長野県の概要
本州の中央部に位置し、多くの山々に囲まれた内陸県である長野県。古くは「信濃国」と呼ばれており、その名残から今でも「信州」と呼ばれています。馴染みが薄い県だと思われることもありますが、長野県が歴史に名を刻むことも多いです。皆さんの記憶の中でも新しい1998年に開催された冬季オリンピックの開催地を務めたり、「牛に引かれて善光寺参り」でおなじみの善光寺も長野県にあります。
長野県は、北海道を除いた県の中では第3位の面積の広さを有しており、日本一他県に面している県としても知られています。さらに、県境が山脈となっていることも多く、飛騨山脈や赤石山脈、北アルプスなど標高が高い山々に囲まれているという特徴もあります。そのため、盆地が中心となった地形となっていますが、内部にも標高に差があるのです。その結果、面積に広さも相まって、同じ県内なのに気候が大きく変化するのも長野県ならではの特徴です。
また、豊かな自然と透き通ったキレイな水源が豊富なことから、食の豊富さでも有名です。リンゴやブドウといった果物が有名ですが、意外にもレタスや白菜、わさびなどは日本一の生産量を誇っています。加えて、お米の生産量も高く多くの人から愛されています。日本有数の寒冷地であることや昼夜の寒暖差が大きいこと、山々の湧き水による豊富な水源がこうした農産物を作り出しています。
では、私たちに美味しい魅力を発信し続けてくれる長野県の相続税や税理士事情を確認します。
相続税発生件数はほどほど、隣県と比べるとやや多い
長野県の年間の相続税発生件数は2,369件と全国の中では、そこまで多くありません。本州での位置のように中位に位置しています。ですが、お隣の新潟県の発生件数は2,293件となっており、長野県の方が若干上回っています。新潟県とは人口もそこまで変わりませんので、長野県では相続税がある程度、発生しやすいといえるでしょう。
課税割合は7.66%で全国21位のランキングです。全国平均は9.33%ですので、それよりは低いですが、全国平均は東京など課税割合の高い地域の影響を受けていますので、全国的には、中央値にあたるような割合です。
1人当り平均納税額は1,142万円と全国25位です。全国平均は1,820万円でそれよりは低いですが、課税割合同様に、中央値にあたる数値です。
続いて、相続税の金額から考えてみましょう。長野県全体の相続税の課税価格は約2,187億円、納付税額が約227億円となっています。人口の近い新潟県の課税価格が約2,105億円、納付税額が約185億円となっているため、金額でも長野県の方が上回っています。
長野県内のエリア別相続税の状況
長野県内の税務署エリア別の、相続税の状況です(令和3年度)。
税務署名 | 管轄地域 | 申告 件数 | 課税 件数 | 1件当り 納付税額 (万円) | 申告割合 | 課税割合 |
---|---|---|---|---|---|---|
長野 | 長野市 須坂市 小布施町 高山村 信濃町 小川村 飯綱町 | 653 | 547 | 1,299 | 11.73% | 9.83% |
松本 | 松本市 塩尻市 安曇野市 麻績村 生坂村 山形村 朝日村 筑北村 | 464 | 397 | 851 | 9.57% | 8.19% |
上田 | 上田市 千曲市 東御市 青木村 長和町 坂城町 | 311 | 260 | 2,485 | 8.86% | 7.41% |
飯田 | 飯田市 松川町 高森町 阿南町 阿智村 平谷村 根羽村 下條村 売木村 天龍村 泰阜村 喬木村 豊丘村 大鹿村 | 162 | 128 | 597 | 7.21% | 5.70% |
諏訪 | 岡谷市 諏訪市 茅野市 下諏訪町 富士見町 原村 | 256 | 224 | 925 | 10.35% | 9.06% |
伊那 | 伊那市 駒ヶ根市 辰野町 箕輪町 飯島町 南箕輪村 中川村 宮田村 | 159 | 131 | 447 | 7.42% | 6.11% |
信濃中野 | 中野市 飯山市 山ノ内町 木島平村 野沢温泉村 栄村 | 66 | 59 | 513 | 5.18% | 4.63% |
大町 | 大町市 池田町 松川村 白馬村 小谷村 | 40 | 34 | 636 | 4.96% | 4.21% |
佐久 | 小諸市 佐久市 小海町 川上村 南牧村 南相木村 北相木村 佐久穂町 軽井沢町 御代田町 立科町 | 239 | 193 | 874 | 8.94% | 7.22% |
木曽 | 上松町 南木曽町 木祖村 王滝村 大桑村 木曽町 | 19 | 19 | 878 | 4.09% | 4.09% |
長野県計 | 2,369 | 1,992 | 1,142 | 9.11% | 7.66% |
長野県の相続税は、長野市と松本市のツートップで多くの課税が発生しています。その他のエリアも少しずつ発生しています。
ここからは、県内の地域別に分析してみます。
(1)長野エリア
長野エリアは、県庁所在地である長野市と、須坂市、小布施町、高山村、信濃町、小川村、飯綱町の7つの自治体が含まれます。北信地方の中心でもあります。
長野エリアの相続税発生件数は547件で県内1位であり、課税割合でも見ても、9.83%でトップです。全国平均9.33%よりも大きいですので、かなり課税されやすいといえます。
被相続人1人当りの相続税額も1,299万円と、県内平均よりもやや高めです。
長野市の地価は約5万円/㎡、そこまで高い地価ではありませんが、広い土地を所有していると、評価額が高くなってしまう可能性もあります。
(2)諏訪エリア
課税割合で見ると、県内2位は、意外にも松本ではなく、諏訪エリアです。岡谷市、諏訪市、茅野市、下諏訪町、富士見町、原村で構成されます。
課税割合は9.06%と全国平均にせまる値です。被相続人1人当り納税額は、925万円です。
地価については、塩尻市が県内4位、下諏訪町が5位、諏訪市が6位と、松本市、長野市に次いで高い値です。
岡谷、諏訪あたりは、精密工業が発展しており、関東地方からもアクセスしやすい位置にあります。長野県内の中では雪が少ない地域であり、生活も安定していることから、経済力のある家庭が多く、相続では相続税が発生しやすくなると考えられます。
(3)松本エリア
松本エリアに含まれるのは、松本市、塩尻市、安曇野市、麻績村、生坂村、山形村、朝日村、筑北村です。中信地方の中心です。
課税割合は8.19%で県内3位、全国的に見ると、まだ高い割合です。相続税額は851万円です。
これは、軽井沢町で相続税が発生する場合、県外に住んでいる人が支払うケースが多いからだと考えられています。相続税は相続した人が住んでいる地域の管轄税務署に納めます。そのため、県外の人が相続した場合は佐久地域で発生したことにならないため、件数としては多くならないのかもしれません。
(4)上田エリア
上田エリアに含まれるのは、上田市、千曲市、東御市、青木村、長和町、坂城町です。東信地方の中心です。
課税割合は7.41%で県内4位です。一方、1人当り平均相続税額は2,485万円と、全国平均を大きく上回っています。上田市の地価は県内10位と決して高い方ではありません。にもかかわらず、相続税額が高いのは、一部の高所得者層や富裕層に多額の相続税がかかった影響が考えられます。
(5)佐久エリア
佐久エリアに含まれるのは、小諸市、佐久市、小海町、川上村、南牧村、南相木村、北相木村、佐久穂町、軽井沢町、御代田町、立科町の11市町村です。
課税割合は7.22%と県内5位、相続税額は874万円、県内でも中間に位置しています。
佐久エリアには、首都圏の別荘地である軽井沢が含まれています。軽井沢町の地価は約11万円/㎡で県内1位です。その割には、相続税の課税割合も相続税額も低いのは、別荘を所有している人は、関東地方を中心に住んでおり、こちらには居住していない可能性が考えられます。
相続税は住所地のある税務署で課せられますので、軽井沢に別荘を持っていたとしても、住んでいるのが東京であれば、東京で相続税を払うことになるからです。
その他のエリア
その他のエリアについては、課税割合は4~6%台の範囲であり、全国的にも低い方です。とはいえ、一定数は相続税がかかっていますので、注意が必要でしょう。
長野県で相続税に強い税理士を探すには
長野県の大きな特徴の1つが、多様な土地です。地域によって標高や気候が変わるため、土地の価格を決める評価も地域ごとに変化してしまいます。ですので、あなたが相続する土地の地域に精通している税理士が心強い味方になってくれます。
また、発生件数が多い地域はそれだけ経験も多くなりやすいため、実力も高いと言われています。特に、納付税額が高い地域は節税対策が重要な課題となるため、税理士選びは慎重に行いましょう。複数の税理士事務所を回り、実際に相談などをしながら信頼できるパートナーを見つけてください。
長野県内の税理士数は2019年4月1日現在で910名です。
ただ、被相続人1人あたりの税理士数は0.38人と全国平均よりも少ない数字となっています。そのため、時期によっては依頼から完了までに時間が必要となるケースも考えられます。相続税の申告期日をきちんと把握しておき、早めの相談・依頼を心がけましょう。