相続税のセカンドオピニオンの必要性と報酬、対応事務所の選び方
「今の税理士だけでは少し心配」「相続税をもっと節税できるのでは?」など、相続税のことを税理士に依頼したとき、不安が残ることがあると思います。そんな不安を解消できるのが、「税理士のセカンドオピニオン」です。
今回は、あまり知られていない税理士のセカンドオピニオンについて詳しく解説していきます。
目次
1.税理士のセカンドオピニオンとは
医療現場においてセカンドオピニオンとは、患者にとって最善の治療方法を患者と主治医との間で判断するために、別の医師の意見を聞くことを言います。
税理士業界も医療業界と同様に、相続を依頼した税理士とは別の税理士に相続税について相談するセカンドオピニオンという考え方が広がってきています。
医師に内科や外科といった専門の診療科があるように、税理士にも得意分野、不得意分野があります。
他の税理士からセカンドオピニオンを受けることにより、納税者にとって最善の方法を知ることができます。
1-2.セカンドオピニオンをお勧めしたい方
セカンドオピニオンをお勧めしたいのは、以下のような方々です。
- 顧問税理士にそのままお願いしたなど相続税専門ではない税理士にお願いした方
- 依頼した税理士の処理に納得がいかない方
- 依頼した土地などの相続税評価に疑問を持った方
など
1-2.セカンドオピニオンのメリット
セカンドオピニオンのメリットは以下3つです。
- より専門的な解釈が期待できる
- チェック機能が働く
- 税務調査への柔軟な対応が期待できる
より専門的な解釈が期待できる
一定の分野に特化した税理士にセカンドオピニオンを依頼することで、より高度な解釈が期待できます。
税務では、毎年の税制改正の他に、過去の裁判例が重要になります。1人の税理士が全ての法律、裁判例を網羅することは難しいのが現実です。そのため、ある税務分野に特化した税理士にセカンドオピニオンを依頼することにより、より専門的な意見を聞くことができます。専門的な意見を聞くことにより、新しい可能性を追求できたり、問題点を未然に防いだりすることが可能です。
チェック機能が働く
セカンドオピニオンを依頼することで、第三者目線でチェックしてもらうことができます。相続税の財産評価では税理士によって相続税額が全く異なる場合があります。
特に、土地の相続税評価額の計算については、適正に土地の相続税評価を行われているかチェックすることができます。 土地の相続税評価は、他の相続財産と違い様々な減額要素が存在します。より相続税に精通する税理士にセカンドオピニオンを依頼することで、すべての土地を測量して土地の相続税評価を行い、大きく相続税額を減額できる場合があります。
税務調査への柔軟な対応が期待できる
税務署による税務調査では、基本的に、税理士が対応します。
しかし、全ての税理士が税務署との交渉に長けているとは限りません。特に、相続税の財産評価では、税務署との解釈の違いが問題になるケースがあります。初めに相続税申告を依頼していた税理士1人だけでは心もとないときに、セカンドオピニオンとして専門知識を持つ他の税理士に相談すれば、より高度で柔軟な対応が期待できます。
1-3.セカンドオピニオンのデメリット
セカンドオピニオンのデメリットは、次の2つです。
- 相続税申告のコストが高くなる
- 申告を依頼した税理士との信頼関係が悪化する可能性がある
相続税申告のコストが高くなる
当然のことですが、セカンドオピニオンを求める税理士にも報酬が発生します。セカンドオピニオンの報酬については後述しますが、2人分の税理士報酬が発生することになるのです。
セカンドオピニオンを依頼する前に、報酬については、しっかりと検討すべきでしょう。
しかし、報酬以上の節税効果を得られれば、コスト以上の効果があることになります。
申告を依頼した税理士との信頼関係が悪化する可能性
他の税理士にセカンドオピニオンを依頼することを良く思わない税理士が存在することは事実です。相続税申告を依頼した税理士との関係が悪化することは、懸念されます。
しかし、事前にセカンドオピニオンを依頼することと、その後も契約関係を継続する旨を伝えることで、防ぐことができます。
少なくとも、相続税申告を依頼した税理士に隠してセカンドオピニオンを行うことは、やめた方がいいでしょう。
1-4.セカンドオピニオンの報酬
セカンドオピニオンの利用には、相談料などの費用が発生します。この費用は、通常の税理士に支払う報酬より安めに設定されています。ただし、報酬体系は税理士事務所によって異なります。
特に、相続税についてのセカンドオピニオンについては、依頼内容やセカンドオピニオンによって還付された相続税額によって異なります。
セカンドオピニオンの報酬例①
A税理士事務所
土地の評価業務 | 6~9万円(1ヶ所あたり) |
---|---|
非上場株式の評価 | 30万円~(1社あたり) |
申告書のレビュー | 2万円(1時間あたり) |
セカンドオピニオンの報酬例②
B税理士事務所
セカンドオピニオンにより還付された相続税額 300万円未満 | 還付金額の50%相当額 |
---|---|
300万円超~500万円以下 | 還付金額の40%相当額 |
500万円超 | 還付金額の30%相当額 |
2.セカンドオピニオンの税理士の選び方
セカンドオピニオンを依頼することは、納税者にとって多くのメリットがあります。しかし、税理士選びを失敗してしまうと、税理士に支払う費用だけが余計にかかってしまっただけで、何も改善されないといった最悪のケースになってしまう可能性もあります。
セカンドオピニオンを依頼する場合、どのような税理士に依頼するかが一番大事になります。また、セカンドオピニオンを業務として扱っていない税理士事務所もあるので注意が必要です。
2-1.セカンドオピニオンを依頼すべき税理士の特徴
セカンドオピニオンを利用するうえで一番重要なのは、「どの税理士に依頼するか」です。相続税に精通した税理士を選ぶようにしましょう。
また、単に税金の払いすぎをチェックする税理士ではなく、税法・関連法や裁判例実績に基づいてアドバイスができ、税務調査にも柔軟に対応できる税理士を選びましょう。
2-2.セカンドオピニオンのための税理士の探し方
セカンドオピニオンに対応している「良い税理士」を探すことは意外と困難です。なぜなら、相続税に精通している税理士でも「良い税理士」とは限らないからです。一番重要なのは、クライアントと税理士との相性です。
具体的には、その税理士を「信頼できるか」、「相談しやすいか」などが大切です。
税理士の探し方は、主に次の3つです。
知人の紹介
知人の紹介で税理士を紹介してもらう場合、信頼できない税理士を紹介する人は少ないため、その税理士は信頼できる可能性が高いです。また、税理士もクライアントの紹介ということでより真摯に相談にのってくれます。
しかし、もしその税理士と相性が合わなかった場合、依頼を断りにくいデメリットがあります。
インターネット検索
税理士会などのホームページで検索することができます。
一番簡単で費用もかからない方法ですが、情報量が多すぎるため、「どの税理士が何の税務に精通しているのか」、「セカンドオピニオンに対応しているのか」を調べ、そこからコンタクトを取って個別に交渉を行わなければならず、膨大な労力と時間が必要なサイトもあります。
しかし、このサイトでは、以下をクリニックいただくことで、セカンドオピニオンに対応する税理士事務所を、簡単に検索することが可能です。
税理士紹介サービスの利用
紹介サービス会社が仲介することで、面と向かっては言いづらいサービスの範囲や価格について質問することができます。また、セカンドオピニオンが依頼できる税理士を紹介サービス会社で調べてくれます。
デメリットとしては、税理士紹介サービス会社の質に左右される可能性があります。登録税理士の多さや、対応できるサービスについて事前に確認する必要があります。
3.セカンドオピニオンを依頼するにあたって
セカンドオピニオンを依頼する場合、まず何について依頼するかを明確にする必要があります。
例えば、相続税についてセカンドオピニオンを依頼する場合、「相続税申告書をチェックしてもらいたい」、「土地の相続税評価額が適正なのかチェックしてもらいたい」など、目的を明確にする必要があります。
3-1.セカンドオピニオンの準備
セカンドオピニオンの目的を明確にしたら、現在の状況が分かる次の書類を準備しましょう。
- 相続税申告書
- 土地の評価に関する資料一式(固定資産税課税明細書、地図・字図などの土地の資料)
- 相続関係図(戸籍謄本)
- 遺産分割協議書
- 所得税準確定申告書
3-2.現在の税理士への対応は?
セカンドオピニオンを依頼する場合は、事前にしっかりと、初めに相続税申告を依頼していた税理士にセカンドオピニオンの目的を説明しましょう。
目的を説明せずに別の税理士へセカンドオピニオンの依頼を行うと、セカンドオピニオンに理解のある税理士でもプライドが傷ついてしまいます。また、説明せずにセカンドオピニオンを依頼した場合、依頼した税理士にも迷惑がかかるおそれがあります。
セカンドオピニオンは後ろめたい事ではありません。事前にしっかりと説明しましょう。
まとめ
今回は「税理士のセカンドオピニオン」についてご紹介しました。
セカンドオピニオンは費用もかかる反面、納税額の還付やチェック機能などの多くのメリットがあります。依頼する税理士は1人だけとは決まっていません。税務申告に不明な点がある場合は、積極的に税理士のセカンドオピニオンを利用してはいかがでしょうか。