港区の相続と税理士事情
経済活動が活発で所得も高額化している地域である、東京都港区。相続税への対策が急務ともいわれるその実態を解説します。
一人あたりの相続税納付税額や税理士事情など、なかなか知る機会のないデータを、1つずつ確かめていきましょう。
1.港区の相続状況
東京都港区の相続状況は、平成27年度のデータによると相続税の申告件数は606件、実際に課税件数が485件、課税割合が30.60%となっています。課税割合は23区内の他の地域と比べてみると、4番目に多い地域となっており、相続税が発生しやすい地域だといえます。
また、一人あたりの納付税額は「約4,800万円」で、23区内で3番目に高額な税額となっています。ただ、課税件数はそこまで多くなく、港区の人口自体も多いわけではありません。つまり、高額な相続が高確率で発生しやすく、生活しているほとんどの方が節税対策を考えておく必要があることが、港区の相続の大きな特徴となっています。
2.港区の地価
2-1.港区の代表的な地域と地価
まずは、港区の中でも多くの人に知られている代表的な地域を、町の特徴と地価を合わせながら見ていきましょう。
2-1-1.新橋
港区の特徴は、数多くのオフィスビルが立ち並び、東京のみならず日本のビジネスの中心地となっていることです。中でも、新橋には多くの企業が本社を構えています。そのため、新橋=サラリーマンの町、ともいわれることが多くなっています。
そんな新橋の地価は港区の中でも上位に位置し、地価平均約512万円となっています。また、新橋は汐留と隣接しており、汐留を含めて新橋地域として数えられることが多いです。汐留は、日本テレビや電通など、日本有数の企業が多く立ち並んでおり、オフィスビルが観光地にもなっているほどです。
実は、汐留は新橋よりも地価が高くなっており、地価平均約610万円と、100万円の差が現れています。さらに、新橋が隣接している千代田区内幸町は、地価が1000万円を超える地域で、その影響からか周辺の新橋の一部も高騰しています。その結果、汐留などを含めた新橋地域はより地価が高額化しており、港区の中でもトップの地価の高さを誇っています。
2-1-2.青山、表参道
ビジネスの中心地としての新橋とは対照的に、商業施設が多く立ち並びオシャレな街並みが広がっているのが青山です。大手企業の本社も多く進出していますが、GUCCIやPRADAなどの海外ファンションの本店などがお店を構えています。
また、青山にはファッションストリートである表参道も含まれています。近年新しく建設された表参道ヒルズや伝統ある明治神宮など、最新の商業施設と観光地が融合することで、訪れる年齢層にも幅があり旅行客も地元の人も楽しめる地域として人気を集めています。
青山の地価平均は約500万円、表参道は約380万円と青山方面へ行くに連れて地価が高額化しています。青山~表参道間の道には、原宿にまで続いています。原宿はハイブランドよりも、若者が購入しやすいブランドが集まっています。
さらに、発展している地域の間に挟まれている地域でもありますので、表参道の地価は少し抑え気味になっているのかもしれません。海外の最先端を進むファッションブランドが多く集まる青山は地価が下がる要素が少ないため、今後も上昇が期待されています。
2-1-3.赤坂
港区と千代田区の区境に位置する赤坂。TBSや赤坂御苑、赤坂プリンスホテルなど、主要な施設・場所が多いため、全国的にも知られている地域です。赤坂の特徴は、テレビ局が立地している影響があるからか芸能関係の企業が多いことです。
芸能事務所や音楽事務所、TBS以外のテレビ局やラジオ局など、エンタメに関わる企業が本社を構えています。また、骨董品を扱うお店も多いのも特徴的で、それぞれの時代の価値を生み出す商売が、古くから根付いていたのかもしれません。
さらに、隣接している千代田区は、霞が関や永田町など政治や経済との関係が深い地域です。交通網の発達とともに、国の主要施設が集まる地域に近いことからホテル業なども発展しているため、さまざまなビジネスが集まる面白い特色の地域ともいえます。
赤坂の地価平均は約295万円と、港区内では中位よりもやや上位という価格です。赤坂はさまざまなビジネスが発展しており、どれもが長い歴史を有しています。廃業や取り壊しなどが少なく、新たに進出できるきっかけが少ないため、地価がそこまで高額にはならないのかもしれません。
2-1-4.六本木
夜の遊び場、お金持ちが集う町、というイメージが強くある六本木。近年は、六本木ヒルズや東京ミッドタウンなど、前項的な知名度も高い商業施設などが相次いで建設され、若い日世代に人気の町となっています。
六本木には青山や赤坂などと隣接していますが、ビジネス街としての印象はそこまで強くありません。かと言って、商業施設がメインの町でもなく、高層マンションなども多く建設されています。つまり、仕事や遊ぶために訪れるだけでなく、生活の拠点としても機能しており、さまざまな方面で発展し続けているのが六本木の大きな特徴です。
また、夜のイメージがあるように、日本有数の繁華街としても人気を集めています。昼間ビジネスのために訪れているサラリーマンなどが、週末の夜に遊ぶ場所として発展してきたのです。そのため、昼と夜、時間によっても種となる経済活動が異なる面白い町といえます。
六本木の地価平均は約250万円と、港区内では中位の地価です。億ションなども多いため、地価が低いように感じるかもしれません。確かに、マンションなどの購入費用は高いのですが、マンションでは同じ土地の中に多く人が生活しています。
その結果、新たに広大な土地を求める需要が少なく、一軒家などの比率は少なくなっているのです。ビルやマンションなどが多い反面、土地利用が節約されているため、地価の上昇が緩やかになっているのかもしれません。
2-1-5.麻布
高級住宅街として全国的に知られている麻布。港区の5大地域の1つとして、多くの人と関わりのある広い地域です。港区のビジネス街や繁華街のイメージとは大きくかけ離れており、住宅地をメインに発展し続けてきた地域です。
一時期までは、交通アクセスが整っておらず行きにくい地域だったため、都会の中の別荘地ともいわれていました。そのため、地下鉄整備への反対運動が行われていたともいわれており、地元愛が非常に強い地域と言えます。
麻布の地価平均は約191万円と、上記の地域と比べると比較的安い地価となっています。ただ、地下鉄の駅が建設された麻布十番などは、約290万円と地価が高額になっていますので、地域によって地価のさが激しいのも麻布の特徴かもしれません。
また、麻布と六本木は非常に近く、もともとは六本木の大半が麻布の一部だったそうです。現在でも六本木に麻布の名前が残った施設があるのは、こうした名残が関係しているといわれています。
2-2.地価の高い地域と低い地域
港区の代表的な地域を地価とともにまとめてきましたが、改めて地価の高い地域、低い地域に分けて、その特徴を見ていきましょう。
港区内で地価の高い地域は、汐留や新橋、青山など、オフィスビルや商業施設が多く立ち並んでいる地域です。港区だけでなく日本の経済活動の拠点にもなっている側面があるため、企業などから土地の需要が大きく地価が高騰しているのだと考えられます。
ただし、こうした地域で個人が土地を所有している可能性は極めて低いです。そのため、限られた人のみが相続税への影響を受け、一般的に相続とは関わりの少ない地域となっています。
一方で、地価の低い地域は麻布や白金(白金台)などの住宅地です。高級住宅として有名なのですが、企業からの需要が少ないこと、個人で一軒家を建てるには地価が高く広大な面積を購入できないことなどから、中心地に比べると地価が低くなっています。
ですが、港区内で個人が土地を所有する場合、この地域の土地を所有している可能性が高くなります。代々受け継いできた一軒家を、あなたも引き継ぐ可能性がありますので、地価には十分に気をつけておきましょう。
また、お台場やその周囲の地価も低くなっています。お台場は埋立地のため地価が上がりにくいと考えられますが、交通アクセスが限られていることなども地価が安くなる原因かもしれません。企業が本社を構えるということも少ないため、地価の高騰には結びつかないのでしょう。
3.港区の所得と富裕層
相続税が高額になる要因、それが地価と所得です。続いては、港区の所得状況から、富裕層についても調べていきましょう。
港区の所得の納税義務者数は約13万人、課税対象所得は約1兆4,900億円と非常に高額な数字となっています。一人あたりの課税対象所得を計算すると「約1,150万円」で、明らかに平均以上の所得を取得しているのが分かります。
港区の一人あたりの課税対象所得は、全国の市町村の中で最も多い金額となっているのですが、実は何年も所得ランキング1位を取得している常連です。つまり、他の自治体の追随をゆるさないほど、ずば抜けて課税対象所得を多く手にいています。そのため、港区で生活しているほぼすべての人が準富裕層から富裕層であるともいえます。
また、麻布や白金の地価は港区の中では安いですが、住宅地で1平方メートルあたり100万円以上の地価が発生している地域はほとんどありません。高額でも20万円程度、安いければ10万円以下となっていますので、これらは地域は紛れもなく高級住宅であり、富裕層が生活しているといえるのです。
相続税は所得が高くなるほど高額になりますが、さらに所得が高額になるほど相続トラブルが起きやすくなってしまいます。多大な相続税と大変な相続トラブル、この2つをスムーズに解消するためには税理士の力が必須と言えるでしょう。
4.港区の税理士事情
高額な所得を手にしている人が多く、地価が他の地域より高騰している港区。相続税や相続トラブルが起きる確率も非常に高くなっているため、相続の際には税理士の力を借りることが重要なポイントとなっています。では、港区の税理士事情はどのような特徴があるのでしょうか?
港区に在籍している税理士数は2,181人、死亡者1,000人あたりの税理数は1,381人と、十分な人数の税理士が在籍しています。仮に、年間の死亡者全員で相続が発生したと考えると483件となりますので、税理士が不足するということは考えにくいでしょう。
さらに、港区に在籍している税理士は、千代田区に続き23区内で2番目に多い人数となっています。他の区や県へ出向くことも考えられますが、港区の人が依頼できないほど出払ってしまうことも考えにくいです。そのため、安心して税理士の力を借りられるでしょう。
また、相続トラブルが起きた場合、税理士の他にも弁護士などへ依頼する必要性が出てきます。そこで、ワンストップサービスを行っている税理士事務所へ依頼することで、トラブル解決の手間や負担を軽減してくれます。
ただ、ワンストップサービスを積極的に行いながら、相続に強い税理士となると数は限られてしまいます。確実に実力のある税理士の力を借りるためにも、油断せずに早めに税理士探しを行いましょう。
もちろん、生前贈与などの相談にも税理士を活用するのがオススメです。さまざまな観点から節税を行うためにも、無料相談などを活用しながらより効果の高い節税対策を実践しましょう。
【参考】港区内の相続関連機関一覧
港内の相続に関連する各種機関の連絡先一覧をまとめました(2017年8月現在)。ただし、変更される可能性があることをご了承ください。
機関名 | 住所 | TEL |
---|---|---|
麻布税務署 | 〒106-8630 港区西麻布3丁目3番5号 | 03-3403-0591 |
芝税務署 | 〒108-8401 港区芝5丁目8番1号 | 03-3455-0551 |
港都税事務所 | 〒 106-8560 港区麻布台3-5-6 | 03-5549-3800 |
港区役所 | 〒105-0011 港区芝公園一丁目5番25号 ※他にも支所あり | 03-3578-2111(代表) |
東京法務局 港出張所 | 〒106-8654 港区東麻布2丁目11番11号 | 03-3586-2181(代表) |
新橋公証役場 | 〒105-0004 港区新橋1-18-1 航空会館6階 | 03-3591-4845 |
芝公証役場 | 〒105-0003 港区西新橋3-19-14 東京建硝ビル5階 | 03-3434-7986 |
麻布公証役場 | 〒106-0045 港区麻布十番1-4-5 深尾ビル5階 | 03-3585-0907 |
浜松町公証役場 | 〒105-0012 港区芝大門1-4-14 芝栄太楼ビル7階 | 03-3433-1901 |
赤坂公証役場 | 〒107-0052 港区赤坂三丁目9番1号 八洲貿易ビル3階 | 03-3583-3290 |
東京家庭裁判所 | 〒100-8956 東京都千代田区霞が関1-1-2 | 案件により異なる HP参照 |
東京税理士会麻布支部 | 〒106-0046 港区元麻布3-2-21 ルミエール元麻布301号 | 03-3404-2886 |
東京税理士会芝支部 | 〒108-0014 港区芝5-1-9 豊前屋ビル4階 | 03-3453-6516 |
東京司法書士会港支部 | 〒106-0044 港区東麻布3丁目6番5号麻布ビル1階所 | |
東京弁護士会 | 〒100-0013 千代田区霞が関1-1-3 弁護士会館6階 | 03-3581-2201 |
第一東京弁護士会 | 〒100-0013 千代田区霞が関1-1-3 弁護士会館11階~13階 | 03-3595-8585(代表) |
第二東京弁護士会 | 〒100-0013 千代田区霞が関1-1-3 弁護士会館9F | 03-3581-2255 |