1.岡山市の相続税申告の特徴
令和元年の相続税申告状況のデータによると、岡山市の申告割合は10.05%、課税割合は8.41%、1件当たり納付税額1,597万円となっています。
岡山県全体においては、申告割合は8.72%、課税割合7.26%、1件当たり納付税額1,181万円と、岡山市はそのいずれも大きく上回っており、岡山市は岡山県内の相続税課税の平均値を底上げしている存在です。
全国的に見て見ると、岡山県の課税割合は47都道府県中18位となっていますが、仮に岡山市の数値だけで当てはめたとすると、8.40%の大阪を抜いて12位となります。
全国平均は、申告割合10.71%、課税割合8.35%、納付税額1,714万円であることから、岡山市はちょうど全国平均程度のエリアになります。
1-1.岡山市内の相続税の課税割合は北区が突出
下記の表は、岡山市内にある管轄税務署エリアごとにおける、課税割合などの相続税申告状況を表しています。岡山市の4行政区のうち、中区以外は2つの税務署が管轄しているため、このような管轄地域の表示になっています。
課税割合を見ると一目瞭然ですが、北区と南区の一部からなる岡山東エリアの課税割合は19.55%と、圧倒的な数値となっています。
岡山市はあくまでも地方都市であり、億ションや全国に名をはせる高級住宅街はありません。地価も1㎡あたり何百万円とするエリアもなく、大阪や京都、芦屋などのブランドがある都市とは異なります。しかしその中でも比較的、北区には富裕層が多く、所有している財産も高額な傾向があります。
岡山市の北区に居住している方は、相続税の課税に特に注意しなければなりません。
税務署名 | 管轄地域 | 申告件数 | 課税件数 | 1件当り 納付税額 (万円) | 申告割合 | 課税割合 |
---|---|---|---|---|---|---|
岡山東 | 北区(※) 南区(※) 吉備中央町 | 300 | 251 | 2,176 | 23.36% | 19.55% |
岡山西 | 北区(※) 中区 南区(※) | 398 | 338 | 1,490 | 8.33% | 7.08% |
西大寺 | 東区(※) 瀬戸内市 | 113 | 92 | 898 | 8.28% | 6.74% |
瀬戸 | 東区(※) 備前市 赤磐市 和気町 | 82 | 67 | 922 | 5.60% | 4.57% |
岡山市計 | 893 | 748 | 1,597 | 10.05% | 8.41% |
※印の付いたエリアについては、税務署の管轄が跨っているため、死亡者数を管轄税務署により按分して計算
それでは次項にてそれぞれの区の特徴を見ていきましょう。
2.岡山市各区の特徴
岡山市の市域は4つの行政区から成り立っています。
それぞれ相続税の課税状況、街の特徴や地価などを詳しく見てみましょう。
2-1.北区
北区は岡山市の行政区の中で最も広い市域を有しており、市内の57%を占めています。
市役所や県庁などの行政機関をはじめとして、県下最大の商業地も広がっており、広島市と共に中国地方の拠点となっています。
行政区がある多くの市では、中心地として発展している区の名称が、「中央区」や「中区」となっていることが多いのですが、岡山市の場合には北区が中心地です。
ビジネス地、商業地として煌びやかな印象が強い北区ですが、その反面、北部には豊かな自然が広がっており、丘陵部では農業が盛んに行われています。特に、白桃やマスカット、ピオーネなどの果物はブランド化され全国的に有名であり、県も「くだもの王国おかやま」を謳って推進しています。
芦屋のようなブランドのある高級住宅街はありませんが、比較的大きな家が建ち並ぶ閑静な住宅街がいくつかあり、番町、伊島町、津島福居、津島本町、伊福町などは富裕層が多く住むエリアとなっているようです。
北区の地価は、4行政区の中でトップではありますが、1㎡あたり15万円と高くはなく、一般的には不動産課税が起こりにくいエリアになります。しかし、富裕層は所有する財産が多岐に渡るため、地価の低さに安心してはいけません。まずは、相続財産の全貌を把握することから着手しましょう。
2-2.南区
南区には、江戸時代から造成された干拓地が広がっており、中国地方有数の米どころとして発展しているエリアです。
笹ヶ瀬川、倉敷川、旭川や、世界最大級の人口湖である児島湖、貝殻山や金甲山をはじめとする山々に囲まれた自然豊かなエリアです。
国道30号線が区の南北に通っており、沿線には住宅街や岡南工業地帯が形成され、発展を続けています。
地価は4行政区中3位で、1㎡あたり5万円という低さのため、若いファミリー層がマイホームを持つエリアとして非常に人気があり、市内で最も若者層の比率が高くなっています。
南区は、田舎で地価が低く、若者が多いという相続税の課税条件からは離れたエリアです。北区、南区などを管轄する岡山東エリアは、高い課税割合となっていますが、この数値は北区での相続が引き上げていると考えられます。
ただし、米どころとして大規模な稲作を行っている農家もあるため、広大な土地や事業用財産を所有している場合には相続税の課税に注意しましょう。
2-3.中区
中区は市内で最も小さい区となります。区の中心となるのは北部で、県道250号線とJR山陽本線の周辺には、住宅地や商業地が混在しています。
北区の中心部にほど近く、電車やバスなどの公共交通機関も十分にあるにもかかわらず、地価は1㎡あたり7万円と北区の半額程度であることから、憧れの戸建てマイホームを持つエリアとして人気です。
「湊」、「住吉町」、「原尾島」は岡山市内では有名な高級住宅街となっており、地価は1㎡あたり30万円を超えるエリアもあります。
また、中区には進学校として有名な朝日高校や、岡山大学付属小学校などレベルの高い教育施設が多くあることから文教地区としても知られています。子供の教育のために中区に居住する家庭は、経済的に余裕があることが多く、そのような家がいずれ相続税課税の対象になっていくのでしょう。
2-4.東区
東区は中央を吉井川と砂川が流れ、北部と東部には山間部、南部の河口は児島湾と瀬戸内海に面しており、海川山が揃った自然溢れるエリアになります。
日本三大奇祭の1つに数えられる西大寺会陽(はだか祭り)が毎年2月に行われ、全国のみならず世界から観光客が集まります。
地価は非常に低く、1㎡あたり3万円で市内最下位の金額となっており、岡山市内にありながらマイホームを持ちやすいエリアです。
地価が安く土地にもゆとりがあることからマンションは少なく、あっても単身者用の小さなマンションです。このエリアではマンションの希少価値の方が高いといえるでしょう。
北区の中心部からは最も離れている区であるため、公共交通機関がないエリアもありますが、岡山県全体が車社会であるため不便はありません。
相続税の観点から見て見ると、東区はどちらかというと庶民的な街であり、市内は相続税の課税から最も遠い区であるといえます。
3.岡山市の税理士情報
岡山県には税理士が748人(日本税理士会連合会 平成30年5月発行税理士界)おり、
そのうち岡山市にいる税理士は513人で、北区にはその7割を超える383人が属しています。
岡山市の令和元年における相続税の申告件数は893件であったことから、税理士1人あたりの件数は約1.7件になり、全国平均の約1.9件と比較すると、岡山市は税理士数においても全国平均並みということが分かります。
岡山市は岡山県の中央部に位置していることから、隣県都市の広島県や兵庫県の税理士に依頼することは考えにくく、市内に限定して探すことになるでしょう。
もしも良い税理士が見つからない場合には、隣の倉敷市にも175人と多くの税理士がいるため、候補に入れると良いでしょう。