台東区の相続と税理士事情

23区の中でやや北東の場所に位置する台東区。東京都を代表する2つの川、隅田川と神田川に接する歴史ある街並みの中には、どのような相続の特徴があるのでしょうか？

1．台東区の相続事情

台東区の相続税の申告件数は400件、実際に課税された課税件数は285件です。課税割合は14.57％、相続1件あたりの納付税額は約2,100万円となっています。

23区の平均的な課税割合は16.78％、1件あたりの納付税額は約3,000万円です。台東区のデータと比べてみると、課税割合は平均に近い数字ですが、1件あたりの納付税額は大きく下回っています。

ただ、平均値ではなく他の地域のデータと比べてみると、課税割合は14番目、1件あたりの納付税額は下から5番目と、非常に低い数字であることがわかります。つまり、23区内では課税割合は平均並であるものの、1件あたりの納付税額は非常に低い金額であることが台東区の相続の特徴となっています。

2．台東区の地価事情

相続財産の高額化を招く地価。そして、相続税の高額化にも直結する要因でもある地価の特徴を見ていきましょう。

2-1．代表的な地域と地価

2-1-1．上野

歴史の長い動物園があることで有名となった上野。台東区の中でも全国的な知名度が高く、観光客も多く訪れる人気エリアです。広域な地名として考えた場合、上の駅を中心としたエリアを指しており、商業施設が集まる繁華街や古くから人気の上野公園、喫茶店など、幅広い趣きのある町並みとなっています。

そして、地域の中心となっている上野駅は、日本初の私鉄の開業時に合わせて開業した歴史の長い鉄道駅です。現在では、JR5線、東京メトロ2線の7線の鉄道が乗り入れる日本有数のターミナル駅として栄えています。

さらに、新幹線や在来線の特急などが発着する駅としても機能しており、観光客が初めて訪れる玄関駅としての一面もあります。そのため、東京の北の玄関口といわれることも多くなっています。

上野の地価平均は、約200万円と非常に高額です。また、広域での上野は端になると他地域の主要駅に近くなること、上野駅周辺は施設が密集しています。その結果、駅に近い地域だけでなく、広範囲に渡って地価が下がりきらず、住宅地であっても地価が高額化しています。

2-1-2．御徒町

徒士が多く住んでいたことから、江戸時代頃よりその名で呼ばれていた御徒町。現在では行政地区としての地名はなくなってしまいましたが、地域や駅名などから今でも呼ばれることが多い地名です。

御徒町は古くから住宅地、下町としての様相が強く、寄せや見世物小屋、料亭や屋台などが集まる東京の中でも随一の歓楽街として賑わっていました。現在でも、アメヤ横丁など歴史ある商店街が住民の生活の基盤となっているなど、古き良き下町文化が見られます。

また、御徒町駅の開業に伴い、現代では特に西側の地域が大きく発展しています。実は、御徒町エリアには、御徒町駅、上野広小路駅、仲御徒町駅、上野御徒町駅、新御徒町駅の5つの鉄道駅が集まっている鉄道の街です。その結果、交通網の良さからさまざまな地域へアクセスできる人気エリアとなっています。

御徒町の地価平均は約160万円で、台東区の中でも1，2を争う高額な地域です。御徒町駅周辺の地価が最も高いのですが、鉄道駅が多いことや立地として他エリアの主要駅に近づくことから、商業地を除いてはそこまで大きな地価の変動がありません。

2-1-3．浅草

歴史的建造物が多く、世界的な観光スポットとなっている浅草。東京観光のメインにもなっており、誰もが一度は訪れたことがある地域ともいわれています。

浅草のイメージというと、寺院やそれに続く商店街ある歴史ある繁華街ですが、そのイメージ通り江戸時代に多くの証人が全国から集ってきたことで大きく発展していきました。古き良き東京の下町文化が今なお続いているのが、浅草の特徴であり愛される要因です。

また、浅草は芸能の街としても知られており、演芸や落語などが古くから愛されていました。特に、映画文化が栄えており、地域内に幾つもの映画館が建てられていたほどです。しかし、現代では地域内に映画館は一つもなくなってしまい、歴史ある文化の終焉を惜しむ人も多いそうです。

浅草の地価平均は約90万円と、予想よりも低く感じるかもしれません。浅草はいまや世界中から観光客が押し寄せる一大観光地です。しかし、何代も続くお店が多く、再開発地域以外では土地の需要が低いことから、地価が上がりにくくなっていると考えられます。

2-1-4．秋葉原・千駄木・西日暮里

台東区で地価が高くなっている地域が、秋葉原、千駄木、西日暮里です。地理が詳しい人はピンと来るかもしれませんが、実はこの3つの地域は台東区ではありません。それぞれ、千代田区、文京区、荒川区の地域です。

台東区内には鉄道駅が多いことに触れましたが、区境には隣接する区の主要駅が近いという特徴もあります。つまり、台東区の中心部から離れても大きな駅に近づくため、地価が減少しにくく、むしろ上昇している地域があるのです。

特に、駅周辺が発展している秋葉原は千代田区内の地価が非常に高額化していることから、台東区の最も近い地域の需要が高くなり、住宅地であっても約90万円もの地価となっています。主要地域から離れていても、区境に近い地域に生活している方は十分に地価の動向に注意しておきましょう。

2-2．台東区の地価の特徴

台東区で地価が高額な地域は、他区を除くと上野や御徒町など、古くから繁華街として栄えている地域や、交通網がしっかりと整備されている地域です。一方で、地価が低い地域は、台東区の北部に集中しています。

台東区は上野駅や御徒町駅など交通の拠点となる地域が中部～西部に位置しており、東部には浅草寺を中心として浅草の商店街が形成されています。そして、南部には大電気街である秋葉原が位置しており、どの方角も非常に賑わっている地域が存在しています。

台東区の北部は荒川区と隣接しているものの、荒川区はどちらかと言うと住宅街がメインの街です。駅周辺には商業施設が多いのですが、他地域に比べるとどうしても地価が下がってしまいます。

台東区は区内よりも隣接する区による影響が、地価の変動に大きく関わっているという珍しい特徴があります。ですが、台東区は住宅地であっても地価の大きな下落はなく、区全体の地価が上昇傾向にあるため、土地の需要が高く地価の動向が見逃せない地域です。

3．台東区の所得と富裕層

地価と並び相続税の高額化の要因となるのが所得です。所得が高額になるほど相続財産が高額になり、納めるべき相続税も高額になってしまいます。では、台東区の所得の状況から相続税が高額化する富裕層の動向を調べてみましょう。

台東区の所得税の納税税義務者数は約10万人、課税対象所得が約4,100億円です。このデータを元に1人あたりの課税対象所得を計算すると、約410万円となります。

東京都内の他の地域と比べてみると、23区内では14番目に多く、都全体では20番目に多い所得です。23区内で中位よりもやや低い金額ですが、都全体で見ればそこまで少ない金額ではありません。

特に、全国のデータと比較してみると1,000以上ある自治体の中で36番目の所得と、非常に高額な所得を受け取っていることがわかります。つまり、台東区は東京都内でも富裕層が比較的集まりやすい地域であり、全国的に見れば有数の富裕層が集まる街でもあるため、高額な相続税が課せれやすい地域であるといえるでしょう。

4．台東区の税理士事情

住宅地でも地価が下がりにくく、所得が高額な台東区。住宅地が多い台東区だからこそ、高額な相続税が課される可能性が高いため、税理士による節税対策が最重要な地域といえます。では、節税対策の要ともなる台東区の税理士事情にはどのような特徴があるのでしょうか？

台東区に在籍している税理士数は789名です。年間の課税件数が285件であるため、そこまで税理士が不足しているとはいえません。いざという時に依頼できない、という事態に陥ることはないでしょう。

ただ、注意が必要なのは他地域から台東区の税理士へ依頼される可能性があることです。台東区は住宅地と商業地、2つの側面があり、どちらの相続にも対応できる税理士が多いといわれています。特に、台東区は交通網がしっかり整備されており、どの地域へのアクセスが良いため、比較的どの地域でも対応が可能です。

また、アメヤ横丁や浅草など歴史ある商店が多く、相続には事業の継承などが絡み複雑化する可能性が高いです。どんな事情にも対応できる税理士へは依頼が殺到することが予想されます。

実力が高く相続に強い税理士は数が少ないため、相続が開始したらすぐに依頼できるように、税理士探しを早めに始めましょう。実践的な節税対策は、相続が始まる前から始まっています。

【参考】台東区内の相続関連機関一覧

台東区内の相続に関連する各種機関の連絡先一覧をまとめました（2017年10月現在）。ただし、変更される可能性があることをご了承ください。