守りの相続対策としての金:相場、価格、種類、取引方法

ゴールドバー

相続対策として賃貸アパート・マンション等の不動産投資が注目されていますが、これらはどちらかというと攻めの相続対策に当たります。うまくいけば相続税評価額を落としたうえに賃料収入も得られて財産を増やすことができますが、失敗すれば空き家ばかりで管理費だけかかり財産を目減りさせることになります。

そこで安定した守りの相続対策としてお勧めしたいのは「金」です。金は少量でも価値が高く腐食することもなく持ち運びが自由であり、世界的に通用するため、昔から戦争勃発などの有事の際に貨幣に代わる代替手段として利用されてきました。

株などの有価証券や不動産は経済情勢の変化に伴って価値がなくなりゼロになってしまうこともあり得ますし、現金であっても仮に超インフレが発生すれば価値は大幅に下がってしまいます。一方で、金は、どの時代どの場所においても決して価値を失うことなく、その輝きを放ち続けています

なお、金への投資は、いわゆる節税対策や株取引のように短期間の売買でリターンを得る類のものではないことにご留意ください。リスク分散として、長い目で見て安定的に資産を守り子孫に受け継いでいくことに意義があります。ある程度の規模の資産があり安定した運用をしたい場合には金を検討されてみてはいかがでしょうか。

金の基礎知識

金の特性

(1) 希少性

貴金属市場の調査を行っているトムソン・ロイターGFMSが2015年に発表した資料によりますと、人類が現在までに生産した金の量は18万3,600トンとされていますが、年々生産増加のペースが落ちてきています。世界での金の量には限りがあります。日本もかつては黄金の国と呼ばれ金が豊富にありましたが、採掘し尽くされてしまい、現在は世界の金生産量のわずか0.2%しか生産されていません。

(2) 換金性(流動性)

世界のほとんどの地域で当日の価格で換金することが可能であり、流動性が高いです。

(3) モノとしての価値

株や債券は発行体の信用によって価値が左右されますが、金はモノでありそれ自体に価値があります。価値がゼロになることがありません。

(4) リスクヘッジ

金はモノとしての価値があり時代と場所を超えて価値が存続しますので、超インフレや戦争などの有事に対するリスクヘッジとして利用されます。

金の国際相場

金は世界中の市場で週末を除いて24時間取引されています。
金の世界市場は、現物(スポット)市場先物市場に区分することができます。

現物市場の中心はロンドン市場であり、チューリッヒ市場も世界最大の金貨市場として知られています。
特にロンドンでは「ロコ・ロンドン」と呼ばれる取引が盛んに行われています。「ロコ・ロンドン」とはロンドン渡しという意味で、ロンドンで金の現物を受け渡しをする取引のことをいいます。決済はロンドンの銀行や金取引業者に開設した金口座間で残高を移動させる方式で行われます。現物の受け渡しを行う口座と受け渡しを行わない口座の2種類があり、後者が主流となっています。
ロコ・ロンドンでは、電話や業者間での相対取引が行われており、物理的な取引所は存在しません。取引はロンドンだけではなく世界中でも行われ週末を除いて24時間取引です。また、ロコ・ロンドンでは、ロンドン・フィキシングと呼ばれる、ロンドン市場の16時(夏時間15時)=日本時間の25時(夏時間24時)に値決め(フィキシング)が行われ、それが世界的な金現物価格の指標となっています。

先物市場の中心はニューヨークのCOMEX(Commodity Exchange:)や東京商品取引所(TOCOM)、そして、インドのMCX(Multi Commodity Exchange)です。COMEXは日本語では「ニューヨーク商品取引所」と呼ばれCMEグループのNYMEX(ニューヨーク・マーカンタイル取引所)の一部門です。TOCOMは世界第3位の金取引量を有しています。
2008年(平成20年)1月9日には、中国の上海期貨交易所で金先物取引が開始されました。金生産量では、中国は2007年(平成19年)に南アフリカを抜いて世界第1位となり、以後連続で世界最多の座を保持し、2014年時点で450トンの生産量を誇っています。

なお、日本でロコ・ロンドン取引と呼ばれている商品がありますが、本来の取引とは全くの別物です。業者に証拠金を預けてそれを元に金の現物価格を指標として、レバレッジを効かせて売買を行う差金決済取引のことです。2000年台後半にはトラブルも頻発しましたのでご注意ください。

金の国際価格と国内価格

金の国際価格は1トロイオンス(=31.1035グラム、略称TOZ)当たりの米ドル建て価格で取引が行われます。一方、日本国内では、1グラム当たりの円建て価格で取引が行われます。従って、国内の金価格は、国際金価格を対ドル為替レートで円に換算し、1トロイオンスから1グラム当たりの価格に換算し、さらに日本への運賃や保険料、マージン(手数料)などの諸費用を加算することで算出されます。

国内金価格(円/グラム)=
海外金価格(ドル/トロイオンス)×為替レート(TTS)÷31.1035+諸費用

たとえば、国際金価格:1555ドル/toz、為替レート(TTS):100円/ドル、諸費用100円とした場合、国内金価格は次のようになります。

国内金価格=1555×100÷31.1035+100=5100円

業社と売買する際にはこれに消費税がかかります。
TTSとは円貨を外貨に変えるときのレートです。

【参考】外貨建て資産と相続税

金価格の変動要因

次の表のように、金の価格は需給関係、金融動向(金利・株価・為替)、政治情勢などによって変動します。基本的には、金の価格は金利・株価と逆の値動きをします。

要因金価格上昇金価格下落
需給関係宝飾品需要の増加
エレクトロニクス用需要増加
金生産国の減産
各国中央銀行の金購入
金ETFの残高増加
金生産国の増産
各国中央銀行の金売却
金ETFの残高減少
金融動向円安
金利低下
株価下落
インフレ懸念
円高
金利上昇
株価上昇
インフレ懸念の後退
政治情勢政治不安の高まり
原油価格の高騰
政治不安の鎮静化
原油価格の下落

金の価格の推移

金の国際価格は、1975年時点では約200ドル/トロイオンス(以下、$/toz)でしたが、1979年12月のソ連アフガン侵攻で一時期700$/toz台まで急上昇しました。その後、約25年間にわたって400$/toz前後を行き来しますが、2005年あたりから上昇し始め2008年3月には、1,000$/tozの大台を突破しました。2008年9月のリーマンショックにて急反落しましたが、その後上昇に転じ、2011年9月には1,900$/tozを突破しました。その後また一気に反落し、1,000$/tozあたりまで下がりましたが、2016年7月現在は約1,300$/tozあたりを推移しています。

金の種類と取引方法

金商品の種類

金は装飾品や骨董品にも利用されますが、資産財としての商品には、金地金金貨の2種類があります。

地金とは、いわゆる延べ棒(バー、インゴットなどと呼ばれる)のことです。
ラージ・バー(500g, 1kg, 12.5kg)、スモール・バー(100g, 200g, 300g)、コイン・バー(5g, 10g, 20g, 50g)などがあります。
国内では、純度99.99%(フォーナイン)の金地金が取引されています。流通している金地金の純度は国によって異なります。

一方、金貨には、ブリオン(地金型)金貨・リストライク(鋳型)金貨・オリジナル金貨があります。

売買を中心に取引を行う場合「地金」で行うことが一般的です。金地金は重量、品位で価格が決まるため、表面に多少傷や汚れがあっても価格に違いが出ることはほとんどないからです。一方、金貨は、売買の価格差が金地金より大きく、傷や汚れ、空気に触れているかどうかなどの保存状態によって価格が左右されます。

金地金の取引方法

金地金は、地金商、証券会社、百貨店、銀行、商品取引員などで取り扱っています。国内現物取引では物理的な取引所は存在しませんので、業社が提示する価格で売買することになり、価格は業者により異なります。また、業者によっては売却を取り扱っていないか、または売却に制限があるため注意が必要です。たとえば、百貨店、銀行などでは売却を取り扱っていないところが多く、一部の地金商は自社ブランドの売却しか取り扱っていません。

金地金の価格は2本立てであり、購入時には「小売価格」、売却時には「買取価格」で取引を行います。「小売価格」と「買取価格」の差は、だいたい60円/グラムですが、業者によっては30円/グラムの場合もあります。これらの価格に重量をかけ消費税がかかります。

500g未満のスモール・バー、コイン・バーの場合、バーチャージという手数料が別途必要となります。バーチャージは、小売価格(税込)に加算、買取価格(税込)から減算されます。バーチャージの金額や計算方法は業者によって異なります。

購入の場合: 小売価格(円/g)×購入重量(g)×消費税+バーチャージ
売却の場合: 買取価格(円/g)×購入重量(g)×消費税-バーチャージ

売却時の税金

売却で得た利益に対しては、譲渡所得して総合課税の対象となります。譲渡所得は次のように計算されます。50万円の特別控除があります。

譲渡所得=総収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額50万円

所有期間が5年以内の場合、総合短期譲渡所得となり、所有期間が5年超の場合、総合長期譲渡所得となります。後者の総合長期譲渡所得では所得金額の2分の1だけを他の所得と合算しますので、大幅に有利になります

【参考】G&Pバンクの金の贈与!定期贈与との指摘を受けない方法

その他の金関連商品

純金積立

純金積立とは、毎月一定額を金融機関の口座から引き落とし、その月の営業日数で割った額の金地金を毎日の相場価格で買い付ける方式です。ドルコスト平均法と呼ばれ、価格が高い時は少なく、安い時には多く買いつけることで、単純な数量分割に比べ平均値の点で有利になるとされています。

期間積立期間1年で期間満了後自動継続
申込単位1,000円以上1,000円単位
金利なし
年会費なし~800円程度(取扱会社により異なる)
事務手数料取扱会社により異なる
取扱会社地金商、鉱山会社、証券会社、商品先物会社など
税金譲渡所得

金ETF

金ETFとは、金価格に連動した上場投資信託のことです。上場されており証券会社でリアルタイムに取引できるため、株式投資に慣れている人であれば比較的簡単に取引が可能です。金ETFの裏付けとして原則、投資家の購入額に応じて金地金を購入・保管する仕組みとなっており、万一取扱会社が破綻しても保護される仕組みとなっています(ただし、金地金の裏付けのない商品もあります)。

ただし、短期間トレージのようなイメージがあり、長期視点での投資にはあまり向かないかもしれません。

金の仏具

投資商品ではありませんが、金の仏具は相続税が非課税であるため、一部の間では節税対策になると言われています。ただし、高価すぎる仏具は税務署に否認されるおそれがありますのでご注意ください。
また、金の仏具は金としての価値は薄れてしまい、購入価格の3分の1程度の価格でしか売却できない可能性が高いため、節税という意味では疑問が残ります。

【参考】純金の仏具は相続税対策になる?相続税法上の扱いと節税効果

相続対策としての金取引のまとめ

相続対策としての金取引には、株式のように短期間でリターンを得るのではなく、長期保有を前提として将来の政治経済情勢に対するリスク分散を図るという意味合いがあります。

「金地金」を購入するのは一般的ですが、その他にも、純金積立などの方法もあります。
金取引のポイントは以下のとおりです。

  • 余裕のある資金を当てて長期保有する。
  • 定期的に分割購入をする。
  • できるだけ信頼できる業者を見つけて購入する。
  • あくまでもリスク分散目的で行い、ハイリターンを望まない。

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