相続できなくなる場合(相続欠格と相続人の廃除)
お母さん
「そういえば、隣の家の息子さん、すごくお金使いが荒いみたい。親のお金を全部遊びに使っちゃうらしいわよ。」
おばあちゃん
「まあいやなこと。そんな遊び人には相続させたくないわよね。」
相続おじいちゃん
「まさにそうじゃな。そういう場合には、相続できないようにすることができるんじゃ!わしの長男、次男も親孝行しなかったら、相続させんぞ・・・」
お父さん
「お父さん、それは勘弁して下さいな。一生懸命、親孝行しますので!」
1.相続できなくなる場合とは
配偶者、親、子供、兄弟姉妹が相続する人(相続人)となることを今まで見てきました。
さて、相続する人の中にひどい人がいて、相続される人(被相続人)に暴力をふるっていたり、遺産目当てで殺人をしようとする人がいたら、こんな人には遺産をゆずりたくないですよね。サスペンスドラマではないですが、実際に家族間で暴力をふるったり、陰謀を計画したりするケースは多く、問題になっています。
そんな問題な人が相続できなくなる仕組みがあります。
一つは、相続欠格といい、誰が見ても明らかに悪いことをしたために、当然相続できなくなります。遺産目当ての殺人とか、自分に有利になるように遺言を偽造したとか、明らかに悪いことをした場合は、自動的に、相続する権利を失い、相続できなくなります。
もう一つは、相続人の廃除といい、ひどいことをしている人を相続できなくさせます。暴力をふるっているとか、金遣いが荒いとか、相続させたくない相手がいたら、家庭裁判所にお願いして、相続する権利を奪って相続できないようにします。
こういう事態にはなりたくないものですが、もしものために、詳しく見てみましょう。
2.相続欠格
昔は親や年配の人は尊敬されたものでしたが、最近では、子供が親を敬うことは少なくなってきました。それだけでなく子供が親に暴力をふるったり、ひどければ、殺してしまったというニュースもたびたび耳にします。
とても怖いことですが、そんな子供には誰だって相続させたくありません。
2-1.自動的に相続できなくなる
そこで、相続する人に明らかに重大な問題がある場合は、当然に、相続できなくする(相続する権利を失わせる)ようにしています。これを「相続欠格」といいます。
詳しく見ると、相続できなくなるのは次のような人です。
- わざと相続される人(被相続人)を殺した人、または殺そうとして刑罰を受けた人
- わざと他の相続する人(相続人)を殺した人、または殺そうとして刑罰を受けた人
- 相続される人(被相続人)が殺されたことを知りながら、告発や告訴をしなかった人
- 詐欺や強迫によって、相続される人(被相続人)が自由に遺言をしたり、取り消したり、変更したりすることを妨げた人
- 詐欺や強迫によって、相続される人(被相続人)に意思に反して、遺言させたり、取り消したり、変更させたりした人
- 相続される人(被相続人)の遺言書を偽造したり、勝手に変更したり、捨てたり、隠したりした人
これらのどれか一つが当てはまれば、自動的に、相続できなくなります。裁判所の決定などの手続きは必要ありません。
なお、相続欠格となった人に子供がいた場合は、その子供が代わりに相続することになります。
もし、相続一家のお父さんが相続欠格で相続できなくなったら、その子供である男の子が相続することになります。
「代襲相続」の箇所で説明しましたが、本来、相続するはずの人が相続できなくなった場合、その人に子供や孫がいれば、その子供や孫が代わりに相続します。
3.相続人の廃除
前のページで見た「相続欠格」とは、相続する人に明らかに重大な問題がある人を、自動的に相続できなくさせることでした。
それでは、そこまで重大な問題とはいえませんが、親の金を使っていつも遊んでばかりいるとか、親に暴力をいつもふるっているとかで、この子供には相続させたくないという場合は、どうすればいいでしょうか。
「お前とは縁を切る!勘当だ!」と言えば感情的にはすっきりするかもしれませんが、親子のつながりが切れたわけではなく、子供は相続する権利を持っています。
3-1.被相続人の意思で相続できなくさせる
そこで、相続する予定の人に問題がある場合は、相続される人(被相続人)の意思で、その人を相続できなくさせる(相続する権利を奪う)ことができます。これを「相続人の廃除」といいます。
(「排除」ではなく「廃除」です。漢字を間違いやすいのでご注意下さい。)
詳しく見ると、相続する権利を奪うことができるのは、次のような場合です。
- 相続される人(被相続人)に対して虐待したとき
- 相続される人(被相続人)に対してひどい侮辱をしたとき
- そのほか、ひどい非行があったとき
3-2.家庭裁判所に申請
相続人の廃除については、自動的にそうなるのではなく、家庭裁判所に申請して認められると、そのことが戸籍に記載されて決定します。
生前に行うこともできますし、遺言に書いておくこともできます。
ただし、相手の相続する権利を奪うものですから、それなりの理由がないと認められません。感情的に気に入らないとか、親子げんかでちょっと殴られたくらいでは認められません。暴力を定期的にふるわれたとか、お金をたくさん持っていかれたとか、周囲の人から見て、「それはひどいよね」と納得できる理由が必要です。
なお、相続する権利を奪われた人に子供がいた場合は、その子供が代わりに相続することになります。
もし、相続一家のお父さんが相続人の廃除で相続できなくなったら、その子供である男の子が相続することになります。
本来、相続するはずの人が相続できなくなった場合、その人に子供や孫がいれば、その子供や孫が代わりに相続します。
「代襲相続」の箇所で説明しましたが、本来、相続するはずの人が相続できなくなった場合、その人に子供や孫がいれば、その子供や孫が代わりに相続します。