1.埼玉県の特徴
埼玉県は東京都北部の県境をカバーするように隣接しており、古くから東京都のベッドタウンとして機能し、交通網も整備されてきました。そして、交通網が整備された東京都を起点とすれば、神奈川県をはじめとする他の首都圏へのアクセスも良好であるため、近郊首都圏全体のベッドタウンへとしても発展しました。
程よい田舎であり、同時に程よい都会でもある住みやすい埼玉県は、ベッドタウンとして人気が高く、人口は約730万人の大都市となっています。それに伴い地価も年々上昇しています。
埼玉県の特徴は、まず市の数が40もあり全国1位となっています。県民でもすべての市を正確に答えられないくらいの多さです。
また、快晴の日数が多いのも大きな特徴で、お出かけしやすいのはもちろんのこと、洗濯ストレスや、天候による片頭痛からも解放されます。
意外かもしれませんが、野菜農業も盛んで、小松菜の生産量は全国1位となっています。
首都圏で消費される野菜の供給県として、大きな役割を担っています。
首都圏からのアクセスが良いため、気軽に非日常感を味わえる観光地としても人気です。埼玉県はレトロな街並みや自然スポットが点在しており、特に秩父や川越などが有名です。
秩父の名勝長瀞渓谷では、カヌーやラフティングなど様々なウォーターアクティビティを楽しむことができ、川越には氷川神社をはじめとする寺社仏閣がたくさんあり、歴史好きの人にはたまらないエリアでしょう。
2.埼玉県の相続税申告の状況
埼玉県の令和元年における相続税の申告件数は9,213件、そのうち相続税がかかった課税件数は7,034で、相続1件あたりの納付税額は約1,732万円、課税割合は10.12%となっています。全国の主要都市部と同様の申告件数、課税件数を誇っており、課税割合は東京、愛知、神奈川に次いで4位です。
全国平均の相続1件あたりの納付税額は約1,714万円、課税割合は8.35%であることからも、埼玉県は全国平均並みの相続税が発生する相続が、全国平均以上に多いということが分かります。
埼玉県はベッドタウンであり、主要都市部とは機能が異なっていますが、ベッドタウンとして非常に需要が高いことから人口が多く、住宅街が広く形成されているため、不動産への課税が頻繁に行われ、高額な相続税が発生していると考えられます。
税務署名 | 管轄地域 | 申告 件数 | 課税 件数 | 1件当り 納付税額 (万円) | 申告割合 | 課税割合 |
---|---|---|---|---|---|---|
川越 | 川越市 富士見市 坂戸市 鶴ケ島市 日高市 ふじみ野市 三芳町 毛呂山町 越生町 | 1,127 | 872 | 1,287 | 13.27% | 10.27% |
熊谷 | 熊谷市 深谷市 寄居町 | 430 | 351 | 830 | 10.12% | 8.26% |
川口 | 川口市(※) 草加市 | 810 | 609 | 2,131 | 13.64% | 10.25% |
西川口 | 川口市(※) 蕨市 戸田市 | 464 | 342 | 2,521 | 14.23% | 10.49% |
浦和 | さいたま市中央区 桜区 浦和区 南区 緑区 | 1,050 | 752 | 3,056 | 20.42% | 14.62% |
大宮 | さいたま市 西区 北区 大宮区 見沼区 | 884 | 634 | 2,174 | 18.57% | 13.32% |
行田 | 行田市 加須市 羽生市 | 266 | 224 | 1,178 | 9.25% | 7.79% |
秩父 | 秩父市 横瀬町 皆野町 長瀞町 小鹿野町 東秩父村 | 101 | 88 | 796 | 6.79% | 5.91% |
所沢 | 所沢市 飯能市 狭山市 入間市 | 958 | 749 | 1,301 | 13.79% | 10.78% |
本庄 | 本庄市 美里町 神川町 上里町 | 136 | 112 | 1,161 | 7.90% | 6.51% |
東松山 | 東松山市 滑川町 嵐山町 小川町 川島町 吉見町 鳩山町 ときがわ町 | 252 | 193 | 809 | 9.82% | 7.52% |
春日部 | さいたま市岩槻区 春日部市 久喜市 蓮田市 幸手市 白岡市 宮代町 杉戸町 | 867 | 672 | 1,124 | 11.24% | 8.71% |
上尾 | 鴻巣市 上尾市 桶川市 北本市 伊奈町 | 666 | 519 | 1,269 | 13.16% | 10.25% |
越谷 | 越谷市 八潮市 三郷市 吉川市 松伏町 | 634 | 491 | 1,518 | 10.96% | 8.49% |
朝霞 | 朝霞市 志木市 和光市 新座市 | 568 | 426 | 2,774 | 16.07% | 12.05% |
埼玉県計 | 9,213 | 7,034 | 1,732 | 13.25% | 10.12% |
※死亡者数について、川口市は令和元年の町丁別人口を基に川口税務署と川口西税務署に按分
【出典サイト】「各市町村情報 」| 埼玉県
それでは、埼玉県の主要エリアについて、課税割合の高い順に詳しく見ていきましょう。
2-1.浦和エリア
さいたま市中央区、桜区、浦和区、南区、緑区からなる浦和エリアは、さいたま市の南部に位置しています。
さいたま市の面積は東京都23区の約3分の1に匹敵するほどの面積があり、中でも特に浦和エリアは、さいたま市役所や埼玉県庁がある行政の中心的存在となっています。
課税割合は県内最高の14.62%で、東京都23区の中位程度にもなる高い割合となっています。相続1件あたりの納付税額も3,056万円と、埼玉県の平均の倍近い金額となっています。
その理由には、東京都23区に最も近いエリアであり、東京の都心部へJRを使って30分程度と交通網が充実していることが挙げられます。こうした立地の良さが大宮エリアよりも高い利便性に繋がり、地価も全体で高い水準となっています。
また、人口も多いことから、浦和駅周辺は再開発が盛んにおこなわれており、「浦和センチュリーシティ」、「浦和パルコ」などをはじめとする商業施設が数多く建設されています。
首都圏へのアクセスが便利で、買い物やレジャーに困らない街であるにもかかわらず、都心部にはない穏やかな生活が確保できるエリアとして、県内のベッドタウンの中でも需要が高く、さらに商業施設を誘致したい企業などからの需要も高いことから地価が上昇しやすく、それが課税割合の高さに繋がっていると考えられます。
2-2.大宮エリア
さいたま市西区、北区、大宮区、見沼区からなる大宮エリアは、さいたま市の北部に位置しています。
埼玉県の行政の中心である浦和エリアに対して、大宮エリアは商業の中心地といえるでしょう。このエリアの中心駅となる大宮駅周辺には、商業施設やオフィスビルが集中しており、県内最大の繁華街・歓楽街も形成されています。
しかし、大宮駅周辺以外の大半は住宅地として利用されており、畑が残るなど現在でも自然が残っているのが特徴で、緑が多い穏やかな住宅環境があるベッドタウンとして、子育て世代を中心に人気を集めています。
このエリアの課税割合は13.32%で、浦和エリアに次ぐ県内2番目の高い割合となっていますが、相続1件あたりの納付税額は2,174万円と平均より少し高い程度となっています。
地価は大宮区が県内で最も高いエリアとなってはいますが、商業地が中心であり相続の対象になることは少なく、地価の低いところで多くの相続が起きていることから、エリア全体の納付税額が低くなっていると考えられます。
2-3.朝霞エリア
朝霞市、志木市、和光市、新座市からなる朝霞エリアは埼玉県の南部に位置し、さいたま市の南西部と隣接しているエリアです。志木市以外は東京都23区とも隣接しているため、場所によっては都心まで電車1本で行けることから都内へのアクセスが非常に良く、ベッドタウンとして人気があります。位置と交通アクセスの良さから、ひと言で表すと「ほぼ東京」です。
また、和光市はベッドタウンであると同時に工業都市としても発展しており、国の研究施設や研修施設が多く建設されている重要地域となっています。
課税割合は12.05%で県内3番目です。特に注目したいのは、相続1件あたりの納付税額2,774万円という高さです。
理由は、このエリアの地価の高さにあります。特に和光市はさいたま市に次いで県内2位の地価の高さを誇り、他の3市も志木市5位、朝霞市6位、新座市9位と上位を占めていることから、土地の評価額が高くなり、相続税が高額になっていると考えられます。
なお、このエリアは県内で最も平均年齢が低いため、今後はさらに相続が増えることによって課税割合が高くなる可能性があります。地価の変動と合わせて動向を見守り、必要な時に適切な対策が講じられるように備えておきましょう。
2-4.所沢エリア
所沢市、飯能市、狭山市、入間市からなる所沢エリアは、埼玉県の中央南部に位置しており、狭山市以外は東京都の多摩地域と隣接しています。
東京23区からは若干距離があり、これまでの上位3エリアより時間は必要なものの、アクセスの手軽さは変わらず、ベッドタウンとして人気のエリアです。
課税割合は10.78%で一気に10%台まで落ちますが、全国平均を大きく上回り、県内4番目の高さとなっています。相続1件あたりの納付税額は1,301万円と、朝霞エリアの半分程度で、全国平均も下回ります。
住宅都市として発展している所沢エリアですが、所沢市はこのエリアの中心的な役割を担う市となっており、多くの商業施設や高層住宅が建ち並んでいます。また、現在でも再開発が行われており、更なる発展が期待されています。
よって、所沢市の地価は県内11位で上位にあり、その分、相続税が発生しやすくなっていると考えられます。その反面、相続1件あたりの納付税額が低いことについては、他の市との地価の格差があることから、平均値が下がっているためでしょう。
2-5.西川口エリア
川口市、蕨市(わらびし)、戸田市からなる西川口エリアは、さいたま市の南部に位置しており、蕨市以外は東京23区に隣接しています。
このエリアは2つの税務署が管轄しており、後述の7番目にも川口市と草加市が登場します。
県内で最も東京都23区に近いエリアであるため、都心のベッドタウンとしての需要が非常に高く、地価も蕨市3位、川口市4位、戸田市7位と高額です。
課税割合は10.49%と所沢エリアと同水準ですが、相続1件あたりの納付税額は2,521万円と県内3番目の高い金額となっています。
いずれの市も高い地価を誇っていることから、どの地域でも相続が起こると不動産への高額な相続税が課税される可能性が極めて高いため、納付税額の平均が高くなっていると考えられます。油断を許さない、適切な対策が求められるエリアです。
2-6.川越エリア
川越市、富士見市、坂戸市、鶴ケ島市、日高市、ふじみ野市、三芳町、毛呂山町、越生町の6市3町からなる川越エリアは、埼玉県の中央南部、さいたま市の西部から南西部に位置しています。
雄大な大自然と、京都や鎌倉のような古都で和の風情を感じることができる川越エリアは、都心から約1時間とアクセスがいいことも相まって、全国的に有名な観光スポットです。
課税割合は10.27%で4、5番目のエリアと大差なく、埼玉県の平均並みとなっていますが、相続1件あたりの納付税額は1,287万円で非常に低く、県平均を大きく下回っています。
川越市は県内3位の人口を誇り、人気は高いのですが、たくさんの自然と古都を守るための建設制限があることから、地価が上昇しにくく、課税割合が高い反面、相続1件あたりの納付税額は低いという特徴が現れています。
2-7.川口エリア
川口市と草加市からなる川口税務署が管轄するエリアになります。課税割合は5番目の西川口税務署の管轄エリアから少し下がり、10.25%となっています。
相続1件あたりの納付税額は2,131万円で、西川口エリアより400万円も下回ります。
西川口エリアにはなかった草加市は、市名だけで多くの人が「草加煎餅」を思い浮かべるのではないでしょう。その位置から川口市、蕨市、戸田市などと並び、人気のベッドタウンではありますが、これらの市と比べると都心まで距離があることから、地価は県内13位となっており、その結果、相続1件あたりの納付税額が下がっていると考えられます。
2-8.上尾エリア
鴻巣市、上尾市、桶川市、北本市、伊奈町からなる上尾エリアは、埼玉県の中央西部、さいたま市の北部に隣接しているエリアで、全域が住宅都市として発展しています。
上位7つのエリアと比較すると、最も都心まで距離がありますが、上尾市であれば上尾駅から池袋まで35分、新宿まで41分と十分に通勤圏内となっています。また、さいたま市のベッドタウンとしては抜群の立地といえるでしょう。
課税割合は10.25%で川口エリアと同率で、相続1件あたりの納付税額は1,269万円となっています。
上尾エリアはこれまでのエリアよりも地価が低く、最も高い上尾市でも県内18位となっています。よって、川越エリアと同様に、課税割合が高い反面、相続1件あたりの納付税額は低い特徴があります。
2-9.その他のエリア
最後に下から7つになる、春日部(課税割合8.71%)、越谷(8.49%)、熊谷(8.26%)、行田(7.79%)、東松山(7.52%)、本庄(6.51%)、秩父(5.91%)の7エリアをまとめて解説します。
これらのエリアはすべて課税割合が8%以下になります。秩父に至っては5%台と非常に低い数値です。
埼玉県はベッドタウンとしての機能性が、地価や世帯所得に大きく影響しており、東京都23区にどれだけ近いかが、相続税への影響で重要なポイントになっています。
これらの地域の位置を見ると分かるように、埼玉県の西部、北部、東部にあり、前述してきたエリアを取り囲む形になっています。西部になるほど課税割合は低くなっていき、実際にこのエリア周辺で10%を超えているのは、上尾エリアのみです。
ベッドタウンとしての需要が低い地域であることが、課税割合の低さにつながっていると考えられます。
しかし、単に課税割合の低さだけで安心してはいけません。
このような地価が低いエリアは、広大な敷地に自宅を建てていたり、たくさんの農地や山を所有している可能性が高く、地価の高い地域と同様の課税が行われることもあります。
地域ごとの特徴だけでなく、田舎特有の事情にもしっかりと目を向け、適切な相続税対策が講じられるように準備をしておくことが重要です。
3.埼玉県の税理士情報
埼玉県が属する関東信越税理士会は、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、新潟県、長野県が範囲となっており、税理士数の総数は7,442人(令和3年7月末時点)で、そのうち埼玉県には3,263名の税理士がいます。関東信越税理士会に属する税理士の4割以上が埼玉県にいるということになります。
人数だけを見ると、関東地方では東京都や神奈川県に次ぐ人数となっており、多いように感じてしまいますが、埼玉県の課税件数は7,034件であることを考えると、1件当たりの税理士数は0.4人、申告数の9,213件で考えると0.3人とかなり不足していることが分かります。
【参考サイト】「 関東信越税理士会とは‐会員数」 │ 関東信越税理士会
他県に比べて不足傾向が強い原因は、埼玉県の特徴でもあるベッドタウンという点です。
埼玉県は東京都に近くアクセスが容易に行えますが、反対に捉えると東京都からもアクセスが手軽だということでもあります。つまり、東京都に在籍している税理士が、埼玉県の仕事にも足を延ばしており、特に隣接した都市である川口エリアやさいたま市などは需要が高いため、その傾向が強く現れていると考えられます。
よって、埼玉県の税理士数自体は少ないですが、近県を含めて考えると対応できる税理士は十分いるため安心してください。
また都会の税理士は地方に比べて競争が激しい分、優秀な人が多いのが特徴です。東京23区やさいたま市など課税割合が高い地域ほど、より多くの実績や経験を積んでいるため、その傾向が強くなります。
ただし、秩父エリアなどの西部にお住いの場合には、近くに税理士が少ないうえに、東京都23区の税理士も距離があり過ぎるため対応不可としている場合があります。
その場合にはまず、さいたま市内まで範囲を広げて探すと良いでしょう。
また、関東信越税理士会の埼玉県支部連合会では、埼玉県内にある15の支部で無料相談が開催されているため、このような機会を積極的に利用してください。原則として事前予約制であることに注意しましょう。詳しくはこちらをご確認ください。
【参考サイト】「無料相談」|関東信越税理士会 埼玉県支部連合会
ただ、実際に依頼する税理士を探すことになった場合には、どのような税理士が優秀で、どのような税理士が相続税に疎いのかを、一般の方が判断することは難しいでしょう。初めて短時間で会う税理士であれば尚更です。
当サイトは信頼できる優秀な税理士のみを紹介しています。是非、ご活用いただければ幸いです。