下記は、2016年(平成28年)度の相続データを基に記載しています。
1.川崎市の相続事情
川崎区、幸区
神奈川県川崎市の南東部に位置している川崎区と幸区。この2つの区はどちらも横浜南税務署の管轄地域となっており、相続税に関するデータも合計されたものが発表されています。
川崎市川崎区、幸区の相続税申告件数は465件、実際に課税された件数は334件。相続1件あたりの納付税額は約1,783万円、課税割合は9.30%です。神奈川県全体の平均データでは1件あたりの納付税額は約2053万円、課税割合は12.85%となっています。
この平均データと比較すると、1件あたりの納付税額と課税割合のどちらも平均データを下回っていることが分かります。特に、課税割合の低さが目立ち、県内では下から2番目という低い数字となっています。
ただし、1件あたりの納付税額は県内で13位と、課税割合と比べると高い順位です。そのため、川崎市川崎区、幸区の相続では課税割合が低く、限られた世帯にのみ高額な相続税が課税されているといえるでしょう。
中原区、高津区、宮前区
神奈川県川崎市の北部にある中原区、高津区、宮前区の3つの区。これらは全て川崎北税務署に管轄となり、相続税のデータも全て統合されたデータとなっています。
川崎北エリアの相続税の申告件数は814件、実際に課税された件数は567件です。相続1件あたりの納付税額は約3,000万円、課税割合は13.43%となっています。神奈川県の平均データでは、1件あたりの納付税額が約2,000万円、課税割合は12.39%です。
平均データと比較してみると、どちらも平均を上回っていることが分かります。また、県内の他のエリアと比べると、川崎北エリアの1件あたりの納付税額は2位、課税割合は6位です。つまり、川崎北エリアの相続として、非常に高額な相続税が課税される可能性が高いことが特徴といえるでしょう。
もともと神奈川県は全国的に課税割合や1件あたりの納付税額が高い県です。その中でも高順位に位置している川崎北エリアは、相続税への対策が欠かせず、準備が重要なエリアです。少しでも多くの遺産を相続するためにも、日頃から相続税に対して関心を持っておきましょう。
多摩区、麻生区
川崎市の北西部に位置している多摩区と麻生区。これらの川崎西エリアは、川崎西税務署の管轄となっており、相続税に関するデータも2つの地域が合計された数字が発表されています。
川崎西エリアの1年間の相続税申告件数は609件、実際に課税された件数は427件です。相続1件あたりの納付税額は約2,500万円、課税割合は16.44%となっています。そして、神奈川県全体の平均では、1件あたりの納付税額は約2,000万円、課税割合は12.39%です。
川崎西エリアとこの神奈川県の平均データを比較すると、1件あたりの納付税額と課税割合の両方が平均データを上回っています。実際に、1件あたりの納付税額も課税割合も県内で3位という非常に高い数字です。つまり、川崎西エリアでは高額な相続税が課税されやすい地域であることが数字として現れており、適切な相続税対策が求められている地域であることが分かります。
2.川崎市の地価事情
川崎区、幸区
川崎区と幸区の地価平均は、それぞれ約53万5,000円、約34万円となっており、川崎区のほうが地価が高額です。これは、どちらの地域も最も地価が高額な地点は同じなのですが、その地点以外での地価が川崎区のほうが高額なため、こうした地価の差が生まれています。
川崎市全体の地価平均は約37万8,000円ですので、川崎区は平均を大きく超えており、幸区の地価は平均をやや下回っていることが分かります。つまり、この地域では川崎区が相続の中心地となっており、不動産の相続により発生する相続税が高くなっていると考えられます。
ただし、川崎区の沿岸部は埋立地となっており、この地域の地価は内陸部よりも地価が低くなっています。そのため、川崎区の中でも内陸部の住宅街が相続の多く発生している注意エリアといえるでしょう。
また、川崎区と幸区どちらも前年度よりも地価が上昇しており、川崎区では2.97%、幸区で2.45%上昇しています。特に、幸区では各地域が2.0%以上の上昇を見せており、今後も地価が大きく上昇する可能性を秘めています。
以降は、代表的な地域の状況を紹介します。
川崎駅
川崎市と幸区どちらの区でも最も地価が高額なのが川崎駅周辺です。川崎駅は市の中心駅として機能しており、1日平均20万人以上もの人が利用している重要な交通拠点となっています。その結果、川崎駅を中心とした地域には広く繁華街が形成されています。
駅の東口方面には駅と接続している駅ビル「アトレ川崎」が建設されており、現在でも新たな商業施設建設が続き、非常に多くの人で賑わっています。特に、バスターミナルや周辺道路などを再整備したことで利便性が向上し、ますます人気を集めるようになりました。
また、西口方面は活で工業地区でしたが、近年再開発によりラゾーナ川崎やラゾーナ川崎東芝ビルなどが建設され、商業地だけでなくビジネス地としても発展しています。以前から東口方面が繁華街として発展していましたが、再開発により地域差による差がほとんどなくなっています。
川崎駅周辺の地価平均は約78万7,400円です。川崎駅を挟んで川崎区と幸区が分かれており、どちらの区でも2位の地域とは2倍程度の価格差が生まれています。ただ、住宅地が少ない地域のため、相続税が課税される可能性は低いかもしれません。
港町(川崎区)
川崎駅の特東部に位置している港町駅を中心とした地域が、川崎区で2番目に地価が高額な地域です。この地域には川崎競馬場や川崎競輪場が建設されていますが、商業施設などは少なくほとんどが住宅地として活用されています。
港町の地価平均は約35万8,000円です。港町町駅から川崎駅までは2km程度と非常に近い距離に位置しています。この立地条件が地価の上昇にも影響を与えていると考えられます。特に、繁華街から適度に離れていることで騒がしさなどを感じることが少ないため、生活拠点としては非常に優れているといえるでしょう。
また、繁華街に近いことから地域内に商業施設がなくても困ることはなく、不便さを感じることはありません。さらに、古くから繁華街として発展してきた東口方面に位置していますので、繁華街へのアクセスが容易なこともこの地域が人気を集める理由といえるでしょう。
そして、港町駅の北部には大規模なタワーマンションが複数建設される計画が進められています。港町の地価2013年から連続して上昇していますが、このマンション地帯が完成するにつれて人気が高まる可能性があり、今後も地価の上昇が続いていくと予想されます。
鹿島田(幸区)
鹿島大神が地名の由来となっている幸区鹿島田。鹿島田駅を中心としたこの地域は、駅周辺に商業地が形成されており、他の大部分は住宅地として利用されています。さらに、駅ビルである「EKiST」やサウザンドモール、新川崎三井ビルなどビジネス地としても成長しています。
また、鹿島田駅の西部には新川崎駅が建設されており、行き先に合わせて2つの駅を使い分けられます。特に、鹿島田駅と新川崎駅駅の間にある地域は再開発が行われ、複数のオフィスビルと高層マンションが建設されたパークシティ新川崎が形成されています。
鹿島田に地価平均は約38万円で、幸区内では2番目に地価が高額な地域です。鹿島田駅は東西に商業地が形成されており、駅周辺にも小学校や中学校が建設されています。そのため、マンション地帯であるパークシティ新川崎からでも、十分通学範囲内となっています。
つまり、通常駅周辺のマンションはビジネスマンなどが中心となって購入しますが、鹿島田の場合家族で入居しても利便性が損なわれません。したがって、戸建て以外の住宅街も形成されており、駅周辺の地域でも相続が発生する可能性が高いといえるでしょう。
中原区、高津区、宮前区
3つの区を地価の高い順に並べると、中原区、高津区、宮前区という順となります。
中でも中原区は市の平均を大きく上回っており、市内で最も地価が高額な地域です。県全体の市区町村の中で比較してみても、中原区は県内3位の地価となっており、その高額さが際立ちます。
そのため、中原区の相続では地価に課される税額が高く、それが1件あたりの納付税額にも反映されていると考えられます。また、高津区、宮前区は中原区と比べると地価は低いのですが、県内では上位にランクインするほど高額です。
つまり、川崎北エリアはどこも地価が高く、さらに各地で地価の上昇が見られています。加えて、川崎北エリアの地価は東京都や横浜市のベッドタウンとしての機能がベースになっています。ですので、高い地価が下がりづらく、今後も上昇を続ける可能性があるため、地価の動向は注意深くチェックしておかなくてはいけません。
中原区
川崎市の中央部に位置しており、北東部には多摩川を挟んで東京都と隣接している中原区。東京都の都心部や横浜市へのアクセスが手軽に行える地域であることから、人口、世帯数ともに神奈川県は県の行政区の中で最も多くなっています。
中原区の経済は研究所などの最先端技術を取り扱っている企業が多いのが特徴的です。こうした事業所の数や従事している従業員数は市内で2番目に多くなっています。また、下小田中地区は県内有数のパンジーの産地として古くから盛んに生産されています。
中原区の地価平均は約50万円、地価が最も高額なのは約83万円の武蔵小杉駅周辺です。武蔵小杉駅は区の中心駅であり、周囲には商業施設や企業の工場だけでなく、区役所や図書館などの主要施設も建設された区の中心地域が形成されています。
さらに、東京都や横浜市へのアクセスが手軽なことから利用者が多く、武蔵小杉駅の1日の乗降人数は10万人を超えるほどです。より多くの人が集まる地域だからこそ、大きく市街地が発展していき、現在の形になったのです。
高津区
中原区の北西に位置し、東京都世田谷区と隣接している高津区。区の多くは住宅地として使用されており、住宅街が広く形成されています。一方で、大規模な工場や大型商業施設が建設されており、地域によってさまざまな魅力を見せるのが特徴的な地域です。
特に、高津区は機械や食品を扱う工場が多く建設されており、中小規模の工場は下野毛地区に集中しています。さらに、中原区と同じように、先端技術研究を扱う企業やメーカーなどが多く、これら研究拠点となるかながわサイエンスパークが立てられています。
高津区の地価平均は約33万円、最も地価が高額なのは約48万円の溝の口駅、武蔵溝ノ口駅周辺です。これらの駅は1日の10万人を超える人々が利用している区の中心駅であり、東駅周辺には商業施設が集中して建設されており、区の玄関口となっています。
南口には区役所や税務署、年金機構といった公的施設が多く集まっており、再開発によってバスターミナルが整備されました。さらに、武蔵溝ノ口駅との直通道路が整備されたことで、相互利用の利便性が向上したため、より中心駅としての機能が強くなっています。
宮前区
高津区の西部に位置し、3区の中では唯一東京都と隣接していない宮前区。もともとは農業がメインの産業である町でした。大きく変わったのは、東急田園都市線の開通や東名高速道路のインターチェンジが設置されたことです。
これらをきっかけに急速に人口が増え、都市化が進んでいきました。隣接はしていないものの、東京都内へのアクセスは非常に手軽で、多くの人が東京都心部へ通学・通勤しています。特に、都心部への通学者は非常に多く、区内には高校が1校しかないほどです。
宮前区の地価平均は約27万円、地価が最も高額なのは約33万円の鷺沼駅周辺です。鷺沼駅は宮前区の中心駅として機能しており、周辺には商業施設が多く建設されています。そのため、鷺沼駅周辺が宮前区の商業の中心部になっています。
また、隣駅である宮前平駅周辺には宮前区役所が建てられており、こちらの地域も人気を集めています。宮前平駅周辺は地価平均約32万円で、区内で2番目に地価が高額な地域です。住宅地の多い宮前区ですが、東京都のベッドタウンとして機能が強いためベースとなる地価が高く、こうした地域の特色によって価格が上乗せされ、より高額になってしまうのかもしれません。
多摩区、麻生区
川崎西エリアの地価は多摩区の地価のほうが高く川崎市内での順位は全7区中多摩区が6位、麻生区が7位と非常に低い順位となっています。川崎市が神奈川県内で最も地価が高額な市であり、区の中でも行政機関が集まる中心部の地価が非常に高くなっています。
そのため、川崎西エリアの地価は市内で最下位というデータとなっているのです。ただ、川崎西エリアの地価は鎌倉市全体の地価平均と同額であり、県内で比較すると上位に位置する価格です。つまり、川崎市内の順位を基準にしてしまうと、予測を大幅に外してしまう可能性があるのです。
また、川崎西エリアは駅周辺に繁華街が形成されていますが、エリアの大半は住宅地として整備されています。地価が関係する不動産の相続は、都市部よりも住宅街を中心に起きており、相続の発生率も住宅街が高くなっています。
ですので、川崎西エリアの課税額や課税割合が非常に高いという特徴は、こうした住宅地でありながら高額な地価を記録していることが影響しているのだと考えられます。地価の高い都市部にばかり目が行きがちですが、相続が起こる住宅地の地価のほうが相続税には大きな影響を与えているのです。
多摩区
斜めに細長い川崎市の北西部に位置している多摩区。最北端でもあるこの地域は、世田谷区や調布市と隣接していることから、東京都内との交通網が発達している地域です。その一方で、川崎市の中心部へは距離ができていることから、どちらかというと東京都との関係が深い地域となっています。
区の北部に流れている多摩川は市境にもなっているのですが、この豊富な水資源を利用した農業が現在でも盛んに行われています。特に多摩川梨やのらぼう菜などは区の重要な名産品となっており、全国的にも人気を集める品種となっています。
多摩区の地価平均は約25万7,400万円、最も地価が高額なのは約42万4,000円の登戸です。この地域はちょうど狛江市との市境になる地域で、登戸駅や向ヶ丘遊園駅などが建設されています。登戸駅にはJR東日本と小田急電鉄、合計で4線が乗り入れており、東京都心部や川崎市街地のどちらへもゆくことができる起点駅として機能しています。
そのため、登戸駅を経由して各市街地へ通勤・通学する人が非常に多く、始発から終電まで絶えず人が集まっています。こうした駅の特性から、駅の周辺には商業施設が集まる繁華街が形成され、繁華街から少し離れると落ち着いた住宅街が形成されています。こうした商業地と住宅地、どちらの需要も高いことから、登戸の地価が飛び抜けて高額になっているのです。
麻生区
多摩区の西部に位置しており、横浜市や東京都とも隣接している麻生区。麻生区は多摩市から分裂することでできたのですが、川崎の地形上行政機関などが集まる市の中心部へは距離があり、気軽に行くことが難しいという問題を抱えていました。
そのため、麻生区では川崎市の中心部へ行くのではなく、距離も近い東京都心部への交通網の整備に力を入れていました。その結果、麻生区は東京のベッドタウンとしての機能が強く現れており、現在でも発展を続けている程の人気を集めています。
麻生区の地価平均は約24万円、最も地価が高額なのは新百合ヶ丘で約34万9,000円のちかを記録しています。この地域は麻生区の中心部に位置しており、小田原方面、東京方面、多摩市方面の3方面に分岐する新百合ヶ丘駅が建設されています。
ですので、新百合ヶ丘はちょうど麻生区の交通網の拠点としての役割を持っているのです。また、区の大半は住宅街が形成されているのですが、多くの人が訪れることから駅の周辺には市街地化されており、交通の利便性や住みやすさが高いことから地価が上昇しているのだと考えられます。
3.川崎市の世帯年収と富裕層
続いて、地価と並んで相続税を決定する大きなポイントである年収について、それぞれの地域の特徴を確認していきましょう。
自治体名 | 年収 | 1,000万円を超える割合 |
---|---|---|
川崎区 | 491万円 | 6.35% |
幸区 | 619万円 | 13.25% |
中原区 | 621万円 | 11.51% |
高津区 | 577万円 | 9.28% |
宮前区 | 634万円 | 14.92% |
多摩区 | ||
麻生区 | 678万円 | 17.64% |
平均年収1,000万円以上の比率に注目してみます。中原区と宮前区、麻生区では10%を超えており、10人1人が1,000万円以上の年収を受け取っていることになります。
川崎市は神奈川県の中にも高所得者が集まっている地域であり、麻生区はその中でも2番目に高い年収だといわれています。
地価が高い川崎区は所得では低くなっています。川崎区には川崎市役所などの行政機関が多く建設されていますが、沿岸部は工業地帯となっているため、実際に生活できる場所は限られています。加えて、住宅地にも小規模な工場が建設されているため、地域によっては住宅と工場が密接した住宅街が形成されています。
内陸部にある幸区、中原区、宮前区、麻生区のように、東京都中心部へ近いほうが、東京都への通勤者が増加し高額な所得を受け取っている人が多い傾向にあります。
4.川崎市の税理士事情
地価と所得を踏まえて考えると、川崎区と幸区どちらも相続税への対策が重要となる地域です。そこで、最後に川崎区と幸区に在籍している税理士の状況を確かめていきましょう。
自治体名 | 在籍税理士数 |
---|---|
川崎区 | 166名 |
幸区 | 57名 |
中原区 | 145名 |
高津区 | 94名 |
宮前区 | 75名 |
多摩区 | 73名 |
麻生区 | 86名 |
川崎区と幸区の合計税理士数は223名です。川崎区、幸区の1年間の相続税申告件数は465件、課税件数は334件となっています。在籍税理士数と件数を比較してみると、税理士がやや不足していることが分かります。
中原区、高津区、宮前区は合計すると314名です。川崎北エリアの1年間の課税件数は567件ですので、そこまで不足しているとはいえません。ただ、区によって税理士の在籍数は大きく異なっています。
多摩区、麻生区には合計159名の税理士が在籍しています。そして、1年間の相続税申告件数は609件、実際に課税された件数は427件ですので、在籍している税理士はやや不足しているといえます。ただ、地域による差はあまりありませんので、どちらの区でもしっかりと税理士探しを行えます。
川崎市は横浜市、東京都と隣接していますので、場合によっては、そちらで税理士を探したほうが便利な場合もあります。通勤先などに応じて、日頃から訪れる頻度が高い地域で税理士を探すこともおすすめです。