東京都の特徴
東京都は関東平野の中央部、東京湾に面しており、面積は2193.96平方キロメートルで東西に細長い形をしています。
特別区である23区を中心として、26市5町8村で構成されており、人口は約1,400万人(令和2年10月1日現在の国勢調査人口)と、小さな面積に対して人口密度が非常に高いのが特徴です。
東京駅、浅草、東京スカイツリーなどの観光名所は、23特別区に集中しており、新宿や渋谷、池袋などの若者の街である山の手エリア、浅草や上野などの古き良き時代の雰囲気を残した下町エリア、六本木や赤坂、表参道などのTHE東京イメージを代表するおしゃれな街並みである中央エリア、東京駅や銀座、皇居などがある銀座エリアの大きく4つに分けられます。
東京都23区の相続税申告の状況
令和年分の相続税申告の状況によると、令和元年の23区の死亡者数の合計は約81,000人、そのうち相続税の課税対象者となった人は14,135人で、課税割合は17.44%%となっています。平成27年の課税割合16.78%と比較すると、約9%の増加となっています。
また、全国の課税割合は8.3%であることから、全国平均と比べて東京都は約2倍が相続税の課税対象となっています。
区名 | 申告件数 | 課税件数 | 1件当り 納付税額 (万円) | 申告割合 | 課税割合 |
---|---|---|---|---|---|
千代田区 | 174 | 135 | 5,207 | 45.67% | 35.43% |
中央区 | 298 | 223 | 3,702 | 32.22% | 24.11% |
港区 | 614 | 489 | 11,447 | 39.51% | 31.47% |
新宿区 | 846 | 626 | 3,663 | 31.39% | 23.23% |
文京区 | 652 | 481 | 2,804 | 38.88% | 28.68% |
台東区 | 456 | 326 | 2,659 | 23.82% | 17.03% |
墨田区 | 427 | 310 | 1,237 | 17.26% | 12.53% |
江東区 | 570 | 395 | 1,091 | 13.79% | 9.56% |
品川区 | 785 | 580 | 2,002 | 24.53% | 18.13% |
目黒区 | 803 | 564 | 4,242 | 40.37% | 28.36% |
大田区 | 1,546 | 1,109 | 3,439 | 23.61% | 16.94% |
世田谷区 | 2,743 | 1,943 | 3,152 | 39.67% | 28.10% |
渋谷区 | 661 | 508 | 6,769 | 40.95% | 31.47% |
中野区 | 833 | 562 | 2,209 | 29.81% | 20.11% |
杉並区 | 1,795 | 1,288 | 2,587 | 38.83% | 27.86% |
豊島区 | 607 | 436 | 2,220 | 25.86% | 18.58% |
北区 | 643 | 452 | 1,746 | 17.87% | 12.56% |
荒川区 | 330 | 238 | 1,853 | 15.48% | 11.16% |
板橋区 | 916 | 633 | 2,438 | 17.42% | 12.04% |
練馬区 | 1,625 | 1,128 | 3,623 | 26.19% | 18.18% |
足立区 | 863 | 618 | 2,724 | 11.95% | 8.56% |
葛飾区 | 651 | 473 | 2,330 | 13.39% | 9.73% |
江戸川区 | 852 | 618 | 3,078 | 14.26% | 10.34% |
都区内計 | 19,690 | 14,135 | 3,287 | 24.30% | 17.44% |
※港区について、島嶼部が芝税務署の管轄であるため、課税価格・納付税額・申告件数には島嶼部の町村も入っていますが、島嶼部の申告件数は少なく納付税額も低いことが予想されますので、課税割合の計算においては、島嶼部での死亡者は除外しています。
それでは課税割合が高い順に、区ごとの特徴を解説します。
2-1.千代田区
東京都23区内で最も課税割合が多いのが35.43%の千代田区です。課税割合2位の渋谷区港区とが31.47%であるため、断トツで高いことが分かります。申告割合も45.67%と、驚異的な高さです。
千代田区は、永田町、霞が関、丸の内、大手町といった行政やビジネスにおける中枢機能が集約されており、住宅地はわずかです。
死亡者数、申告件数、課税件数の少なさを見ていただくと、昔ながらの富裕層や、エリートサラリーマンなど限られた人しか住めない地域であることから課税割合の高さも伺えます。
23区内で最も相続税への対策が重要な区といえるでしょう。
2-2.渋谷区
千代田区に続いて課税割合が高いのは、港区と同順位で課税割合31.47%となった渋谷区です。
渋谷駅は主要な4社の路線が乗り入れるターミナル駅として機能しており、周辺は副都心として発展しています。若者のファッションの中心地として、ファッション関連企業や多くの商業施設が集まっている反面、代官山や恵比寿、原宿などの人気エリアは高級住宅地として知られており、路線価も上昇傾向にあります。
2-3.港区
続いては、課税割合31.47%で、渋谷区と同順位で2番目となった港区です。
港区は千代田区と中央区に並んで都心3区に数えられ、青山や赤坂、六本木など多くの大企業が本社を構えているエリアです。
また、「港区=高級住宅地」とすぐに連想されるほどブランド力のある区で、麻布や白銀台などは有名です。
現在も億ションと呼ばれるような高級マンションの建設が相次いで行われており、特にお台場周辺の埋立地区では、人口や路線価の上昇に伴い課税額も高額になっています。
2-4.文京区
4番目は課税割合28.68%%の文京区です。
文京区は東京ドームや神楽坂などがあるエリアで、住宅街と大学などの教育機関が多い地区が区の大半を締めています。日本の最高学府である東京大学も文京区です。
都心に位置しているため地価が高く、住める人は自然と富裕層になります。
しかし、本郷や小石川、駒込などには古くからその土地で生活している世帯も多く、現在では購入できない規模の不動産を相続することによって相続税が高額になりやすいと考えられます。
2-5.目黒区
5番目は目黒区で課税割合は28.36%です。
目黒区は都心からやや離れた場所に位置しており、ビジネス街、商業地というよりも住宅地としての役割が強くなっている地域で、都心に近いベッドタウンとして人気を集めています。
高級住宅地のイメージ通り、23区内でも地価や賃貸料相場は高めです。
その住みやすさから、代々目黒区で生活している世帯も多く、相続が起きやすい地域であると考えられます。
世田谷区とは異なり、年度によっては前年比1%以上の変動がある区で、相続税の課税には波が現れやすい地域であるといえます。
2-6.世田谷区
6番目に課税割合が高いのは28.10%の世田谷区で、3番目の目黒区と大差なく同水準の割合となっています。
23区内でも南西部に位置しており、神奈川県川崎市と隣接するなど都心からは離れた場所にある区ですが、駒沢オリンピック公園、多摩川河川敷をはじめとする多くの緑地や公園が点在しており、住環境の良さから23区内最多である約95万人が住む住宅都市となっています。
面積が広い区であり、成城や深沢は高級住宅街の代名詞にもなるほどの地区もある反面、一般的な収入の人でも住める地区もあることから、現在でも年々人口増加を見せています。
年度による課税割合の差は少なく、常に相続税への対策が重要な地域といえるでしょう。
2-7.杉並区
7番目の杉並区の課税割合は27.86%%で、目黒区、世田谷区に次ぐ高い割合となっています。
杉並区は23区の最西端に位置する区で、都内では珍しい自然が豊富な住宅街が広く形成されており、古くからの住宅地として発展しています。買い物のしやすさや物価の安さから、ファミリー層に人気の区となっています。
多摩地域との境界にあるため繋がりが強く、都心部と多摩地域どちらの地域に行くにも便利がよく、住宅地が足りなくなるほどの人口増加を見せています。
2-8.中央区
中央区は東京都の中心地域を構成する区の1つですが、区内で2番目に面積が小さく、人口も多くないため、課税割合は24.11%と都心の割には低くなっています。
銀座など日本一の路線価を誇る地域もありますが、全体的に閑静な住宅街が広く形成されており、相次ぐマンションの建設によって、快適な都心ライフを求める30、40代が多く流入しています。
区民の9割以上がマンション居住者ということから、他のビジネス地や商業地よりも土地の需要が伸びず、それが相続税へも影響しているのだと考えられます。
2-9.新宿区
3大副都心の1つである新宿区の課税割合は、23.23%です。
日本一の歓楽街である歌舞伎町、数多くの商業施設など昼夜ともに華やかで圧倒的な存在感があります。
さらに、東京都庁などの都の重要施設や、行政機関なども多く建設されており、新宿区は職場、娯楽というイメージが強いため、生活拠点としてはあまり選ばれません。そのため、相続税が発生する確率も高くないようです。
2-10.中野区
10番目は中野区の課税割合20.11%で、ここを境に1段階下がる感じがあります。
中野区は都心に近く渋谷区や新宿区と隣接しており、鉄道やバスなど交通の利便性が非常に高い地域であるため、ベッドタウンとして宅地開発などが積極的に行われてきました。
人口は約33万人と非常に多く、全国的に人口密度が高い地域となっているため、マンションが生活住居の中心となっています。
高級住宅地はなく、独身者が住むワンルームマンションが多いのが特徴であり、相続の発生は多い方ではありません。
2-11.豊島区
23区の11番目となる豊島区の課税割合は18.58%と、20%を下回ります。
豊島区にはあの池袋があり、池袋駅を中心に繁華街が形成されています。
高級住宅街として有名な目白は、皇族が通う学習院もあり、池袋駅とは一転して落ち着いた雰囲気となります。
また「おばあちゃんの原宿」として知られる巣鴨など、幅広い年齢層を対象にした街づくりが行われ、多くの人が集まった結果日本一の人口密度となっています。今後も人口は増加傾向が強く現れていくことが予想され、課税割合も上昇してくと考えられます。
2-12.練馬区
練馬区の課税割合は18.18%です。
23区の最西端に位置していますが、豊島区、杉並区、中野区、板橋区と隣接しており、複数の鉄道路線が整備されているため都心へのアクセスが良く、ベッドタウンとして人気のエリアです。
また、練馬区は公園が多く23区内とは思えない自然豊かな環境で、現在でも農業が積極的に行われています。「適度な都会」という表現がピッタリな区です。
都心に近いことから農地であっても宅地と同様の価格を記録しており、広い農地や自宅を所有している場合には、思いがけない相続税が発生する可能性があるため、注意しなければいけません。
2-13.品川区
品川区の課税割合は18.13%と13番目となります。
北を港区、南を大田区、西を目黒区に囲まれ、都内でも屈指のビジネス街として発展しており、都会のど真ん中というイメージからは、低い数字となっているかもしれません。課税割合、人口、面積など、あらゆる面から平均的な街です。
実は、品川駅は港区にあるため、相続税が課税されるような高所得者層はブランドの街港区に住んでいると考えられます。
2-14.台東区
台東区の課税割合は17.03%で、ここから東京23区平均を下回ります。
東京都の中でほぼ中央に位置し、北を荒川区、東を墨田区、南を中央区、西を文京区と千代田区に囲まれています。東京都の中で最も古い市街地の1つであり、歴史ある街並みが人気で、上野や浅草を始めとした観光の街として発展しました。
観光産業がメインの区であるため、区内は主に商業地として使用されており、住宅地は少ないです。近年ではマンション建設なども進んではいますが、まだ相続が発生するほど年月が経っておらず、課税割合が低くなっているのだと考えられます。
2-15.大田区
大田区は23区で最も広く、人口は3番目に多い地域ですが、課税割合は16.94%と低めです。
23区の南東部に位置し、都心から最も遠いため、主に住宅街として活用されています。特に、高級住宅街として有名な田園調布があるため、区の相続の中心はこの地域であると考えられます。
一方で、区の広い面積のうち羽田空港が3分の1を締めているため、その分居住可能な地域が限られ、街づくりに制限ができています。
住宅地に人気があるにも関わらず、課税割合が低い背景には、空港との兼ね合いが関係しているのかもしれません。
2-16.北区
16番目の北区の課税割合は12.56%と、17位の墨田区と同等の数値です。
名称通り23区の北部に位置しており埼玉県との県境にあるため、都心からは離れてはいますが、明治通りや環七通りなど幹線道路が整備されており利便性が高く、ベッドタウンとして人気を集めています。
しかし、65歳以上の高齢者人口は25%を超えており、23区内1位となっています。まだまだ若者の流入は少ない区です。
地価、賃貸料の相場は比較的手ごろであるため、高齢者が多いといえども、相続税が発生する程の富裕層は少ないと考えられます。
2-17.墨田区
東京都のシンボルでもあるスカイツリーがあるのが墨田区で、課税割合は12.53%となっています。
区の東西の境目は隅田川と荒川、中川なっており、河川に囲まれた地域であるため、古くから水を用いた皮革業や飲料品の製造などが行われてきた、下町情緒が色濃く残る商業の街です。
都心へのアクセスも簡単に行えることからベッドタウンとしても機能しており、大半は住宅地として活用されています。昔ながらの木造住宅や、都営団地も多いのが特徴です。
スカイツリーができたことでタワーマンションの建設が進み、富裕層も流入してはいますが、まだまだ庶民的な地域であり、課税割合は高くありません。
2-18.板橋区
板橋区の課税割合は12.04%と、先の墨田区から若干下がります。
板橋区は区内全体が市街地化しており、各交通網や商業施設などがしっかりと整備されており、都内で数の住宅団地も形成されています。
地価は池袋駅に近い程それなりに高くはなりますが、全体的に手ごろな住宅地が多く、また団地が整備されることで不動産の相続が少なくなるため、課税割合が低くなっていると考えられます。
2-19.荒川区
荒川区の課税割合は11.16%で19番目です。
明治時代から荒川の水を使用するため多くの工場が建設されていましたが、現在はその工場跡地を活用した大規模な再開発や公園整備が進められています。
南千住などを中心とした再開発は都内最大規模で、きれいな町並みと新しいマンションに魅力を感じたファミリー層を中心に人口流入が起きています。
今は低い課税割合ですが、路線価の上昇によって今後は相続税の高額化や、課税割合の増大が懸念されます。
2-20.江戸川区
江戸川区は23区の最東部に位置している区で、課税割合は10.34%です。10%を超える最後の区となります。
区の大半は住宅地として活用されており、昼間人口が少なく夜間人口が多いという典型的なベッドタウンの特徴が現れています。
子育て世代向けの政策が充実していることと、大型マンションの建設が相次いでいることから、子供の人口が23区内で最も多く、ファミリー層の多さが分かります。
そのため、区民の平均年齢は23区で最も若く、相続に結びつく要因が少ないことから課税割合が低くなっているのだと思われます。
2-21.葛飾区
葛飾区は行ったことはなくても、「男はつらいよ」や「こち亀」などで見聞きして知っているという人が多いのではないでしょうか。
葛飾区の課税割合は9.73%で21番目、全国平均の8.3%は上回ってはいますが、23区内にしては低い数値です。
葛飾区は都心に近いだけでなく、地価や賃貸料が23区でトップレベルに安いという理由から、ベッドタウンとしての人気が高まっている地域です。下町が好きで安い場所を探している人にはもってこいの区でしょう。
そのため、葛飾区にある不動産を相続しても評価額が低く、相続税は発生しにくくなるため、課税割合の低さに繋がっています。
2-22.江東区
江東区の課税割合は9.56%で22番目になります。
東京都の東部に位置し、隅田川と荒川、東京湾に囲まれている江東区は、墨田区と同様に周囲の水資源を活用した工業地域として発展してきました。
現在では、工場や企業などを中心に住宅地が形成され、タワーマンションが数多く建設されているエリアもあります。さらに、歓楽街として有名である錦糸町もあり、多くの魅力が詰まった街となっています。
江東区は近年の相次ぐマンション建設によって人口は増加していますが、かつては人口減少が起きていた地域になります。
そのため、相続税が課税される世帯が限られてしまうため課税割合も低くなっていると考えられます。
2-23.足立区
23区で最も低い課税割合となったのは足立区で8.56%です。全国平均を若干上回る程度です。
足立区は23区の最北端に位置していますが、都心へのアクセスが非常に良いため、通勤者は区内から区外へ出る人の方が多くなっているベッドタウンです。
しかし、近年では魅力あるベッドタウンが増えたことによって、足立区に注目が集まらず、ここ数年は人口減少が起きています。
地価も他区と比較すると低いため、相続税が課税される世帯が限定されてしまい、課税割合が低くなっていると考えられます。
東京都市町村部の相続税申告の状況
次に、23区以外の市町村部である多摩地区を見ていきましょう。多摩地区は30市町村(26市3町1村)からなります。
令和元年の相続税申告の状況を、管轄税務署ごとにまとめました。
令和元年の市町村部の死亡者数の合計は約39,400人、そのうち相続税の課税対象者となった人は5,511人で、課税割合は13.99%となっています。平成27年の課税割合13.80%と比較すると、わずか0.19%の増加で23区と同じく横ばいとなっています。
23区と比較すると低くはなりますが、全国平均の8.3%からは1.6倍を超えています。
税務署名 | 管轄地域 | 申告 件数 | 課税 件数 | 1件当り 納付税額 (万円) | 申告割合 | 課税割合 |
---|---|---|---|---|---|---|
八王子 | 八王子市 | 778 | 590 | 1,374 | 14.07% | 10.67% |
立川 | 立川市・昭島市・国分寺市 国立市・東大和市・武蔵村山市 | 1,159 | 842 | 3,020 | 19.37% | 14.07% |
武蔵野 | 武蔵野市・三鷹市・小金井市 | 1,229 | 865 | 3,108 | 33.73% | 23.74% |
青梅 | 青梅市・福生市 羽村市 あきる野市・瑞穂町・日の出町 檜原村・奥多摩町 | 611 | 450 | 1,570 | 12.64% | 9.31% |
武蔵府中 | 府中市・調布市・狛江市 | 1,140 | 811 | 2,311 | 24.23% | 17.24% |
町田 | 町田市 | 729 | 537 | 1,867 | 17.90% | 13.19% |
日野 | 日野市・多摩市・稲城市 | 685 | 508 | 2,220 | 18.79% | 13.94% |
東村山 | 小平市・東村山市・清瀬市 東久留米市・西東京市 | 1,250 | 908 | 2,510 | 17.87% | 12.98% |
多摩地区計 | 7,581 | 5,511 | 2,365 | 19.24% | 13.99% |
それでは23区と同様に、課税割合が高い順に地域の特徴を見ていきましょう。
3-1.武蔵野(武蔵野市・三鷹市・小金井市)
多摩地区の東部に位置し、23区との境目にあたる地域になり、東京都のほぼ中央に位置しています。
これら武蔵野市、三鷹市、小金井市を管轄している武蔵野税務署の課税割合は23.74%で、多摩地区の中で唯一20%台の圧倒的な割合となっており、23区でいうところの千代田区のような位置づけになります。
この統計は税務署の管轄ごとに合計された割合となっており、市ごとに細分された割合は公表されていません。
ただ、「住みたい街ランキング」で常に上位にランクインしている吉祥寺を擁する武蔵野市の地価は都心部に匹敵する価格となっているため、相続税が発生するほどの不動産という観点からは、武蔵野市が相続の中心地域だと考えられます。
三鷹市は自然豊かな環境でありながらも都市へのアクセスが良好な街で、都内であってもゆったりとした子育てがしたいファミリー層に人気です。有名な「三鷹の森ジブリ美術館」があります。
小金井市も三鷹市と同様に自然豊かな住宅地で、東京農工大学や法政大学、東京学芸大学など文教都市としての側面もあります。
いずれも程よい田舎であり都内としては低い地価ですが、交通の利便性が良いベッドタウンとして需要があり、多摩地区では高い地価になります。
3-2.武蔵府中(府中市・調布市・狛江市)
2番目は武蔵野と隣接する、府中市、調布市、狛江市の武蔵府中税務署の管轄です。課税割合は17.24%です。武蔵野税務署からは大きく下がりますが、3番目の立川と比較すると高い割合であることが分かります。
多摩地区はベッドタウンとして整備されていることが多いのに対して、府中市内には企業の研究機関や工場などが多く建設されています。
歴史、自然、博物館、卸市場など、独特な個性があるのが府中市で、この地域の中心都市として機能しています。
しかし、地価は23区と隣接している調布市のほうがベッドタウンとしての需要から高額となっており、相続税の発生も高いと考えられます。
3-3.立川(立川市・昭島市・国分寺市・国立市・東大和市・武蔵村山市”)
東京都のちょうど中央に位置している、立川市、昭島市、国分寺市、国立市、東大和市、武蔵村山市を管轄する立川税務署の課税割合は14.07%で、4番目の日野とはわずかな差ですが3番目となっています。
この地域の中心なっているのは立川市であり、多摩地区全域の中核都市としても機能しています。市の中央である立川駅周辺には商業施設やオフィスビルが集中しており、商業の中心となっています。
また、立川市に隣接している国分寺市は、都市機能が集中した立川市をはじめとする多摩地区全域のベッドタウンとして需要が集まっており地価が上昇中です。
よって、相続の中心地も立川市や国分寺市であると考えられます。
3-4.日野(日野市・多摩市・稲城市)
4番目は多摩地区の中南部に位置する日野市、多摩市、稲城市で、管轄は日野税務署となっており、課税割合は13.94%です。多摩地区の平均的な割合です。
全域が自然豊かな住宅都市として発展しており、日野市ではリンゴや多摩川梨、ブドウ、トマトなどの都市農業を行う代表的な地域として注目されています。
また、多摩市の南部から稲城市にかけては「多摩ニュータウン」という日本最大級の新たな街があり、戸建て住宅やマンションをはじめとして、駅周辺には商業施設やオフィスビルも多く建設されています。
ただ、地価はそこまで高くはありませんが、1番最初の分譲が1971年であることを考慮すると、これから相続の発生が増えていくと考えられます。
3-5.町田(町田市)
5番目の町田は課税割合13.19%で、日野と同等です。
東京都の中央最南端に位置しており、都心から電車で30分程の場所にあります。また都心部だけではなく、神奈川県の横浜市や川崎市にも隣接しており、海、山、都会へもアクセスしやすい、郊外暮らしができる町として人気です。近年ではその利便性の高さから「多摩の渋谷」と呼ばれています。
古くからベッドタウンとして発展していますが、多くの人が交差する町であることから、町田駅を中心とした商業地としても発展を続けています。
近年では、人口増加に伴って新しく区画整理も行われており、ファミリー層の流入が盛んです。そのため、今後地価が大きく上昇する可能性が高く、地価の推移を注意深く見守る必要があります。
3-6.東村山(小平市・東村山市・清瀬市・東久留米市・西東京市)
志村けんの出身地であり、「東村山音頭」でも有名な東村山を含む、小平市、清瀬市、東久留米市、西東京市を管轄する東村山税務署の課税割合は、12.98%です。
多摩地区の北東部に位置しており、23区とも隣接しているため、地域全体が住宅地として活用されています。
主要産業は農業であることと、都心部に近いことから、数多くの食品工場などが建設されています。
地価はそこまで高額ではないのですが、相続1件あたりの納付税額は2,510万円と高額となっています。
理由としては、広大な農地を所有していたり、高所得者が多く生活していることが考えられるため、地価にとらわれることは厳禁です。個々の状況に応じた柔軟な対応が他の地域以上に重要な地域となっています。
3-7.八王子(八王子市)
多摩地区の南部に位置している八王子市の課税割合は10.67%と、6番目の東村山から2.31%も差があります。
人口は約56万人、面積は186.31平方キロメートルと、どちらも多摩地区の中で最多、最大です。
路線、道路網も充実しており、多摩地区の物流や交通の大きな役割を果たしています。
さらに近年では、都心部の大学キャンパスを誘致して学園都市としての整備を行っています。
また、高尾山をはじめとする雄大な山々が連なる自然豊かなエリアも多く、こうした場所はあまり地価が上昇しないため、相続税の課税もされにくいのだと考えられます。
3-8.青梅(青梅市・福生市・羽村市・あきる野市・瑞穂町・日の出町・檜原村・奥多摩町)
多摩地域の北西部に位置している、青梅市、福生市、羽村市、あきる野市、西多摩郡を管轄する青梅税務署の課税割合は9.31%と、多摩地区の中で最も低くなっています。
エリア面積は東京都の3分の1程になり広大ですが、その約79%を森林が占めています。
この地域の中心となる青梅市は、立川市や八王子市と同様に東京都の核都市として指定されており、商業施設などが青梅市に集中してはいますが、良くも悪くも田舎です。
東京都心まで電車で約1時間かかること、山間部が多く生活地域が限られていることから地価の上昇は見込めず、相続税が発生する程の相続は起こりにくいと考えられます。
しかし、若者世代の人口流出によって高齢化が急速に進んでいることから、相続自体は起きやすい地域であるともいえるため、無視できる地域ではありません。
4.東京都の税理士情報
令和3年8月末日現在、東京都には23,732人の税理士がいます。全国では79,696人であるため、全国の約3割の税理士が東京にいることになります。
税理士があふれているように思われたかもしれませんが、令和元年の相続税申告件数は18,246件であることを考えると、税理士1人あたり0.76件、法人税申告や確定申告を専門としている税理士も多いことから、決して十分に足りているとは言い切れない人数です。
それでは東京都の税理士分布状況を見てみましょう。
税理士は税理士会に所属しており、東京税理士会は8ブロック48支部に分かれています。
【出典】「支部一覧」|東京税理士会
- 第1ブロック:千代田区、中央区、港区
- 第2ブロック:品川区、大田区
- 第3ブロック:新宿区、中野区、杉並区
- 第4ブロック:文京区、台東区
- 第5ブロック:世田谷区、目黒区、渋谷区
- 第6ブロック:板橋区、練馬区、豊島区、北区、荒川区
- 第7ブロック:足立区、墨田区、葛飾区、江戸川区、江東区
- 第8ブロック:23区以外
断トツで多いのは所属数トップ3の千代田区、中央区、港区を抱える第1ブロックで、約8,500人の税理士と税理士法人が所属しており、東京都の税理士の4割弱が集結しています。中央区の課税割合は20.63%、港区は29.70%、千代田区に至っては38.52%と相続税申告の需要が高く、税理士が集まるのは必然的であるといえます。
次に多いのが、所属数4番目の新宿区を抱える第3ブロック、その次に5番目の渋谷区を抱える第5ブロックとなります。
この3ブロックだけで東京都の税理士数の半分以上を占めており、第8ブロック以外の23区内の税理士数は東京都の9割にもなります。
東京都は他県に比べて富裕層が多く、さらに地価が高いため、相続税申告の内容も複雑になりがちです。相続税額も高く、税理士の腕に大きく左右されることになります。
よって、厳しい東京23区で生き残っている税理士であるということは、相続税に強い実力のある税理士である可能性が高いということにもなります。
他県に比べて優秀な税理士が多い分、選択肢も多くなりますが、そこはしっかり時間をかけて税理士選びをすることで解決できるでしょう。
【出典サイト】日本税理士会連合会|公式ページ
東京税理士会 | 公式サイト
【参考】東京23区内の税務署一覧
東京23区内の税務署一覧を掲載します。最新情報は、東京国税局のWEBサイトでご確認ください。
税務署名 | 所在地 | 電話番号 | 管轄地域 |
---|---|---|---|
浅草 | 〒111-8602 台東区蔵前2丁目8番12号 令和3年7月12日以降、申告書、申請書等はセンターへ郵送により提出願。 | 03-3862-7111 | 台東区のうち浅草地区 |
麻布 | 〒106-8630 港区西麻布3丁目3番5号 | 03-3403-0591 | 港区のうち麻布、赤坂地区 |
足立 | 〒120-8520 足立区千住旭町4番21号 足立地方合同庁舎 | 03-3870-8911 | 足立区のうち千住、綾瀬地区 |
荒川 | 〒116-8588 荒川区西日暮里6丁目7番2号 | 03-3893-0151 | 荒川区 |
板橋 | 〒173-8530 板橋区大山東町35番1号 | 03-3962-4151 | 板橋区 |
江戸川北 | 〒132-8668 江戸川区平井1丁目16番11号 | 03-3683-4281 | 江戸川区の一部 |
江戸川南 | 〒134-8567 江戸川区清新町2丁目3番13号 | 03-5658-9311 | 江戸川区の一部 |
荏原 | 〒142-8540 品川区中延1丁目1番5号 | 03-3783-5371 | 品川区のうち荏原地区 |
王子 | 〒114-8560 北区王子3丁目22番15号 | 03-3913-6211 | 北区 |
大森 | 〒143-8565 大田区中央7丁目4番18号 | 03-3755-2111 | 大田区のうち大森地区 |
荻窪 | 〒167-8506 杉並区荻窪5丁目15番13号 | 03-3392-1111 | 杉並区のうち荻窪地区 |
葛飾 | 〒124-8560 葛飾区立石8丁目31番6号 | 03-3691-0941 | 葛飾区 |
蒲田 | 〒144-8556 大田区蒲田本町2丁目1番22号 | 03-3732-5151 | 大田区のうち蒲田地区 |
神田 | 〒101-8464 千代田区神田錦町3丁目3番地 | 03-4574-5596 | 千代田区のうち神田地区 |
北沢 | 〒156-8555 世田谷区松原6丁目13番10号 | 03-3322-3271 | 世田谷区のうち北部地区 |
京橋 | 〒104-8557 中央区新富2丁目6番1号 | 03-4434-0011 | 中央区のうち京橋地区 |
小石川 | 〒112-8558 文京区春日1丁目4番5号 令和3年7月12日以降、申告書、申請書等はセンターへ郵送により提出願。 | 03-3811-1141 | 文京区のうち小石川地区 |
麹町 | 〒102-8311 千代田区九段南1丁目1番15号 九段第2合同庁舎 | 03-3221-6011 | 千代田区のうち麹町地区 |
江東西 | 〒135-8311 江東区猿江2丁目16番12号 | 03-3633-6211 | 江東区のうち城東地区を除く地区 |
江東東 | 〒136-8505 江東区亀戸2丁目17番8号 | 03-3685-6311 | 江東区のうち城東地区 |
品川 | 〒108-8622 港区高輪3丁目13番22号 | 03-3443-4171 | 品川区のうち品川地区・大崎地区・大井地区・八潮地区 |
芝 | 〒108-8401 港区芝5丁目8番1号 令和3年7月12日以降、申告書、申請書等はセンターへ郵送により提出願。 | 03-3455-0551 | 港区のうち芝地区 東京都のうち大島町、利島村、新島村、神津島村、三宅村、御蔵島村、八丈町、青ケ島村、小笠原村 |
渋谷 | 〒150-8333 渋谷区宇田川町1番10号 渋谷地方合同庁舎 令和3年7月12日以降、申告書、申請書等はセンターへ郵送により提出。 | 03-3463-9181 | 渋谷区 |
新宿 | 〒169-8561 新宿区北新宿1丁目19番3号 | 03-6757-7776 | 新宿区のうち新宿地区 |
杉並 | 〒166-8501 杉並区成田東4丁目15番8号 | 03-3313-1131 | 杉並区のうち阿佐谷、高円寺地区 |
世田谷 | 〒154-8523 世田谷区若林4丁目22番13号 世田谷合同庁舎3階・4階 | 03-6758-6900 | 世田谷区のうち中央部地区 |
玉川 | 〒158-8601 世田谷区玉川2丁目1番7号 | 03-3700-4131 | 世田谷区のうち玉川地区 |
東京上野 | 〒110-8607 台東区池之端1丁目2番22号 上野合同庁舎 令和3年7月12日以降、申告書、申請書等はセンターへ郵送により提出。 | 03-3821-9001 | 台東区のうち下谷地区 |
豊島 | 〒171-8521 豊島区西池袋3丁目33番22号 | 03-3984-2171 | 豊島区 |
中野 | 〒164-8566 中野区中野4丁目9番15号 | 03-3387-8111 | 中野区 |
西新井 | 〒123-8501 足立区栗原3丁目10番16号 | 03-3840-1111 | 足立区のうち西新井地区 |
日本橋 | 〒103-8551 東京都中央区日本橋堀留町2丁目6番9号 | 03-3663-8451 | 中央区のうち日本橋地区 |
練馬西 | 〒178-8624 練馬区東大泉7丁目31番35号 | 03-3867-9711 | 練馬区の一部 |
練馬東 | 〒176-8503 練馬区栄町23番7号 | 03-6371-2332 | 練馬区の一部 |
本郷 | 〒113-8459 文京区西片2丁目16番27号 令和3年7月12日以降、申告書、申請書等はセンターへ郵送により提出。 | 03-3811-3171 | 文京区のうち本郷地区 |
本所 | 〒130-8686 墨田区業平1丁目7番2号 令和3年7月12日以降、申告書、申請書等はセンターへ郵送により提出。 | 03-3623-5171 | 墨田区のうち本所地区 |
向島 | 〒131-8509 墨田区東向島2丁目7番14号 令和3年7月12日以降、申告書、申請書等はセンターへ郵送により提出。 | 03-3614-5231 | 墨田区のうち向島地区 |
目黒 | 〒153-8633 目黒区中目黒5丁目27番16号 | 03-3711-6251 | 目黒区 |
雪谷 | 〒145-8506 大田区雪谷大塚町4番12号 | 03-3726-4521 | 大田区のうち調布地区 |
四谷 | 〒160-8530 新宿区四谷三栄町7番7号 | 03-3359-4451 | 新宿区のうち四谷、牛込地区 |
【参考】東京都市町村部の税務署一覧
東京都市町村部の税務署一覧を掲載します。最新情報は、東京国税局のWEBサイトでご確認ください。
税務署名 | 所在地 | 電話番号 | 管轄地域 |
---|---|---|---|
青梅 | 〒198-8530 青梅市東青梅4丁目13番4号 | 0428-22-3185 | 青梅市 福生市 羽村市 あきる野市 西多摩郡 |
立川 | 〒190-8565 立川市緑町4番地の2 立川地方合同庁舎 | 042-523-1181 | 立川市 昭島市 国分寺市 国立市 東大和市 武蔵村山市 |
八王子 | 〒192-8565 八王子市明神町4丁目21番3号 | 042-697-6221 | 八王子市 |
東村山 | 〒189-8555 東村山市本町1丁目20番22号 | 042-394-6811 | 小平市 東村山市 清瀬市 東久留米市 西東京市 |
日野 | 〒191-8520 日野市万願寺6丁目36番地の2 令和3年7月12日以降、申告書、申請書等はセンターへ郵送により提出。 | 042-585-5661 | 日野市 多摩市 稲城市 |
町田 | 〒194-8567 町田市中町3丁目3番6号 | 042-728-7211 | 町田市 |
武蔵野 | 〒180-8522 武蔵野市吉祥寺本町3丁目27番1号 | 0422-53-1311 | 武蔵野市 三鷹市 小金井市 |
武蔵府中 | 〒183-8548 府中市本町4丁目2番地 令和3年7月12日以降、申告書、申請書等はセンターへ郵送により提出。 | 042-362-4711 | 府中市 調布市 狛江市 |