1.京都府の相続税申告の状況
京都府の令和元年における相続税の申告件数は3,308件、そのうち相続税がかかった課税件数は2,592件です。
課税割合は9.59%で全国5位、相続1件あたりの納付税額は約1,682万円で全国6位となっています。
全国平均は、課税割合は8.35%、相続1件あたりの納付税額の平均は約1,714万円であることから、課税割合は全国平均を上回り、納付税額は若干下回っていますが、全国平均に関しては東京都の数値が突出して高いため、このような数値になっているのであって、京都府も十分に高いといえます。
関西地区で見ると、大阪8.4%、滋賀7.72%、奈良9.18%、兵庫8.67%、和歌山6.81%の中で京都府は最も高い割合となっています。
京都府の課税割合の特徴は、全国平均並みのエリアが少ない点でしょう。高いか低いかに二極化しています。
京都府は古くから残る寺社などが多く、景観保全のために高層マンションなどの建設ができない地域があります。そのような地域で持ち家に居住している人は戸建てになる可能性が高く、さらに富裕層である可能性も高くなります。
さらに、京都府は言わずと知れた日本を代表する観光地であり、府内各所に観光名所があります。これら観光地の地価は下がりにくく、市街地化している地域では強い上昇傾向によって高額な地価を誇っているため、全国でも相続税が課税されやすい地域となっているのです。
2020年からの新型コロナウイルスの影響によって、京都府の地価も軒並み打撃を受けていますが、それでも「都道府県庁所在地の最高路線価ランキング」では全国6位の順位を守っています(※)。
特に、宿泊事業を行っている事業者の場合、宿泊施設への課税や、高価な美術品や骨董品へ課税が高額になりやすく、事業の継承時に多額の相続税が発生する可能性が高くなるため注意しなければなりません。
税務署名 | 管轄地域 | 申告 件数 | 課税 件数 | 1件当り 納付税額 (万円) | 申告割合 | 課税割合 |
---|---|---|---|---|---|---|
上京 | 北区 上京区 | 389 | 296 | 1373 | 17.77% | 13.52% |
左京 | 左京区 | 335 | 257 | 1655 | 20.98% | 16.09% |
中京 | 中京区 | 245 | 186 | 2288 | 21.97% | 16.68% |
東山 | 東山区 山科区 | 212 | 161 | 1735 | 11.52% | 8.75% |
下京 | 下京区 南区 | 263 | 206 | 1607 | 14.97% | 11.72% |
右京 | 右京区 西京区 向日市 長岡京市 大山崎町 | 648 | 502 | 2062 | 13.82% | 10.70% |
伏見 | 伏見区 | 299 | 227 | 2925 | 10.33% | 7.84% |
福知山 | 福知山市 綾部市 | 83 | 71 | 736 | 5.40% | 4.62% |
舞鶴 | 舞鶴市 | 67 | 60 | 765 | 6.60% | 5.91% |
宇治 | 宇治市 城陽市 八幡市 京田辺市 木津川市 久御山町 井手町 宇治田原町 笠置町 和束町 精華町 南山城村 | 575 | 464 | 996 | 11.12% | 8.97% |
宮津 | 宮津市 伊根町 与謝野町 | 38 | 34 | 588 | 5.41% | 4.84% |
園部 | 亀岡市 南丹市 京丹波町 | 118 | 95 | 2012 | 6.95% | 5.59% |
峰山 | 京丹後市 | 36 | 33 | 616 | 4.41% | 4.04% |
京都府計 | 3,308 | 2,592 | 1682 | 12.24% | 9.59% |
それでは、エリアそれぞれの特徴を課税割合の高い順に解説していきます。
【出典サイト】府内市町村・官公庁・都道府県等|京都府HP
京都市:京都市のあらまし(行政区)|京都市情報館
1-1.中京エリア
中京エリアは、京都市の中京(なかぎょう)区のみからなります。
京都市の中央南部に位置する小さな区で、かつて平安京があったことから、碁盤の目状に道路が整備されてるのが特徴です。
四条通の周辺には京都市役所や金融機関、オフィスビル、商業施設などが集中しており、京都市の行政と産業・経済の中心となっています。
北部には二条城があることから、落ち着いた住宅地である南部の人口増加が著しくなっています。
課税割合は16.68%、相続1件あたりの納付税額は約2,288万円となっており、どちらも非常に高い数値です。
北部の地域よりも市街地化していることなどから、中京区の地価は1平米あたり113万円と非常に高額で、府内1位の京都市の中で2位となっています。そのため不動産の評価額が高額になりすく、このような高い結果となっています。
1-2.左京エリア
左京エリアは京都市の左京(さきょう)区のみからなるエリアで、京都市の北東部に位置し、滋賀県とも隣接しています。
銀閣寺、平安神宮、比叡山など有名な神社仏閣や観光スポットや、京都大学をはじめとする有名大学のキャンパスが数多くある反面、北部の山間部では現在でも林業が盛んに行われているほど緑がたくさんあるアリアです。歴史的かつ自然豊かな街並みは、環境の良いベッドタウンとして非常に需要があります。
課税割合は16.09%で府内2位、相続1件あたりの納付税額は中京エリア程高くはなく、約1,655万円で京都府の平均程度となっています。
中京区の地価は1平米あたり28万円程度で京都市内7位と非常に高額です。
そのうえ、岩倉地区などは市街地化調整区に指定されているため、市内には大型マンションの建設が制限され、持ち家率が比較的高くなっていること、ベッドタウンとして居住人口が多いことなどから、高い課税割合になっていると考えられます。
1-3.上京エリア
上京エリアは北区と上京区からなり、京都市の中央に位置しています。
北区は、右京区と左京区に次いで3番目に面積が大きな区で、京都市の1割を占めています。金閣寺や大徳寺といった有名観光地が多い区であり、北部には山間地があるため歴史と自然が残る住宅地が形成されています。
上京区は面積が7.11㎢と大変コンパクトですが、京都府庁や迎賓館などの行政機関が置かれており、京都府の行政の中心地として機能しています。さらに、国宝「相国寺」などの歴史的建造物も多く、古くから行政の中心地だったことがうかがえます。
上京エリアの課税割合は13.52%、相続1件あたりの納付税額は約1,373万円となっています。課税割合は3位なのに対して、納付税額は13エリア中8位と高くはありません。
1平米当たりの地価は、北区が約29万円、上京区が39万円となっており10万円の差があります。どちらも高くはありますが、特に上京区の小さな区域と、観光地メインである中の住宅地は希少価値が高く、地価や家賃も非常に高額となっています。
どの方面へ行くにもアクセス抜群のエリアであるため、バリバリの現役世代の富裕層も多く集まっていると考えられます。
1-4.下京エリア
下京エリアはその名称通り、京都市の南部に位置している下京区と南区からなります。
下京区は京都府の中心駅となる京都駅があり、駅周辺には商業施設が多く建設されています。四条通りには京都随一の繁華街である四条河原町が形成されており、京都のにぎわいの中心エリアです。
南区は伏見区へと続く産業振興拠点地区が広がり、任天堂やSGホールディングスなどの多くのビッグカンパニーが本社を置いていることが特徴です。そのため、周辺の住宅街には高所得者が多いことが予想できます。
課税割合は11.72%、相続1件あたりの納付税額は約1,607万円となっています。
下京区の地価は1平米あたりなんと116万円と非常に高額で、府内1位の京都市内の中でも1位です。これに対して南区は1平米あたり36万円で京都市内5位です。決して低くはありませんが、下京区と合算することで平均値を下げていると考えられます。
1-5.右京エリア
5位は右京エリアで、右京区、西京区、向日市、長岡京市、大山崎町からなり、京都市の西部から西南部に広がるエリアです。
このエリアは面積が広く、主要都市へのアクセスが良いことから、ほぼ全域がベッドタウンとして発展しています。特に右京区の南部は、皇族の別荘などが立ち並んでいた歴史ある住宅地であり、地価が高額な地域も南部に集中しています。
課税割合は10.70%、相続1件あたりの納付税額は約2,062万円となっており、納付税額の高さは府内3位です。
地価は、府内1、2、3、4位となっており、さらに全域がベッドタウンであることから、高い数値となるのは当然の条件が揃っています。
これまで解説した5エリアが、京都府の課税割合の平均値を上回るエリアになります。
中京、左京、上京、下京、右京とすべて京都市内のエリアでした。京都府は観光地の地価が根強いことから、相続税は富裕層の他に宿泊事業を営んでいる事業者からの納税も多くなっています。そうなると、自然と京都市内が突出するのでしょう。
次項以降は、京都府の課税割合平均を下回るエリアを解説していきます。
1-6.宇治エリア
宇治エリアは、宇治市、城陽市、八幡市、京田辺市、木津川市、久御山町、井手町、宇治田原町、笠置町、和束町、精華町、南山城村の、府内最も多くの市町村からなるエリアです。
「宇治」と聞くと多くの人が「宇治抹茶」を思い浮かべるのではないでしょうか。
美味しい抹茶の代名詞にもなっている京都は、全国トップのてん茶の生産量を誇っており、全国の生産量の2割超を占めています。
このエリアは自然あふれる田舎町であり、京都市内では味わえないのんびりさがあります。しかしながら京都市に近く、アクセスも良いことからベッドタウンとしての需要が高く、特に京田辺市は今まさに再開発の進んでいる街でもあるため、人口が年々増加する程の人気地域となっています。
課税割合は8.97%と京都府の平均は下回りますが、全国平均の8.3%を余裕で上回る高い数値です。このエリアは京都市への通勤率が高いことから、高所得者が多いためと考えられます。
相続1件あたりの納付税額は約996万円となっており、こちらは京都市内の半分程度になる地価が影響していると考えられます。不動産課税よりも、預金などの相続財産に注意が必要なエリアです。
1-7.東山エリア
東山区と山科(やましな)区からなる東山エリアは、京都市の南東部、左京区の南部に隣接しています。
東山区は、祇園や三条京阪などに繁華街が形成されており、早くから市街地化している地域です。歴史的建造物も多く現存している美しい街並みを守るために、再開発の規制が非常に厳しくなっており、住宅地にできるエリアが限定されていることから、人口は市内で最も少なく、高齢者の比率が最も高い区となっています。
山科区は、京都市や大阪府のベッドタウンとして発展している区です。もともと山間部にある農村地域だったため、自然豊かな落ち着いた街並みがメリットですが、反面、地価は低くなります。ベッドタウンの需要増加によって地価が上昇しています。
課税割合は8.75%と宇治エリアと同水準ですが、相続1件あたりの納付税額は約1,735万円と宇治エリアの倍近くになっています。
東山区の地価は1平米あたり76万円と非常に高額で、下京区、中京区に次ぐ3位となっていまが、住宅地が少ないことから相続税の発生は多くないと考えられます。
よって、ベッドタウンである山科区が相続税の中心となりますが、その地価は市内最下位でありながら1平米あたり14万円と、右京エリアの大山崎町と同等であることから、納付税額の高さに繋がっていると考えられます。
1-8.伏見エリア
伏見区からなる伏見エリアは、京都市の南部に位置しており、東西に細長い形をしています。
伏見区は、伏見港などを中心に古くから水運の拠点として発展してきました。
市街地に近いことからベッドタウンとしても注目され、現在では市内で最も多い人口を擁する区となっています。
課税割合は7.84%で全国平均を下回りますが、13エリア中8位でもこの水準です。
また、相続1件あたりの納付税額は約2,925万円となっており、府内1位である点には十分注意しなければなりません。
伏見区の地価は京都市内11区中10位と順位は低いですが、1平米あたりは16万円で府内3位の長岡京市に次ぐ金額となっています。
ベッドタウンであり、さらに人口が多いことから相続税が発生しやすいこと、市街地への通勤者が多く所得が高額になりやすいことが影響していると考えられます。
1-9.その他のエリア
京都府は課税割合の2極化が特徴と前述した通り、伏見エリアの次からは一気に課税割合が落ちます。ひと言でいうなら「田舎」エリアがまとまっています。
税務署名 | 管轄地域 | 1件当り 納付税額 (万円) | 課税割合 |
---|---|---|---|
舞鶴 | 舞鶴市 | 765 | 5.91% |
園部 | 亀岡市 南丹市 京丹波町 | 2,012 | 5.59% |
宮津 | 宮津市 伊根町 与謝野町 | 588 | 4.84% |
福知山 | 福知山市 綾部市 | 736 | 4.62% |
峰山 | 京丹後市 | 616 | 4.04% |
課税割合は4~5%台となり、相続1件あたりの納付税額も1,000万円未満となります。
ただ1点、園部エリアの納付税額2,012万円は府内4位の高さであり、見逃せません。
亀岡市、南丹市、京丹波町ならなるこのエリアは、京都府の中央部に位置しています。
農業が伝統的に行われており、黒豆や松茸、栗は全国的に知られている特産品です。また、製造業も盛んで、特に亀岡市が経済の中心地となっています。
京都市の北部と西部に隣接しているにも関わらず地価が低いことから、京都市のベッドタウンとして急成長を遂げています。
車社会であるため流入しているのは若い子育て世代が中心であり、相続税の発生率は低くなっているようですが、地価は上昇傾向にあるため、広大な農地を所有している高齢者などは注意が必要なエリアといえるでしょう。
2.京都府の税理士情報
京都府の税理士は近畿税理士会(大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、和歌山県、滋賀県)に所属しており、その会員数は15,026人(令和3年8月1日現在)です。
そのうち京都府にいる税理士は1,895人(平成30年3月31日現在 日本税理士会連合会 平成30年5月発行税理士界)で、近畿税理士会に所属する税理士の1割強ということになります。近畿2府4県のうち、京都府が最も相続税が起こりやすいにもかかわらず少ないように思います。
京都府の令和元年における相続税の申告件数は3,308件であったことから、1件当たり0.57人の税理士しかいないということになります。
さらに、前述の通り相続税の中心は京都市内であることから、1,000人を超える税理士は京都市内に在籍しています。その中でも、中京区には407人、下京区には268人が在籍しており、京都市の税理士の半数以上がこの2区に集中しています。
そのため、京都府内で税理士を探す場合は、どのエリアに居住していたとしても、京都市でも税理士を探した方が、より良い出会いにつながる可能性が高いでしょう。
なお、京都府の中央より北部の場合には、兵庫県や福井県の税理士も探してみることをおすすめします。同様に、京都市から離れた京都府南部では、大阪府、奈良県、滋賀県の税理士も候補にしましょう。
相続税では土地の評価に強い税理士を見つけることが重要になります。特に田舎エリアになると、市街地や住宅地、山間部など、さまざまな種類の土地を所有している可能性があるため、そのエリア事情に精通した知識を持っている税理士が適任です。
無理に遠い京都市に出て行くよりも近い他県の方が、そのような税理士を見つけやすいでしょう。
また宿泊事業を営んでいる人の多い京都府では、高価な美術品や骨董品を代々相続している可能性が高いです。物によっては土地など遥かに超える金額になる場合もあるため、美術品や骨董品が多い場合には、こうした評価に強いことも税理士を選ぶ基準にしましょう。
不動産のみに気を取られず、自分の相続に合った能力を持つ、相続に強い税理士を探すことが重要です。
当サイトでは京都府の税理士のみならず、隣県の税理士も簡単に検索できるようになっています。もちろん、相続税に精通した相続に強い税理士のみをご紹介しております。
良い税理士探しのお手伝いができれば幸いです。
【参考サイト】「税理士登録者数 」| 日本税理士会連合会、「近畿税理士会とは:近畿税理士会のご案内」│近畿税理士会