小規模宅地等の特例の「家なき子特例」とは? 要件や添付書類を解説
「家なき子特例」とは、小規模宅地等の特例における例外のパターンです。小規模宅地等の特例は、該当すれば宅地の減額割合が…[続きを読む]
小規模宅地等の特例は、最大で80%と大きく宅地の評価額を下げることができるので、是非とも利用したい特例の一つです。
小規模宅地等の特例の一つ特定居住用宅地等に、「同居」という要件が登場しますが、これだけでは漠然としていてよく分かりません。
実は、この「同居」の判断は、なかなか難しいものなのです。
そこで今回は、この「同居」の考え方に焦点を当てて、「同居」の要件や「同居」に該当するのかしないのかを具体例を挙げ徹底解説します。
目次
被相続人が住んでいた宅地を相続する場合に、「特定居住用宅地」として小規模宅地等の特例の適用を受けることができるのは、次に該当する人です。
宅地を相続するのが配偶者であれば、同居・別居を問わず、無条件で適用を受けることができます。
一方で、被相続人と同居していた親族が宅地を相続する場合に、特定居住用宅地等に該当するかどうかは、「同居」がキーポイントになるのです。
では、どういう状態を同居というのか、次項で詳しく解説します。
なお、「家なき子特例」について詳しくはこちらをご覧ください。
同居親族とは、被相続人が亡くなる直前に、同じ家で一緒に日常生活を送っていた親族のことをいいます。 これを法律上の難しい言葉にすると、「共に居起していた」といいます。
被相続人と同じ家で日常生活を送っていたというだけでは、まだ要件として漠然としているので、実務上では次の4つの観点から総合的に判断します。
ご紹介した通り、小規模宅地等の特例の居住用宅地等では、宅地を相続する親族が相続開始の時点から相続税申告まで継続して被相続人の自宅に居住する必要はあります。しかし、被相続人と同居認められるために必要な年数・期間についての要件はありません。
ただし、次項からご説明するように、あくまで実態で判断されるので、外見上似たようなケースであっても、「同居」となるケース、ならないケースがあります。
そこで次項からは、よくある具体例を使って、4要件に当てはめながら判断していきましょう。
まずは、同居として認められるケースです。
同じ建物の中で親と子供世帯が暮らす二世帯住宅ですが、完全同居型、部分共有型、完全分離型の3種類の形があります。
中でも完全分離型はマンションの隣同士で生活するようなイメージで、全く別の世帯として暮らす構造になっており、同居ではないだろうと考えてしまいますが、同居として認められます。
以前は、二世帯住宅であっても完全分離型の場合には同居とは認められませんでしたが、税制改正により2014年から二世帯住宅の構造は問われなくなりました。
被相続人と相続人一家は同居しており、相続人だけ単身赴任で別居していた場合でも、被相続人と相続人は同居として認められます。
その理由は、相続人は家族を残して単身赴任していることから、単身赴任が終わればまた相続人も被相続人と同居することが明らかであり、現状は別居であっても、生活の基盤は被相続人と家族が生活している家にあると考えられるからです。
次に、被相続人の死亡後、相続税の申告期限前に相続人が転勤で単身赴任先へ引っ越すことになったケースについて考えてみましょう。
このケースでは、被相続人の死亡時点では同居をしていますが、申告期限までその家に住んではいません。小規模宅地等の特例の適用の判断はどうなるのでしょうか。
この場合には、前項と同様に、家族を残して単身赴任しているため、生活の基盤は被相続人と家族が同居していた家にあると考えられ、申告期限まで引き続き住んでいると認められます。
ただし、家族ごと引っ越してしまった場合には、申告期限まで住んでいないうえに生活基盤も移してしまったと考えられ、小規模宅地等の特例は適用できません。
被相続人が老人ホームに入居し、そのまま退所することなく死亡した場合でも、同居していた相続人がそのままその家に住み続ける場合には、同居として認められます。以前は認められなかったものが、2014年度税制改正により認められるようになりました。
しかし、次のようなケースは、同居にはなりませんので注意しましょう。
次に、同居として認められないケースをご紹介します。
3-1.で二世帯住宅について、その構造は問われないと解説しました。しかし、二世帯住宅がどのように登記されているかは小規模宅地等の特例の適用を受けるために重要となります。
というのも、二世帯住宅を親子で区分所有登記している場合には、同居として認められないからです。
区分所有登記は、例えば、二世帯住宅を1階と2階に分けて親子で同居している場合に、建物すべてを同じ名義で登記せず、1階は親、2階は子として別々に登記することをいいます。
これに対して、建物すべてを親と子で2分の1ずつ共有で所有する共有登記は同居となります。
被相続人と同居をしていたがどうかは、あくまで実態で判断されます。住民票だけ同じであっても、日常生活を共にしていなければ同居ではありません。反対に、実態が同居であれば、住民票が違っていても同居として認められます。
「税務署がそこまで確認できるのか?」と疑問が湧くかもしれませんが、税務署は徹底的に調べることができます。郵便物の送付先、水道光熱費、近所への聞き込み、勤務先への通勤状況の確認などにより、簡単に実態が分かってしまいます。
被相続人と別居をしている親族が、被相続人の介護のためにその家に泊まり込んで生活していた期間中に被相続人が死亡した場合は、同居として認められません。 被相続人死亡後も遺品整理などのために、申告期限まで住み続けた場合もも同様に、同居ではありません。
この同居は、被相続人の介護や遺品整理などが完了したら別居先に戻ることが前提のものであり、本来の生活基盤は別居先にあると考えられるからです。
平日は相続人家族で日常生活を送り、週末だけ被相続人の元で生活をしている場合には、単に週末だけ被相続人の元に遊びに来ているようなもので、生活基盤は別々であると考えられます。
よって、同居として認められません。
「同居」という定義は、税法上では明確にされていません。実態を実務上の4要件をベースにして総合的に判断されます。
税務調査が入った際には、水道光熱費や郵便物の送付先まで細かく確認されますので、同居の判断は税理士に相談して慎重に行いましょう。