
1.栃木県の相続税の概要
栃木県は関東圏に位置しますが、都心からは離れているため、相続税に関しては、全国レベルでは中位くらいに位置しています。
平成28年では、栃木県全体の申告割合は7.81%で全国24位、そのうち実際に課税された課税割合は6.30%でこちらも同じく全国24位です。
被相続人1人当たりの相続税額で見ても、約1,100万円と全国25位であり、だいたいちょうど真ん中に位置していることがわかります。
2.地域別の相続税データ
平成28年都道府県別相続税課税状況のデータでは、栃木県には次のような相続税のデータが現れています。そこで、このデータを元にしながら各地域の相続税の特徴について解説していきます。
税務署名 | 管轄地域 | 申告 件数 | 課税 件数 | 1件当り 納付税額 (万円) | 申告割合 | 課税割合 |
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宇都宮 | 宇都宮市 上三川町 | 548 | 429 | 1,569 | 11.04% | 8.64% |
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足利 | 足利市 | 148 | 127 | 921 | 7.86% | 6.74% |
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栃木 | 栃木市 小山市 下野市 壬生町 野木町 | 372 | 299 | 858 | 7.86% | 6.32% |
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佐野 | 佐野市 | 127 | 109 | 884 | 8.17% | 7.01% |
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鹿沼 | 鹿沼市 日光市 | 154 | 125 | 877 | 6.48% | 5.26% |
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真岡 | 真岡市 益子町 茂木町 市貝町 芳賀町 | 82 | 74 | 917 | 4.79% | 4.32% |
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大田原 | 大田原市 那須塩原市 那須町 | 138 | 104 | 1,044 | 5.96% | 4.49% |
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氏家 | 矢板市 さくら市 那須烏山市 塩谷町 高根沢町 那珂川町 | 105 | 84 | 673 | 5.54% | 4.43% |
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栃木県計 | | 1,674 | 1,351 | 1,100 | 7.81% | 6.30% |
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2-1.宇都宮
宇都宮税務署の管轄となる宇都宮市と上三川町。この地域は栃木県の中央部に位置しており、宇都宮市は栃木県の県庁所在地でもあります。宇都宮市は首都圏の都市の中でも人工が多く、北関東最大の都市として機能しています。
特に、宇都宮市は住みやすい都市として人気を集めており、人口50万人以上の都市の中でもトップクラスの人気です。そのため、ここ数年人口も増えており、この地域での相続の中心は宇都宮市になっているといえるでしょう。
宇都宮税務署の1年間の相続税申告件数は548件、課税件数は429件です。相続一件あたりの納付税額は1,569万円、課税割合は8.64%となっています。栃木県の平均課税割合である6.30%を超えており、総申告件数の約30%を占めています。つまり、栃木県の相続の中でも宇都宮は中心地域となっており、県内で最も相続への注意が必要な地域です。
2-2.足利市
栃木県の南西部に位置し、群馬県と隣接している足利市。平安時代や室町時代などで、時代の中心地になったことから歴史ある街として知られています。また、テーマパークの開園、映画やドラマのロケ地の誘致が盛んに行われており、観光客が大きく増えている地域です。
足利市の1年間の相続税申告件数は148件、課税件数は127件となっています。相続一件あたりの納付税額は約921万円、課税割合は6.74%です。課税割合は剣の平均を超えており、一件あたりの納付税額は平均を超えてはいないものの県内3位の高さです。課税割合が高いことから、しっかりとした相続税対策が求められています。
2-3.栃木市、小山市、下野市
栃木県の南部にある栃木市、小山市、下野市は、全て栃木税務署の管轄地域となっています。栃木市が県内3位、小山市は県内2位の人口となっており、特に小山市はニュータウン地域の開発が行われており、今後も人口が増えていく可能性が高い地域です。
また、この地域は基本的に宇都宮市や栃木市のベッドタウンとして機能しています。しかし、小山市の発展に伴い、栃木市や下野市が小山市のベッドタウンになるような、商業圏が形成されつつあります。そのため、今後の小山市の発展によって大きく街の役割が変化していく要注意の地域ともいえます。
栃木税務署の1年間の相続税申告件数は372件、課税件数は299件です。一件あたりの納付税額は7.86%、課税割合は6.32%となっています。この地域は管轄範囲が広いことや人口が増加しているから、から申告件数が増加していると考えられます。そして、比較的課税割合も高いため、相続税への対策は欠かせない地域ともいえます。
2-4.佐野市
栃木県の南西部に位置し、栃木市と足利市に挟まれている佐野市。県内5位の人口を起こる佐野市は、主にベッドタウンとして機能しており、栃木市などへの通勤者が多くなっています。また、差の市内にはアウトレットモールや温泉などがあるため、休日には市外から多くの観光客が訪れています。
佐野市の1年間の相続税申告件数は127件、課税件数は109件です。一件あたりの納付税額は884万円、課税割は7.01%です。佐野市は課税割合が県内2位という高さを誇り、課税されやすい地域です。実は、佐野市内では全国平均よりも高齢化が進んでおり、所得の高い高齢者が多いことから、課税割合が多くなりやすいと考えられるでしょう。
2-5.鹿沼市、日光市
栃木県の北西部に位置する鹿沼市と日光市は、鹿沼税務署の管轄地域です。この地域は古くからの歴史あり地域として人気を集めています。鹿沼市の鹿沼今宮神社祭の屋台行事や、日光市の日光東照宮などは外国からも観光客が訪れる人気スポットです。
鹿沼税務署の1年間の相続税申告件数は154件、課税件数は125件です。一件あたりの納付税額は6.48%、課税割合は5.26%となっています。鹿沼市と日光市は工業や観光産業が盛んですが、どちらかというと宇都宮市のベッドタウンとしての機能が強く現れています。宇都宮市などとは業種が異なり、職種による所得差が課税割合などにも影響していると考えられます。
2-6.真岡市
栃木県の南東部に位置し、茨城減と隣接している真岡市。真岡市はもともと農業が盛んでしたが、農業以外の産業が少なかったことから、工業化が進んでいきました。工業団地が作られるほど成長し、成長に伴う人口増によって商業も活発化し、現在では農業、工業、商業がバランスよく発展した地域となっています。
真岡市の1年間の相続税申告件数は82件、課税件数は74件です。一件あたりの納付税額は917万円、課税割合は4.32%となっています。課税割合は県内で最も低いのですが、一件あたりの納付税額は県内で4位と、高額な課税が行われていることが特徴です。これは、さまざまな経済活動が活発なことから、相続税が課税される資産が異なり、それが課税割合と課税額に影響を与えているといえるでしょう。
2-7.大田原市、那須塩原市
栃木県の北部に位置する大田原市と那須塩原市。この地域は豊かな自然が残っており、歴史的な名所が多いことから観光客が多く訪れています。また、那須塩原市では製造業や食料品などを中心とした工業が発達しており、この地域の経済活動の中心地となっています。
大田原市と那須塩原市は大田原税務署の管轄となっており、この地域の1年間の相続税申告件数は138件、申告件数は104件です。相続一件あたりの納付税額は1,044万円、課税割合は4.49%です。
この地域は工業を中心とした経済活動が盛んであり、宇都宮市などに匹敵するほどです。そのため、課税割合は低くても県内2位という高額な課税が行われています。課税される可能性は低いのですが、少しでも税負担を軽減するためには適切な相続税対策が必要です。
2-8.矢板市、さくら市
栃木県の北部にある、矢板市と佐倉市。高原山など豊かな自然に囲まれたこの地域では、農業や機械組立工を中心とした経済活動が盛んに行われています。また、宇都宮市や那須塩原市など、経済圏に近いことからベッドタウンとしての機能も持ち合わせています。
矢板市と佐倉市は氏家税務署の管轄地域となっており、この地域の1年間の相続税申告件数は105件、申告件数は84件です。相続一件あたりの納付税額は673万円、課税割合は4.43%です。
一件あたりの納付税額は最下位、課税割合は7位と、そこまで多大な相続が起きているわけではありません。ただ、この地域は自然が豊かなことや、農業が盛んなことから、所有している土地などが広い場合があります。こうした世帯では相続税が課税されやすいため、あらかじめどれくらいの土地を所有しているのか確かめておきましょう。
3.栃木県の相続税事情
3-1.宇都宮市以外にも注意が必要
栃木県内の各地の相続税の課税状況を見てみると、宇都宮市だけが大きく飛び抜けたデータとなっています。課税額も課税割合も2位とは大きな差があり、栃木県内の相続が集中していることが分かります。ただ、宇都宮市に相続が集中していますが、各地域でも注意すべき相続の状況が分かります。
課税額では、大田原や真岡などが900万円を超えており、課税割合では佐野市が7%を超えるなど、それぞれの地域で突出したデータが現れています。さらに、足利市や栃木市などでは課税額と課税割合がともに高く、相続税への注意が必要です。そのため、栃木県内の相続では宇都宮がピックアップされがちですが、自分が生活している地域や世帯の状況にも注意しながら最適な対策を準備しましょう。
3-2.栃木県の地価の特徴
相続税への影響が大きい地価。実は、栃木県の地価には大きな特徴が現れており、2018年のデータで前年から上昇しているのは宇都宮市と下野市のみとなっています。下野市は宇都宮市と発展を続ける小山市のベッドタウンとして機能していることから、人口増に伴い地価が上昇していると考えられます。
栃木県全体の地価は0.21%のマイナスとなっており、県内の全域で見られているマイナス変動を受けた結果となっています。つまり、宇都宮市だけが飛び抜けた相続税のデータとなっているのは、こうした地価による影響が現れていると考えられます。
また、近年注目されている小山市は変動率0.01%のマイナスとなっていますが、駅を中心とした地域では地価の上昇が見られています。そのため、今後の発展に伴い地価が高くなれば相続税が課税されやすく、高額な課税がされる可能性があります。地価の変動にも注目しながら、相続税への対策をしっかりと進めましょう。
4.栃木県の税理士の状況
栃木県の税理士事業者数は402件、在籍整理指数は764名です。税理士一人あたりの相続税対応件数は2.19件となっています。関東の他の地域と比べると在籍税理士数は少ないのですが、税理士一人あたりの対応件数を見ると附則じている状況ではありません。そのため、実績などを考慮して税理士を選ぶことで、県内の税理士でも十分な対策ができるでしょう。
一方で、関東では東京などの都市部に税理士が集中しやすい傾向があります。そこで、もし都市部への通勤などをしている場合には、都市部でも税理士を探してみましょう。栃木県内に比べて対応件数が多く、さまざまな相続実績から、世帯状況に合わせた対策が可能です。
ただし、都市部の税理士は地元の情報を掴みにくかったり、交通費などが別途必要になったりします。都市部で税理士を探す場合には、栃木県での対応実績や依頼以外に必要な費用にも注目することが大切です。