北海道について
北海道と言えば、日本の最北端にして最も広い面積を誇る都道府県として、全国的にも知られています。その広さは78,421.26㎢と他の都道府県に比べて圧倒的に広く、東京都の2,190.93㎢と比較すると、如何に北海道が広大かが理解できます。
また、北海道と言えば日本有数の観光地としても知られています。中でも有名なのが、札幌市の中央に位置する「大通公園」です。冬に開催される「さっぽろ雪祭り」のメイン会場として、たびたびメディアにも取り上げられているため、その名を知らない人はいないでしょう。その他にも、石造りやレンガ造りのモダンな風景が運河沿いに広がる「小樽運河」、日本三大夜景にも選出された「函館山」、生き物のありのままの自然な姿を見せる行動展示で一躍有名になった「旭山動物園」などなど、上げ始めればきりがないくらい有名な観光スポットが数多く点在しています。
また、北海道は広大な面積を活かした農業も盛んに行なわれています。北海道が全国一の生産量を誇る農畜産物としては、小麦、大豆、小豆、インゲン、じゃがいも、そば、たまねぎ、カボチャ、にんじん、スイートコーン、アスパラガス、生乳、牛肉などがあります。農林水産省の調べによれば、北海道の食料国産寄与率は21.7%とのことで、全国の食料のうちおよそ2割は北海道が供給していることになります。
そんな特徴的な北海道ですが、相続税の状況はどうなっているのでしょうか。
北海道・札幌の相続税発生件数は、北日本で最も多い
北海道の相続税発生件数は、平成26年度都道府県相続税課税状況によると1,207件です。1件当たりの納税額は約2,065万円であり全国第14位とやや高めです。相続発生件数も納税額も、仙台のある宮城県を抜いて北日本では最も多い数字です。
ただし、課税割合(死亡者のうち相続税を課税された人の割合)は2.01%と36位で、全国的には低いほうです。
北海道の相続税発生件数の多くは、札幌と函館に集中
北海道は面積こそ広いのですが、地域別の相続税発生件数を見てみると、総件数1,207件のうち、札幌市で発生しているものについては609件、函館市で88件となんと全体の6割近くを占めています。特に、中区、西区での1件当たり相続税額は4,000万円を超えており、東京都の平均的な相続税額に匹敵します。これらの地域は北海道の中でも比較的税理士事務所が豊富にある地域のため、これらの地域の相続税申告については、迷わず地元の相続税理士に依頼すると良いでしょう。
相続税の課税割合
北海道および札幌の各税務署エリア毎、平成26年度の相続税の課税割合です。
税務署名 | 管轄地域 | 申告件数 | 1件当たりの 納付税額 (千円) | 課税割合 |
---|---|---|---|---|
札幌中 | 中央区(※) | 23 | 47,619 | 2.50% |
札幌北 | 北区 東区 石狩市 石狩郡(当別町・新篠津村) | 140 | 23,343 | 2.59% |
札幌南 | 豊平区 南区 清田区 千歳市 恵庭市 北広島市 | 164 | 15,178 | 2.72% |
札幌西 | 中央区(※) 西区 手稲区 | 183 | 42,509 | 4.46% |
札幌東 | 白石区 厚別区 江別市 | 99 | 14,224 | 2.55% |
函館 | 函館市 北斗市 松前郡(松前町・福島町) 上磯郡(知内町・木古内町) 亀田郡(七飯町) 茅部郡(鹿部町) | 88 | 15,417 | 1.75% |
小樽 | 小樽市 | 19 | 17,627 | 0.99% |
旭川中 | 旭川市(※) 上川郡(鷹栖町) | 35 | 13,177 | 1.73% |
旭川東 | 旭川市(※) 上川郡(東神楽町・当麻町・比布町 愛別町・上川町・東川町・美瑛町) | 51 | 11,510 | 1.98% |
室蘭 | 室蘭市 登別市 伊達市 虻田郡(豊浦町・洞爺湖町) 有珠郡(壮瞥町) | 39 | 54,283 | 1.53% |
釧路 | 釧路市 釧路郡(釧路町) 厚岸郡(厚岸町・浜中町) 川上郡(標茶町・弟子屈町) 阿寒郡(鶴居村) 白糠郡(白糠町) | 26 | 16,871 | 0.92% |
帯広 | 帯広市 河東郡(音更町・士幌町・上士幌町・鹿追町) 上川郡(新得町・清水町) 河西郡(芽室町・中札内村・更別村) 広尾郡(大樹町・広尾町) 中川郡(幕別町) | 90 | 13,118 | 2.82% |
(他の地域は省略) | ||||
北海道計 | 1207 | 20,648 | 2.03% |
※中央区の死亡者数については札幌中税務署と札幌北税務署で半分に分割
※旭川市の死亡者数については旭川中税務署と旭川東税務署で半分に分割
※北海道の死亡者数は平成25年度データ
札幌市の相続税事情
札幌市には10個の区があり、5つの税務署管轄に分かれています。一部の税務署では、他の市区町村も含んでいますので、完全に札幌市内だけのデータではありませんが、人口比では圧倒的に札幌市内が多いため、だいたい近い値が出ていると考えられます。
まず、相続税の課税割合がトップなのは、札幌西税務署エリアの中央区(西部)、西区、手稲区です。1件当たりの相続税額でも約4,250万円と北海道平均の2倍を超えています。
中央区のうち札幌駅やすすきのは札幌中税務署の管轄ですが、札幌西税務署管轄エリアには、円山、宮の森、界川、旭ケ丘などに高級住宅街が広がります。札幌中心部にも近く、バックには緑の丘が広がり良い住環境です。また、地下鉄東西線の円山公園駅周辺は商店街としても栄えています。
西区、手稲区は函館本線の沿線であり、札幌市中心部へのアクセスが良いエリアです。
札幌中税務署の管轄は中央区(東部)であり、札幌駅や札幌一の繁華街すすきのを含んでいます。北海道で最も路線価が高い土地は、中央区北5条西3丁目札幌停車場線通りで312万円であり、全国7位、上昇率11.8%と急上昇しています。課税割合は2.50%と平均的な値ですが、相続税額が約4,760万円とかなり高くなっており、一部の富裕層で相続税が発生している傾向があります。
札幌北税務署エリアの北区・東区・石狩市、札幌南税務署エリアの豊平区・南区・清田区・千歳市・恵庭市・北広島市、札幌東税務署エリアの白石区・厚別区・江別市の3つのエリアはだいたい課税割合2%台後半で並んでいます。千歳線、函館本線、学園都市線などの駅周辺は地価がやや高めですが、それ以外での地域ではほとんど相続税の発生はないと考えて良いでしょう。
函館市の相続税事情
函館市税務署は函館市・北斗市およびいくつかの町村を含みますが、課税割合は1.75%と北海道平均以下です。
函館市は函館本線終点の函館駅、函館市電の五稜郭公園前、松風町、十字街あたりが栄えている商業地区であり、その周囲に住宅地が広がっています。函館市の中心部エリアはそれほど広くありませんので、中心部を除けば、ほとんど相続税の心配はないでしょう。
旭川市の相続税事情
旭川市は旭川中税務署と旭川東税務署の2つの管轄に分かれていますが、どちらも1%台後半の割合でそれほど多くはありません。旭川駅周辺のみ地価が高い場所がありますが、それ以外は気にするほどではありません。
小樽市・室蘭市・釧路市・帯広市
室蘭税務署エリアの室蘭市・登別市・伊達市は課税割合は1.53%と低いですが、1人当たりの相続税額が約5,430万円と突出して高いです。一部の富裕層で多額の相続税が発生していると考えられます。
帯広市税務署エリアの帯広市およびいくつかの町村は課税割合2.82%と北海道の中では高いほうです。
小樽市・釧路市はいずれも課税割合が1%以下です。
その他の市町村
北海道のその他の市町村では全国的にみて地価が非常に低く、相続税発生率は低いです。ただし、農業、林業に従事していて特に広い広大地を所有している場合は課税の可能性があります。
また、一部の自治体において平均所得が非常に高いところがあります。平成27年の全国市町村別課税所得データによると、猿払村がなんと全国3位で784万円です。1位、2位は港区、千代田区と東京の超富裕層の集まる地域ですから、猿払村の平均所得がいかに高いかがわかります。村民の10人に1人が漁業に従事しておりホタテ漁が好調なことが理由です。資産が多く相続が発生した場合には、相続税がかかる可能性があります。
安平町は全国17位で445万円ですが、競馬界を席巻する社台グループの影響が非常に大きいため、通常の方は課税の心配はあまりないでしょう。
北海道は「広大地」が相続税の決め手か
東京都の人口密度が6,168.04人/㎢であるのに対し、北海道の人口密度は68.65人/㎢と、なんと90倍もの密度の違いがあります。ここまでの差が出ると、いくら北海道の方が土地の坪単価が安くなるといっても、一人当たりの所有している土地の広さが段違いに広くなる可能性が高いため、これによって相続税発生のトリガーとなっている可能性が考えられます。
特にポイントとなっているのが「広大地」です。
広大地とは、その地域の標準的な宅地の面積に比べて著しく広い土地のことを言い、北海道の場合1,000㎡を超えるような土地のことをいいます。こう言った広い土地を所有していると、たとえ路線価自体が東京ほど高くなくても、相続税が課税される可能性が高まってきます。
広大地評価は、都心部に事務所を構えている相続税理士の場合、その経験自体がないことも多いのですが、北海道の場合は逆に広大地ができなければ相続税理士として立ち行かないと言っても過言ではないため、広大地が原因で相続税が発生する方については、必ず北海道の相続税理士に相談することをおすすめします。
北海道は今後相続税の発生件数が増える可能性あり
実は北海道は全国的に見ても高齢化が深刻な地域でもあります。今後高齢者が増えるということは、必然的に相続発生件数も増えてくることが予想されるため、相続税発生の件数についても比例して増加する可能性があります。
また、平成28年の路線価は前年比0.8%で、全国でも7位という高い伸び率です。特に札幌で路線価が上昇していますでの、札幌での相続税申告が増えるでしょう。
税理士事務所の状況
北海道には税理士事務所が907個あり、被相続人1.33人当たり1つの事務所がある計算になります。相続税件数との比では税理士事務所が多いほうであり全国5位です。北海道は面積が広いために、札幌・函館など都市部だけでなく各地域にも税理士が散らばっているといえます。