東京都北区の相続と税理士事情
名前のように東京都23区の北部に位置しており、埼玉県と隣接している北区。隣接しているだけでなく、都心部への通過地であることなどから埼玉県との関わりが非常に密接なことが特徴でもあります。そんな北区の相続にはどのような特徴があるのでしょうか?実際の課税データや地価、所得などから確かめていきましょう。
1.北区の相続事情
東京都北区の相続税の1年間の申告件数は549件、実際に課税された件数は400件です。相続1件あたりの納付税額は約1,900万円、課税割合は11.62%となっています。東京都23区内の相続税に関するデータを平均すると、1件あたりの納付税額は約3,000万円、課税割合は16.78%になります。
つまり、この平均データと比較すると1件あたりの納付税額も課税割合も平均を下回っていることが分かります。加えて、23区内では1件あたりのに納付税額が2,000万円を下回っているところは3ヶ所しかありませんので、その低さが際立っています。
ただ、この納付税額に比べると課税割合は高い傾向にあり、納付税額が北区より高いところでも、課税割合は北区の方が上回っていることもあります。ですので、1件あたりの納付税額は低いが課税割合が高いのが北区の相続の特徴であり、北区ではどの世帯でも相続税への対策が重要な地域なのです。
2.北区の地価事情
納付税額に比べて課税割合が高い北区の相続。それでは、どうしてこのような特徴が現れるのか、北区の地価から考えていきましょう。
2-1.北区の代表的な地域と地価
2-1-1.赤羽
北区の北端に位置し、荒川を挟んで埼玉県と隣接している赤羽。以前は東京都の「北の玄関口」ともいわれており、北区の交通や商業の中心地として大きく発展している地域です。また、隣接している埼玉県は東京都への通勤者が多く、そのほとんどが赤羽を通過して都心部を目指しています。
そのため、赤羽と埼玉県は距離以上に密接な関係にあり、お互いの地域を行き来する人が多いのが特徴的です。特に、赤羽と距離が近いさいたま市や川口市、戸田市は埼玉県内でも人口が多い地域のため、これらの地域を合わせた経済圏が形成されています。
赤羽の地価平均は約82万円で北区では最も地価が高額な地域です。中心駅となる赤羽駅周辺は商業施設が多く立ち並ぶ繁華街が形成されているため、地価は100万円を超える地域がいくつもあります。
その一方で、駅前には小学校や団地が建設されており、繁華街でありながら住宅地とも密接な関係がある地域になっています。ですので、赤羽駅の利便さや発展度合いが住宅地へも影響を与え地価が高額化しているため、相続の要注意地域なのです。
2-1-2.王子
北区の中央部に位置し、北側では隅田川を挟んで足立区と隣接している王子。基本的には王子駅を中心として地域を指していますが、広義では王子本町や十条台なども含めた王子地区といわれることもあります。
王子の地価平均は約59万円で、北区では2番目に地価が高額な地域です。駅周辺には大型文化施設が建設されており、特に北部に伸びる北本通り沿いは王子で大きく発展した繁華街が形成されています。
また、王子駅の周辺には、王子神社や飛鳥山公園、国立印刷局の工場などへ大規模な土地活用が行われています。そのため、これらの地域は地価の変動が起きにくいため、地価の統計も駅の北部などを中心として行われています。
さらに、赤羽と同じように駅周辺には中学校や高校などが建設されています。ですので、繁華街の近くにも住宅街が形成されている地域があり、住宅地であっても地価が下がりにくい傾向が見られます。
2-1-3.滝野川
北区の南西部、王子の西側に位置し、板橋区と隣接している滝野川。実は、赤羽、王子と並んで北区の代表的な地域の1つになっている地域でもあります。広義の意味では田畑や栄町などが合わせて滝野川地区と呼ばれることも多いです。
滝野川の地価平均は約51万円で、北区の中では9番目に地価の高い地域です。滝野川には王子駅が最寄り駅となるものの、地域内に鉄道駅がありませんので、繁華街などが形成されておらず、大半が住宅地として活用されています。
ただ、滝野川は板橋区と隣接しており、隣接地域には板橋区の中心駅である板橋駅が存在しています。そのため、王子駅よりも板橋駅の方が活用しやすい地域もあり、板橋駅周辺の方が地価が高くなっています。
また、板橋駅に加えて西巣鴨駅も近くにあることから、こちらの駅周辺の地価も上昇しています。ですので、滝野川は隣接している地域により地価が増減する特徴があり、内部の住宅地の地価は安定して推移しているといえるでしょう。
2-2.北区の地価の特徴
北区全体の地価平均は約57万円で、23区内では15番目という注意よりもやや低めの順位となっています。これは、赤羽など多くの人が集まる繁華街が形成されているものの、都心部に比べると企業からの需要が伸びにくいため、地価も高額になりづらいのだと考えられます。
また、北区の土地活用の特徴として、駅周辺に学校が建設されており、その周辺には住宅街が形成されていることが挙げられます。そのため、住宅街であっても地価が下がっていません。むしろ、利便性の良さから地価は高い水準をキープしており、相続税が課される可能性が高い地域になっています。
しかし、駅周辺の地価が高い地域ではマンションが多く建設されており、自宅を相続する可能性は低くなっている状況でもあります。ただ、北区のほとんどの地域で地価が上がっており、中心部に比べると価格は低くい一軒家の多い住宅街でも地価の上昇が見られています。
こうした北区の土地活用や地価の状況から、課税割合が高く課税額が低いという相続の状況が生まれていると考えられます。加えて、北区は埼玉県と都心部どちらの地域とも密接な関係にあるので、今後も地価が上昇する可能性があり、徐々に課税額が高くなっていくともいえるでしょう。
3.北区の所得と富裕層
続いて、北区の相続の特徴を所得の面から考えていきましょう。北区の所得税の納税義務者数は約17万4,000人、課税対象所得は約6,250億円です。1人あたりの所得を計算すると約360万円になります。
この所得金額は東京都の中で37番目で地価と同じ注意よりもやや低めの順位です。ただ、この金額は2016年の数字なのですが、2017年になると1人あたりの所得は約368万円と、10万円近く上昇しています。順位も31番目と大きく伸びているのです。
このように1年で所得が大きく上昇することは珍しく、相続へも大きな影響を与えると考えられます。北区は埼玉県と東京都心部を繋ぐ中継点であるため、どちらの地域のベッドタウンにもなり得る地域です。
そのため、それぞれの地域へ通勤している高所得者が北区に集中したことにより、北区の所得が上昇したのだと考えられます。加えて、北区の所得は全国1,000以上ある自治体の中でも上位10%に入る金額ですので、全国的に見れば高所得者が集まっている地域です。ですので、地価の上昇と併せて考えると、今後は相続税対策がより重要になるでしょう。
4.北区の税理士事情
さて、効果的な相続税対策を行うためには、税の専門家である税理士の力を借りることが必須です。そこで、北区に在籍している税理士の状況などを確かめていきましょう。
北区に在籍している税理士は369名です。そして、北区の1年間の課税件数は400件となっています。一見すると税理士が不足しているように考えられますが、全ての相続が1日の中で起こるわけではありませんので、依頼できない事態に陥る可能性は低いです。
また、相続税は納める必要がなくても書類を通して申告しなければいけません。ただ、北区の1年間の申告件数は549件ですので、こちらに関しても税理士が対応できないということはないでしょう。
つまり、北区では税理士が十分に足りていますので、しっかりと依頼する税理士を選び探すことがより大切になります。特に、北区では地価や所得が上昇傾向にありますので、相続に強いだけでなく、土地開発に正通していること、不動産鑑定士との連携が密であることなどの点も重視して税理士を探すことがおすすめです。
そして、こうした北区の特徴の背景には、新たに北区へ移り住む人が増えていることも考えられます。このような場合はすぐに相続と直面する機会はありませんが、必要になったときに地理に詳しくないために実力のあり税理士へ依頼できない場合があります。そこで、将来起こりうる相続に備えるために、相続税以外でも北区の税理士へ相談や依頼を少しずつ行い、信頼できる税理士を見つけましょう。
【参考】北区内の相続関連機関一覧
北区内の相続に関連する各種機関の連絡先一覧をまとめました(2018年4月現在)。ただし、変更される可能性があることをご了承ください。
機関名 | 住所 | TEL |
---|---|---|
王子税務署 | 〒114-8560 東京都北区王子3丁目22番15号 | 03-3913-6211 (代表) |
北都税事務所 | 〒114-8517 東京都北区中十条1-7-8 | 03-5888-6211 (代表) |
北区役所 | 〒114-8508 東京都北区王子本町1-15-22 | 月~金 03-3908-1111 (代表) 土日祝 03-3908-1133 (巡視室) |
東京法務局 北出張所 | 〒114-8531 東京都北区王子6丁目2番66号 | 03-3912-2608 (代表) |
王子公証役場 | 〒114-0002 東京都北区王子1-14-1 山本屋ビル3階 | 03-3911-6596 |
赤羽公証役場 | 〒115-0044 東京都北区赤羽南1-4-8 赤羽南商業ビル6階 | 03-3902-2339 |
東京家庭裁判所 | 〒100-8956 東京都千代田区霞が関1-1-2 | 案件により異なる HP参照 |
東京司法書士会 北・荒川支部 | 〒115-0041 東京都荒川区西日暮里2丁目20番1号 ステーションポートタワー306 | 03-3806-3823 (代表) |
東京弁護士会 | 〒100-0013 東京都千代田区霞が関1-1-3 弁護士会館6階 | 03-3581-2201 (代表) |
第一東京弁護士会 | 〒100-0013 東京都千代田区霞が関1-1-3 弁護士会館11~13階 | 03-3595-8585 (代表) |
第ニ東京弁護士会 ひまわり | 〒100-0013 東京都千代田区霞が関1-1-3 弁護士会館9階 | 03-3581-2255 (代表) |