1．香川県の相続税申告についての概要

「香川県」は四国の北東部に位置する、日本一面積が小さい県です。

香川県といえばうどんが思い浮かぶ人が多いでしょう。

讃岐うどんの他にもおいしいグルメがたくさんあり、お庭の国宝である栗林公園、金刀比羅宮などの文化財、オリーブの島として知られている小豆島など、香川県には小さい県土の中に多くの魅力が詰まっています。

田舎のイメージがある香川県ですが、相続税の課税割合は全国的に高く、相続税の発生しやすい県となっています。

原因となるのは地価の高さよりも、県民の貯蓄志向です。総務省統計局が公表する「都道府県別貯蓄現在高」において、香川県は全国6位の結果となっています（※）。上位には東京都や愛知県などの高所得者層が多い首都圏が並ぶ中、香川県が食い込んでいる点から堅実な県民性をうかがい知ることができます。

※【出典】「3 貯蓄・負債 (1) 貯蓄 ア 都道府県別貯蓄現在高」｜総務省統計局

1-1．香川県の相続税申告の状況

香川県の令和元年における相続税の申告件数は1,186件、そのうち相続税が発生した課税件数は999件、課税割合は8.39%となっています。

課税割合の全国平均8.35％で香川県は平均並みということになりますが、これは突出した東京都が底上げしている数値であるためであり、全国順位から見ると香川県は13位の高さです。四国地方の中で最高値であることはもちろんのこと、全国12位は大阪府の8.40%であることから、全国的に見ても非常に高い課税割合であることがわかります。

一方で、相続1件当りの納付税額は1,102万円で全国27位となっており、四国の中でも3位となっています。納付税額の全国平均1,714万円と比較しても、そこまで多くないのがわかります。

香川県は、相続税を課税される人は比較的多いですが、相続税の納付額自体は少ないといえるでしょう。

1-2．課税割合は全体的に高め

下記の表は、香川県の税務署の管轄エリアごとの相続税申告状況です。

多くの県では、県庁所在地などの県の中枢エリアの課税割合が突出して高く、そこから離れるエリア程に課税割合が低くなる傾向があります。

しかし香川県の場合には、長尾エリアを除いて課税割合が5％を切るエリアはありません。

高松エリアや坂出エリアの高い割合を大きく下げるようなエリアが少ないことが、香川県の課税割合が高いことに繋がっています。

それでは次項にて、それぞれのエリアごとの詳しい特徴について解説します。

【出典サイト】「子育て県かがわ」情報発信サイト

2．各エリアの特徴と詳細

香川県は税務署の管轄によって6エリアに分かれます。

それぞれのエリアごとの特徴や地価の状況を、課税割合の高い順に解説していきます。

2-1．高松エリア

高松市、三木町、直島町かならなる高松エリアは、県中央部に位置しています。中心となる高松市は県庁所在地であり、人口42万人を擁する中核都市です。企業の本店や支店、国の行政機関が集中して置かれ、四国経済の中心地として機能しています。

また車で40分程度で瀬戸大橋へ行けることから、本州への通勤も可能な圏内であり、県内では高所得者が多いエリアになります。

高松エリアの課税割合は9.93%、納付税額は1,423万円でいずれも県内1位の数値です。

高松市の地価は1㎡あたり6万円で、こちらも県内断トツの1位となっています。

地価に加え、所得の高さという課税割合が高くなりやすい条件が揃っていることから、この結果になっていると考えられます。いずれも低い三木町と直島町も含めたうえでの結果であることから、高松市では、相続税の課税割合が高くなりやすい傾向にあることがわかります。高松市に自宅を所有している人は、自身の相続財産額について一度は確認しておきましょう。

2-2．坂出エリア

坂出市、綾川町、宇多津町からなる坂出エリアは、県の中央から北部に位置し、高松市と丸亀市に挟まれる立地にあります。

坂出市には本州と四国を繋ぐ「瀬戸大橋」があり、四国の玄関口として機能しています。

かつては塩業が盛んでしたが、現在では石油製品や石炭製品を扱う工業が発展し、全国有数の湾岸工業都市となっています。

このエリアの課税割合は9.04%で県内2位ですが、納付税額は594万円で県内最下位の6位です。

地価は坂出市が1㎡あたり3万円で県内17位中4位、綾川町が1万円で13位、宇多津町が4万円で3位となっています。

坂出市と宇多津町は上位ではありますが、1㎡あたりの地価は高くはなく、土地所有による相続財産額は大きくはなりにくいと考えられます。

ただし、課税割合は高いことから、納付税額は少ないにしても、相続税が課税される可能性は高いエリアになります。瀬戸大橋が近いことによって本州への通勤者も多いことから、財産状況に応じた的確な相続税対策が求められます。

2-3．丸亀エリア

丸亀市、善通寺市、琴平町、多度津町、まんのう町からなる丸亀エリアは、県の中央から西部に位置しています。

このエリアの中心となるのは丸亀市と善通寺市で、丸亀市はうどんチェーンの丸亀製麺からその名称は全国的に知られています。高松市に次ぐ香川県の重要都市として発展しており、西部地域の中心都市として機能しています。

善通寺市は、住宅地が広く形成されており、丸亀市のベッドタウンとして機能しています。

課税割合は8.54%で県内3位、納付税額は634万円で県内5位となっており、経済の中心都市でありながら、納付税額の低さに目が行きます。

地価は丸亀市が県内2位で1㎡あたり4万円、善通寺市が6位で2万円です。

丸亀市は若年世帯が多く、善通寺市には高齢者世帯が多いため、相続の発生のしやすさに違いがあります。

所得の状況などから相続税が課税されやすいエリアではありますが、相続が発生しやすい善通寺市の地価が低いことから、土地など課税対象の資産が安い傾向にあるため、課税割合は高く納付税額が低いという特徴が生まれていると考えられます。

2-4．土庄エリア

土庄町、小豆島町からなる土庄エリアは、県の北東部に位置する離島です。

温暖で穏やかな海と気候、自然に恵まれたエリアで、オリーブや手延べ素麺、醤油、ごま油、オリーブ牛などたくさんの名産品があります。

自然溢れる離島でありながらも、スーパー、学校、病院など生活に必要な施設はすべて揃っている利便性の高さも兼ね備えており、島暮らしに憧れる移住者希望者が後を絶たない魅力のある田舎エリアです。

課税割合は7.02%で県内4位、納付税額は1,092万円で県内3位となっています。

地価は土庄町が5位、小豆島町が14位で高くはありませんが、農地などで広大な土地を所有している人が多いこと、また名産品のどれもが全国的に競争力のある品々であることや、ブランドとして成立していることから、事業に成功している人も多いと考えられます。

多くの県ではこのような離島は課税割合が非常に低い傾向にありますが、香川県では、田舎エリアでも比較的高い数値を持っていることが、香川県の課税割合が平均的に高くなる理由の1つといえるでしょう。

2-5．観音寺エリア

観音寺市と三豊市からなる観音寺エリアは、県の西部に位置しています。

三豊市は県内3位の人口を擁する都市で、工業に加えて農業や漁業が盛んに行われています。豊かな食材が採れるエリアで、観音寺市ではレタス、三豊市ではブドウやももなどのフルーツなどが出荷されており、全国的にも名産地として知られています。

課税割合は6.77%で県内5位、納付税額は1,174万円で県内2位です。

このエリアは農地が多く高齢化が進んでおり、地価は観音寺市が11位、三豊市が15位と低く、さらなる下落傾向にあります。そのため課税割合が低くなっていると考えられますが、納付税額は県内2位となっています。全国平均や高松市と比較すると高いわけではありませんが、課税割合の低さに油断していると相続税が課税されかねないエリアになります。生前に相続税発生の有無を確認しておきましょう。

2-6．長尾エリア

さぬき市と東かがわ市からなる長尾エリアは、県の西部に位置しています。

このエリアには有名な観光地はありませんが、製造業を中心とした工業が発展しており、特に東かがわ市の地場産業である手袋は全国シェア1位を誇っており、市の重要な産業として機能しています。

さらに、中心都市としての役割を担っている東かがわ市では、漁業や農業なども盛んに行われており、ハマチの養殖に日本で初めて成功したことでも有名です。

課税割合は4.27%で県内では突出して最下位、納付税額は990万円で県内4位となっています。地価も低く、さぬき市が9位、東かがわ市が12位でいずれも1㎡あたり2万円台です。

一次産業がメインのエリアであるため所得が低い傾向にあり、地価も低いことから課税される世帯は限られますが、4.27％という課税割合は決して安心して放置できる数値ではありません。資産の状況を正しく把握しておき、不安な場合には税理士に相談してみましょう。

3．香川県の税理士情報

それでは最後に、香川県の税理士の所属状況と、相続税に強い税理士の探し方について解説します。

3-1．香川県の税理士数

香川県の税理士は四国税理士会に所属しています。

四国税理士会は、香川県、愛媛県、徳島県、高知県の四国4県に事務所を構える税理士が所属しており、その登録者数は1,648名（令和３年10月末日現在）となっており、そのうち香川県の税理士数は545人（日本税理士会連合会　平成30年5月発行税理士界）で、560人の愛媛県と同等の人数がいます。徳島県と高知県の税理士数はいずれも200人台で、四国では香川県と愛媛県に多くの税理士がいるようです。

香川県の令和元年における相続税の申告は719件であったことから、申告1件当たりの税理士数は0.75人、税理士1人当たりの相続税申告数は1.31件になります。

全国平均は申告1件当たりの税理士数0.53人、税理士1人当たりの相続税申告数1.85件であることから、香川県の税理士は充足している状況であるといえるでしょう。

3-2．香川県の税理士の探し方

香川県の相続税の申告数719件のうち、575件は高松エリアで発生しており、その割合は8割にものぼります。よって、その分、高松市には、税理士事務所が集中して存在しています。香川県では、高松市が県の中央部に位置していることから、税理士を比較的容易に探すことができます。また県土も日本一小さいことから、移動も他県ほど大変ではありません。

県内の税理士数自体が多く、四国税理士会の税理士会館も高松市にあることもあり、香川県は税理士を探しやすい条件が揃っているといえるでしょう。

これらのことから、香川県で税理士を探し始める際には、地元の税理士と高松市の税理士を同時進行で探してください。

地元の税理士は、その土地に対する知識は深いはずですが、香川県の申告数を見ると経験不足の可能性があるからです。

相続税申告の実力は経験によって培われていく部分も大きいため、相続税に強い税理士に出会うためには、高松市の税理士も選択肢に入れることは重要なポイントです。

3-3．土庄エリアの税理士の探し方

土庄町と小豆島町については、香川県本土とは状況が少し異なります。

高松市へ行くための交通手段は、高松港と土庄港、池田港、草壁港を結ぶ、フェリーか高速艇しかありません。フェリーで約1時間、高速艇で約35分と移動可能な範囲ではありますが、高齢者には不自由な手段になるはずです。

地元で探そうにもこのエリアには税理士が5名しかいないため、競争が激しくなることが予想されます。

相続税に強い税理士に出会うためには、他のエリアよりも早い行動が重要になります。相続税が気になったら、即行動しましょう。

香川県は税理士の選択肢が多い点はメリットですが、その数から相続税に強い税理士を見つけなければなりません。税理士探しなど初めてという場合も多いはずですので、途方に暮れる人もいて当然です。

当サイトでは、香川県の税理士の中から、相続税に強い税理士のみを既にピックアップしてご紹介しております。そのうえで、相談者ごとの細かい条件とすり合わせていけば良いため、税理士探しの近道になるかと思います。是非ご活用ください。

【参考サイト】税理士登録者数 | 日本税理士会連合会、四国税理士会