1.新潟県の相続税申告についての概要
新潟県は中部地方に位置しており、日本海に面した細長い形をしています。お米の生産が盛んで、農地が多い県です。
1-1.新潟県の相続税申告の状況
新潟県の令和元年における相続税の申告件数は2,101件、そのうち相続税が発生した課税件数は1,763件です。課税割合は5.77%となっており47都道府県中31位で、全国的には、課税割合が少ない県になります。
相続1件当りの納付税額は1,047万円で、こちらも全国31位という結果です。
中部地方9県(新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県)の中では、課税割合は最下位、納付税額は6位となっており、全国平均の課税割合8.35%、納付税額1,714万円と比較しても、新潟県は相続税が課税され難くく、課税されたとしても納付税額は低い可能性が高い県であると考えられます。
1-2.課税割合は全体的に低い
下記の表は、新潟県の税務署の管轄エリアごとの相続税申告状況です。
新潟県では、税務署の管轄が13エリアに分けられていますが、そのいずれでも課税割合の全国平均値を超えているエリアはありません。唯一、8%台の新潟エリアを除いては6%以下の低い割合となっており、特に4%以下の非常に低いエリアが7エリアもあることが、新潟県の課税割合が低い理由となっています。
そして全域の課税割合が低い理由は、新潟県の地価の低さにあります。相続税は不動産への課税が大部分を占めるため、不動産の評価額が低いということは相続税が課税されにくいことに繋がります。
それでは次項から、それぞれのエリアごとの詳しい特徴について解説します。
税務署名 | 管轄地域 | 申告 件数 | 課税 件数 | 1件当り 納付税額 (万円) | 申告割合 | 課税割合 |
---|---|---|---|---|---|---|
新潟 | 北区・東区・中央区・江南区・南区・西区 | 748 | 607 | 1,275 | 9.93% | 8.06% |
新津 | 秋葉区 五泉市 阿賀町 | 89 | 76 | 817 | 4.58% | 3.91% |
巻 | 西蒲区 燕市 弥彦村 | 153 | 127 | 869 | 8.27% | 6.86% |
長岡 | 長岡市(※) 出雲崎町 | 251 | 212 | 1,262 | 6.98% | 5.89% |
三条 | 三条市 加茂市 見附市 田上町 | 154 | 126 | 877 | 6.35% | 5.19% |
柏崎 | 柏崎市 刈羽村 | 97 | 88 | 659 | 7.05% | 6.40% |
新発田 | 新発田市 阿賀野市 胎内市 聖籠町 | 135 | 114 | 703 | 5.08% | 4.29% |
小千谷 | 長岡市(※) 小千谷市 魚沼市 南魚沼市 湯沢町 | 99 | 84 | 675 | 4.97% | 4.22% |
十日町 | 十日町市 津南町 | 46 | 37 | 2,456 | 4.37% | 3.52% |
村上 | 村上市 関川村 粟島浦村 | 56 | 48 | 745 | 4.99% | 4.27% |
糸魚川 | 糸魚川市 | 45 | 42 | 589 | 6.12% | 5.71% |
高田 | 上越市 妙高市 | 169 | 150 | 880 | 5.44% | 4.83% |
佐渡 | 佐渡市 | 59 | 52 | 816 | 5.07% | 4.47% |
新潟県計 | 2,101 | 1,763 | 1,047 | 6.87% | 5.77% |
※ ※印の付いたエリアについては、税務署の管轄が跨っているため、死亡者数を管轄税務署により按分して計算
【出典サイト】「古文書(所蔵)の概要地域別」| 新潟県立図書館
2.各エリアの特徴と詳細
新潟県のエリアごとの地価などの特徴を、課税割合の高い順にそれぞれ見ていきましょう。
2-1.新潟エリア
新潟エリアは、新潟市の行政8区のうち、6区(北区・東区・中央区・江南区・南区・西区)からなります。
新潟市は中部地方では愛知県に次いで2番目に多い人口を擁しており、中央区は県庁所在地となっています。中部地方の日本海側において最大の都市であり、この地方の政治や経済の中心都市として機能しているエリアです。
このエリアの課税割合は8.06%で県内の断トツ1位、納付税額は1,275万円で県内2位となっています。
県内において新潟市の地価は突出しており、1㎡あたり7万円で県内1位となっています。この7万円というのは新潟市の行政8区の平均になりますが、特に中央区は1平米あたり16万円と、市内2位の東区の5万円を大きく離して市内で1位となっています。
相続税は相続が発生しやすい住宅街を中心に課税されます。この中央区はもちろんのこと、南区や西区なども高級住宅街として知られており、場所によっては市の平均を大きく上回る地価を記録しています。
新潟エリアに居住している人は相続税に注意しなければなりませんが、特に地価の高い住宅街で生活する人は、高額な相続税を課税されやすく更なる注意が必要です。
【出典サイト】新潟市中央区HP
2-2.巻エリア
新潟市西蒲区、燕市、弥彦村からなる巻エリアは、県の中央北部、新潟市と長岡市に挟まれる位置にあります。
燕市は金物や洋食器、刃物の生産が盛んで、特にステンレスでできた金属食器は職人技と先端技術が駆使されており、世界でも需要があります。
このエリアは、新潟市の都心部に近いことから主に住宅地として活用されており、ベッドタウンとしての機能が強くなっています。
巻エリアの課税割合は6.86%と県内では2位ですが、新潟エリアから1%以上差があります。納付税額は869万円で県内6位と中盤にあります。
一方、エリア内にある新潟市西蒲区の地価は、新潟市内では最下位であり、1㎡あたりの地価は1万円台と、県内の順位では30位中15位程になります。
燕市の地価は、1㎡あたり2万円で県内4位、弥彦村も2万円で7位となっています。
このことから、低額の地価が、この課税割合をもたらしていると考えられます。
ただし、西浦区は高級住宅街として知られており、西浦区の平均地価を超える高額なエリアもあるでしょう。また燕市は事業に成功している高所得者が多いことが考えられます。
個々の相続財産の状況を、しっかり見極めることが重要になるエリアです。
2-3.柏崎エリア
柏崎市と刈羽村からなる柏崎エリアは、県のほぼ中央部に位置しています。
柏崎市は海と山に囲まれた風光明媚な街です。42キロもの海岸線に綺麗な海水浴場が15ヶ所も並んでいます。
長岡市に隣接していることから、長岡市のベッドタウンとしての機能も有しており、山間部と海岸線の間には住宅地が多く造成されています。
このエリアの課税割合は6.40%で県内3位、2位の巻エリアとは僅差となっています。納付税額は659万円と非常に低く、県内12位と下から2番目になります。
やはり、地価の低さとの関係性が強く、柏崎市の地価は1平米あたり2万円で県内11位、刈羽村は1万円で21位となっています。
ただし、全国的に見ると低い課税割合であっても、新潟県内では3位で上位にあります。柏崎市は、田園風景も目立つエリアであることを考えると、課税割合は決して低くないのかもしれません。
相続税が発生したとしても納税額は低い可能性が高いですが、油断はせずに、ご自分の相続財産をしっかりと把握しておきましょう。
2-4.長岡エリア
長岡市の一部と出雲崎町からなる長岡エリアは、県の中央部、中越地方に位置しています。
長岡市は、工業と商業どちらも栄えていることから、生活の利便性が高いために新潟市に次いで人口が多く、中越地方の中心として機能しています。
新潟県は中部地方と結びつきが深いと思われがちですが、長岡市の場合には、東京まで新幹線で80分程度、自動車道で3時間程度とさほど遠くはないため、関東地方との経済的な結びつきが非常に強いことが特徴です。
長岡市は、新潟市と同様に管轄税務署が複数あり、長岡税務署と小千谷税務署の2つに分けられています。ただ、小千谷税務署の管轄は川口地域に限られていることから、市の大部分は長岡税務署の管轄となっています。
このエリアの課税割合は、5.89%で県内4位、県の平均を超える最後のエリアになります。納付税額は1,262万円で県内3位、2位の新潟市とほぼ同等の金額です。
長岡市の地価は1㎡あたり4万円弱で県内2位、長岡駅のある中心部ほど地価が高くなり、高所得者層も増えることから、それに近い場所に居住している人ほど相続税が課税されやすいと考えられます。
2-5.糸魚川エリア
糸魚川(いといがわ)市のみからなるこのエリアは、県の最西端に位置し、富山県と長野県に隣接しています。
とにかく自然豊かな市で、市内に国立公園が「中部山岳国立公園」、「妙高戸隠連山国立公園」の2つもがあることから、自然の質の高さを物語っています。
このエリアの課税割合は、5.71%で県内5位、県の平均を若干下回っています。納付税額は589万円で県内最下位です。
地価は1㎡あたり2万円と県内9位となっており、自然が多い地域であることから不動産価値は高くはなく、課税割合と納付税額の低さにつながっていると考えられます。
2-6.三条エリア
三条市、加茂市、見附市、田上町からなる三条エリアは、県の中央部に位置しており、新潟市と長岡市に隣接しています。
このエリアの中心となる三条市は、西には平野が広がり、東は山間部となっています。稲作はもちろんのこと、古くから鍛冶技術が発達しており、様々な金属加工品が作られ、「ものづくりのまち」として全国的に知られています。
さらに、長岡市に近いことから長岡市のベッドタウンとしても機能しており、県の産業を支える重要エリアとなっています。
課税割合は5.19%で県内6位、納付税額は877万円で県内5位となっており、いずれも低い数値です。
エリア内における課税件数は、製造業が発展している三条市が多くはありますが、全体的に相続税の心配は低いエリアになります。
ただし5.19%の人が相続税を課税されているのは事実であるため、相続税がかかるかどうかは、一度は確認しておきましょう。
2-7.その他のエリア
その他の次の7エリアについては、いずれも課税割合が5%を切っており、相続税が課税される心配は少ないエリアになります。
しかし、1つ見過ごせない点は、十日町エリアの納付税額の2,456万円という高さです。
これは新潟県で断トツ1位であり、2位の新潟エリアの倍近い金額になります。
十日町は、里山の中に棚田の絶景があるような自然溢れる田舎町であり、地価は1平米あたり1万円で県内17位と、相続税が発生しやすい条件が揃っているわけではありません。この納付税額は一部の超富裕層の納付税額と考えて良いでしょう。
税務署名 | 管轄地域 | 1件当り 納付税額 (万円) | 課税割合 |
---|---|---|---|
高田 | 上越市 妙高市 | 880 | 4.83% |
佐渡 | 佐渡市 | 816 | 4.47% |
新発田 | 新発田市 阿賀野市 胎内市 聖籠町 | 703 | 4.29% |
村上 | 村上市 関川村 粟島浦村 | 745 | 4.27% |
小千谷 | 長岡市(※) 小千谷市 魚沼市 南魚沼市 湯沢町 | 675 | 4.22% |
新津 | 秋葉区 五泉市 阿賀町 | 817 | 3.91% |
十日町 | 十日町市 津南町 | 2,456 | 3.52% |
3.新潟県の税理士情報
それでは最後に、新潟県にいる税理士数やその分布状況など、税理士事情について解説します。
3-1.新潟県の税理士数
新潟県の税理士は、関東信越税理士会(新潟県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、長野県)に所属しており、その税理士登録者数は7,496人(令和3年10月末日現在)にのぼります。
そのうち、新潟県に属している税理士は全体の1割超になる810人(令和3年10月1日現在)です。
新潟県の相続税申告数1,249件からすると、申告1件当たりの税理士数は0.64人、税理士1人当たりの相続税申告数は1.54件になります。全国平均は申告1件当たりの税理士数0.53人、税理士1人当たりの相続税申告数1.85件であることから、新潟県の税理士数は充足しているといって良いでしょう。
3-2.新潟県の税理士の分布状況
次に新潟県の税理士810人の分布状況を支部別に見てみましょう。
支部 | 税理士会員数 | 税理士法人会員数 |
---|---|---|
新潟 | 301 | 49 |
長岡 | 137 | 17 |
三条 | 80 | 15 |
柏崎 | 18 | 1 |
新発田 | 35 | 1 |
新津 | 30 | 3 |
小千谷 | 43 | 7 |
十日町 | 11 | 2 |
村上 | 7 | 0 |
糸魚川 | 13 | 2 |
高田 | 74 | 8 |
巻 | 52 | 7 |
佐渡 | 9 | 2 |
合計 | 810 | 114 |
【出典】「支部会員数」|関東信越税理士会 新潟県支部連合会
新潟市が最も多い301人、次に長岡市137人、三条市80人と続きます。
新潟県の相続税申告数1,249件のうち、748件は新潟エリアで発生しており、全体の6割を占めていることから、税理士も810人のうち6割の486人程は新潟エリアに属していそうなものですが、4割弱の301人となっています。
都市部に9割の税理士が集中している県もあるなかで、新潟県の税理士の場合は、エリアによる大きな偏りがなく、地元の税理士を探しやすい環境であるといえます。
3-3.新潟県の税理士の探し方
前述の通り、新潟県の税理士は他県に比べて偏りが少なく、地元の税理士を探しやすい状況にあります。
しかし、相続税申告が起こりやすい都市部に税理士が集中するのは致し方ないことであり、新潟県でもその傾向は少なからずあります。新潟市と長岡市の2市には、全体の過半数が事務所を構えているため、新潟県での税理士探しは新潟市や長岡市も必ず視野に入れておく必要があります。
もっとも、新潟県は面積が広いため、新潟市や長岡市が遠方の地域もあるでしょう。そこで、新潟県の税理士状況の特徴を生かし、まずは地元で相続に強い税理士を優先的に探し、時間があるときに、新潟市などで探すようにすると効率的です。
新潟県は相続税が発生する可能性が低いうえに、税理士が充足している恵まれた状況にあります。
ただし、県内各地へ出向くには距離があるため、高齢の場合などは、新潟市まで出ての税理士探しが難しいことも考えられます。
幸いなことに現代はインターネットが普及し、簡単に情報収集を行えるようになっています。若い世代の子や孫に協力してもらい、インターネットで可能な限り比較して候補を絞り、無料相談などで実際に話して対応を見極め、目的に沿う税理士を見つけましょう。
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【参考サイト】「税理士登録者数」 | 日本税理士会連合会、関東信越税理士会HP