1.千葉県の特徴
千葉県は東京都、神奈川県、埼玉県の東側に位置しており、県のほとんどが太平洋に突き出した半島であるため、長い海岸線を持っています。
地形は県内全域がほぼ平坦で、日本で最も高い山が少ない県となっています。また、三方を海に囲まれていることから、1年を通して穏やかな気候であり、居住地として適した環境です。
千葉県の観光地と聞くと、まず思い浮かべるのは「東京ディズニーリゾート」でしょう。
その他にも海が近いことから、マリンスポーツや美味しい海の幸が有名です。1年を通して安定した良い波に恵まれているため、特にサーフィンは聖地となっており、全国各地から多くのサーファーが波乗りに訪れています。
また、銚子港を中心に盛んな漁業は、水揚げ量全国1位となっています。
都心から日帰りで行ける距離であること、アクアラインなどの交通網が充実していることから観光地はもちろんのこと、都心のベッドタウンにもなっている千葉県。
新型コロナウイルスによるリモートワークの充実によって、都心で仕事をしているけれども住む必要はないとう人達の居住地として、今後さらに需要が伸びていくと予想されます。
2.千葉県の相続税申告の状況
千葉県の令和元年における相続税の申告件数は6,860件、そのうち相続税がかかった課税件数は5,270件で、相続1件あたりの納付税額は約1,395万円、課税割合は8.50%となっています。
全国平均の相続1件あたりの納付税額は約1,714万円、課税割合は8.35%であることから、千葉県は、課税割合こそ全国平均を若干上回っているものの、共に首都圏にある割にはそれほど高くはないことが分かります。しかし、千葉県は、全国平均よりも相続税が発生しやすい県であることは事実です。
また、特に下表からお分かりいただける通り、地域による課税割合の差が大きいのが千葉県の特徴となっています。県全体ではなく地域ごとに適切な相続税を講じることが重要となります。
税務署名 | 管轄地域 | 申告 件数 | 課税 件数 | 1件当り 納付税額 (万円) | 申告割合 | 課税割合 |
---|---|---|---|---|---|---|
千葉東 | 中央区(※) 花見川区(※) 稲毛区(※)若葉区 美浜区(※) | 572 | 463 | 1499 | 11.90% | 9.64% |
千葉南 | 中央区(※) 緑区 市原市 | 453 | 342 | 1078 | 9.24% | 6.98% |
千葉西 | 花見川区(※) 稲毛区(※) 美浜区(※)習志野市 八千代市 | 761 | 565 | 1283 | 13.45% | 9.99% |
銚子 | 銚子市 旭市 匝瑳市 | 138 | 113 | 844 | 5.75% | 4.71% |
市川 | 市川市 浦安市 | 903 | 649 | 1986 | 19.26% | 13.84% |
船橋 | 船橋市 | 765 | 587 | 1294 | 14.31% | 10.98% |
館山 | 館山市 鴨川市 南房総市 鋸南町 | 139 | 119 | 868 | 6.35% | 5.44% |
木更津 | 木更津市 君津市 富津市 袖ケ浦市 | 269 | 226 | 757 | 7.36% | 6.19% |
松戸 | 松戸市 流山市 鎌ケ谷市 | 924 | 706 | 1895 | 12.96% | 9.90% |
佐原 | 香取市 神崎町 多古町 東庄町 | 83 | 68 | 927 | 4.64% | 3.80% |
茂原 | 茂原市 勝浦市 いすみ市 一宮町 睦沢町 長生村 白子町 長柄町 長南町 大多喜町 御宿町 | 184 | 147 | 586 | 5.45% | 4.35% |
成田 | 成田市 佐倉市 四街道市 八街市 印西市 白井市 富里市 酒々井町 栄町 | 619 | 462 | 1223 | 9.07% | 6.77% |
東金 | 東金市 山武市 大網白里市 九十九里町 芝山町 横芝光町 | 161 | 131 | 861 | 5.88% | 4.78% |
柏 | 野田市 柏市 我孫子市 | 889 | 692 | 1415 | 13.66% | 10.63% |
千葉県計 | 6,860 | 5,270 | 1395 | 11.06% | 8.50% |
※死亡者数について、令和元年の町丁別人口を基に
千葉市中央区は千葉東税務署と千葉南税務署に按分
千葉市花見川区、稲毛区、美浜区は千葉東税務署と千葉西税務署に按分
【出典サイト】「市町村マップ」|千葉県
2-1.市川エリア
市川市と浦安市からなる市川エリアは江戸川区に隣接しており、県内で最も東京都に近いエリアです。
そのため、東京都への通勤率が40%を超えるなど、ベッドタウンとして特徴が強く現れています。特に市川市は、都心部の別荘地としても人気を集めていた歴史があり、現在でも高級住宅街として知られています。
浦安市は「=東京ディズニーリゾート」とイメージされるほど観光産業が盛んな市で、住みやすさが向上された住宅地は、ディズニーファンなら一度は住んでみたいエリアではないでしょうか。
課税割合は13.84%で、2位の船橋エリアと3%近い差で圧倒的な1位となっています。相続1件当りの納付税額も1986万円となっており、県内1位です。
ベッドタウンとしての機能性の高さによる県内1、2位の地価と、都心で所得を得ていることからの年収の高さから、ひと際高い結果につながったと考えられます。
このエリアに居住している場合には、相続税の心配があると思っていた方が良いでしょう。
少しでも多くの遺産を相続するためにも、できるだけ早いうちから相続対策を進めておくことをおすすめします。
2-2.船橋エリア
船橋市のみからなるこのエリアは、市川市の東側に隣接しており、市川市に次いで東京都に近いエリアになります。東京都心や成田空港などへのアクセスが良好であり、人口は約64万人と千葉市に次いで県内2番目に多い人口を擁している中核市です。
非公認のゆるキャラ「ふなっしー」の大ブレイクを、記憶していらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
課税割合は10.98%で県内2位、相続1件当りの納付税額は1294万円と課税割合の高さに比べて低いのが特徴です。
このエリアは、東京湾を活用した漁業や、東京都に近いことを利用した食品加工業が盛んに行われています。特に、商業施設は県内屈指ともいえるほど充実しており、市内の経済活動が活発です。
そのため、都心まで通勤せずとも安定した生活が可能となり、ベッドタウンとしての機能を下げてしまったことが理由であると考えられます。
2-3.柏エリア
野田市、柏市、我孫子市からなる柏エリアは船橋市の北側、千葉県の最北端に位置しています。市川エリアや船橋エリアよりも地価が低く、ベッドタウンとして住宅が購入しやすいため、ほぼ全域が住宅地となっており需要があります。
課税割合は10.63%で、船橋エリアとほぼ同等で、相続1件当りの納付税額は1415万円と千葉県の平均並みとなっています。
このエリアの中心となる柏市は、東武柏駅周辺を中心に多くの商業施設が建設され東京都の衛星都市といわれるほど大きく発展しています。Jリーグ柏レイソルのホームタウンであることでも有名です。
よって、野田市や我孫子市は東京都だけでなく、柏市のベッドタウンとしても機能している側面があります。
地価は、柏市は県内6位とその機能から高くなっていますが、我孫子市は11位、野田市は15位とそこまで高額ではなく、エリアの平均値を下げています。
また所得から見てみると、柏市と我孫子市は高い水準にありますが、野田市だけが大きく下回っています。野田市は面積が広く、埼玉県の内陸部に位置していることから東京都や柏市へ通勤し辛く、ベッドタウンとしての需要が低いことが理由と考えられます。
よって、柏井エリアの相続課税の中心は、柏市と我孫子市が中心であり、野田市の納付税額の低さが平均を押し下げていると考えられます。
2-4.千葉西エリア
習志野市、八千代市、千葉市の花見川区、稲毛区、美浜区の一部は、千葉西税務署の管轄エリアとなっており、千葉西エリアと呼ばれます。
課税割合は9.99%で、県内4位と千葉市の中央部よりも高い割合となっています。相続1件当りの納付税額は1283万円で平均並みです。
千葉西エリアは千葉市の北西部に位置しており、習志野市は軍事施設の跡地などを利用して商業地や住宅地として発展し、地価は県内4位の高さです。
八千代市は緑が多く残された市であり、その緑に配慮しながら市街地が形成されています。住環境の良さと、乗り換えなしで都心へアクセスできる利便性から、都心のベッドタウンととしての需要が高く、人口は20万人を超えています。地価も県内9位となっています。
また美浜区の一部には幕張メッセなど、湾岸の主要商業地域が形成されており、商業地として人気であることから地価が高額になっているのですが、同時にマンションや新興住宅地として宅地開発も行われています。
つまりこのエリアは、全体的に地価が高いため、不動産評価額が都市部と同水準になる可能性が高く、それが高い課税割合に繋がっているのだと考えられます。
2-5.松戸エリア
松戸市、流山市、鎌ケ谷市からなる松戸エリアは、千葉県の北西部に位置しています。
東京に隣接している松戸市を中心に発展しており、松戸駅周辺には商業地が形成されていますが、ほぼ全域が住宅地となっています。
上位のエリアに比べて都心への距離はありますが、3市の人口は合わせて80万人を超え、東京都への通勤率は20%後半~30%後半と、県内屈指のベッドタウンとなっています。
課税割合は9.90%で県内5位、相続1件当りの納付税額は1895万円で市川エリアに次ぐ高い金額となっています。
これは地価が、松戸市5位、流山市8位、鎌ケ谷市10位と県内でもトップクラスの高さであること、東京で得られる所得の高さが影響していると考えられます。
エリアの大半が住宅地であるため相続の発生も多いことから、相続税には常に注意しておかなければならないエリアです。
2-6.千葉東エリア
中央区、花見川区、稲毛区、若葉区、美浜区からなる千葉東エリアは、千葉東税務署の管轄であり、千葉市の大半を占めています。
千葉市は東京から約40kmの千葉県のほぼ中央に位置しており、特に中央区には、裁判所などの行政機関が集中しています。
課税割合は9.64%で県内6位、相続1件当りの納付税額は1499万円で平均並みと、千葉県の核を担う中心エリアとしては低い順位であるといえるでしょう。
しかし10%近い課税割合は、全国に比較すると高いことは事実です。
千葉市の地価は県内7位で、特に中央区は2船橋市と同等の高い地価となっています。その反面、若葉区は中央区の半額以下となっており、区による差が大きい点に注意しなければならないエリアです。
2-7.千葉南エリア
中央区の一部、緑区、市原市からなる千葉南エリアは、千葉市の南部に位置しています。
緑区はその名称通り、自然に恵まれた環境にある住宅地で、工業都市として発展している市原市や千葉市のベッドタウンとなっています。特に若いファミリー層に人気があり、世帯年齢が低いのが特徴です。
課税割合は6.98%と前順位から一気に下がり、千葉県の平均も下回っています。
このエリアは地価が低く、特に市原市は湾岸沿いに工業地帯が形成されていることから、土地を活用できるエリアが限られており、1平米あたり5万円程度と特に地価が低くなっています。
また緑区も地価が低いのに合わせて、世帯年齢が低いことによって所得も多くありません。こうした理由から、千葉市周辺で最も低い課税割合となっています。
2-8.その他のエリア
成田、木更津、館山、東金、銚子、茂原、佐原の7エリアはまとめて解説します。
これらは千葉県の下から7つのエリアとなっており、課税割合は3%から6%台です。相続1件当りの納付税額は、成田エリアのみ1223万円でこのエリアの中では突出していますが、あとは50万円から90万円台となっています。
これらのエリアは前述してきたエリアを囲むように、千葉県の東部と南部に位置しています。東京都から距離があるため、ベッドタウンとしては機能しづらく、地価が上がらず課税割合などが低くなっていると考えられます。
ただし、成田市においては日本の国際拠点である成田空港が機能しており、このエリア内では東京都にやや近いエリアになります。その分、地価も県内13位と比較的上位にあり、平均所得も高額な傾向があるため、成田エリアのみ課税割合と納付税額が高くなっています。
3.千葉県の税理士情報
千葉県の税理士は千葉県税理士会に所属しており、その会員数は2,531人(令和3年8月末日現在)となっています。
千葉県内の相続税の申告件数は6,860件であるため、1件当たりの税理士数は0.36人と非常に不足していることが分かります。
千葉県の申告件数や課税件数は首都圏の中では少ないですが、全国的に見れば多い傾向にあります。それにも関わらず税理士が少ない理由としては、東京が近いことが挙げられるでしょう。
東京都には全国の3割にもなる23,732人の税理士がいます。人口や需要の多さからして当然ではあるのですが、余力のある優秀な税理士や大手の税理士法人は、隣県まで対応エリアとしていることがあります。特に千葉県西部にお住いの場合には、千葉県の税理士と合わせて、都内の税理士も検討範囲に入れると良いでしょう。
ただし、都内での仕事があまりないため、千葉県を対象としているような税理士は、実力が低い可能性が高いので注意してください。
「2-8.その他のエリア」で取り上げたエリアにお住いの場合には、東京の税理士も対象外としていることが多く、税理士探しは難航する可能性が高いでしょう。
特に田舎の場合には、何かと土地が広いため、宅地、農地、山林、工業用地などさまざまな利用用途が混在している特徴があります。このような土地の財産評価は、土地勘のある地元の税理士の方が強いことが多いため、できるだけ近隣地域の相続税に強い税理士に依頼したいところです。
急いで探した税理士で後悔することのないように、時間がかかることを前提にして、できる限り早く動き出すことをおすすめします。