府中市、調布市、狛江市の相続と税理士事情

東京都23区の西部に位置しており、都心部との関わりが強い府中市、調布市、狛江市の3つの市。都市部と住宅地2つの要素を兼ね備えたこれらの市では、どのような相続の特徴があるのでしょうか?相続税の課税状況や地価、所得などから、一緒に考えていきましょう。
目次
1.武蔵府中エリアの相続事情
東京都の府中市、調布市、狛江市は全て武蔵府中税務署の管轄となっていますので、相続税に関するテータは3つの地域の合計値となっています。武蔵府中エリアの1年間の相続税申告件数は1,025件、課税件数は711件です。
相続1件あたりの納付税額は約2,800万円、課税割合は16.86%になります。東京都23区外の平均データでは、1件あたりの納付税額は約2,300万円、課税割合は13.80%です。この平均データと比較してみると、1件あたりの納付税額と課税割合、どちらも平均データを上回った数値となっています。
そのため、武蔵府中エリアでは高額な相続税が課税される可能性が非常に高い地域といえるでしょう。特に、どちらの数値も23区外では2位の数字となっていますので、日頃から相続税について考えておき、効果的な対策が講じれるように準備しておきましょう。
2.武蔵府中エリアの地価
武蔵府中エリアでは相続税への対策がより重要な地域といえます。そこで、課税額や課税割合が高い理由を地価から探ってみましょう。
2-1.武蔵府中エリアの代表的な地域と地価
2-1-1.府中市
東京都の西部に位置し、多摩地域に属している府中市。かつて武蔵国の国府が置かれた地域であることから府中と名付けられ、さらに国府が置かれた地域を限定するために武蔵府中と呼ばれてることがあります。
国府が置かれていた背景があることから、府中市内には大國魂神社や武蔵国府八幡宮などの神社や仏閣が、現在でも多く残っています。こうした歴史ある建物が多い一方で、警視庁の警察学校や刑務所、航空自衛隊の基地など行政機関も多く建設されており、さまざまな方面で国を守っている地域といえるでしょう。
府中市の地価平均は約33万円、最も地価が高額なのは地価平均約56万円の府中本町駅周辺です。この周辺地域には大東京綜合卸売センターなどの商業施設、競馬場や大型マンション、府中市役所などが建てられています。もともと多くの人が集まる地域ですが、こうした施設によりますます需要を集める地域となったため地価も大きく値上がりしています。
さらに、府中本町駅から北東にあり、市の中心駅である府中駅周辺も大きく発展しており、繁華街とビジネス街どちらの様相も見せています。この2つの駅は距離がそこまで遠くないことから、これらを中心とした地域は市内で際立って地価が高くなっています。
2-1-2.調布市
府中市の東部にあり、23区のうち世田谷区と隣接している調布市。実は、この地域はもともと神奈川県に属しており、1893年に行政区画の変更により東京都へ併合された歴史があります。そのため、神奈川県とも隣接しており、関係が深い地域です。
市内は主に住宅地、商業地、ビジネス地と地域よってさまざまな方法で活用されていますが、基本的には住宅地として利用されていることが多いです。また、市の産業としては食品工場や映画・映像関係の会社が大きく発達しており、ここ最近はIT関連の企業も増え始めています。
調布市の地価平均は約38万円、最も地価が高額なのは約51万円の調布駅周辺です。調布駅は市の中心駅として非常に多くの人が活用していることから、周辺地域には大型商業施設が立ち並んでいます。一方で、北部には大型マンションが多く建設されており、団地のように密集しています。
また、調布市は市外への通勤者が多いのも特徴の1つです。これは調布市が都心部に近いこともあって、都心部のベッドタウンとしての機能を持っていることが関係しています。ですので、駅周辺の需要が高くなり商業施設だけでなくマンションなどの需要も高くなっているのだと考えられます。
2-1-3.狛江市
調布市の南部にあり、調布市のように世田谷区と神奈川県と隣接している狛江市。ちょうど調布市と調布市が隣接している他区や他市の間に位置しています。ですので、他の2つの市と比べると面積は狭く、都内で最も小さな市であることが大きな特徴です。
もともと農村だった狛江市では近代化とともに人口は増えていき、現在では都内の市では2位の人口密度を誇っています。つまり、面積の割に人口が多いことが狛江市のもう一つの特徴となっており、世帯数が増加すればその分相続税も発生がしやすくなるため、要注意地域ともいえます。
狛江市の地価平均は約31万6,000円、最も地価が高額なのは地価平均約33万7,000円の喜多見です。ただ、喜多見は世田谷区に属する地域で、この地域はちょうど世田谷区との区境にあたる場所です。そのため、狛江市内よりも都心部へ近く、駅周辺も発展していることから人気が集まり地価も高くなっています。
狛江市内だけで考えると、地価平均約33万5,000万円の狛江駅周辺地域が地価が最も高額です。狛江駅は市の中心駅として活用されていますが、そもそも面積が狭いため市内には限られた数の駅しかありません。その結果、住んでいる地域によって利用する駅が異なるため、狛江駅だけが発展しているという状況は起こらず、利用頻度が高い喜多見の地価が最も高額になっていると考えられます。
2-2.武蔵府中エリアの地価の特徴
武蔵府中エリアの地価を高い順に並べると、調布市、府中市、狛江市という順になり、都内での順位は、それぞれ26位、31位、32位となっています。各市の都内での順位は中位よりもやや低い順位です。
地価の高さは都心部への近さと比例しており、都市部へのアクセスがより簡単な調布市の地価が頭一つ抜けて高くなっています。ただ、府中市は人口が多くほとんどが住宅地として活用されていますので、オフィスビルなどの需要が低く地価が伸びづらい傾向にあります。
また、府中市では市内の各産業が発展しており、都心部へ通勤する人の数が他の2つの市よりも少ないことが特徴的です。そのため、都心部から離れていても、市内での経済活動が活発なことから大きな値崩れには繋がっていないことが分かります。
こうした背景を考えると、武蔵府中エリアは全体的に地価は低い反面、住宅地としては高額な地域が広がっていることが分かります。特に、それぞれの市内では主要駅から離れていても大きな値崩れが起きていません。どの地域でも土地に課税される相続税は高額になりやすい傾向があるため相続税には注意しておきましょう。
3.武蔵府中エリアの所得と富裕層
続いては、財産への課税に大きな影響を与える武蔵府中エリアの所得状況を確かめていきましょう。
自治体名 | 相続税の納税義務者数 | 課税対象所得 | 1人あたりの所得 |
---|---|---|---|
府中市 | 約12万5,600人 | 約4,800億円 | 約384万円 |
調布市 | 約11万5,000人 | 約4,700億円 | 約409万円 |
狛江市 | 約4万800人 | 約1,560億円 | 約382万円 |
上記は2016年の所得状況を元に計算しており、それぞれの都内での順位は府中市が26位、調布市が19位、狛江市が27位となっています。所得でも地価と同様の傾向が見られており、調布市が特に高額な所得を受け取っていることが分かります。
これは、都心部へ通勤している人が多いことが背景に関係しており、人口も通勤者も多い調布市の所得がより高額になっています。狛江市も同様に都心部への通勤者が多いため、市内での経済活動が活発に行われている府中市と同程度の所得者が多いと考えられます。
つまり、武蔵府中エリアを所得から見ると、どの市も中位よりもやや高い所得を受け取っています。そのため、都内でも高所得者が多く、特に調布市にはこのエリアの中でも富裕層が多く生活しているといえるでしょう。
また、地価と一緒に考えると、武蔵府中エリアは地価の高い住宅地が多く、受け取っている所得も高額です。そのため、調布市を中心として相続税が課税されやすく、その課税額も高額であるという武蔵府中エリアの特徴的な相続の状況に影響を与えていると考えられます。
4.武蔵府中エリアの税理士事情
地価も所得も高額になりやすい武蔵府中エリアは、しっかりとした相続税対策を講じておかなければいけないエリアです。そこで、相続税対策で重要な役割を果たしてくれる武蔵府中エリアの税理士の状況も確かめていきましょう。
自治体名 | 在籍税理士数 |
---|---|
府中市 | 127名 |
調布市 | 131名 |
狛江市 | 31名 |
武蔵府中エリアの税理士は上記のように在籍しており、合計すると289名が在籍しています。武蔵府中エリアの1年間の相続税申告件数は1,025件、課税件数は711件です。これらの件数と在籍税理士数を比較すると、半分にも満たない税理士しか在籍していませんので、状況次第では依頼できない可能性も大いに考えられます。
そのため、確実に希望する税理士へ依頼するためにも、相続が始まる前から相続に強い税理士を探し始めましょう。ただ、エリア内の税理士へ依頼できないことも考慮して、隣接する世田谷区や都心部の税理士も調べておくことも必要です。
武蔵府中エリアは東京都の都心部のベッドタウンとして今後も人気を集めていく可能性が高いエリアです。ですので、いち早く税理士探しを始めて、生前からの相続税対策も状況に合わせて行いながら、大切な遺産を1円でも多く手元に残しましょう。
【参考】武蔵府中エリア内の相続関連機関一覧
武蔵府中エリア内の相続に関連する各種機関の連絡先一覧をまとめました(2018年4月現在)。ただし、変更される可能性があることをご了承ください。
機関名 | 住所 | TEL |
---|---|---|
武蔵府中税務署 | 〒183-8548 東京都府中市本町4丁目2番地 | 042-362-4711 (代表) |
府中都税事務所 | 〒183-8549 東京都府中市宮西町1-26-1 | 042‐644‐1111 (代表) |
府中市役所 | 〒183-8703 東京都府中市宮西町2丁目24番地 | 042-364-4111 (代表) |
調布市役所 | 〒182-8511 東京都調布市小島町2丁目35番地1 | 042-481-7111 (代表) |
狛江市役所 | 〒201-8585 東京都狛江市和泉本町一丁目1番5号 | 03-3430-1111 (代表) |
東京法務局 府中支局 | 〒183-0052 東京都府中市新町2丁目44番地 | 042-335-4753 (代表) |
府中公証役場 | 〒183-0056 東京都府中市寿町1-1-3 三ツ木寿町ビル2階 | 042-369-6951 (代表) |
東京家庭裁判所 立川支部 | 〒100-8956 東京都立川市緑町10番地の4 | 案件により異なる HP参照 |
東京司法書士会 府中支部 | 〒183-0053 東京都府中市天神町4丁目28番地 | 042-361-3731 |
東京司法書士会 調布支部 | 〒182-0002 東京都調布市仙川町1丁目27番地25 デルタスタジオ303(ハーモニー司法書士事務所) | 03-6750-5185 |
東京三弁護士会 多摩支部 | 〒190-0014 東京都立川市緑町7-1 アーバス立川高松駅前ビル2階 | 042-548-3800 (代表) |