1.和歌山県の概要
和歌山県は近畿地方に属する紀伊半島の南側にある県で、「木の国」と言われるほど山林面積が多い県としても知られています。県北部については阪神工業地帯に属していますが、山林が多く平地が少ないという地形なども影響して、生産量については大阪や兵庫に比べると多少劣ります。ですがその反面、山林を活かした農業が盛んに行われていて、日本一の生産量で全国シェアの約2割を誇るみかん、さらには梅、はっさく、じゃばら、柿、山椒などいずれも日本一の生産量となっています。
なお、和歌山県の人口については、近畿地方の人口が比較的伸びている中、唯一減少傾向にある県となっています。その原因としては、大阪への人口の流出(ストロー現象)と言われていますが、その反面、大阪府からのアクセスが良い橋本市や岩出市などについては、大阪府のベッドタウンとして今もなお人口を増やしています。

和歌山県の地域区分は、北部、中部、南部と区分されています。
北部としては、県庁所在地がある和歌山市がある海草地域、紀の川市や岩出市がある那賀地域、橋本市がある伊都地域、中部としては、有田みかんで有名な有田市がある有田地域、御坊市がある日高地域、そして南部としては、西牟婁地域、東牟婁地域となっています。
そんな和歌山県ですが、相続税の事情はどうなっているのでしょうか。
2.大阪府との比較
大阪国税局の平成27年度都道府県別相続税課税状況によれば、平成27年度における和歌山県内の相続税申告件数は967件であり、同じ近畿地方の大阪府の8,734件と比べるおよそ1割程度と非常に少ないという状況です。ただ、これは人口比率(大阪府約880万人、和歌山県約95万人)から考えると、当たり前といえるかもしれません。
一方で課税割合で比較すると、和歌山県は6.37%、大阪府は8.19%とそれほど大きくは変わりません。
3.県内の相続税データ
税務署名 | 管轄地域 | 申告件数 | 申告割合 | 課税件数 | 1件当たりの 納付税額 (千円) | 課税割合 |
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和歌山 | 和歌山市 | 435 | 10.15% | 353 | 13,841 | 8.24% |
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海南 | 海南市 紀美野町 | 70 | 7.59% | 61 | 4,883 | 6.62% |
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御坊 | 御坊市 美浜町 日高町 由良町 印南町 みなべ町 日高川町 | 75 | 6.65% | 62 | 4,897 | 5.50% |
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田辺 | 田辺市 白浜町 上富田町 すさみ町 | 105 | 6.38% | 96 | 8,320 | 5.83% |
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新宮 | 新宮市 那智勝浦町 太地町 古座川町 北山村 串本町 | 44 | 3.60% | 38 | 6,108 | 3.11% |
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粉河 | 橋本市 紀の川市 岩出市 かつらぎ町 九度山町 高野町 | 163 | 7.19% | 132 | 7,095 | 5.82% |
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湯浅 | 有田市 湯浅町 広川町 有田川町 | 75 | 6.96% | 57 | 10,781 | 5.29% |
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和歌山県計 | | 967 | 7.71% | 799 | 10,099 | 6.37% |
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3-1.和歌山市
県内で相続税が発生している場所を自治体別にみると、圧倒的に多いのが県庁所在地のある和歌山市です。
申告件数435件、課税件数353件と、およそ和歌山県全体の4割強、さらに相続税の納税額でいうと県全体の6割以上の金額を和歌山市民が納税しています。
和歌山市内の課税割合は8.24%と、大阪府全体の平均の課税割合8.17%を若干上回っています。
和歌山市内で特に相続税が発生しやすいエリア
和歌山市内で特に相続税が課税されそうなエリアといえば、和歌山城の南側の高級住宅地があげられます。具体的には、堀止東、吹上、さらには東高松、西高松などがこれに該当します。
また、和歌山市以外で最近開発されてきているのが、県北部の橋本市です。この地域では、「紀北橋本エコヒルズ」の開発による影響でその周辺に住む人の平均年収が上昇しているとのことで、今後相続税にも注意が必要となるでしょう。
反対に、和歌山県の大半を占める山林が多い紀南地域などについては、土地価格が低いため、相続税については滅多に課税されないでしょう。
3-2.海南、御坊、田辺、有田エリア
海南、御坊、田辺、有田など海に面して続く一帯の課税割合は5~6%とそれほど大きいわけではありませんが、それでも相続税改正前と比較すると、対象者が大きく増えています。
3-3.粉河エリア
橋本市を含む粉河税務署エリアの課税割合は6%弱です。県内の他の地域とほぼ同じくらいの割合です。
4.税理事務所件数が少ない
平成26年データでは、和歌山県内にある税理士事務所の件数は、全部で162件となっており、相続税発生件数に対する税理士事務所の件数は、全国で6番目に少ない件数となっています。そのため和歌山県内で税理士を探す場合は、他の都道府県よりも苦労するかもしれません。特に過疎地域などについては、他の地域の税理士が対応していない可能性もあるため、地元で相続税に強い税理士を見つけることが重要でしょう。
なお、相続税発生件数に対して税理士事務所が少ないということは、裏を返せばそれだけ1事務所あたりの相続税申告経験が多いとも言えるため、ネットで検索して相続税に強い税理士を見つけることができれば、他の都道府県よりもクオリティが高いサポートを受けられるかもしれません。