1.千葉県の特徴
東京都、神奈川県、埼玉県の東側に位置する千葉県。県のほとんどが太平洋に突き出した半島であるため長い海岸線を持ち、三方を海に囲まれていることから、1年を通して穏やかな気候であり、居住地として適した環境です。
千葉県の観光地と聞くと、まず思い浮かぶのは「東京ディズニーリゾート」でしょう。
その他にも海が近いことから、マリンスポーツや美味しい海の幸が有名です。1年を通して安定した良い波に恵まれているため、特にサーファーにとっては聖地となっており、全国各地から多くのサーファーが波乗りに訪れています。
また、銚子港を中心に盛んな漁業は、水揚げ量全国1位となっています。
都心から日帰りで行ける距離であること、アクアラインなどの交通網が充実していることから観光地はもちろんのこと、都心のベッドタウンにもなっています。
2.千葉県の税理士情報
千葉県の税理士は千葉県税理士会に所属しており、その会員数は2,567人(令和6年7月末日現在)となっています。
2022年の千葉県内の相続税の申告件数は9,349件であり、1件当たりの税理士数は0.27人と非常に不足していることが分かります。
千葉県の申告件数や課税件数は、東京都や神奈川県、埼玉県と比較すると少ないですが、全国的に見れば多い傾向にあります。それにも関わらず税理士が少ない理由としては、税理士数が日本で最も多い東京都が近いことが挙げられるでしょう。
都道府県 | 申告件数 | 課税件数 |
---|---|---|
東京 | 34,919 | 26,008 |
神奈川 | 18,916 | 14,127 |
埼玉 | 11,849 | 9,234 |
千葉 | 9,349 | 7,417 |
茨城 | 3,014 | 2,499 |
栃木 | 2,291 | 1,893 |
群馬 | 2,701 | 2,272 |
山梨 | 966 | 806 |
全国 | 189,138 | 150,858 |
東京都には全国の約3割になる24,232人の税理士が活動しています。余力のある税理士や大手の税理士法人は、隣県まで対応エリアとしていることがあります。特に千葉県西部にお住いの場合には、千葉県の税理士と合わせて、都内の税理士も検討範囲に入れると良いでしょう。
しかし、都内での仕事があまりないため、千葉県を対象としているような税理士は、実力が低い可能性が高いので注意してください。
次項「その他のエリア」で取り上げるエリアにお住いの場合には、東京の税理士も対象外としていることが多く、税理士探しは難航する可能性が高いでしょう。
特に田舎の場合には、何かと土地が広いため、宅地、農地、山林、工業用地などさまざまな利用用途が混在している特徴があります。このような土地の財産評価は、土地勘のある地元の税理士の方が強いことが多いため、できるだけ近隣地域の相続税に強い税理士に依頼したいところです。
急いで探した税理士で後悔することのないように、時間がかかることを前提にして、できる限り早く動き出すことをおすすめします。
【参考サイト】「税理士登録者数」 | 日本税理士会連合会
千葉県税理士会
3.千葉県の相続税申告の状況
千葉県の令和4年度における相続税の申告件数は9,349件、そのうち相続税がかかった課税件数は7,417件で、相続1件あたりの納付税額は約1,598万円です。
課税割合は10.26%と全国で8番目に高く、令和2年度は8.92%、令和3年度は9.78%だったので、年々上昇を続けています。
一方、全国平均の相続1件あたりの納付税額は約1,857万円、課税割合は9.61%であることから、千葉県は、課税割合こそ全国平均を若干上回っているものの、首都圏にある割には1件当たりの納付額はそれほど高くはないことが分かります。
ただし、千葉県は、全国平均よりも相続税が発生しやすい県であることは事実です。
また、下表からお分かりいただける通り、地域による課税割合の差が大きいのが千葉県の特徴です。県全体ではなく地域ごとに適切な相続税対策を講じることが重要となります。
税務署名 | 地域 | 申告件数 | 課税件数 | 1件当たりの納付額(万円) | 申告割合 | 課税割合 |
---|---|---|---|---|---|---|
千葉東 | 中央区(※) 花見川区(※) 稲毛区(※) 若葉区 美浜区(※) | 793 | 625 | 1,538 | 14.43% | 11.37% |
千葉南 | 中央区(※) 緑区 市原市 | 575 | 455 | 1,237 | 10.48% | 8.29% |
千葉西 | 花見川区(※) 稲毛区(※) 美浜区(※) 習志野市 八千代市 | 1,059 | 826 | 1,524 | 15.33% | 11.96% |
銚子 | 銚子市 旭市 匝瑳市 | 188 | 167 | 991 | 7.11% | 6.32% |
市川 | 市川市 浦安市 | 1,150 | 878 | 2,234 | 21.23% | 16.21% |
船橋 | 船橋市 | 1,056 | 819 | 1,869 | 16.19% | 12.56% |
館山 | 館山市 鴨川市 南房総市 鋸南町 | 183 | 166 | 604 | 7.54% | 6.84% |
木更津 | 木更津市 君津市 富津市袖ケ浦市 | 392 | 328 | 1,047 | 8.96% | 7.49% |
松戸 | 松戸市 流山市 鎌ケ谷市 | 1,304 | 997 | 1,980 | 14.93% | 11.42% |
佐原 | 香取市 神崎町 多古町 東庄町 | 119 | 105 | 1,644 | 6.50% | 5.73% |
茂原 | 茂原市 勝浦市 いすみ市 一宮町 睦沢町 長生村 白子町 長柄町 長南町 大多喜町 御宿町 | 263 | 222 | 747 | 7.07% | 5.97% |
成田 | 成田市 佐倉市 四街道市 八街市 印西市 白井市 富里市 酒々井町 栄町 | 849 | 675 | 1,042 | 11.06% | 8.80% |
東金 | 東金市 山武市 大網白里市 九十九里町 芝山町 横芝光町 | 199 | 167 | 602 | 6.65% | 5.58% |
柏 | 野田市 柏市 我孫子市 | 1219 | 987 | 1,875 | 15.17% | 12.29% |
千葉県計 | 9,349 | 7,417 | 1,598 | 12.94% | 10.26% |
※死亡者数について、令和元年の町丁別人口を基に
千葉市中央区は千葉東税務署と千葉南税務署に按分
千葉市花見川区、稲毛区、美浜区は千葉東税務署と千葉西税務署に按分
【出典】「市町村マップ」|千葉県
3-1.市川エリア
市川市と浦安市から成る市川エリアは、県内で最も東京都に近いエリアで、江戸川区に隣接しています。このため、東京都への通勤率は40%を超えるなど、ベッドタウンとしての特性が強調されています。特に市川市は、都心からの距離を活かし、都心部の別荘地としての人気が古くからあり、高級住宅地としても名高いです。
一方、浦安市は「東京ディズニーリゾート」を抱え、観光業が盛んなエリアです。住み心地が良く、ディズニーファンにとって魅力的な居住地と言えます。
市川エリアの課税割合は16.21%で、2位の船橋エリアと3ポイント以上の差をつけて県内トップです。1件あたりの相続税納付額も2,234万円と、県内ではトップの金額です。
高い課税割合は、ベッドタウン需要と、都心で所得を得る人たちの高収入に裏打ちされています。このエリアに居住している場合、相続税に対する対策を検討することが重要です。
3-2.船橋エリア
船橋市のみから成るこのエリアは、千葉県内で東京都に最も近い位置にあり、市川市の東側に隣接しています。東京都心や成田空港へのアクセスが優れており、市内の人口は約65万人で、千葉市に次ぐ県内第2位の都市です。
課税割合は16.19%で、県内2位に位置していますが、1件あたりの納付税額は1,869万円と、課税割合に比べてやや低く、県内で4番目です。
このエリアは、東京湾を活用した漁業や食品加工業が盛んであり、商業施設も充実しています。都心まで通勤しなくても安定した生活が可能なため、それが逆効果となり、所得が高い人たちのベッドタウンとしての機能を下げてしまったことが要因として挙げられるでしょう。
3-3.松戸エリア
松戸市、流山市、鎌ケ谷市からなる松戸エリアは、千葉県の北西部に位置しています。
東京に隣接している松戸市を中心に発展しており、松戸駅周辺には商業地が形成されていますが、ほぼ全域が住宅地となっています。
市川エリアや船橋エリアと比較すると、都心への距離はありますが、3市の人口は合わせて80万人弱で、東京都への通勤率は20%後半~30%後半と、県内屈指のベッドタウンとなっています。
特に、つくばエクスプレスのおおたかの森駅周辺は開発が進み、若い家族が多く流入していて、今もなお人口が増えています。
課税割合は11.42%と県内5位ですが、1件当りの納付税額は1,980円で、県内2番目に高い額となっています。
これは地価が、流山市4位、松戸市5位、鎌ケ谷市10位と県内でもトップクラスの高さであること、東京で得られる所得の高さが影響していると考えられます。
エリアの大半が住宅地であるため相続の発生も多いことから、相続税には常に注意しておかなければならないエリアです。
3-4.千葉西エリア
習志野市、八千代市、千葉市の花見川区、稲毛区、美浜区の一部は、千葉西税務署の管轄エリアに属し、千葉西エリアを形成しています。
課税割合は11.96%と県内で4位となっており、千葉市の中央部よりも高い水準です。1件あたりの納付税額は1,524万円で、県内平均よりやや低いです。
千葉西エリアは千葉市の北西部に位置しており、習志野市は軍事施設跡地を商業地や住宅地として再開発されたため、県内では地価が比較的に高くなっています。
一方、八千代市は多くの緑地が残された市で、緑を活かしながら市街地が整備されています。住環境の良さと都心へのアクセス便益性から、都心のベッドタウンとしての需要が高く、人口は約20万人です。その結果、地価も県内9位となっています。
美浜区の一部には幕張メッセなどがあり、湾岸エリアに主要な商業地が形成されています。これらの要因により、地価が高騰しており、商業地としても高い評価を受けています。一方で、新しいマンションや住宅地の宅地開発も行われています。
要するに、このエリアは全体的に地価が高く、都市部と同様の不動産評価が存在する可能性が高いため、高い課税割合が存在していると考えられます。
3-5.柏エリア
野田市、柏市、我孫子市から成る柏エリアは、千葉県最北端に位置し、船橋市の北側に広がっています。このエリアは、市川エリアや船橋エリアに比べて地価が低く、住宅の購入が比較的容易であるため、ほぼ全域が住宅地として利用されており、需要が高い地域です。
課税割合は12.29%で、船橋エリアよりやや低くなります。1件あたりの納付税額は1,875万円で、千葉県の平均を若干下回ります。
柏市がこのエリアの中心であり、特に東武柏駅周辺には多くの商業施設が建設され、東京都の衛星都市として発展しているため、野田市や我孫子市は、柏市のベッドタウンとしても機能しています。
このエリアでは、柏市や我孫子市に比べ野田市の地価は低くなっています。野田市は広範な面積を持ち、内陸部に位置しているため、東京都や柏市への通勤が難しく、ベッドタウンとしての需要が低いことが要因です。
このような背景から、柏エリアの相続税の課税は、柏市と我孫子市が主であり、野田市の低い納付税額が平均を下げていると推測されます。
3-6.千葉東エリア
千葉東税務署によって管理される千葉東エリアは、千葉市の大部分から形成され、中央区、花見川区、稲毛区、若葉区、美浜区を含みます。
千葉市は、千葉県のほぼ中央に位置し、東京から約40キロ離れています。特に中央区には行政機関や裁判所などが集中しています。
このエリアの課税割合は11.37%と千葉県内で6番目に位置し、1件あたりの納付税額は1,538万円で、千葉県の平均を若干下回ります。一方、全国平均の課税割合は10%近いため、やや高い水準にあることが分かります。
千葉市中では美浜市が最も高く、一部の相続において、高額な相続税が発生していると推定されます。一方、若葉区は美浜区の半分以下の地価となっており、エリア内の地価の差異に留意する必要があります。
3-7.成田エリア
成田エリアは、成田市、佐倉市、四街道市、八街市、印西市、白井市、富里市、酒々井町、栄町の9つの自治体からなる税務署エリアです。
成田市には国際線ターミナルの成田空港があり、世界各国との便が一日中、離着陸を繰り返しています。
成田エリアの課税割合は8.8%と、千葉市の一部が含まれる千葉南エリアより若干高く、1件あたりの納付税額は1,042万円と千葉南エリアより200万円近く低くなっています。
3-8.千葉南エリア
千葉南エリアは、千葉市の南部に広がり、中央区の一部、緑区、市原市から構成されています。
緑区はその名の通り、自然に恵まれた環境を持つ住宅地で、工業都市として発展している市原市や千葉市のベッドタウンとして機能しています。特に若いファミリー世帯に人気があり、世帯年齢が低い特徴を持っています。
課税割合は8.29%と千葉東エリアより3ポイント以上も下がり、1件当りの納付税額も1,237万円と千葉県の平均を下回ります。
このエリアは地価が低く、特に市原市は工業地帯が湾岸沿いに広がっているため、土地の利用可能性が限られており、地価が低い状態です。
3-9.その他のエリア
木更津、館山、東金、銚子、茂原、佐原の6エリアはまとめて解説します。
これらは千葉県の下から6つのエリアとなっており、課税割合は5%から7%台です。1件当りの納付税額は、佐原エリアのみ1,644万円とこのエリアの中では突出していますが、あとは600万円から1000万円台となっています。
これらのエリアは前述してきたエリアを囲むように、千葉県の東部と南部に位置しています。東京都から距離があるため、ベッドタウンとしては機能しにくく、地価が上がらずに課税割合などが低くなっていると推定されます。