 458 | 1,549 | 19.21% | 15.12% |
名古屋中村 | 中村区 | 295 | 239 | 1,756 | 17.94% | 14.54% |
名古屋中 | 中区 | 185 | 142 | 3,750 | 26.62% | 20.43% |
昭和 | 昭和区 瑞穂区 天白区 日進市 長久手市 東郷町 | 1,203 | 951 | 3,343 | 25.23% | 19.94% |
熱田 | 熱田区 南区 緑区 豊明市 | 829 | 652 | 1,502 | 16.59% | 13.05% |
中川 | 中川区 港区 | 489 | 391 | 1,892 | 12.40% | 9.91% |
豊橋 | 豊橋市 豊川市 蒲郡市 田原市 | 1,113 | 857 | 1,112 | 15.75% | 12.13% |
岡崎 | 岡崎市 幸田町 | 649 | 509 | 2,000 | 18.77% | 14.72% |
一宮 | 一宮市 稲沢市 | 776 | 622 | 1,035 | 14.97% | 12.00% |
尾張瀬戸 | 瀬戸市 尾張旭市 | 284 | 236 | 2,228 | 13.76% | 11.43% |
半田 | 半田市 常滑市 東海市 大府市 知多市 阿久比町 東浦町 南知多町 美浜町 武豊町 | 827 | 666 | 1,122 | 14.69% | 11.83% |
津島 | 津島市 愛西市 弥富市 あま市 大治町 蟹江町 飛島村 | 509 | 403 | 991 | 15.24% | 12.07% |
刈谷 | 碧南市 刈谷市 安城市 知立市 高浜市 | 892 | 706 | 1,205 | 21.79% | 17.24% |
豊田 | 豊田市 みよし市 | 726 | 578 | 1,293 | 20.41% | 16.25% |
西尾 | 西尾市 | 339 | 262 | 928 | 20.18% | 15.60% |
小牧 | 春日井市 犬山市 江南市 小牧市 岩倉市 大口町 扶桑町 | 1,147 | 929 | 1,005 | 16.95% | 13.73% |
新城 | 新城市 設楽町 東栄町 豊根村 | 85 | 63 | 300 | 9.55% | 7.08% |
愛知県計 | 12,328 | 9,745 | 1,707 | 17.63% | 13.93% |
愛知県
【出典サイト】「地籍調査状況マップ-愛知県」|国土交通省地籍調査Webサイト
名古屋市
【出典サイト】「区のプロフィール」|名古屋市HP
2.各エリアの特徴と詳細
それでは、各税務署の管轄エリアごとに、主要市町村の特徴や地価の状況を課税割合の高い順に解説していきます。
2-1. 名古屋中エリア
このエリアは名古屋の中区のみからなります。
中区はその名称通り、名古屋市の中央部に位置しており、栄や久屋、大須といった市内有数の商業地域です。さらに、名古屋証券取引所などの金融機関、大手企業の支店や本店など、ビジネスの中心でもあります。
課税割合は20.43%で県内1位、納付税額は3,750万円で県内2位の高い数値となっており、県内で最も相続税が課税されやすいエリアになります。
課税割合が高いうえに、特に納付税額は、東京23区の上位に匹敵する金額で非常に高額です。
また、中区の地価は1㎡あたり161万円で、県内1位の名古屋市の中で中村区に次ぐ2位の高さとなっており、不動産への課税が高額になりやすいでしょう。
ただ、中区の中心部は商業施設が多いため、相続税が課税されやすい地域は限られていると考えられます。
2-2. 昭和エリア
昭和エリアは、昭和区、瑞穂区、天白区、日進市、長久手市、東郷町の3区2市1町からなり、県の中央西部に位置しています。
昭和区、瑞穂区、天白区は、名古屋市の中心部に位置していることから、多くの大学キャンパスが建設されており、文教都市として市外から訪れる人も多いエリアです。
市の大半は住宅地として活用されていますが、都会でありながら緑の多い住宅街は人気を集めています。特に、昭和区南山町、瑞穂区柏木町、茨木町、天白区高峯町などには、高級住宅地が広がっており、1戸あたりの面積が広い傾向があるため、不動産への課税には注意しなければなりません。
課税割合は19.94%で県内2位、納付税額は3,343万円で3位となっており高い数値です。
地価は、昭和区が名古屋市内16区中6位、瑞穂区が8位、天白区が10位、長久手市が県内3位、日進市4位、東郷町17位となっており、東郷町を除いては総じて地価が高く、また名古屋市中区とは異なり住宅が多いことから、このような結果になっていると考えられます。
2-3. 千種エリア
千種区と名東区からなる千種リエアは、名古屋市の北東部に位置しています。
千種区は市内有数の繁華街である今池を擁し、オフィスや飲食店が並ぶ都会らしい雰囲気がありますが、中央部は閑静な文教地区として多くの人が居住しています。
名東区は近年再開発が進んでおり、名古屋市の中でもトップレベルの人口を擁する新興住宅地です。
このエリアは、大半が住宅街として活用されており、特に名東区は若者層を中心に毎年1万人を超える人が移住しており、今後も人口増加が期待できる区です。
課税割合は19.22%、納付税額は3,755万円となっており、納付税額は課税割合1位の名古屋中エリアを超えて県内1位です。
理由としては、地価が高額なことが挙げられます。
千種区の地価は市内4位、名東区は9位となっており、1㎡あたり20万を超える高額なエリアです。それにもかかわらず、大半が住宅地がとなっていることが、不動産への課税を多くし、課税額にも影響していると考えられます。
2-4. 名古屋東エリア
このエリアは名古屋市東区のみからなります。東区は中区の北部に隣接しており、全域が中区のベッドタウンとして活用されています。
南西部では商業地、北部には工業地帯が形成されており、経済活動と住宅地が両立している区となっています。
課税割合は18.38%、納付税額は2,012万円で、これまで解説した3エリアと比較すると、納付税額は1段階落ちた印象ですが、それでもまだまだ高額です。
東区の地価は1㎡あたり47万円と高額で、中区に次ぐ3位となっています。
中区で得られる高額な所得と、高額な地価が相乗し、高い課税割合に繋がっていると考えられ、相続税対策が必須のエリアといえます。
2-5.刈谷エリア
ここで一旦、名古屋市内から離れます。刈谷エリアは、碧南市、刈谷市、安城市、知立市、高浜市からなり、県の中央寄りの南西部に位置しています。名古屋市から比較的近い距離にあるため、通勤する人も多いエリアになります。
このエリアの中心となる刈谷市は、トヨタ自動車の創業地であることから全国有数の工業地域として発展しており、地価も県内2位と高額です。
課税割合は17.24%、納付税額は1,205万円となっており、納付税額の低さに目が行きますが、これは碧南市と高浜市の地価の低さが影響していると考えられます。
よって、刈谷市、安城市、知立市をメインとするエリアについては、相続税対策が必要と考えられます。
2-6.豊田エリア
豊田エリアは、県内最大の面積を誇る豊田市と、みよし市からなる大きなエリアです。
豊田市は言わずとも知れた、世界のヨタ自動車が本社を置いている市です。市内には多くの関連企業、工場が建設されており、みよし市にもその傾向が現れています。
課税割合は16.25%、納付税額は1,293万円です。
豊田市の大きさを見てもらうと分かりますが、山間部の面積が広いため地価はそれほど高くはなく、県内23位で1㎡あたり9万円となっています。みよし市の方が若干高く、1㎡あたり10万円で12位です。
このエリアは不動産課税が行われにくいですが、豊田市とみよし市はトヨタの影響が大きく、所得が高額であるため、不動産以外の財産への課税が行われやすくなっています。生前贈与などを含めた対策を講じる必要があります。
2-7.西尾エリア
西尾市のみからなるこのエリアは、県北部の三河湾沿いに位置しています。
西尾といえば抹茶というほどの全国有数の抹茶の名産地であり、世界の抹茶ブームも相まって、三河の小京都とも呼ばれる西尾には多くの観光客も訪れています。
また、沿岸部に点在する漁港には、三河湾の魚介類が水揚げされ、海苔や鰻の養殖も盛んです。
課税割合は15.60%で県内7位ですが、納付税額は928万円で19位、下から2番目の低さとなっています。
地価が1㎡あたり6万円で県内37位と低いことが影響していますが、課税割合は決して低いわけではない点に注意しましょう。高額な相続税はかかる可能性が低いですが、相続税の発生頻度は高く、適切な対策が求められるエリアであることは変わりません。
2-8.名古屋西エリア
名古屋市西区、清須市、北名古屋市、豊山町からなる名古屋西エリアは、県の北東部に位置する小さなエリアです。
西区は古くからの文化が根付いており、名古屋友禅や名古屋扇子などの伝統工芸品が有名です。また、名古屋駅がある中村区と隣接しており、地下鉄鶴舞線と名鉄犬山線が通る利便性の良さから新興住宅地としても発展しています。
課税割合は15.12%、納付税額は1,549万円で、政令区が入っている割には高くありません。
地価は、西区が市内7位と高額ですが、他は県内8~18位と中盤程度の金額であり、相続税発生の中心は西区で間違いないでしょう。
2-9.岡崎エリア
岡崎市と幸田町からなる岡崎エリアは、県の中央に位置し、豊田市の南部に隣接しています。
岡崎市は徳川家康の生誕地として有名で、岡崎城は市のシンボルです。また、八丁味噌の産地としても有名で、市内にはいくつもの味噌蔵があります。
鉄道が13駅、東名高速道路の岡崎IC、国道の幹線道路が2本通っており、優れた交通網を構築しており、さらに広い市域と豊田市と隣接している影響から自動車関連の工場が多く、主要産業は工業となっています。
課税割合は14.72%、納付税額は2,000万円となっており、課税割合の順位の割には納付税額が高く、名古屋東エリアと同水準となっています。
地価は県内13位、幸田町は24位でそれほど高額というわけではありませんが、特に岡崎市は所得が高い水準にあるため、相続税が発生しやすくなっています。また、事業を行っている人も多いため、事業承継などの特殊な相続にも対応できるように準備しておくことも必要です。
2-10.名古屋中村エリア
このエリアは、県の中枢都市である中村区のみからなります。中村区は名古屋市の西部に位置しています。
愛知県の玄関口になる名古屋駅があり、周囲にはオフィスビルや商業施設が林立し、現在でも大規模な再開発が進んでいます。
よって、中村区の地価は非常に高く、1㎡あたり272万円と圧倒的な金額で県内1位です。
ただ、課税割合は14.54%で10位、納付税額は1,756万円で8位、いずれも県平均を超える最後のエリアとなっており、地価を考えると思った以上に低いという印象です。
理由としては、中村区は商業やビジネスが中心となっており、居住人口が少ないこと、また名古屋駅から西側の住宅地はあまり発展しておらず、地価は比較的低いことから、相続が起きるのは限られた地域、世帯となっているため、課税割合が意外にも低くなっていると考えられます。
しかし、2027年にはリニアモーターカーの開業が予定されており、名古屋駅の地下に駅が建設予定です。東京名古屋間が40分で移動可能になり、あらゆる面から名古屋に対するニーズも高まるでしょう。相続税への影響もあるかもしれません。
2-11.小牧エリア
春日井市、犬山市、江南市、小牧市、岩倉市、大口町、扶桑町からなる小牧エリアは、県の北東部に位置し、名古屋市と岐阜県に挟まれています。
名古屋市と近いことから、名古屋市のベッドタウンとして発展しているエリアです。
また、このエリアの中心となる春日井市には、大手企業の本社も多数建設されており、ベッドタウンと工業地、二面の役割を果たしています。
課税割合は13.73%で10位となっており、ここから愛知県の平均を下回ります。納付税額は1,005万円です。
地価は岩倉市10位、春日井市11位が高く、その他は21~43位と低くなっていることから、相続税発生の中心は、岩倉市と春日井市であると考えられます。
2-12.熱田エリア
熱田区、南区、緑区、豊明市からなる熱田エリアは、熱田神宮や笠寺、有松といった歴史あるエリアで、南区の工業地帯や熱田区の商業地、緑区の自然と共存した住宅街など、それぞれの区ごとに違った個性があるエリアです。
課税割合は13.05%、納付税額は1,502万円となっています。
熱田区は市街地が近いことから地価が高く、1㎡あたり26万円、市内6位となっていますが、南区と緑区は1㎡あたり14万円台と市内下位に位置しているため、課税割合が低くなりやすいと考えられます。
2-13.豊橋エリア
豊橋市、豊川市、蒲郡市、田原市からなる豊橋エリアは、渥美半島に位置しています。
恋路ヶ浜で有名な伊良湖岬、三河湾国定公園、渥美半島県立自然公園など、海と山に囲まれた美しい自然溢れるエリアです。
中心となるのは中核市としての指定も受けている豊橋市で、静岡気県の都市である浜松市、湖西市とも隣接していることから交通アクセスに優れています。
地価は、豊橋市15位、豊川市33位、蒲郡市38位、田原市48位となっており、豊橋市以外は非常に低い金額であることから、課税割合12.13%、納付税額1,112万円という低さにも影響しています。
このエリアは、豊橋市を中心に相続税対策をすると良いでしょう。
2-14.津島エリア
津島エリアは、津島市、愛西市、弥富市、あま市、大治町、蟹江町、飛島村の4市2町1村からなり、県の西部に位置しています。
名古屋市のベッドタウンとして人気を集めたエリアであり、現在でも人口は年々増加傾向にあります。
東名阪自動車道や名古屋第二環状鉄道が整備されていることから、物流拠点として大手企業の本社が置かれています。
課税割合12.07%、納付税額991万円と愛知県内にしては低い数値となっています。
理由としては、地価が低いことが挙げられます。エリア内で最も地価の高いあま市でも35位、最も低い飛鳥村は47位で1㎡あたり4万円となっています。
よって、不動産課税の可能性は低いエリアになりますが、それでも課税割合の全国平均は大きく上回っていることから、所得が高いことが考えられます。
預貯金や有価証券などの金融財産は、一般の人でも簡単に集計することかが可能です。ベッドタウンとしてこのエリアに居住している人は、一度ご自分の財産を集計してみるとよいでしょう。
2-15.一宮エリア
一宮市と稲沢市の2市からなる一宮エリアは、県の北西部に位置しています。
どちらも名古屋市に近く、電車で10分程度というアクセスの良さから、名古屋市のベッドタウンとして人気を集めており、特に一宮市は人口が38万人を超える県内有数規模の市であり、一宮駅の周辺は商業地やオフィス街として発展しています。
課税割合12.00%、納付税額1,035万円で、この順位にしては妥当な数値となっています。
地価は、一宮市20位、稲沢市29位と低いことと、市内で得られる所得が高くないことから、このような結果に繋がったと考えられます。
しかし、課税割合12%というのは決して油断できる数値ではなく、住宅地が多いことからもどの地域であっても課税される可能性があります。貯蓄や不動産の状況を確認し、相続税が課税される可能性をしっかりとチェックしておきましょう。
2-16.半田エリア
半田エリアは、半田市、常滑市、東海市、大府市、知多市、阿久比町、東浦町、南知多町、美浜町、武豊町からなり、県内で最も多い数の市町が属しているエリアになります。
全域が主に住宅地として活用されていますが、常滑市に中部国際空港できたことから、商業施設なども盛んに建設されています。
また、常滑市は焼き物、大府市は健康や医療、知多半島は自然を生かした観光など、市ごとに異なる特徴があるのもこのエリアの魅力です。
田舎エリアではあるため地価は低く、大府市の7位は突出していますが、他は下位を占めています。
しかし、課税割合11.83%、納付税額1,122万円となっており、地価の割には高い印象となっています。エリア域が広いことによって、それぞれの市町の数値が薄れてしまっている面もあるため、相続税については油断禁物なエリアです。
2-17.尾張瀬戸エリア
その名称通り、尾張旭市と瀬戸市からなるエリアで、県の北部に位置しています。
尾張旭市は瀬戸市と名古屋市の中間に位置しているため、2つの市を結ぶ中継地として機能しています。
瀬戸市は焼き物の街として知られており、県内だけでなく県外からも人気の製品が生産されています。
課税割合11.43%、納付税額2,228万円で、納付税額は県内4位の高さとなっています。
このエリアは近年ベッドタウンとして注目されており、マンションなどの建設が相次いでいるエリアです。尾張市の地価は14位と上昇傾向にあり、人口の増加に伴って今後も上昇する可能性があります。地価の動向に注意を払っておきましょう。
2-18.名古屋北エリア
名古屋市の北区と守山区からなるエリアです。行政区は県の中心的存在であり、もっと上位にありそうなものですが、この順位になって行政区が出てくる点から、愛知県は名古屋市内にかかわらず、その全域が発展していることが分かります。
北区と守山区は名古屋市の北部に位置しており、中村区や中区などの中心部に近いことから、どちらも区の大半が住宅地として活用されています。特に北区の人口は市内3位を誇っています。
守山区は自然が残る環境の良い住宅地であるにもかかわらず、再開発により大型商業施設の建設が続いていることから、人口が年々増加している区です。
課税割合11.24%、納付税額1,677万円となっており、課税割合は下から3番目の低さです。
地価は北区が市内11位、守山区が15位で、名古屋市内でありながら低くなっています。
県内では高い金額ではありますが、他市のベッドタウン程、高所得者がいないことからこの順位となっていると考えられます。
2-19.中川エリア
続いてまた名古屋市内になり、中川区と港区からなる中川エリアです。
名古屋市の南西部に位置する大きな2区で、中川区は中川運河を活用したかつての物流拠点であり、港区では他国との貿易を担う重要な現在の物流拠点となっています。
課税割合9.91%で19位、下から2番目です。先の名古屋北エリアまでの課税割合は僅差で続いていましたが、中川エリアは前順位から1%以上の下落です。しかし納付税額は1,892万円と高く、県内7位となっているため、相続税の発生率は低くても、発生するとなると高額な可能性が高くなります。
地価は2区とも低く、特に港区は埋立地であることから通常の土地に比べて地価が低くなりやすく、1㎡あたり10万円と県内10位以下の金額となっています。さらに港区は、工場や貿易設備、商業地など用途が限られているため、課税額が上がりにくくなっているといえることから、中川区が相続税課税の中心エリアであると考えられます。
2-20.新城エリア
愛知県の課税割合が最下位の最後のエリアは、新城市、設楽町、東栄町、豊根村からなる新城エリアです。
県の東部に位置していることから、静岡や長野県とも関わりが深いエリアです。主な産業は農業ですが、豊田市などとも隣接していることから、新城市内では工業団地が形成されているほど工業も発展しています。
課税割合は7.08%、納付税額は300万円といずれも県内最下位で、さらに前順位の中川エリアと比較しても突出して低い数値であることが分かります。特に納付税額は全国的に見ても非常に低く、高額な相続税が発生する可能性はかなり低いといえます。
このエリアは自然が多い、いわゆる過疎地域であることから地価が低く、1㎡あたり3万円以下と県内49~54位となっています。
特に、設楽町や豊根村などは人口減少によって大きく地価が下がっており、それが相続税にも影響することによって、県内で最も低い結果となっています。
しかし他県と比較してみると、課税割合が最下位のエリアでは5%台や、3%台もあります。愛知県は最下位の過疎地であってもこの割合であるため、やはり相続税課税は県内全域で課税される可能性があるということになります。
3.愛知県の税理士情報
愛知県の税理士は東海税理士会(愛知県、三重県、静岡県)と、名古屋税理士会に所属しています。名古屋税理士会がカバーする範囲は名古屋市だけではなく、名古屋市とその周辺の10市と3郡、そして岐阜県が含まれます(※)。
この2つの税理士会に所属している税理士数は、東海税理士会4,405人と名古屋税理士会4,730人の計9,135人(令和3年9月末日現在)にのぼり、このうち愛知県の税理士数は5,317人(日本税理士会連合会 平成30年5月発行税理士界)になります。4県の税理士の6割近くが、愛知県にいるということになります。
【参考外部サイト】「名古屋税理士会について」|名古屋税理士会HP
3-1.相続税申告について愛知県の税理士数は不足してはいない
愛知県の令和元年における相続税の申告は12,328件であったことから、1件当たりの税理士数は0.43人となっており、税理士1人当たり年間2.3件の相続税申告をこなしている計算になります。この数値を全国と比較してみると決して低くはなく、充足しているとは言えませんが、不足している状況でもありません。
愛知県の税理士5,317人の分布状況を見ると、その6割を超える約3,500人は名古屋市にいます。
愛知県の相続税申告の特徴は、全域で課税割合に差がないことでした。
全域で相続税が発生する可能性が高いにもかかわらず、名古屋市にここまで税理士が集結している状況は、税理士探しをする際には不安になりますが、愛知県は名古屋市を中心として鉄道路線が整備されている他、トヨタ自動車があることから自動車普及率が高く、幹線道路などもしっかり整備されています。
そんな理由から、市内だけでなく周辺の市部にも対応している税理士が多く存在します。
3-2.税理士選びのポイントは「土地の評価」
愛知県内で税理士を決めるポイントは、土地評価に強いかどうかという点です。
愛知県は比較的住宅地が多いですが、商業地や工業地、農地などさまざまな方法で活用されており、それらが住宅地に隣接しているエリアも多くなっています。
土地の活用状況は多岐にわたる県であることから、正しく土地の状況を見極めて評価ができる税理士へ依頼しましょう。
また、愛知県では名古屋市を筆頭に再開発が相次いで行われています。中には、再開発により人口が急増した地域もあり、地価の上昇率にも差が現れています。地元の土地開発などの情報を、いち早くキャッチしているとかどうかといった点も重要です。
一方で愛知県は東京や大阪と比較すると面積が広い県であり、特に名古屋市は県の西部に位置しているため、渥美半島方面など中央から東側のエリアは対応できない可能性が高くなります。
名古屋市の税理士であっても、地元の税理士であっても、このようなエリアの場合には税理士の取り合いになります。できるだけ早いうちから探し出して、相談しておきましょう。
当サイトでは、それぞれの条件に合わせて簡単に税理士を検索できるようになっています。
土地評価に強い税理士が揃っていることはもちろんのこと、わざわざ名古屋市まで足を伸ばさずとも、相続税に強い税理士をピックアップすることができるので、愛知県のように税理士の選択肢が多い場合には有効です。是非ご活用ください。