仮想通貨などの「デジタル遺産」は相続税の対象?海外の事例をご紹介!

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ここ数年、日本で爆発的に利用者が増加した仮想通貨ですが、その所有者が亡くなった場合は相続税が課税されます。仮想通貨だけではなく、ネット銀行の口座やFX口座、ネット証券口座などインターネット上にある財産など、いわゆる「デジタル遺産」には相続税が課税されます。

しかし、「デジタル遺産には相続税が課税される」とは決まっていますが、詳細についてはまだ法整備がなされていないのが現状です。

今回は、「デジタル遺産の基礎」と「デジタル先進国のデジタル遺産の動向」についてご紹介します。

1.デジタル遺産には相続税が課税される

被相続人(亡くなった人)が保有していた現金預金、土地や建物等の不動産、株式などの有価証券には相続税が課税されることは広く知られています。

しかし、仮想通貨などの「デジタル遺産」についても相続税が課税されることはあまり知られていません。ここでは、相続税が課税される「デジタル財産」について見ていきましょう。

1-1.デジタル遺産とは

「デジタル遺産」とは、いわゆる「お金に関わるデジタルな資産」のことです。「デジタル遺産」は、パソコンやスマートフォンなどのデジタルデバイスやインターネット上に存在します。

「お金に関わるデジタルな資産」なので、形がなくIDとパスワードなどの本人認証により保管されています。
具体的には、以下のようなものが「デジタル遺産」に該当します。

  • 仮想通貨(ビットコインなど)
  • ネット銀行の口座
  • ネット証券の株式や債権の口座
  • FX(外国為替保証金取引)口座
  • 飛行機のマイレージ

ネット銀行やネット証券は分かりやすいですが、飛行機のマイレージも相続の対象になり、相続税の対象になります。

例えば、ANAマイレージ会員規約では「法定相続人は、被相続人が亡くなった証明書(死亡証明書など)を死亡後6ヶ月以内に提示する」ことでマイレージを法定相続人へ相続することになっています。6ヶ月以内に死亡診断書などを提示できない場合、当該マイレージは全て取り消されてしまうので注意が必要です。

1-2.仮想通貨(デジタル遺産)に相続税が課税される根拠は?

仮想通貨は、資金決済法の改正により「支払手段」として定義されています。「資金決済に関する法律第2条5項」により、仮想通貨に財産価値が法的に認められたため相続税の対象になります。

 

資金決済に関する法律第2条

5 この法律において「仮想通貨」とは、次に掲げるものをいう。

一 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

二 
不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

また、2018年の参議院の財政金融委員会で国税庁次長が「仮想通貨については資金決済法上、代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる財産的価値と規定されておりますので相続税が課税されます」と発言したことにより、「仮想通貨が相続税の対象になる」ことが明らかになりました。

1-3.パスワードが分からない場合でも課税

「デジタル遺産」はIDとパスワードにより本人確認を行い、資金の引出しなどを行います。しかし、相続人がパスワードを知らず口座にアクセスすることも解約することもできない状況に陥る場合があります。

例えば、被相続人(亡くなった人)が仮想通貨の口座を保有しており、パスワードを家族に告げずに亡くなった場合、家族は「いくら仮想通貨口座にあるか」を知ることもできませんし、現金化することも不可能です。

このような場合にも相続税の対象になるのでしょうか。国税庁次長の質疑応答では、「パスワードの分からない仮想通貨は相続財産に含まれるのか」という問いに、「相続人がパスワードを知らない場合であっても、相続人は仮想通貨を承継することになるため、『相続税の課税対象』となる。」という旨の回答を行いました。このことから「パスワードを知っているか知らないのかを国税庁では確認できないため、相続税の課税対象から除外できない」という見解になっています。

2.デジタル遺産の問題点

「デジタル遺産」は、従来存在しなかった遺産です。そのため、まだまだ社会でのルール作りや、対応の周知が追いついていないのが現状であり、今後、対処しなければならない問題がたくさんあります。ここでは、「デジタル遺産」を保有している場合にどんな問題点が発生するのかご紹介いたします。

2-1.デジタル遺産は把握が難しい

「デジタル遺産」の一番の問題点は、遺産を把握することが難しい点です。「デジタル遺産」は従来の銀行の預金口座などと違い、郵送などで問い合わせをすることがありません。家族が遺産の存在自体を知ることが難しいのです。

仮に、仮想通貨などを保有していることを知っていたとしても、IDやパスワードが分からなければアクセスできません。インターネット上のセキュリティが向上するのに伴い、「デジタル遺産」を把握するヒントが減ってきています。

2-2.認知症によりデジタル資産の存在が分からくなることも

相続ではありませんが、認知症を発症した場合についても「デジタル資産」の把握が難しくなります。仮に家族が「デジタル資産」を特定できたとしても、本人以外の人がネット銀行やネット証券の口座から現金を引き出すことができません。

法定後見制度で成年後見人という代理人に支援してもらい財産の管理を行う場合についても、そもそも本人の「デジタル資産」が特定できない状況に陥ってしまいます。

2-3.デジタル遺産の相続は早めの対策が大事

「デジタル遺産」はデジタル故に存在を把握することが難しく、存在が明らかになったとしてもセキュリティにより第三者はログインすることができません。

例えば、仮想通貨取引所は二段階認証など高度なセキュリティにより守られています。パソコンやスマートフォンに「デジタル遺産」の手掛かりがないか探そうとしても、スマートフォンやパソコン自体にロックがかけられている場合もあります。つまり、IDやパスワードを探すためにパスワードが必要になる場合が多々あります。

アナログ媒体でID・パスワードを保管する

一部のスマートフォンなどの電子機器ではパスワード認証制限が設けられているものがあり、何回もパスワードを間違えて入力してしまうとデータがロックされる恐れもあります。このような事態にならないように、「デジタル遺産」については、その種類・ID・パスワードを用紙に記録し、「アナログ媒体」で保管することで、「デジタル遺産」の存在やID・パスワードの問題の対策をすることができます。

デジタル遺産整理業者に依頼する

大事なデジタル遺産の情報を「アナログ媒体」に残すことに抵抗がある人は、「デジタル遺産整理業者」に依頼することも1つの選択肢です。生前に相談を行えば、万が一のことが起きても適切に家族への報告などを行ってもらうことができます。

エンディングノートの一部として情報を残す

まだ相続のことなど考えられないと思われる人もいらっしゃると思いますが、将来何が起こるか分かりません。相続の対策に早すぎるという言葉はありません。できることから少しずつ行うことが大事です。「エンディングノート」の一部として「デジタル遺産」の情報を残しておくことをおすすめします。

3.仮想通貨の相続手続き

被相続人(亡くなった人)が仮想通貨を保有していた事が判明した場合、又はパソコンなどのデジタルデバイスから手掛かりを見つけた場合は、仮想通貨取引所に問合せを行い、相続手続きを行わなければなりません。ここでは、仮想通貨取引所でどのような相続手続きをしなければならないのかご紹介します。

3-1.仮想通貨の相続についての手順

仮想通貨はインターネットを通して取引を行っているため、相続の手続きもインターネットにより行えると思われている方もいらっしゃると思いますが、仮想通貨の相続手続きは紙媒体で行うアナログです。

相続人は仮想通貨取引所より「残高証明書」を取り寄せることになります。「残高証明書」の請求方法は業者によって異なりますが、一般的には次の手順で請求を行います。

3-2.仮想通貨の残高証明書を手に入れるには(コインチェックの場合)

仮想通貨の「残高証明書」を入手するには、一般的に上記の手続きが必要で、①の仮想通貨取引所に「残高証明書」の交付依頼を行う際には、一定の書類が必要になります。

例として仮想通貨取引所大手の「コインチェック」が案内している「残高証明書の交付に必要な書類」をご紹介します。「コインチェック」では、以下の書類が必要です。

  1. 相続届(相続人全員の署名と実印の押印が必要。)
  2. 被相続人の除籍謄本
  3. 被相続人と相続人全員の関係が記載されている戸籍謄本(発行後6ヶ月以内)
    追加で改製原戸籍が必要な場合あり。「法定相続情報一覧図の写し」(法務局の発行する認証文付きの書類原本)でも可。
  4. 相続人全員の印鑑証明書(発行後6ヶ月以内)

4.海外のデジタル遺産の取扱い

日本の「デジタル遺産」の法的取扱いは、早急に対応しなければならない問題として取り上げられていますが、他の先進国に比べて遅れています。

では、海外の「デジタル遺産」の取扱いは、どのようになっているのでしょうか。世界でも「デジタル遺産」についての法整備が進んでいるアメリカ・ヨーロッパの国々を見ていきましょう。

4-1.アメリカでのデジタル遺産の取扱い

アメリカは、「デジタル遺産」の相続やアクセスについての法律「デジタル遺産アクセス法(RUFADAA)」を2014年に制定しました。この法律は、パソコンやスマートフォンなどのデジタルデバイスやインターネット上にある「デジタル遺産」を適切に相続できるように制定された法律です。

この法律の制定以前は、所有者が亡くなった後の「デジタル遺産」の法的所有権が曖昧だったため、「デジタル遺産」の多くは誰からもアクセスされず、最終的には管理者から削除されていました。

この法律施行後は、故人が生前に残した意思によって誰に「デジタル遺産」にアクセスできるのかを定めることができます。アメリカの相続手続きは遺言書によって行われる場合が多いため、相続手続きには弁護士が介入します。そのため、「デジタル遺産」が誰からもアクセスされずに管理者から消去される事態に陥るケースは日本より少なくなります。

4-2.EUでのデジタル遺産の取扱い

欧州では、デジタルデータの保護に焦点を当てて法整備が行われています。

2016年には「一般データ保護規則(GDPR)」が制定され、EU圏内の人の個人データについて企業が適切に処理・保管を行わなければならないことを義務付けました。「デジタル遺産」については、EUとしての法整備は今のところ無く、EU加盟国各国が独自で法整備を行っています。

例えば、フランスは「デジタル共和国法案」を制定し、故人の「デジタル遺産」について適切に相続が行われるように法整備がなされています。

4-3.デジタル先進国のエストニアでは?

デジタル先進国のエストニアは、世界で最も具体的に「デジタル遺産」についての法整備を行っている国です。

「データ保護法 第12条」により、故人の「デジタル遺産」の意思(アクセス権や相続権)などは亡くなってから30年有効と定められています。また、その30年間は相続人が制限付きで個人のデータを処理できる権利を与えています。

4-4.利用者の死後、オンラインはどう取扱うべきかが今後の課題

オンラインサービスは、利用者の死後のアカウントの取扱いが今後の課題になっています。なぜなら、各国が「デジタル遺産」の法整備を進めていても、オンラインサービスプラットフォームの利用規約が優先されてしまうからです。

例えば、SNSのFacebookは「追悼アカウント」の設定をすることができます。あらかじめ自分で「追悼アカウント管理人」を設定することで、利用者の死後は「追悼アカウント管理人」がアカウントの管理をすることになります。この設定により、死後アカウントを削除するのではなく、家族や友達とこれまでの投稿をシェアすることができます。指定した「追悼アカウント管理人」に「自分の死後、アカウントを削除してほしい」と依頼することでアカウントそのものを削除することも可能です。

このように、利用者の死後のことまで考えてサービスや規約を作成することがオンラインサービスの課題になっています。SNSなどのアカウントも立派な「価値のあるデジタルな資産」です。自分の死後、「自分のアカウントをどのようにしたいのか」の意思を周りに伝えたりすることもオンラインサービスを使う利用者に求められています。

まとめ

今回は、仮想通貨などの「デジタル遺産」についてご紹介しました。「デジタル遺産」は、相続税が課税されます。

しかし、まだ事例が少ないため詳しく法整備がされているわけではありません。今後、他の先進国のように「死後のデジタル遺産」についていろいろな議論がされていくでしょう。「デジタル遺産」の今後の動向に注目しましょう。

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