1.岡山県の相続税申告の状況
岡山県は中国地方南東部に位置し、西は広島県、東は兵庫県に隣接しています。中国地方と四国地方の中間に位置しており、中四国地方の交通の要衝として重要な県です。
快晴日数や降水量1mm未満の日数が全国最多であることから、「晴れの国おかやま」をキャッチフレーズにしている岡山県。本州と四国を繋ぐ瀬戸大橋や、白壁の町並みが残る倉敷美観地区などが有名で、観光地としても非常に高い人気を誇っています。
エリアによって魅力が変わる岡山県の相続税や税理士事情を見ていきましょう。
1-1.岡山県の相続税申告の状況
岡山県の令和元年における相続税の申告件数は1,914件、そのうち相続税が発生した課税件数は1,593件、課税割合は7.26%、相続1件当りの納付税額は1,181万円となっています。
全国平均は課税割合8.35%、納付税額1,714万円となっており、岡山県は47都道府県中、課税割合が18位、納付税額が21位でやや上位に位置しています。
中国地方5県(鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県)の中では、いずれも広島に次ぐ2位の数値であり、このことからも岡山県は周辺他県に比べて、相続税が課税される可能性が高い県であることが分かります。
1-2.岡山県の課税割合は都市部との差が顕著
下記の表は、岡山県の税務署の管轄エリアごとにおける相続税申告状況です。
管轄エリアは13ありますが、都市部にあたる岡山東エリア、玉島エリア、倉敷エリアの課税割合が突出して高く、4位の児島エリアから急激に下がっていきます。特に5%台以下のエリアは、全体の半数を超える7エリアとなっており、都市部の高い課税割合が岡山県の平均を押し上げていることが分かります。
つまり、岡山県は相続税の課税割合が比較的高い県ではありますが、そのエリアは限定的であるというこです。
それでは次項にて、エリアごとの特徴を詳しく解説していきます。
税務署名 | 管轄地域 | 申告 件数 | 課税 件数 | 1件当り 納付税額 (万円) | 申告割合 | 課税割合 |
---|---|---|---|---|---|---|
岡山東 | 北区(※) 南区(※) 吉備中央町 | 300 | 251 | 2,176 | 23.36% | 19.55% |
岡山西 | 北区(※) 中区 南区(※) | 398 | 338 | 1,490 | 8.33% | 7.08% |
西大寺 | 東区(※) 瀬戸内市 | 113 | 92 | 898 | 8.28% | 6.74% |
瀬戸 | 東区(※) 備前市 赤磐市 和気町 | 82 | 67 | 922 | 5.60% | 4.57% |
児島 | 倉敷市(※) | 59 | 54 | 683 | 8.46% | 7.75% |
倉敷 | 倉敷市(※) 総社市 早島町 | 490 | 400 | 839 | 11.04% | 9.01% |
玉島 | 倉敷市(※) 浅口市 里庄町 | 137 | 109 | 730 | 13.02% | 10.36% |
津山 | 津山市 美作市 鏡野町 勝央町 奈義町 西粟倉村 久米南町 美咲町 | 119 | 103 | 896 | 4.65% | 4.03% |
玉野 | 玉野市 | 53 | 45 | 556 | 6.11% | 5.18% |
笠岡 | 笠岡市 井原市 矢掛町 | 94 | 79 | 932 | 5.92% | 4.98% |
高梁 | 高梁市 | 19 | 15 | 1,498 | 3.58% | 2.83% |
新見 | 新見市 | 18 | 15 | 592 | 3.29% | 2.74% |
久世 | 真庭市 新庄村 | 32 | 25 | 528 | 4.12% | 3.22% |
岡山県計 | 1,914 | 1,593 | 1,181 | 8.72% | 7.26% |
※ ※印の付いたエリアについては、税務署の管轄が跨っているため、死亡者数を管轄税務署により按分して計算
【出典サイト】「市町村の情報」|岡山県移住ポータルサイト おかやま晴れの国ぐらし
2.各エリアの特徴と詳細
それでは、岡山県の各エリアの特徴や地価の状況を、課税割合の高い順に解説していきます。
岡山市と倉敷市については、複数の税務署が管轄しており、エリア別に見ると少々分かりにくいかもしれません。そこで、この2市については市全体で解説をします。
2-1.岡山東エリア
岡山東エリアは岡山市の北区と南区のそれぞれ一部、そして吉備中央町からなります。
岡山市は県の中央南部に位置しており、県庁所在地として県の政治経済の中心地となっています。人口も県内で最も多く、特に北区は岡山市全体の人口の約半分近くを占めています。
このエリアの課税割合は19.55%と驚異的な数値となっており、納付税額も2,176万円で、いずれも県内で群を抜いてトップとなっています。
地価も岡山市は県内27位中1位で1㎡あたり10万円と、県内2位の早島町の倍額となっています。岡山市の1㎡10万円という金額は、4つの行政区の平均値になりますが、北区単体で見ると15万円となっており、市内2位である中区の7万円を倍以上上回っています。
このような事実から、北区は在住の方は、相続財産を把握して、相続税の課税の有無を確認することが非常に重要になります。できるだけ早いうちに、サポートしてもらう税理士を見つけておくと安心です。
岡山市内でも相続税が課税される可能性が高いエリア
岡山市内でも特に相続税が課税される可能性が高いと考えられる地域としては、世帯別年収などのデータから推測すると、岡山市北区および中区の周辺などいわゆる備前地域と備中地域の一部と考えられます。
さらに細分すると、北区の中でも比較的古き良き街並みが今なお残る番町、岡山大学がある伊島町、津島福居、津島本町、伊福町などが相続税課税の可能性が高いエリアとなります。また中区では、岡山城付近の住吉町、円山、原尾島などが相続税課税の可能性が高いと言えます。
【出典サイト】岡山市都市計画情報システム
2-2.玉島エリア
玉島エリアは、倉敷市の一部、浅口市、里庄町からなり、県の南西部に位置しています。
倉敷市は工業都市、文化観光都市として発展してきました。また瀬戸内の穏やかな気候や豊かな自然に恵まれ、白桃、マスカット、ピオーネなどのフルーツ栽培も盛んです。
白壁の建物や柳並木が美しい倉敷美観地区は、古き情緒を今も色濃く受け継いでおり、日本のみならず世界からも注目される観光地となっています。
このエリアの課税割合は10.36%で県内2位、全国平均を大きく上回っており、相続税が課税されやすいエリアといえます。
これに対して納付税額は730万円で県内9位となっており、課税割合が高い割には納付税額が低いエリアになります。
地価は倉敷市が1平米あたり5万円で県内3位、浅口市が3万円で7位、里庄町が2万円で8位となっており、エリア内全域が全27位中の上位にあります。
倉敷市には超富裕層クラスが居住する高級住宅地はありませんが、本町、鶴形、美和、児島上の町などは富裕層が多く住んでいるようです。
ただし、地価が高いといっても、最も高い倉敷市で1㎡あたり5万円と、全国的に見ると高額な部類には入らないことから、納付税額が低くなっているのでしょう。
2-3.倉敷エリア
倉敷市の一部、総社市、早島町からなるエリアで県の南部に位置しています。
総社市と早島町は程よい自然があるエリアにもかかわらず、岡山市と倉敷市の県内2大都市に隣接しており、電車で岡山駅まで25分、倉敷駅までは10分という利便性の高い立地にあることから、ベッドタウンとしての機能が強いエリアになります。
特に総社市は移住者に人気があり、県内で最も人口が増えている市です。
このエリアの課税割合は9.01%で県内3位、納付税額は839万円で県内8位で、課税割合が高いわりに納付税額が低いという特徴が、先程の玉島エリアと似ています。
早島町の地価が県内2位、倉敷市が3位、総社市が5位とエリア全域の地価が県内でも上位にあります。
この地価が、高い課税割合に繋がっていると考えられますが、不動産の評価額はそれほど高額になる可能性は低いため、納付税額も低くなっています。ただし、広い土地を所有している場合には、地価が低くても大きな評価額になる可能性があるため注意しましょう。
2-4.児島エリア
倉敷市の南東部に位置する児島地区からなるエリアです。
産業で発展してきた街で、特にジーンズの生産技術は高く、世界に誇るジャパンデニムの中枢を担っています。また質の良い帆布も有名で、全国シェアは70%にもなります。
このエリアの課税割合は7.75%と県内で4位、前順位の倉敷エリアからは1%以上急落し、県内の平均値を超える最後のエリアになりますが、全国平均は下回っています。納付税額は、683万円で県内10位と非常に低い金額となっています。
また、個人で事業を行っている方も多いことから、事業用資産の相続も起こりやすいエリアになるでしょう。事業用資産は個人的な財産とは別個に考える人もいますが、個人事業者であれば自宅などの個人的な財産と同様に、事業用資産もその人の財産として相続税が計算されます。注意が必要です。
2-5.岡山西エリア
岡山市北区の一部、南区の一部、中区全域からなるエリアです。
中区は市内で最も小さい区で住宅地が密集しており、中心地である北区のベッドタウンとして活用されています。南部には今ものどかな田園風景が広がっており、地価もそれほど高くないため、戸建て住宅の夢が叶うエリアとして人気があります。
課税割合は7.08%で県内5位、納付税額は1,490万円で県内3位となっています。
地価は、高い順に北区、中区、南区となっており、北区と中区では2倍の差があります。居住地としての人気は、やはり利便性の高い北区に分があるということでしょう。
したがって、相続税の課税対象となりやすい富裕層は、北区それも岡山東税務署の管轄内に多いと推測されます。
そのため、同じ岡山市でも、課税割合、納付税額で共に1位の岡山東エリアと大きく差があるものと考えられます。
2-6.西大寺エリア
岡山市東区と瀬戸内市からなる西大寺エリアは、県の東部に位置しています。
西大寺地区には閑静な住宅地が密集しており、地価が4区の中で最も安いため、手の届きやすさから若い世代に人気の区となっています。東区には吉井川が流れ、干拓によって整備された農地が広がっています。
一方、瀬戸内市は海と里山の自然が美しい田舎です。その名称通り南側が瀬戸内海に面しており、牡蠣の養殖は全国的にも有名で、また陸地では温暖な気候を生かした稲作が行われています。
このエリアの課税割合は6.74%、納付税額は898万円でいずれも県内6位となっており、県内順位の中盤になります。
地価は、東区が1㎡あたり3万円で、県内順位にすると7位あたり、瀬戸内市は2万円で10位です。いずれも地価の低い田舎であることが、課税割合と納付税額が低い理由と考えられらます。
2-7.その他のエリア
これまで解説してきた課税割合が上位6位のエリアは、すべて県南部の岡山市周辺にありました。
それ以外の県の中央から北部のエリアはいずれも課税割合が2~5%となっており、相続発生が課税される可能性は低いといえるでしょう。
税務署名 | 管轄地域 | 1件当り 納付税額 (万円) | 課税割合 |
---|---|---|---|
玉野 | 玉野市 | 556 | 5.18% |
笠岡 | 笠岡市 井原市 矢掛町 | 932 | 4.98% |
瀬戸 | 東区(※) 備前市 赤磐市 和気町 | 922 | 4.57% |
津山 | 津山市 美作市 鏡野町 勝央町 奈義町 西粟倉村 久米南町 美咲町 | 896 | 4.03% |
久世 | 真庭市 新庄村 | 528 | 3.22% |
高梁 | 高梁市 | 1,498 | 2.83% |
新見 | 新見市 | 592 | 2.74% |
ただし、高梁市の納付税額1,498万円という金額には注意しなければなりません。
高梁市は県の中西部に位置し、広島県に隣接しています。古くからある伝統的な建物と新しい建物が調和した街で、主力産業の農業で作られる、ピオーネ、トマトは県内トップクラスの生産量を誇ります。
高梁市の課税割合は2.83%と非常に低い一方で、納付税額は1,498万円で県内2位の金額です。地価は1㎡あたり1万円で県内13位と低いことから、広大な農地を所有している人への課税と考えられます。
高梁市に限らず、課税割合の低いエリアであっても相続税が課税されるの能性は0ではありません。必ず一度は相続財産の確認をしておきましょう。
3.岡山県の税理士情報
岡山県の税理士は中国税理士会に所属しています。中国税理士会には中国5県の税理士から組織されており、その登録者数は3,207人(令和3年10月末日現在)にのぼります。
そのうち岡山県にいる税理士数は748人(日本税理士会連合会 平成30年5月発行税理士界)となっており、令和元年における相続税の申告が1,914件であったことから、1件当たりの税理士数は0.39人、税理士1人当たりの相続税申告数は2.55件になります。
相続税の計算は非常に時間がかかります。多くの場合で申告期限の10ヶ月近い期間を要して計算が進められます。その相続税申告が税理士1人あたり年間2.55件こなさなければならない税理士数というのは、税理士が不足している状況にあるといって良いでしょう。
これは岡山県のみならず中国地方でいえることであり、広島県以外は税理士が不足傾向にあります。
3-1.岡山県の税理士の分布状況
相続税申告状況の表から分かるように、岡山県の相続税は、岡山市と倉敷市を主として課税されており、この2市と周辺市町の申告件数は約1,500件、全体の8割近くに及びます。
当然ながら税理士数もその需要に比例する形となっており、このエリアには岡山県の税理士の9割になる約680人が事務所を構えています。
残りの1割の税理士を、その他のエリアが分け合う形となっており、相続税発生自体が少ないといえども、いざ税理士が必要となった時にはなかなか見つからないという事態になる可能性が高いでしょう。
3-2.岡山県の税理士の探し方
相続税には、当然相続する土地の評価も含まれるため、地価が高額となる岡山市内中心部では、相続税が高額になる可能性に備えて、相続税に強い税理士への依頼が重要になってきます。
また、農地や広大地がある場合には、その地域に根づいた税理士の方が対策が立てやすく、結果的には大きな節税へと繋がることもあります。
このことから、できる限り地元税理士に依頼したいところですが、岡山県の相続税の特徴は、岡山市と倉敷市に集中していることでした。相続件数が多いため、岡山市、倉敷市の税理士は、必然的に相続税申告について経験豊富であると考えられます。
相続税の節税は、実力のある税理士を見つけることから始まっています。1個所に絞らず、できるだけ多くの税理士事務所に相談し、信頼して任せられる税理士を探しましょう。
3-3.その他エリアの税理士の探し方
特に、その他エリアに居住している方は、岡山市や倉敷市での税理士探しを、必須と考えておいた方が安心です。地元税理士がいたとしても、その税理士は相続税申告についての経験値が低い可能性が高いからです。
相続税申告は税理士の腕次第で相続税額が数百万円変わることもあるため、「近いから」という理由だけで税理士を決めてしまうのは、非常に危険な行為です。
岡山市、倉敷市の税理士数は680人にものぼります。その中には相続税に強い税理士、弱い税理士はもちろんのこと、相続税申告を行ったことがない税理士も含まれている可能性があります。
当サイトでは、相続税に強い税理士のみを厳選して掲載しており、さらにその中から希望条件に合う税理士を検索できるようになっています。
税理士探しが初めての方、遠方で都心まで出て行けない方、時間がない方などのお手伝いができるのではないかと思います。是非ご利用ください。
【参考サイト】税理士登録者数 | 日本税理士会連合会、中国税理士会