夫婦間の贈与で贈与税がかかる場合/かからない場合の具体例
一定額以上の贈与に対しては、贈与税がかかりまが、夫婦間でも贈与税は発生するのでしょうか?夫婦間でどんな贈与をすると贈…[続きを読む]
「親が子供に車を買ってあげる」、「親が使っていた車を子供名義に変更する」といった場合には、贈与税が発生することがあります。車を買ってあげたり、譲ったりすること自体が贈与となるからです。そこで車と贈与税の関係について解説します。
こちらの動画でも、ほぼ同じ内容を解説しています。併せてご覧ください。
目次
自動車は、その所有者を証明するために「車検証」を、管轄する運輸支局に登録します(軽自動車の場合は、軽自動車検査協会に提出)。
したがって、所有者を変えたい場合には、所有権を移転するために「名義変更」を行わなければなりません。
しかし、この車の名義変更をするだけで、場合によっては「贈与税」が発生する可能性もあります。
国税庁の「相続税法基本通達9-9」によれば、以下の通り、車の名義変更であっても、対価が支払われなければ贈与とみなされ、贈与税がかかります。
相続税法基本通達9-9
不動産、株式等の名義の変更があった場合において対価の授受が行われていないとき又は他の者の名義で新たに不動産、株式等を取得した場合においては、これらの行為は、原則として贈与として取り扱うものとする。(昭39直審(資)22改正)
【出典】第9条《その他の利益の享受》関係|国税庁
しかし、名義変更をしても、贈与税がかからない例外もあります。
国税庁の名義変更通達によると、財産の名義人となった者(※)が名義人となったことを知らずに、財産を使用収益をしていない場合や、間違いや過誤で名義変更してしまった場合には、贈与税の申告の日の前までに、名義を元に戻せば贈与がなかったものとして取り扱われます。
では、車の名義変更を夫婦間や親子間でした場合も、贈与税は課されてしまうのでしょうか?
※財産の名義人となった者が未成年者である場合には、その法定代理人を含む。
【参考サイト】「名義変更等が行われた後にその取消し等があった場合の贈与税の取扱いについて」|国税庁
夫婦間の贈与であっても、個人から個人への贈与であり、贈与税の問題は当然に発生します。
ただし、第三者への贈与とは違い、贈与税がかかるケースとかからないケースがあります。
夫婦には、お互いを扶助する義務があります(民法752条)。したがって、生活に必要なお金を渡すことに対しては贈与税はかかりません。
車についても、生活するうえで必要と認められる範囲のものであれば贈与税の対象にはなりません。
しかし、車が高級車となると「生活に必要」かどうかに疑問符が付くことになり、贈与税がかかる可能性もあります。
例えば、既に日常生活に使用している車が1台あるにもかかわらず、高級車を妻名義で購入すると、贈与税の対象となる可能性は高いでしょう。
また、夫の口座から引き出したお金で妻名義の車を購入すると、贈与税が課される可能性があります。
子供が大きくなると、親が子供に車を買い与えることもあるでしょう。また、子供が親へ車をプレゼントすることもあるかもしれません。
親子間における車の贈与についても、夫婦間と同様の考え方をします。
親子間の贈与でも、生活や教育に必要な費用を渡すことは贈与税の対象外です。
例えば、子供が地方の大学へ進学し、日常生活や通学に車が必要となった場合には、買い与えても贈与税はかかりません。
一方で、車が日常生活には過分な高級車であれば、贈与税がかかる可能性があります。
車を譲り受けた受贈者は、自動車の評価額によって、贈与税を支払わなければなりません。自動車の「評価額が110万円」を超えていれば贈与税が発生します。贈与税の基礎控除額である110万円を超えてしまうからです。
反対に、譲り受けた車の評価額が110万円を超えていないのであれば、贈与税は発生しないことになります。しかし、受贈者(贈与された者)が1年間に受けた贈与の合計額が、110万円を超えていれば、車の評価額自体が110万円を超えていなくても贈与税は発生します。
基本的に、自動車を含む一般動産は、「売買実例価格」か「精通者意見価格」で評価額を決めます。
新車を贈与すれば、購入価格が売買実例価額となります。インターネットの中古自動車取扱店で、同車種、同程度の使用状況の車両価格を調べることは、「売買事例価格」に該当します。
一方で、中古車販売業者などでしてもらう「査定」が「精通者意見価格」に該当します。ただし、贈与された時点の「現在価値」で査定してもらう必要があります。
売買事例価格や、精通者意見価格が110万円を超えているのであれば、自動車に贈与税が発生することになります。
売買事例価格や精通者意見価格でも評価額が決められない場合には、同種の新車の課税時期の小売価額から、製造時から課税時期までの償却費の合計額、または減価の額を差し引いた帳簿価格によって評価することもあります。
【参考外部サイト】「第1節 一般動産」|国税庁
したがって、複数のネット中古自動車取扱店で車両価格を調べたり、複数の中古車販売店に査定を依頼して、中でも一番低い評価額を参考にすれば、贈与税を抑えることができます。
資料を取っておき、申告の時に添付して提出するといいでしょう。
自動車の贈与税額を求める計算式は次の通りです。
実際に、以下の事例を計算して、贈与税をシミュレーションしてみましょう。
事例
- 親から子への贈与(特例税率が適用される)
- 車の評価額:500万円
贈与税の特例税率については、以下の記事をぜひご一読ください。
基礎控除額を超える自動車を譲り受けると、贈与税が発生してしまいます。
そこで贈与税をかけないで済む方法を2つご紹介します。
自動車の名義変更をすることで贈与税が発生するのであれば、「名義変更をしない」ことも1つの方法です。つまり、名義人は「親」のままで、子供にただ使わせればいいのです。この方法であれば、「贈与」には当たらず、贈与税を発生させないで済みます。
ただし、車の所有者と使用者が異なることになり、加入する自動車保険がそのまま適用されるかが問題となるため、保険会社等に確認したほうが良いでしょう。
新車は中古車になると評価額がグッと下がります。
評価額が110万円以下になるタイミングを待って子供に名義変更すると、贈与税がかからずに車を子供に贈与することができます。
今回は、車の名義変更にともなう贈与税について解説しました。
車の名義変更をすると、評価額次第で「贈与税」が発生する可能性もあります。また、車の評価額を含め1年間に贈与された財産の合計額が、110万円を超えると贈与税が課されてしまいます。
贈与税は申告しなければ、バレないだろうと考える方も多いでしょうが、贈与税は申告しないと、早晩バレてしまいます。
しかし、贈与税が発生する場合でも、より低い評価額を選ぶことで、納税額を減らすことは可能です。
とは言っても、具体的に贈与する際には、判断を迷うこともあるでしょう。そんな時には、是非、当サイトから「贈与税に強い税理士」をお探しいただき、ご相談ください。