1.滋賀県の相続税申告の状況
滋賀県の令和元年における相続税の申告件数は1,256件、そのうち相続税がかかった課税件数は1,021件です。
全国における課税割合と相続1件あたりの納付税額の平均は、8.3%、1,714万円であるのに対して、滋賀県では課税割合は7.72%で全国14位、相続1件あたりの納付税額は約990万円で全国35位となっています。
課税割合は全国の上位3割に入っている高さですが、反対に納付税額は下から3割に入る低さであり、地価が低いことによる評価額の低さが影響していると予想できます。
近畿2府4県の課税割合は、大阪8.4%、京都府9.59%、奈良県9.18%、兵庫8.67%、和歌山6.81%となっており、滋賀県は和歌山県に次いで低い数値となっています。
また納付税額では、大阪1,881万円、京都府1,682万円、奈良県1,424万円、兵庫1,622万円、和歌山1,062万円と並ぶ中、滋賀県のみ1,000万円を切る結果となっています。
滋賀県には税務署の管轄エリアが7ヶ所ありますが、課税割合を見てみると県の平均値を超えているのは3ヶ所のみとなっており、その他の4ヶ所では大きく平均値を割っています。特に上位2ヶ所の草津エリアと大津エリアは県内で圧倒的な数字を誇っており、3位との差が非常に大きくなっています。
草津エリアと大津エリアの都市部は地価が上昇傾向にあり、今後は更に相続税額も上昇する危険性があります。その他のエリアについては、地価は下落傾向で、人口も減少傾向にあり、都市部への人口移転が起きている可能性があります。
このように滋賀県では相続税の二極化が進んでおり、今後はより鮮明に表れていく可能性が高いと考えられ、上位2ヶ所を中心とした相続税対策が重要になります。
税務署名 | 管轄地域 | 申告 件数 | 課税 件数 | 1件当り 納付税額 (万円) | 申告割合 | 課税割合 |
---|---|---|---|---|---|---|
大津 | 大津市 | 384 | 307 | 781 | 12.24% | 9.79% |
彦根 | 彦根市 愛荘町 豊郷町 甲良町 多賀町 | 145 | 123 | 1859 | 9.34% | 7.92% |
長浜 | 長浜市 米原市 | 110 | 94 | 735 | 6.18% | 5.28% |
近江八幡 | 近江八幡市 東近江市 日野町 竜王町 | 175 | 142 | 789 | 7.62% | 6.18% |
草津 | 草津市 守山市 栗東市 野洲市 | 320 | 251 | 1096 | 12.78% | 10.03% |
水口 | 甲賀市 湖南市 | 96 | 84 | 825 | 7.40% | 6.47% |
今津 | 高島市 | 26 | 20 | 826 | 3.97% | 3.05% |
滋賀県計 | 1,256 | 1,021 | 990 | 9.50% | 7.72% |
【出典サイト】「市町紹介」|滋賀県ホームページ
2.各エリアの特徴と詳細
それでは課税割合の高い順に、それぞれの主要市町村の特徴や地価の状況を解説していきます。
2-1. 草津エリア
草津エリアは、草津市、守山市、栗東市、野洲市からなり、県の中央寄り南西部に位置しています。草津市は大津市の南東部と隣接しています。
草津市はこのエリアの中心となる都市で、大津市に次ぐ県下2位の人口を有しています。古くから交通拠点として発展してきた歴史があり、JR草津駅周辺の整備に伴って都市機能が集約され、ビジネス地として発展しています。また、大津市よりも歴史的建造物が少ないことから、都市開発などを妨げる要因が少ないことも、発展の後押しをしていると考えられます。
課税割合は10.03%で県内1位、相続1件あたりの納付税額は1,096万円で2位となっています。
草津市の地価は県内1位で1平米あたり11万円となっています。周囲の市も高く、守山市3位、野洲市4位、栗東市5位と並んでおり、平均値を下げる市がありません。どの市に居住していても相続税が課税される可能税が高く、大津市を上回る相続税の危険性があることをしっかりと把握しておくことが重要です。
2-2. 大津エリア
大津エリアは大津市のみからなるエリアで、県の南西部に位置しています。
滋賀県の県庁所在地であり、人口は県下最多の約34万人を擁する中心都市ですが、市域の大部分は森林で、その中に延暦寺を始めとした寺社や文化財や、ビジネス地、商業地が点在しています。豊かな自然の中に集約された都市機能がバランスよく共存する都市です。
また、京都、大阪、神戸にもアクセスが良く、特に京都市と隣接していることからベッドタウンとしての役割も持っており、市内には住宅地が広く建設されています。
課税割合は9.79%、相続1件あたりの納付税額は781万円となっており、課税割合の高さの割には納付税額が低くなっています。
地価は1平米あたり9万円で草津エリアに次ぐ県内2位の高さとなっており、課税割合は県内トップ2として県の平均を底上げしています。
大津市はさまざまな需要が集中していることが特徴であるため、ビジネス地や商業地でありながら相続が起きる可能性も高く、高額な相続税が課税されやすい都市となっています。
2-3. 彦根エリア
彦根エリアは、彦根市、愛荘町、豊郷町、甲良町、多賀町からなるエリアで、県中央東部に位置しています。
中心となる彦根市は、国宝に指定されている彦根城があることで有名で、それをイメージしたゆるキャラ「ひこにゃん」は、ご当地キャラブームをけん引しました。
戦争の被害が比較的少なかったかことから、城下町や宿場町の街並みが現代でも多く残っているため、貴重な史跡を見ようと海外からの観光客も多く訪れる観光地として人気を博しています。
また、工業を中心とした経済活動も活発で、経済面においても中心地となっています。
課税割合は7.92%で県内3位となっており、県の平均値を超える最後のエリアです。
地価は彦根市が県内7位ですが、愛荘町、豊郷町、甲良町、多賀町が19位中15~19位を占めていることから、課税割合の平均を下げているものと考えられます。
注意しなければならないのは、相続1件あたりの納付税額1,859万円という県内断トツ1位の高さです。
彦根市の地価はエリアによって大きく差があるのが特徴で、市の平均は1平米あたり5万円程度ですが、彦根駅周辺では8万円程度と県内2、3位の高さに匹敵しています。
思いがけず高額な相続税が発生する可能性があるエリアであるため、自身の相続財産の金額を生前にしっかり確認しておくことが重要になります。
2-4. 水口エリア
甲賀市と湖南市からなる水口エリアは、県の最南部に三重県と京都府を繋ぐように位置しています。
甲賀市はその特殊な形状による利点が大きく、食品加工や医薬品製造などをはじめとした様々な企業が進出しています。
湖南市は古くから近畿圏と中部圏をつなぐ交通の要衝として発展しており、その交通の利便性を生かすため、県下有数の工業団地である湖南工業団地が造成されています。
またこのエリアはその立地を生かして、京阪神都市圏のベッドタウンとしても機能しています。
課税割合は6.47%、相続1件あたりの納付税額は825万円となっており、いずれも県内平均を下回っています。
理由としては、地価が湖南市8位、甲賀市13位と低いことから土地に対する課税は発生しにくいこと、また、このエリアは大手企業の工場が多いことから、社宅や団地などで生活する人が多くいため、土地自体を所有していない人も多いことが考えられます。
しかし、大手企業に勤めていることによる所得の高さから、預金など土地以外の課税に注意しなければなりません。
2-5. 近江八幡エリア
近江八幡市、東近江市、日野町、竜王町からなる近江八幡エリアは、県の中央から東部に位置しています。
近江八幡市は城下町として栄えていた頃の面影を色濃く残しており、風情豊かな趣を感じる景色が特徴です。
エリアの大半は住宅地として利用されており、特に東近江市は地価が1平米あたり3万と低いことから、広い土地に憧れの注文住宅の夢が叶うとして、若いファミリー世帯に人気があります。
エリア内で最も高い近江八幡市の地価であっても、1平米あたり5万円程度であることから、課税割合は6.18%、相続1件あたりの納付税額は789万円の低さです。
多くの人に相続税が関係するエリアではありませんが、広い住宅を所有している場合などは、高額な相続税が課税される可能性が高あるため注意が必要です。
2-6.長浜エリア
長浜市と米原市からなる長浜エリアは県の北部に位置し、福井県と岐阜県に隣接しています。
宿場町や長浜城の城下町として栄えてきた歴史ある街並みが特徴です。市の経済としては広い土地を生かした工業が中心となっており、長浜市では外国人労働者も増えています。
課税割合は5.28%、相続1件あたりの納付税額は735万円と、近江八幡エリアからまた一段と低くなります。
このエリアは都市部から離れるためベッドタウンとしての需要がなく、地価は長浜市、米原市ともに1平米あたり2万円程度の低さで、近年では人口減少が起きていることから、さらに住宅地の需要は減っており、地価もまだ下落するでしょう。
地価が低いこと、人口が少ないことから相続税が発生する可能性そのものが低くなっていると考えられます。
2-7.今津エリア
最後のエリアになる今津エリアは高島市のみからなります。高島市は県の北部に位置しており、県内2位の広い面積を誇る市で、東西は広く福井県に、西部は京都府に隣接しています。市の7割超が森林であり、琵琶湖に注ぐ多くの水を生み出している豊かな自然が特徴の市です。
農業や水産業、工業に商業と多種多様な産業が各地で行われており、卸売・小売業、医療・福祉といった第3次産業に従事している人が多くなっています。
課税割合は3.05%、相続1件あたりの納付税額は826万円となっており、課税割合については県内のみならず全国的にも非常に低い結果となっています。
高島市の地価は1平米あたり2万台前半で、県内の市部の中では最下位となっていることから、相続税の大部分を占めるはずの土地への課税がされにくくなり、ひと際低い課税割合となっていると考えられます。
3.滋賀県の税理士情報
滋賀県の税理士が所属している近畿税理士会には、滋賀県の他に大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、和歌山県が所属しており、その会員数は15,026人(令和3年8月1日現在)となっています。
その大半は大阪、京都、兵庫の都心部に在籍しており、滋賀県にいる税理士は493 人(平成30年3月31日現在 日本税理士会連合会 平成30年5月発行税理士界)となっています。これは、京都府や三重県など周囲の自治体と比較すると非常に少ない数です。
ただ、所属人数だけで見ずに相続税申告件数に対する人数で見ると、相続税申告数1件当たりの税理士数は0.39人となり、全国的には平均並みで特別不足している県ではありません。
エリア別の分布を見ると、滋賀県の相続税2大エリアである大津市に166名、草津市に59名が在籍しており、この2市だけで約4割の税理士が在籍していますが、残りの6割は彦根市などに満遍なく在籍しており、滋賀県の良い特徴であるといえます。
自治体によっては京都府や三重県と隣接しているため、税理士探しの範囲に含めると良いでしょう。
草津エリアと大津エリアについては、高額な相続税が発生する可能性が高く、地価の上昇が続いていることからも、その時の状況に合わせた正確な土地評価の知識がより必要とされます。
税理士の在籍数も多いことから、その土地に精通した税理士を探すことをおすすめします。
また、より正確な評価ができるように、不動産鑑定士との連携体制も重視しながら探しましょう。
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