1.あきる野市の相続税申告の特徴
あきる野市は東京都の西部、都心部から約40~50キロメートル圏にあります。
面積73.47㎢の東西に長い市で、周囲を川と山に囲まれている静かな環境となっています。
日常的に大自然と触れあうことができること、都心よりも不動産価格が安いこと、電車通勤が十分に可能であることなどから、子育てファミリー層に人気の都市です。
今回は、そんなあきる野市の相続税申告について詳しく解説していきます。
1-1.あきる野市の相続税申告状況
令和元年の相続税申告状況のデータによると、あきる野市を管轄している青梅税務署、東京都、全国における相続税申告状況は次の通りとなっています。
申告割合 | 課税割合 | 相続1件当 納付税額 | |
---|---|---|---|
青梅税務署 管轄エリア | 12.64% | 9.31% | 1,570万円 |
東京都平均 | 22.56% | 16.25% | 3,029万円 |
全国平均 | 10.71% | 8.35% | 1,714万円 |
1-2.田舎エリアだが全国平均超え
青梅税務署の数値は東京都を大きく下回り、全国平均を1%程度超えています。
多摩地区の中でもさらに西側に位置している青梅税務署エリアは、自然が豊かな田舎であり、東京都の中では相続税課税が少ないエリアであることは事実です。
しかし、全国平均を超えている点には注目が必要です。
全国平均と聞くと、47都道府県の真ん中あたりを想像するかもしれませんが、課税割合8.35%を47都道府県の課税割合ランキングにあてはめてみると、12位の大阪府8.40%に次ぐ13位の位置にあたります。全国平均相当でも、相続税の要注意エリアなのです。
そして青梅税務署の9.31%は、同ランキングにおいて7位にあたります。
あきる野市は田舎ですが、あくまでも東京都であり、都心へ通勤している人が多いことからも、十分な相続税対策が必要なエリアです。
1-3.青梅税務署は4市3町1村を管轄している
青梅税務署は、あきる野市、福生市、青梅市、羽村市、瑞穂町、日の出町、檜原村、奥多摩町の4市3町1村を管轄しており、東京都の西側のエリアほとんどが該当します。
上記の数値はこれらの平均値であり、管轄している市町村が多い分、1市町村あたりの数値が薄れています。
特に、檜原村、奥多摩町は、都心部から離れていることから地価も安いため、ある程度低い課税割合が想定されます。
あきる野市も、その立地と自然溢れる環境から考えて、あまり高い課税割合は想定できません。
1-4.住環境意識への変化から多摩地区西部も注目
近年では住宅に求める条件が変わってきており、都心の便利さよりも豊かな自然環境の中で心にゆとりある暮らしを求める人が増加しています。新型コロナウイルスの流行によって、その傾向はさらに強くなっています。
あきる野市には鉄道が通っており、車があれば不便なく生活できる街であることから、近年の需要にマッチしており、富裕層であっても敢えてあきる野市に居住するという人も増えていくと考えられます。
2.あきる野市の特徴
あきる野市の面積は7.47平方キロメートルで、東京26市の中で3番目に大きい都市で、人口約8万人が暮らしています。
東側は福生市、羽村市、西側は檜原村、奥多摩町、南側は八王子市、北側は日の出町、青梅市に接している内陸の都市になります。
西側は奥多摩の山々に連なる山間部となっており、川釣りやキャンプなどのアウトドアレジャーを楽しめるエリアです。
東側は緩やかな丘陵地で、南側に秋川、北側に平井川が流れ、その間に市街地が広がっています。
それでは、あきる野市の特徴とそれが相続税課税へどのように影響しているのかを見ていきましょう。
2-1.あきる野市の秋川駅から都心へは1時間程度
あきる野市には、JR五日市線が単線で東西に走っており、武蔵五日市駅が終点となっています。市の中央までしか路線がありませんが、武蔵五日市駅以降は渓谷などが広がる自然エリアになるためです。
市内には4つの駅があり、中心となるのは秋川駅です。
駅から徒歩圏内に市役所や図書館、ショッピングモールなどが揃っている便利な街で、住宅地としても人気があるエリアになります。
マンションはほとんどなく、視界を遮るものがない街並みは東京都であることを忘れさせます。
このようにゆったりとした環境にありながら、秋川駅から新宿駅・渋谷駅までは1時間程度、品川駅までは1時間半程度となっており、都心へ十分に通勤することができます。
2-2.あきる野市は車社会
あきる野市は広い市域に鉄道は1路線のみとなっており、鉄道を主な交通手段として使う暮らしには、決して向いているとはいえません。
しかし、市の東部を南北に縦断する圏央道をはじめとして道路網が充実しているため、車を所有していれば不便のない生活を送ることができます。むしろ、車は必須であるといって良いでしょう。
2-3.高齢化の進行は顕著
あきる野市の令和2年1月1日時点での人口は80,667人、そのうち65歳以上の高齢者は24,017人となっており、高齢化率は29.8%となっています。
令和元年10月1日時点での全国の高齢化率は28.4%であり、あきる野市は1.4%も高齢化が進んでいる状況となっています。
他の都市よりも相続が起こりやすいということです。
2-4.あきる野市の地価
令和4年最新の公示地価によると、あきる野市の平均地価は1㎡あたり10万288円で、東京都全59位中49位の金額となっており、10万円台最後の都市です。
43位まで20万円台であるにもかかわらず、50位では8万円、最下位は7,000円となっていることから、44位以降からは地価が下がるペースが急速に上がっていることが分かります。
44位以降は田舎エリアに該当すると考えると良いでしょう。
市内で最も地価が高いエリアは市の東部にある福生駅に近いエリアで、1㎡あたり20万円となっています。
福生駅には大きな商業施設があり栄えていることから、あきる野市民の多くが買い物に訪れます。
前年比での地価の変動率は、秋川周辺が最も高く+0.16%となっており、注目エリアとなっていることが分かります。
反対に最も地価が低いエリアは、終点駅になる武蔵五日市で、1㎡あたり6万となっています。
山が多い自然エリアでありながら、50坪の土地で1,000万円にもなります。都内では安価ですが、地方都市では市街地の中心にあるような金額であり、東京の地価の高さを物語っています。
2-5.あきる野市の地価は管轄内4位
青梅税務署が管轄している8エリアにおいては、あきる野市の地価は4番目に高くなっています。東京都全59位中のランキングは、以下の通りです。
市名 | 1㎡当り | 東京都での ランキング |
---|---|---|
福生市 | 20万円 | 42位 |
羽村市 | 13万円 | 46位 |
青梅市 | 10万円 | 48位 |
あきる野市 | 10万円 | 49位 |
瑞穂町 | 8万円 | 50位 |
日の出町 | 7万円 | 51位 |
奥多摩町 | 2万円 | 53位 |
檜原村 | 1万円 | 55位 |
※ 青梅市:10万3,828円/㎡、あきる野市:10万0,288円/㎡
檜原村、奥多摩町については2万円台以下となっており、都心のベッドタウンとしても機能していないことから平均所得は低いと考えられるため、相続税課税はほとんど起こっていないでしょう。
青梅税務署での相続税の中心地は福生市、羽村市、青梅市、あきる野市、瑞穂町、日の出町では同程度の相続税課税が発生していると考えられます。
あきる野市単独での課税割合は公表されていませんが、青梅税務署の9.31%を少し下回っているのではないでしょうか。
3.あきる野市の税理士情報
全国には80,054人(令和4年2月末日時点)の税理士がおり、その3割にあたる23,841人が東京都にいます。
そしてそのうち、あきる野市の税理士はわずか27人となっています。青梅税務署が管轄している4市3町1村の合計でも130人しかいません。
青梅税務署での令和元年における相続税申告件数は611件であったことから、税理士1人あたりの相続税申告数は0.21件になります。
東京都全体の0.76件と比較すると、その少なさが明確になります。
しかし、心配することはありません。大都会東京ならではの税理士探しを行いましょう。
3-1.多摩地区の税理士数が少ない理由
あきる野市は面積の大きな市ですが、その中に税理士は27人しかいません。ただし、税理士が少ないのは、あきる野市に限ったことではなく、多摩地区全域にいえることです。
全国の3割の税理士が集中している東京都でなぜそのようなことになっているのか、それは東京都にいる税理士の9割が東京23区に所属しているためです。
残りの1割の税理士を広い多摩地区で分け合うことになりますが、同じ多摩地区でも武蔵野市や三鷹市などには富裕層が多く、良い報酬を得られる仕事があるため所属する税理士が多くなります。
よって、反対にあきる野市など西部に位置しているエリアは、極端に税理士が少ないという状況に陥ってしまうのです。
3-2.相続財産が多い場合には東京23区の税理士
相続税申告は、10人の税理士がいれば10通りの申告書が出来上がるといわれているほど、繊細なものです。つまり、相続税に強い税理士であればあるほど、相続税が少なく済む可能性が高いということになります。
あきる野市は一般的な所得層の人が多く居住している街であり、高級住宅地などはないため、複雑な相続税申告は起きにくい環境にあるでしょう。
3-3.相続財産が少ない場合には近場の税理士でも
あきる野市は地価が低く、マイホームを所有しているだけでは相続税が課税される可能性は低いでしょう。相続税が発生するとしても、基礎控除を若干超える程度の申告が多いのではないでしょうか。
そのようなケースでは、わざわざ東京23区に出ずとも、東京税理士会青梅支部に所属している税理士から探すと良いでしょう。
ただし、相続税に弱い税理士には注意が必要です。
何年も相続税申告を行っていない場合には、税理士であっても基本的な相続税申告書も作成できない可能性があるからです。
【参考サイト】税理士登録者数 | 日本税理士会連合会、東京税理士会HP、東京税理士会 青梅支部HP