タンス預金で相続税は脱税できない!

年金

2015年(平成27年)の相続税改正にともない、一般の方の相続税に対する節税意識がかなり高まってきました。それは決して悪いことではないのですが、その意識が節税ではなく「脱税」に向いてしまうことに対する懸念があります。その一つが「タンス預金」です。全体から見ると少ないですが、ご自分にもしもの事があった時のために、「タンス預金」をしている人がいます。タンス預金は徐々に減っていく傾向にあったのですが、2016年(平成28年)になってマイナス金利が導入され銀行の預金の金利がさらに下がったことで、タンス預金をする人が再び増えているようです。

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タンス預金とは、現金を銀行口座などに預けずに自宅のタンスなどに隠してしまうことです。このタンス預金、本人はよかれと思ってやっているのですが、実際に相続が開始するとトラブルのモトになってしまう事が多くあります

1.タンス預金をする理由

そもそも、なぜタンス預金をするのでしょうか。銀行システムが発達していない時代は、銀行にお金を預けたり引出したりするのが面倒でしたので、自宅に置いておくことが多くありました。生活費や電気・ガス・水道などの支払いにおいても、銀行振込や口座引落が一般的でなかった時代は、現金で支払いましたので、ある程度のお金を自宅に保管しておく必要があったといえるでしょう。

しかし、戦後、高度経済成長に伴って銀行システムが充実し、いつでもどこでもお金を出し入れできる時代になりました。ATMは街のあちこちに設置されビル内や大学の構内にも設置されています。手数料はかかりますが夜間や土日でも利用できます。また、各銀行間での相互接続も進み、他行のATMやコンビニでもお金を出し入れできるようになりました。電気・ガス・水道などの各種料金の支払いもほとんど口座引落になりましたし、買い物もクレジットカードやデビットカードで可能になりました。

自宅の多額の現金を置いておく理由はほとんどないと思われますが、それでも、タンス預金をする理由はどこにあるのでしょうか?
銀行が倒産してお金が引き出せなくなるのが不安と考える人も一部はいますが、日本で銀行が倒産して本当にお金が引き出せなくなったことはほとんどありませんし、大きな金融機関の破綻の場合はたいてい政府が支援して混乱を防ぎますので、銀行の倒産を心配してタンス預金をする人はあまりいないのではないかと思われます。銀行に預けても金利が低くほとんど利息がつかないからという理由もありますが、タンス預金ではそもそも全く利息はつきませんので、銀行に預けたほうがマシでしょう。

おそらくですが、タンス預金をする大きな理由は、そのお金を誰かから隠したいという気持ちが働いているからだと思われます。せっかく貯めたお金を相続時の税金で持っていかれたくない人もいますし、夫や妻など家族にバレたくないという人もいるかもしれません。

2.タンス預金はトラブルの元

実例ですが、以前、相続開始直後から非常に揉めているご家庭がありました。話を伺うと、どうも故人の残したタンス預金を誰かが黙って持ち去ったとのこと。タンス預金の存在はごく近親者しか知らないため、明らかに身内の犯行です。これにより家族は疑心暗鬼になり、遺産分割協議も非常に難航しました。

そもそもタンス預金は、その存在自体を証明する証拠がないことが多く、その存在を知っている近親者か、誰かが勝手に持ち去っても、「元々そんなものなかった」と主張されれば、それで通ってしまうのです。そのため、相続開始後は故人の身の回りの現金の持ち去りに注意が必要です

また、タンス預金そのものがすぐに見つからないケースもあります。遺産分割が終り相続税の申告も終わって落ち着いたころ、まだ手つかずだった遺品整理をしていたら、押し入れの奥のほうにしまってあった木箱から大量の現金の束が見つかったなんていう話もあります。そうなったら、遺産分割がやり直しですし、相続税の申告も修正が必要です。

タンス預金は、する本人にとっては良いかもしれませんが、残された家族にとっては、大きなトラブルの元となることが多いのです。

3.お金をどこに置く?

タンス預金」という言葉どおり、昔は衣装ダンスの奥にお金を風呂敷で包んでしまっておいたかもしれませんが、現代では衣装ダンスにお金をしまっておく人は少ないのではないでしょうか。

堂々とタンス預金をしているのであれば、まずは金庫の中に置きます。火事があっても燃えませんし簡単には持ち出せませんので安心です。年配の方だと、仏壇や神棚の引出しに入れることもあります。神仏が守って下さると考える人もいるのでしょう。他、本棚、机の引き出し、ベランダの鉢植え、納戸の奥に置かれたダンボール箱の中や屋根裏部屋という場合もあります。

隠ぺい目的であれば、座布団の中や畳の下に隠したり、果ては庭に穴を掘って埋めたというケースもあります。

あとは、冷蔵庫、トイレ、脱衣所など日常的にみんなが利用している場所のほうが意外性があって、かえってわかりにくいかもしれません。

4.タンス預金はバレる?バレない?

これは家族にバレるかどうかではなく、相続税の申告上、税務署にバレるかどうかの話です。

結論から言うとタンス預金は税務署にバレます。これも実例ですが、自宅の庭の土の中に現金を埋めて上からコンクリートで固めたにも関わらず、税務署はそれを探し出しました。「絶対にバレるはずがない」そう思っている人のために、今回はなぜ税務署がタンス預金を見つけられるのかについて、少し解説したいと思います。

(1)相続が始まる前からすでにマークされている

一般の方は相続税申告をしたあとに、税務署がその申告書を見て怪しいところを探していると思っているかもしれませんが、実は、税務署は相続が開始する以前から、相続税の課税対象となる可能性のある世帯の贈与などを調べてマークしています。そもそも税務署は国民の所得を管理していますから、誰がいくら年間稼いでいるのかを把握しています。ですから、年収と年齢がわかればおよそどの程度の資産を保有しているのかがわかり、それが分かれば自ずと予想される相続税額も試算できてしまうのです。

そのため、その税務署が見積もっていた相続税額と実際に申告された相続税額を比較してあまりにも差があれば「確実に怪しい」となります。

マイナンバー導入に伴い、今後は銀行口座を開設する際にも、マイナンバー(個人番号)を記入するようになるかもしれませんので、ますます税務署に把握されやすくなるでしょう。

(2)どこまでも遡る税務署の執念

仮に所得に対して相続財産が少なすぎる場合は、必ずどこかにその現金が消えているはずです。

税務署はその「どこか」を特定するために、過去何年にも遡って口座の入出金記録を確認します。確認される口座は被相続人本人だけではなく、法定相続人、さらには親戚にまで及ぶこともあります。とにかく使途が説明できない多額の入出金に関しては徹底的に追及されます。万が一、親族に流れているようであれば、贈与税の課税も有り得ます。

これをとことん繰り返すことで、やがてタンス預金にたどり着くのです。

(3)税務署の追及は想像以上に厳しい

これは税務調査をされた人にしかわからないことですが、税務調査官の追及は皆さんが考えている以上に厳しいものです。適当に誤魔化せば引き下がるほど甘くはありません。「こんなに細かいところまで聞くの」ということまで聞いてきますし見てきます。ですから、贈与税の申告漏れなどもまとめて発覚することもあります。

要は、納税者が根負けするレベルまで徹底的に絞られます。そのため、先ほどのコンクリート下に埋めた事例でも、結局は本人が自白したようです。税務調査を受けるということは、警察に取り調べを受けるのと同じくらいのプレッシャーを受けるということをよく覚えておきましょう。

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5.タンス預金がバレたら、どうなる?

ここまで言ってもまだタンス預金ならバレないかも、と淡い期待を抱いている人も中にはいるのではないでしょうか。

タンス預金がバレると、重加算税や延滞税など多額の税金が課税されることになります。タンス預金は、贈与税、相続税の両方に影響します。

また、タンス預金は遺産分割において、持ち逃げや隠蔽などの温床になることが多く、それが原因で遺産相続がもめてしまう可能性もあります。タンス預金はは百害あって一利なしということをよく覚えておきましょう。

もし、タンス預金にメリットがあるとしたら、銀行が破綻するような事態になったときですが、そのときは日本経済は相当に厳しい状況といえます。日本政府が銀行を救済できないほど大変な状況になると、信用を失いますので、ハイパーインフレが起こり、紙幣の価値が減少する、あるいは、なくなる可能性もあります。

6.どうしてもするなら帳簿の管理を!

事情によりどうしてもタンス預金をしなければならない場合は、その所在を明確にし、帳簿をつけて相続人に対しても公開し、管理については金庫などに厳重に保管する事をお勧めします。

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