八王子市の相続と税理士事情

東京都の西部、多摩地域の南部にある八王子市。東京都で唯一の中核市に指定されるこの地域には、どのお湯な相続税の特徴があるのでしょうか？地価や所得の状況などから解説します。

1．八王子市の相続事情

東京都八王子市の1年間の相続税申告件数は666件、課税件数は511件です。相続1件あたりの納付税額は約1,600万円、課税割合は10.67％となっています。東京都23区外の相続税の平均データでは、1件あたりの納付税額が約2,300万円、課税割合は13.80％です。

このデータと比較してみると、1件あたりの納付税額も課税割合も平均を下回っている事がわかります。特に、課税割合は23区外の地域の中では下から2番目となっており、あまり課税される機会が少ないともいえるでしょう。

ただ、八王子市の課税割合よりも高いところの中には、1件あたりの納付税額が上回っている地域もあり、手放しで安心できません。また、課税割合10％は決して低い数字ではありません。10人に1人が課税されているという現状をしっかりと重く受け止めて、相続税への対策をきちんと講じておきましょう。

2．八王子市の地価事情

八王子市の相続税の特徴を地価から探っていきましょう。

2-1．八王子市の代表的な地域と地価

2-1-1．八王子駅周辺

八王子市の中心部に位置し、まさしく中心地域として発展しているのが八王子駅周辺の地域です。町名としては旭町や明神町、東町などが該当してます。八王子駅には2種類あり、JR東日本の八王子駅と京王線の駅である京王八王子駅が存在しています。

どちらの駅も市の中心駅として活用されており、特に八王子駅の方は貨物の運搬にも使われるなど、交通や流通の重要な役割を担っています。さらに、多くの人が訪れる地域だからこそ、この地域には商業施設が多く建設されており、繁華街が広く整備されています。

京王八王子駅周辺の地価平均は約60万円、八王子駅周辺の地価が42万円となっており、それぞれが八王子市の地価の1位、2位にランクインしています。2つの駅のうち、京王八王子駅周辺の地価の方が高額になっていますが、これは平均値の算出方法の違いにより現れた差です。

京王八王子駅周辺の平均は元となる範囲が狭く、八王子駅周辺の平均では範囲が広く京王八王子駅周辺の地域まで対象となっています。そのため、八王子駅周辺の方が地価が低くなっているのですが、実際には八王子駅周辺の地価の方が高い傾向にあります。ただ、どちらも高額なことには違いありませんので、どちらの地域もしっかりと相続税への備えをしておきましょう。

2-1-2．堀之内

八王子駅から南東の場所にある堀之内。緑の多いこの地域では場所ごとに何度か都市開発が行われており、地域ごとにその開発の影響が現れています。中でも堀之内2丁目、3丁目は京王堀之内駅を中心とした都市開発が行われ、市街地化が大きく進み多くの人で賑わっている地域となりました。

一方で、他の堀之内の地域は、多摩地域を対象とした多摩ニュータウンの1つとして開発が行われました。ですが、マンションなどが建設されていないことから、都市化した印象は薄いといわれています。ただ、北東部には一軒家が立ち並ぶ多摩ニュータウン東山が整備され、多くの世帯が移り住む新たな住宅街が形成され人気を集めています。

堀之内の地価平均は約17万円で、八王子市の中で3位の地価を誇ります。現在では駅周辺の地価が高くなっていますが、実は北東部の住宅街はまだ全てが建設されておらず、住民もそこまで多くありません。

多摩ニュータウン東山が完成すると、住民が増えるということもありますが、住宅街から地域の各駅へのアクセスもより簡単になります。すると、住宅街を中心とした新たな街づくりや、駅前のさらなる発展により、全体的に地価が上昇する可能性があります。今後の地域の成長にしっかりとアンテナを張っておき、柔軟な対策が講じれるようにしておきましょう。

2-1-3．みなみ野

八王子市の南部に位置するみなみ野。みなみ野は1997年に街びらきをしたみなみ野シティの一部であり、比較的新しくできた地域です。このみなみ野シティは事業を主体とした八王子土地区画整理事業によって開発されており、八王子ニュータウンとも呼ばれることがあります。

また、みなみ野の中心駅は八王子みなみ野駅ですが、この駅もみなみ野シティの開発に合わせて作られた駅です。そのため、駅周辺には大型商業施設がいくつか建設されており、地域の中心街として発展しています。

みなみ野地価平均は約17万円で、市内では4位の地価を誇っています。みなみ野はみなみ野シティの中核都市であることから、この地域内では地価が最も高くなっています。ただ、この地域は近隣に大学が多いため、一軒家よりも学生向けマンションなどの需要が高いため、地価が高額化しないのだと考えられます。

さらに、予め商業地と住宅地が分けて形成されていますので、開発後に企業が新たに施設を建設することが難しいという意見もあります。こうした背景により地価は比較的低い水準となっていますが、住宅地としては高額な地域ですので、相続税への情報は敏感にキャッチするようにしましょう。

2-2．八王子市の地価の特徴

八王子市全体の地価平均は約15万5,000円で、都内59の自治体の中で45位とかなり低い価格です。八王子市は人口が非常に多く、東京都内の23区外の市町村では1位、23区を含めた市町村の中でも6位という多くの住民を抱える地域です。

ですが、一方で八王子市の周辺には23以上の教育機関がある、全国有数の学園都市でもあります。その結果、多くの学生が八王子市で生活しています。この学生の中には外国からの留学生も多く、全てを合計すると約11万人にもなります。

つまり、学生が主体となる街であるため、地域内でビジネスなどが発展しづらく全体的に地価が下がっているのだと考えられます。さらに、八王子市には都市部には珍しく森林などが多く残っており、未整備の地域も多くあります。

そのため、八王子駅周辺などの一部の地域では繁華街などが形成されていますが、市の大半が住宅地として利用されています。ただし、地価が安いためベッドタウンとしての魅力は高まり、比較的広い面積の一軒家を所有していることがあります。ですので、八王子市は今後の地価の上昇や所有不動産への課税などから、相続税対策が不必要とまではいえない地域であるためきちんと相続税への対策を準備しておきましょう。

3．八王子市の所得と富裕層

続いて、八王子の所得や富裕層の状況を確かめていきましょう。八王子市の所得税納税義務者数は約25万7,000人、課税対象所得は約9,000億円です。1人あたりの所得を計算すると約350万円となり、東京都の62ある自治体の中では40位と中位よりも低い所得額となっています。

2017年のデータでも八王子市の所得状況はほぼ横ばいで、順位にも大きな変動はありません。ですので、八王子市の所得状況は非常に安定しているといえるでしょう。加えて、八王子市の所得は低いように見えますが、23区に含まれる葛飾区や足立区よりも所得は高い水準ですので、際立って低いわけではありません。

また、1,700以上ある全国の自治内の中では119位と上位10％に含まれる所得額です。そのため、八王子市で生活している人の多くは高所得者であり、特に地価の高い八王子駅周辺に住まいを構えている人は富裕層であるといえるでしょう。

そして、地価と併せて考えると、八王子市よりも地価の高い地域よりも八王子市の方が所得が高い地域はいくつもあります。ですので、八王子市では土地だけでなく所得などの財産への課税割合が大きいこととが考えられます。その影響が、課税割合に比べて課税額が大きいという相続税の特徴にも現れているのです。

4．八王子市の税理士事情

高額な所得に広い土地を所有していることが加わると大きく相続税が課される可能性が高くなる八王子市。そこで、頼りになるのが税金のプロである税理士の力です。それでは、八王子市に在籍している数など税理士の状況を見ていきましょう。

八王子市に在籍している税理士数は261名です。八王子市の1年間の相続税申告件数が666件、課税件数は511件で、これらに比べると約半数ほどの税理士が在籍しています。ですので、大きく不足している訳ではありませんが、希望している税理士へ依頼できない可能性もありえます。

また、八王子市に税理士が少ない背景には、企業が少ないことや都心部から距離があるため、積極的に事務所を構えないことが考えられます。そのため、八王子市内で相続に強い税理士を探すことはもちろん、場合によっては八王子市にも対応している都心部の税理士を探すことが重要になります。

そして、八王子市は場所によって地価の差が大きく現れており、八王子駅周辺の地域だけが際立って地価が高騰しています。ですので、地域を限定すると八王子駅周辺の地域で生活している人はより相続税への対策を講じておく必要があります。加えて、一部地域を除いて八王子市の各地では定期的に地価の上昇が見られていますので、相続時に大きく高騰している可能性も考慮して、どの地域の人でも一度は必ず相続税について家族で話し合っておきましょう。

【参考】八王子市内の相続関連機関一覧

八王子市内の相続に関連する各種機関の連絡先一覧をまとめました（2018年4月現在）。ただし、変更される可能性があることをご了承ください。