教育資金贈与信託の金融機関での手続き方法
教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税特例を利用するには、金融機関で教育資金贈与信託の専用口座を作り入金します。金融機…[続きを読む]
祖父母や父母から子供や孫へ、教育のための資金を一括で贈与した場合、最大1,500万円まで贈与税が非課税になります。
この制度が、2023年の税制改正で2026年3月までさらに3年間延長されます。
そこで、この制度の概要と、対象者、利用方法をわかりやすく説明していきます。
また、教育費は、必要になる都度贈与しても非課税となっており、両者の使い分けについても紹介します。
この制度の正式名称は、「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税」といいます。最初に、この制度の背景や、適用要件、非課税限度額などについて解説します。
教育資金一括贈与の制度は、2013年に新設されて以来、2021年にも税制改正で、適用期間が2年延長されています。
冒頭でご紹介した通り、この制度は、再び2026年の3月31日まで延長されることになり、贈与者が死亡した時の残高が原則として相続税課税対象となりました。
ただし、この制度を利用するためには、金融機関で「教育資金贈与信託」サービス等を利用する必要があり、具体的にいつまで資金を拠出する必要があるのかは、利用する各金融機関にご確認ください。
高齢者世代の資産を若い世代に効率的に移して、子供の教育資金を確保しつつ子育て世代を支援するとともに、お金を動かし経済を活性化させる制度の一つが、「教育資金一括贈与の非課税制度」です。
資産を持っている高齢者世代から若い世代に「教育資金」として財産を移転して、高齢者の持つ資産を若年層の教育に使ってもらい、最終的に、経済を活性化させることを目的にしています。
次に、教育資金一括贈与の非課税制度を利用するための要件について見ていきます。
贈与者は、受贈者の直系尊属である必要があります。具体的には、以下のような続柄です。
受贈者は、贈与者の30歳以下の直系卑属でばなければなりません。具体的には、以下の通りです。
ただし、受贈者の所得金額が1,000万円を超える場合には、この制度は使えません。
受贈者1人につき、1,500万円までが非課税限度額です。ただし、学校等以外への支払いについては500万円までです。
子や孫が合計4人いれば、1人当たり1,500万円なので、4人合計で6,000万円を非課税にすることができます。
教育資金としての一括贈与です。非課税となる主な教育資金には、次のようなものがあります。
学校等に支払う金銭
- 入学金、授業料、入園料、保育料、施設設備費又は入学(園)試験の検定料
- 学用品の購入費、修学旅行費や学校給食費など学校等における教育に伴って必要な費用 など
学校等以外に支払う金銭のうち一定のもの
- 教育(学習塾、そろばんなど)に関する活動
- スポーツ(水泳、野球など)又は文化芸術に関する活動(ピアノ、絵画など)その他教養の向上のための活動
- 通学定期券代、留学のための渡航費などの交通費 など
なお、23歳以上の場合、「学校等以外に支払う金銭」のうち、「通学定期券代、留学のための渡航費などの交通費」以外については、教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講するための費用に限ります。
それぞれの項目を簡単にまとめると、以下の表のようになります。
用件 | ||
---|---|---|
贈与者 | 受贈者の直系尊属 | |
受贈者 | 30歳以下の直系卑属 | |
非課税限度額 | 受贈者1人につき1,500万円。学校等以外への支払いは500万円 | |
目的 | ・学校等に支払う金銭 ・学校等以外に支払う金銭のうち一定のもの |
この制度のメリットには、
などがあげられます。
一方のデメリットには、
などがあげられます。
次に、この制度を利用するための手続きについて見ていきます。
教育資金の贈与税非課税制度を利用するためには、信託銀行等の金融機関が提供する「教育資金贈与信託」サービス等を利用しなければなりません。
まず、金融機関に、受贈者(子や孫など)の教育資金専用口座を開設します。
贈与者(父母や祖父母など)から受贈者に対して、一括で教育資金を贈与します。贈与は、贈与者と受贈者の合意によって成立します。
口頭でも贈与は成立しますが、証拠を残してもめ事を防止する意味合いからも、通常、教育資金の贈与においては、贈与契約書を作っておきます。
贈与で受取ったお金を、開設した教育資金専用口座に入金します。
贈与者・受贈者からではなく、口座を作った金融機関を通して、所轄の税務署に教育資金非課税申告書を提出します。
以上で、教育資金を使う準備が完了です。
教育資金を使用する場合は、受贈者は、教育資金専用口座から、必要に応じて引き出して使います。
主として、次の2つの方法で資金を引き出します。
一旦、事前に自分で支払っておいて、後から、その領収書等をもって資金を引き出す方法です。
領収書による引き出しとは違い、一旦自分で支払うのではなく、請求書等により必要な資金を事前に引き出しておいて、事後に、その領収書を提出する方法です。入学金など金額が大きい場合に使われます。
金融機関での手続きの詳細は下記をご覧ください。
いくつか、不明点や気になる点をお持ちの方もいらっしゃると思います。ここでは、皆さんがお持ちの疑問について見ていきます。
30歳になり、この非課税制度が終了すると、残った金額はその年の贈与で取得したとみなされ、贈与税がかかります。贈与税には110万円の基礎控除があるため、基礎控除を控除した残額に対して贈与税を支払います。
ただし、税制改正で、2019年7月1日以降は、受贈者が30歳になっても、下記に該当する場合には、最長40歳まで延長できるようになりました。
また、2023年4月1日以降の一括贈与からは、贈与税の計算時、特例税率ではなく一般税率を適用することになりましたので、贈与税が高くなります。
拠出時期 | |||
---|---|---|---|
~2019年3月31日 | 2019年4月1日~2021年3月31日 | 2021年4月1日~ | |
相続財産への加算 | 加算なし | 死亡前3年以内の拠出分のみ加算 | 死亡時期に関わらずすべて加算 |
相続税の2割加算 | 適用なし | 適用なし | 適用あり |
23歳未満等の適用除外 | - | 適用あり | 相続税の課税価格合計額が5億円以下の場合適用あり |
この制度が新設された当時には、贈与者が死亡した時に管理に残高があったとしても、相続税の課税対象とはなっていませんでした。
贈与者の死亡時に管理残高があった場合には、「死亡前3年以内」の管理残高のみについて相続税の課税対象としました。
ただし、贈与者が以下のいずれかの条件に合致していれば、相続税の課税対象からは外されます。
一方、2021年4月1日以降の拠出分については、管理残高すべてを相続財産に加算します。
しかし、贈与者の死亡時に、相続税の課税価格が5億円を超えると、上記3つの条件いずれかに当てはまっても、相続財産に加算されます。
管理残高の計算については、口座を開設している金融機関が行うことになります。
受贈者が亡くなった時に教育資金が残っている場合は、贈与税はかからず、受贈者の相続財産となります。
教育資金を使う場合、原則、領収書か請求書(振込依頼書)など教育に関する支払いと分かるものがないと引出しできません。
よって、教育資金以外での使用はできません。
この制度と、結婚・子育て資金の贈与非課税制度との併用は可能です。
しかし、教育資金一括贈与の受贈者の年齢制限は30歳未満であり、贈与の対象となるのは、幼稚園から小学生程度のお孫さんではないでしょうか。
一方で、結婚・子育て資金の贈与税非課税制度の受贈者の年齢は18歳以上50歳未満であり、ある程度年齢のいったお子さんやお孫さんになると思われます。
併用できる受贈者は、18歳以上30歳未満となりますが、最初から併用することを目的とするのではなく、上手く使い分けるといいでしょう。
ここまで、教育資金一括贈与の非課税制度について見てきました。しかし、「そもそも、子や孫の教育費用って非課税ではないの?」という疑問を持つ方もいらっしゃるでしょう。
父母や祖父母には、子や孫に対して扶養義務があるため、教育資金を必要な時期に、必要な金額贈与する場合は、非課税です。
教育資金を必要な都度贈与すれば、教育資金専用口座の開設も、領収書の提出も必要ありません。一括贈与より手間がかからず楽に贈与できます。
そこで、ここでは、教育資金一括贈与の非課税制度を使った「一括贈与」と、この制度を使わず、必要なタイミングでその都度贈与する「都度贈与」の使い分けについて解説します。
次のケースに該当する場合は、一括贈与を利用したほうが良いでしょう。
非課税制度を使った一括贈与と都度贈与は、併用することができます。
大学の入学金や学費などのまとまった金額になるものに対しては一括贈与、日々の教育費については都度贈与といった使い分けも可能で、有効です。
教育資金一括贈与の非課税制度を利用すると、可愛い孫などに、1,500万円まで非課税で贈与できます。しかし、メリットがある一方で、デメリットもあります。
そのため、贈与者のライフプランや受贈者の教育計画などを十分に考慮したうえで、教育資金の贈与方法を判断するのが良いでしょう。
判断に迷ったら、信頼のおける相続に強い税理士に相談することも検討してみてはいかがでしょうか?