千代田区の相続と税理士事情
23区内で最も相続税の発生率が高い千代田区。その実態を、所得や地価などから検証していきましょう。
1.千代田区の相続データ
平成27年度のデータによると、東京都千代田区の相続税の申告件数は186件、課税件数は144件、課税割合は37.60%となっています。相続が発生した人の約4割に相続税が課税されており、この割合は23区で最も高い数字となっています。
申告割合で見るならば48.19%であり、なんと半数で相続税の申告が生じています。
また、相続1件あたりの納付税額は約1億1,800万円となっており、こちらも23区内で最も高額な金額です。2番目に多い中央区が約5,200万円ですので、倍以上千代田区の方が上回っており、ずば抜けて高額な税金が課されていることがわかります。
配偶者あり、子2人として、納付税額から逆算すると、だいたい7億5,000万円程度の財産額になります。もし、小規模宅地の特例等を利用してこの税額とすると、本来の財産額はもっと大きいことになります。
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つまり、千代田区は相続税が発生しやすい地域というだけでなく、想像できないような高額な相続税が課せられている。それが、千代田区の相続の大きな特徴となっています。
2.千代田区の地価
2-1.千代田区の代表的な地域と地価
まずは、千代田区の代表的な地域の特徴を見ながら、地価との関わりを探っていきましょう。
2-1-1.丸の内
日本の首都である東京都、その出入り口にもなる東京駅の周辺が丸の内です。丸の内は、東京駅と皇居外苑に挟まれた、比較的狭い地域です。しかし、東京駅という交通網の中心地であるため、古くからオフィスビルが立ち並ぶビジネス街として発展しています。
ただ、近代的なビルが立ち並ぶ一方で、一昔前に建てられたレトロな建物も多いため、趣きのある町並みが広がっています。近年では、老朽化したビルが建て替えられたり、商業施設が増えたりと、再開発が行われており、今なお活発的な発展が続いています。
丸の内の地価の平均値は、1平方メートルあたり約2,600万円と想像以上に高額な価格となっています。もちろん、千代田区内で最も地価の高い地域です。さらに、前年度よりも値上がりしており、ますます地価が高騰する可能性があります。
これは、ビジネスの中心地としての価値が高いことだけでなく、新たな再開発により今までとは違った魅力が増えることが期待されている身体と考えられます。日本の首都のさらにその中心地である丸の内。今後もビジネスと商業、どちらも日本の経済の中核を担う地域として発展していくでしょう。
2-1-2.大手町
丸の内と中奥の隣接している大手町。丸の内とともに日本経済の中心地といわれることもあるように、大手の銀行や商社、マスコミ関係の本社などが多く集結しています。近年では、高層ビルが建設されることも増え、日本屈指のオフィスビル街へと発展してきました。
ただ、ビジネスがメインの町となったことで、昼夜の人口差が大きくなり、約3倍以上の差をつけて夜間人口が少なくなっています。マンションなども建設されていますが、その数極めて少数なため、大手町で生活している住民は非常に少ないといわれています。
大手町の平均地価は、約1,700万円と千代田区内では3番目に地価の高い地域です。発展が目標点に達したためなのか、ここ数年は地価が下落傾向にあります。しかし、丸の内から続くオフィス街を形成しているため、大きな値下がりとはなっていません。
また、オフィスビルの老朽化に対する建て替えのために、2027年に完成予定とする超高層ビルの建設、再開発の計画が発表されました。そのため、今後は地価の上昇が期待されており、上昇率に目が離せない地域となっています。
2-1-3.秋葉原・神田
日本だけでなく世界からも注目され、一大観光地に成りつつある電気街の秋葉原。一昔前は、アングラな電子機器を取り扱っていた露店などがメインでした。現在では、そうしたお店が減り、アニメやゲーム、家電製品や音楽ソフトなど、よりさまざまなジャンルのモノが販売されるようになりました。
また、秋葉原駅周辺には多くの複合ビルが相次いで建設されており、小売店だけでなくオフィス街としての役割も新たに増えつつあります。さらに、秋葉原と隣接している外神田や神田地域も、広義には秋葉原に含まれています。
神田明神でも知られる神田は、大学や医療機関などの研究施設、住宅などが多く建設されてます。今までのような高層ビルが立ち並ぶ地域とは少し異なった街並みとなっているのが特徴です。
秋葉原の平均地価は約310万円、神田は約285万円と、今までの地域よりも地価が低くなっています。これらの地域にはオフィスビルなどを新しく建設する需要があまりなく、ビジネスオフィスならば丸の内や大手町の方がメリットが高いことなどが背景にあると考えられます。
2-1-4.麹町
新宿区との区境にあたる地域が麹町です。古くは甲州街道の全身となる古道が形成されているなど、交通の中心地としての役割を果たしていました。現在は、交通網の発展に伴い古くからの街並みが一転してオフィス街へと変貌し、テレビ局や有名企業の本社などが多く進出しています。
その一方で、昔ながらの商業地区としての面影は薄くなってしまい、ビジネス街特有の人口減少にも悩まされています。交通や政治の転換をきっかけに、何度もあり方が変化し悩まされることが多い地域かもしれません。
麹町の地価平均は約300万円と、秋葉原や神田と同じくらいの地価となっています。実は、麹町の地価はバブル期を境に大きく下落しており、近年はわずかながら上下しているもののほぼ一定となっています。今後の発展も期待されているのですが、どのように変化していくのか予想が難しい地域かもしれません。
2-1-5.水道橋・飯田橋
派手な印象は薄いかもしれませんが、多くの人に知られている地域が水道橋や飯田橋です。御茶ノ水や神保町に囲まれるような地域となっており、北部は文京区と隣接しています。どちらも鉄道の駅が設置されており、駅前は商店やオフィスビルが多く建設されています。
また、水道橋には大学や専門学校が多く建てられており、飯田橋には出版社が多く進出しているなど、どちらも学術的な方面が強いのも特徴です。駅前以外では住宅地として土地が利用されており、高層ビルなどはあまり見かけない一般的な住宅街の街並みとなっています。
それぞれの平均地価を見てみると、水道橋が約200万円、飯田橋が約180万円と千代田区の中では高額ではありません。丸の内などと比べてみると10分の1ほどの地価となっており、大幅な差があることが分かります。
2-2.地価の高い地域と低い地域
次は、紹介した地域をそれぞれ地価の価格によって分けて比べてみましょう。地価が上位の地域は丸の内と大手町、中位が麹町、神田、秋葉原、そして、下位に位置しているのが水道橋と飯田橋です。
地価が高い地域の特徴は、ビジネス街として発展している地域に多く、オフィスビルなどが多く建設されている地域ほど地価が高額になっています。一方で、地価の低い地域はほとんどが住宅地として発展しており、正反対の街並みが作られています。
ただ、人口比率は逆転しており、働く場所、生活する場所がはっきりと区別されています。そして、この区別が相続税にも影響しています。
路線価の高い商業地区が多い千代田区に関しては、地価の低いところほど個人で土地を所有する機会が多いため、相続税への影響が強い地域といえるのです。地価が低いから相続税とは縁が少ないというわけではなく、手に入る可能性が高いからこそ地価の動向に注意する必要があります。
3.千代田区の所得と富裕層
相続税の税額に大きく関わってくる所得額。所得が高額になるほど、当然に相続税も高くなりますが、同時に相続トラブルが起きる確率も上がります。そのため、所得は相続税を考える際には無視することはできない重要なファクターとなります。
千代田区の所得税の納税義務者は3万4,324人、課税対象所得が約3,000億円となっています。相続税の一人あたりの納付税額が非常に高額な千代田区ですが、実は人口が少なく、それにより課税対象所得もそこまで多い訳ではありません。
ただ、課税対象所得を一人あたりに直すと約900万円となります。これは、日本の全市町村の中で2番目に多い所得金額です。
1位は港区なのですが、一人あたりの相続税の納付税額では、所得の高い港区よりも千代田区の方が高額になっています。そのため、千代田区で生活している人の多くが富裕層といえるでしょう。
また、相続税の税額が決定される場合、所得だけでなく土地などの資産も考慮されます。つまり、所得では負けていても、千代田区の地価が大きく上回っているため、一人あたりの相続税の納付税額が23区内で最も高額になっていると考えられます。
4.千代田区の税理士事情
所得も地価も高額な千代田区は、人口が少ないからこそ生活しているほぼ全ての方に、高額な相続税が発生する可能性が高いです。そこで、重要なのが税理士による節税対策です。納付税額が高額だからこそ、少しの節税効果でも大幅な節税対策になるのです。
千代田区に在籍している税理士は3,610人、死亡者1,000人あたりの税理士数は9,352人と、非常に多く税理士が在籍しています。この税理士数は23区内でも最も多い数字となっている反面、千代田区の人口は最下位です。
人口と税理士数が反比例しているため、千代田区の相続で税理士が不足することは考えにくいでしょう。千代田区に税理士が多いのは、東京駅に近くオフィスビルが多く建設されていることです。つまり、他の区よりもオフィスを構えやすく、千代田区以外の地域にも簡単にアクセスできるためです。
そのため、千代田区内で税理士の取り合いが発生することは少ないのですが、他区や他県から千代田区の税理士へ依頼することも考えられます。特に、相続に強い、実力のある税理士へは依頼が殺到する可能性もあります。
ですので、税理士が多く在籍しているからといって油断してはいけません。無料相談などを上手に活用して信頼できる税理士を見つけておき、相続が開始したらすぐに依頼できるようにしておきましょう。
さらに、生前からできる節税対策のために、早めに税理士へ依頼して行動を始めるのも効果的です。高額な相続税が発生しやすい千代田区だからこそ、節税対策に柔軟に対応できるように準備を始めることをお勧めします。
【参考】千代田区内の相続関連機関一覧
千代田区内の相続に関連する各種機関の連絡先一覧をまとめました(2017年8月現在)。ただし、変更される可能性があることをご了承ください。
機関名 | 住所 | TEL |
---|---|---|
神田税務署 | 〒101-8464 千代田区神田錦町3丁目3番地 | 03-3294-4811 |
麹町税務署 | 〒102-8311 千代田区九段南1丁目1番15号 九段第2合同庁舎 | 03-3221-6011 |
千代田都税事務所 | 〒101-8520 千代田区内神田2-1-12 | 03-3252-7141 |
千代田区役所 | 〒102-8688 東京都千代田区九段南1-2-1 ※他にも出張所あり | 03-3264-2111(代表) |
東京法務局 | 〒102-8225 千代田区九段南1-1-15 九段第2合同庁舎 | 03-5213-1234(代表) |
霞が関公証役場 | 〒100-0011 千代田区内幸町2-2-2 富国生命ビル地下1階 | 03-3502-0745 |
神田公証役場 | 〒101-0044 千代田区鍛冶町1-9-4 KYYビル3階 | 03-3256-4758 |
丸の内公証役場 | 〒100-0005 千代田区丸の内3-3-1 新東京ビル2階235区 | 03-3211-2645 |
麹町公証役場 | 〒102-0083 千代田区麹町4-4-7 アトム麹町タワー6階 | 03-3265-6958 |
東京家庭裁判所 | 〒100-8956 東京都千代田区霞が関1-1-2 | 案件により異なる HP参照 |
東京税理士会 神田支部 | 〒101-0054 千代田区神田錦町2-5 第二亀谷ビル4階 | 03-3291-1345 |
東京税理士会 麹町支部 | 〒102-0073 千代田区九段北1-3-6 セーキビル3階 | 03-3264-0049 |
東京司法書士会 千代田支部 | 〒101-0054 千代田区神田錦町3-19 廣瀬第2ビル2階 | 03-3295-1276 |
東京弁護士会 | 〒100-0013 千代田区霞が関1-1-3 弁護士会館6階 | 03-3581-2201 |
第一東京弁護士会 | 〒100-0013 千代田区霞が関1-1-3 弁護士会館11階~13階 | 03-3595-8585(代表) |
第二東京弁護士会 | 〒100-0013 千代田区霞が関1-1-3 弁護士会館9F | 03-3581-2255 |