山梨県の中央部に位置する甲府市。県庁所在地である甲府市の相続にはどのような特徴があるのでしょうか?そして、相続税対策には欠かせない税理士の在籍状況も合わせて確認していきましょう。
1.甲府市の相続事情
甲府市は甲府税務署の管轄となりますが、甲府税務署の管轄は甲府市のみではありません。甲斐市や南アルプス市なども管轄となっており、これらの地域を統合した相続データとなっています。
甲府エリアの相続税申告件数は409件、実際に課税された件数は342件です。相続1件あたりの納付税額は約730万円、課税割合は6.82%となっています。山梨県の人口は甲府エリアに集中しているため課税件数が多く、山梨県で起きる相続の半数以上を占めています。
また、課税割合は県内1位である一方で、1件あたりの納付税額は山梨県内の平均金額を下回っています。つまり、相続税が課される可能性は高いのですが、課税額は県内でも比較的安いという特徴が見られます。
一般的には課税割合が多い場所ほど、課税額は高くなる傾向にあるため甲府エリアの相続は珍しい特徴といえるでしょう。ただし、課税額が低くても相続税の負担は約700万円と、非常に重いものですので、きちんと相続税対策を実施する必要があります。
2.地価事情
甲府エリアは一般的な相続とは逆の特徴が見られる地域です。そこで、どうして珍しい特徴が起きているのか、甲府市の地価から考えていきましょう。
2-1.代表的な地域と地価
2-1-1.甲府駅周辺
甲府市の中心駅としての役割を持つ甲府駅。この周辺エリアは時代とともに再開発や整備が行われ、甲府市を代表するエリアへと発展してきました。駅の南口には路線バスや高速バス、タクシーなどのロータリーがしっかりと整備され、鉄道だけでなくさまざまな手段での往来がより手軽に行えます。
北口には観光地である甲州夢小路や高層マンションがあります。甲府駅周辺で楽しんだり生活したりする人がメインに使用することもあって、エレベーターなどが新たに設けられました。これにより車イスなどでの移動も簡単になり、より多くの人々が利用しやすくなったのです。
甲府駅周辺の地価平均は約8万2,000円で、甲府市内でも最も地価が高額な地域です。特に、中には10万円を超える地域もあり、低いところでも甲府市全体の平均地価と同程度となっています。
また、この周辺には県の主要施設が集まっており、山梨県庁や甲府地方裁判所、甲府市役所などが建設されています。これらの施設は駅の南側に集中しているため、金融機関なども南側に多く、北側に比べると発展度合いが高いといえるでしょう。
2-1-2.金手駅周辺
甲府駅から東側へ進んだ次駅が金手駅です。金手駅は無人駅であり、1日の平均乗車数は100人にも満たない駅です。金手駅周辺の地域は住宅街が広がっており、大型商業施設などはないため、どちらかというと静かな地域です。
実は、この金手駅周辺の地価は甲府市内で2番目に高額な地域で、地価平均約5万2,000円となっています。この地域には、歴史のある寺院が多くあるものの、大半が住宅地として活用されています。
そのため、金手駅周辺の地価が高額なのは、甲府駅に一際近いからだと考えられます。甲府駅までたった1駅のため、交通の利便性などはそこまで大差はありません。むしろ、同じ利便性で静かに過ごせることがこの地域の魅力となっているため、人気を集めているのです。
特に、金手駅は甲府駅の南部から続く地域のため、大型商業施設などへも手軽に移動できます。こうした立地条件の良さから、住宅地でありながら地価が高額であり、いつの時代も人気を集めているのかもしれません。
2-2.地価の特徴
甲府市全体の地価平均は約5万3,000円です。しかし、高額な地価のエリアは甲府駅や金手駅周辺に集中しており、その他の地域では平均を下回っているところが多くあります。また、甲府市では土地の大半が住宅地として活用されています。
そのため、人口は多いのですが商業施設や企業からの需要が低いため、全国的に見ると地価が高額化しにくく、都市部に比べると安く見えてしまいます。特に、山梨県は都市部から離れていることもあって、ベッドタウンとしての役割も低く、他県から移住することも少ないと思われます。
こうした背景から、甲府市のさまざまな地域で地価の減少が起きています。これは甲府市内だけでなく山梨県全域で見られており、深刻な地価推移といえるでしょう。ただ、甲府市の南部にある大津町周辺はリニア中央新幹線計画が持ち上がっています。
さらに、甲府駅と大津町のリニア駅までの新たなアクセス手段の整備も計画されています。ですので、リニア開通をきっかけに下がっている地価が大きく上昇する可能性もあるため、地下推移は注意深くチェックしておきましょう。
3.所得と富裕層
甲府市の所得税の納税義務者数は約8万3,000人、課税対象所得は2,600億円です。1人あたりの所得は約310万円となっています。山梨県内では6番目に高額な所得となっていますので、富裕層が多く生活している地域といえるでしょう。
また、世帯ごとの割合を見てみると、300万円未満が39%、300~500万円未満の世帯が22%となっていますので、世帯ごとに大きな差は生まれていないことがわかります。反対に、300万円未満の世帯は全国平均を上回っており、世帯年収が高額になるごとに全国平均を下回る結果となっています。
こうした所得の結果と地価から考えてみると、甲府市の相続税は平均を下回るようなことはないように思えます。実は、甲府エリアの1件あたりの納付税額が低いのは、山梨エリアが突出しているためであり、それ以外の地域は納付税額に差はありません。
つまり、データだけだと1件あたりの納付税額は低く見えますが、実際には山梨県のどの地域も相続税額は変わらないのです。そのため、市内でも課税割合が高い甲府市では相続税対策が重要となっており、しっかりと対策を講じておく必要があります。
4.甲府市の税理士事情
甲府市に在籍している税理士は160名です。甲府エリアの年間の課税件数は342件ですので、甲府市の税理士はやや不足しているといえるでしょう。ただし、山梨県内に在籍している税理士は304名です。
つまり、甲府市内に全体の半数以上の税理士が集まっているのです。1つの地域に税理士が集中していると、他の地域では税理士が不足していることが多く、甲府市内の税理士が他地域の相続も担当することが増加します。
そのため、相続開始後に税理士を探す場合、比較・検討するために時間がかかり、希望する税理士へ依頼できない可能性があるのです。そこで、相続が開始する前から相続に強い税理士を探しておき、いつでも依頼できるように準備しておくことが必要です。
また、住宅地が多いことから相続のメインは土地や自宅などの不動産になっていると考えられます。リニモ開通を控えた甲府市は、今後の開発によって地価が上昇する可能性がある地域でもあります。ですので、税理士探しの際には不動産鑑定士と提携しているか、その鑑定士の実力が高いのかなどにも注目しておくことで、より効果的な節税対策が可能になるでしょう。
【参考】甲府市内の相続関連機関一覧
甲府市内の相続に関連する各種機関の連絡先一覧をまとめました(2018年2月現在)。ただし、変更される可能性があることをご了承ください。
機関名 | 住所 | TEL |
---|---|---|
甲府税務署 | 〒400-8584 山梨県甲府市丸の内1丁目1番18号 甲府合同庁舎1-1-18 | 055-254-6105 (代表) |
山梨県税事務所 | 〒406-8601 山梨県笛吹市石和町広瀬785 東八代合同庁舎(1,2階) | 055-261-9111 (代表) |
甲府市役所 | 〒400-8585 山梨県甲府市丸の内一丁目18番1号 | 055-237-1161 (代表) |
甲府地方法務局 | 〒400-8520 山梨県甲府市丸の内1丁目1番18号 甲府合同庁舎 | 055-252-7151 |
甲府公証役場 | 〒400-0024 山梨県甲府市北口1丁目3-1 | 055-252-7752 |
甲府家庭裁判所 | 〒400-0032 山梨県甲府市中央1-10-7 | 案件によって異なる HP参照 |
山梨県司法書士会 | 〒400-0024 山梨県甲府市北口1-6-7 | 055-253-6900 |
山梨弁護士会 | 〒400-0032 山梨県甲府市中央1丁目8番7号 | 055-235-7202 (代表) |