神奈川県の中央部に位置し、古くから交通の要として知られていた厚木市。ベッドタウンとしての魅力に加えて、市内には工場や企業が集まることから、経済活動も活発に行われている市です。そんな、厚木市ではどのような相続が起きているのでしょうか?
1.厚木市の相続事情
厚木市の相続税に関するデータには、愛川町、清川村も含まれていますので、厳密には厚木市単体のデータではありませんが、影響度などを考え今回は厚木市のデータとして扱います。
厚木市の相続税申告件数は333件、実際に課税された件数は259件です。相続1件あたりの納付税額は約1,300万円、課税割合は12.35%となっています。一方、神奈川県の平均データでは、神奈川県の相続税の平均データでは1件あたりの納付税額が約2,000万円、課税割合は12.39%です。
この平均データと比較してみると、1件あたりの納付税額は大きく下回っているものの、課税割合平均並みだということが分かります。特に、1件あたりの納付税額は県内では下から2番目の金額ですので、厚木市では課税額は低いものの、課税される可能性は平均的な高さであるといえるでしょう。
2.厚木市の地価事情
厚木市の相続税の特徴を、相続税額への影響が強い地価から考えてみましょう。
2-1.厚木市の代表的な地域と地価
2-1-1.本厚木
厚木市の中心駅として機能している本厚木駅。この本厚木駅は時代とともに急行や準急の停車駅に設定されていきました。その後、ロマンスカーの停車や駅ビルであるミロードの開店とともに急速に重要度が高くなっていったのです。
また、本厚木から東京都まで約1時間~1時間30分、横浜までは約45分でアクセスできます。こうしたアクセスの良さから利用者が非常に多く、駅周辺には大型商業施設やオフィスビルが立ち並ぶ繁華街が形成されています。
本厚木の地価平均は約28万円です。駅に近くなるほど地価が高くなり、周辺の繁華街では40~80万円以上の地価も記録されています。ただ、繁華街を過ぎると地価は急落し、10万円台の地域が広がっています。
こうした地域には住宅街が形成されており、割合としては住宅街の方が多く大半を締めています。ですので、中心部よりは地価が下がるものの、中宅地としては高く地価となっており、相続税が課税される可能性の高い地域となっています。
2-1-2.愛甲石田
厚木市の南部に位置しており、伊勢原市との市境となっている愛甲石田駅。本厚木駅から続く駅なのですが、住宅街としての様相がより強く現れています。その結果、ビルなどは建てられていますが、本厚木駅のような繁華街は駅周辺にも見られません。
住宅街が地域の大半を占めていることから地価は本厚木に比べると低く、地価平均は約12万円となっています。ただ、この地域は伊勢原市にある株式会社アマダホールディングスの大型工場と非常に近い位置関係になっています。
さらに、伊勢原市内にはアマダグループの本社が多く設けられています。つまり、愛甲石田で生活する人々もこのアマダグループの企業に多く勤めていると考えられます。そのため、商業施設などよりも住宅への需要がより高くなっているのだといえるでしょう。
また、近くに大型工場や企業があり、その企業へ勤める人々が愛甲石田で生活しているとも考えられます。その結果、東京都や横浜などの都市部へ通勤する必要がなくこの地域内で仕事と生活全てが完結しています。ですので、新たな都市開発などの需要も低く、地価が上がりづらい地域となっているのかもしれません。
2-2.厚木市の地価の特徴
厚木市全体の地価平均は約15万円で、神奈川県内で33地点中12位となっており、比較的地価の高い地域です。厚木市は、神奈川県のほぼ中央に位置しており、東京都や横浜など都心部へもアクセスが非常に手軽です。そのため、都心部の衛星都市、ベッドタウンとしての機能が強く現れています。
さらに、厚木市はかねてから交通の主要部として扱われており、現在でも東名後続道路や国道、合同バイパスなどが交差しいる物流拠点としても機能しています。ですので、鉄道と自動車、両方を活用できることが交通の利便性をより高くし、厚木市では現在も渋滞を緩和するための新道の計画・整備などが行われています。
ただ、厚木市はもともと農業が発展した地域であるため、その名残として現在でも農業地帯が多く点在しています。特に、西部には山間部が多く、自然が残っています。つまり、地域によって住宅やビルなどが建設できる地域が限られており、こうした活用しにくさも地価が上昇しない原因と考えられます。
また、ベッドタウンとして注目される厚木市ですが、都市部に近く物流の主要拠点という特性から、研究機関やサービス業などの企業が集まっています。ですので、厚木市への通勤者も多く、ベッドタウンでありながら昼間人口が夜間人口よりも上回っています。この珍しい特徴が、住宅地としての機能をやや低くしてしまっていることも、地価に影響を与えているといえるでしょう。
3.厚木市の所得と富裕層
続いて、地価と同じく相続税額に大きな影響を与える所得の状況を確かめていきます。厚木市の所得税の納税義務者は約10万7,000人、課税対象所得は3,650億円です。1人あたりの所得を計算すると約341万円となります。
これは神奈川県内で33地点中13位という金額で上位30%に含まれているほど高い金額となっています。さらに、全国1,700の自治体の中では155位で、上位10%の中にランクインしています。
これらのデータから、厚木市で生活している人には高所得者が多く、特に本厚木など繁華街に近い地域には富裕層が多いといえるでしょう。厚木市のこうした高い所得は、東京都や横浜へ通勤している人が多いだけでなく、市内にも働く場所が多いことが関係しているといえます。
また、地価と合わせて考えると、地価が低いところでも高所得者が多いことも考えられます。つまり、厚木市の相続税額は所得などの資金に対するものがメインとなっており、土地への課税があまり行われないため、相続税が低いにもかかわらず相続税の発生率が高いのです。
4.厚木市の税理士事情
所得が高いために相続税が課されやすい厚木市。遺産を少しでも多く手元に残すためには、税理士への依頼・協力が必要不可欠です。では、厚木市に在籍している税理士はどのような傾向にあるのでしょうか?
厚木市に在籍している税理士は95名です。厚木市の1年間の相続税申告件数は333件、課税件数は159件であることから、税理士が不足している地域だといえるでしょう。これは、東京都や横浜など都市部からのアクセスが可能なことから、厚木市に事務所を構える税理士が少なくなっているのだと考えられます。
さらに、厚木市は働く場所が多いものの、都市部に比べるとオフィスビルが少ないです。その結果、事務所を構えにくかったり、企業向けの税務の需要が少なかったりすることから厚木市内の税理士が少なっているといえるでしょう。
ですので、厚木市内の税理士へ依頼をするためにも、相続が始まる前から税理士探しを始めておき、確実に依頼できるように準備をしておきましょう。また、平日などで都心部に出かけることが多い人は、東京都や横浜でも税理士事務所を周り、信頼できる税理士を見つけておくことも大切です。しっかりとした準備を行い、後悔のない相続を迎えましょう。
【参考】厚木市内の相続関連機関一覧
厚木市内の相続に関連する各種機関の連絡先一覧をまとめました(2018年5月現在)。ただし、変更される可能性があることをご了承ください。
機関名 | 住所 | TEL |
---|---|---|
厚木税務署 | 〒243-8577 神奈川県厚木市水引1丁目10番7号 | 046-221-3261(代表) |
厚木県税事務所 | 〒243-8522 神奈川県厚木市水引2-3-1 | 046-224-1111(代表) |
厚木市役所 | 〒243-8511 神奈川県厚木市中町3丁目17番17号 | 046-223-1511(代表) |
横浜地方法務局 厚木支局 | 〒243-0003 神奈川県厚木市寿町三丁目5-1 厚木法務総合庁舎 | 045-750-2323(代表) |
厚木公証役場 | 〒243-0018 神奈川県厚木市中町3-13-8 セトビル2階 | 0466-22-5910(代表) |
港南区役所 | 〒233-0003 神奈川県横浜市港南区港南四丁目2番10号 | 045-847-8484(代表) |
横浜地方法務局 本局 | 〒231-8411 神奈川県横浜市中区北仲通5丁目57番地 横浜第2合同庁舎 | 045-641-7468(代表) |
横浜地方法務局 栄出張所 | 〒247-0007 神奈川県横浜市栄区小菅ヶ谷一丁目6-2 | 045-895-3071(代表) |
横浜地方法務局 金沢出張所 | 〒236-0021 神奈川県横浜市金沢区泥亀二丁目7-1 | 045-782-4993(代表) |
横浜家庭裁判所 | 〒231-8585 神奈川県横浜市中区寿町1-2 | 案件により異なる HP参照 |
横浜家庭裁判所 小田原支部 | 〒250-0012 神奈川県小田原市本町1-7-9 | 0465-22-6586 |
東京地方税理士会 厚木支部 | 〒243-0017 神奈川県厚木市栄町1丁目16-15 厚木商工会議所4F | 046-223-5843 |
神奈川県司法書士会 | 〒231-0024 神奈川県横浜市中区吉浜町1番地 | 045-641-1372 |
横浜弁護士会 県西支部 | 〒250-0012 神奈川県小田原市本町1-4-7 朝日生命小田原ビル2階 | 0465-22-5671(代表) |