1.福島県の相続税申告の特徴
福島県の相続関連のデータを紹介します。数字はいずれも令和3年度(2021年度)のものです。
福島県の相続税の申告件数は1,788件で、死亡者数に占める申告割合は7.00%です。また、相続税の課税件数は1,471件で、課税割合は5.76%です。課税割合の全国平均は9.33%ですので、それよりかなり低い値です。
相続1件あたりの納付税額は1,101万円です。全国平均1,820万円と比較すると、こちらもかなり低い値です。
県平均としては、相続税はかかりにくいといえますが、地域によっては、課税割合がやや高めのところもあります。
こちらは、税務署管轄別の相続税データです。
税務署名 | 管轄地域 | 申告 件数 | 課税 件数 | 1件当り 納付税額 (万円) | 申告割合 | 課税割合 |
---|---|---|---|---|---|---|
福島 | 福島市 伊達市 桑折町 国見町 川俣町 | 418 | 350 | 1,073 | 8.31% | 6.95% |
会津若松 | 会津若松市 磐梯町 猪苗代町 会津坂下町 湯川村 柳津町 三島町 金山町 昭和村 会津美里町 | 148 | 120 | 819 | 5.37% | 4.35% |
郡山 | 郡山市 田村市 三春町 小野町 | 382 | 301 | 1,279 | 8.38% | 6.60% |
いわき | いわき市 | 317 | 259 | 1,240 | 7.28% | 5.95% |
白河 | 白河市 西郷村 泉崎村 中島村 矢吹町 棚倉町 矢祭町 塙町 鮫川村 | 71 | 61 | 1,263 | 3.84% | 3.30% |
須賀川 | 須賀川市 鏡石町 天栄村 石川町 玉川村 平田村 浅川町 古殿町 | 81 | 62 | 636 | 4.68% | 3.58% |
喜多方 | 喜多方市 北塩原村 西会津町 | 30 | 27 | 1,160 | 3.08% | 2.77% |
相馬 | 相馬市 南相馬市 広野町 楢葉町 富岡町 川内村 大熊町 双葉町 浪江町 葛尾村 新地町 飯舘村 | 252 | 215 | 738 | 10.45% | 8.92% |
二本松 | 二本松市 本宮市 大玉村 | 73 | 61 | 2,077 | 5.78% | 4.83% |
田島 | 下郷町 檜枝岐村 只見町 南会津町 | 16 | 15 | 457 | 2.87% | 2.69% |
福島県計 | 1,788 | 1,471 | 1,101 | 7.00% | 5.76% |
2.福島県エリア別の相続税の状況
ここでは、福島県の税務署管轄エリア別に、相続税の状況を解説します。
(1)相馬エリア
福島県でもっとも相続税がかかりやすいのは、県庁所在地のある福島市ではなく、相馬市周辺の相馬エリアです。
相馬エリアに含まれる市町村です。相馬市、南相馬市、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、新地町、飯舘村
県東部の太平洋沿岸の「浜通り」と呼ばれる地域の北側にあたります。相馬港などの漁港が点在し、魚介類が豊富にとれる場所です。
課税割合は8.92%で、全国平均よりは少ないですが、県内平均を1.5倍以上、上回っています。一方、1件あたりの納付税額は738万円、ここは県内平均よりも少ないです。
福島県は全体的に地価が低く、相馬市も1平方メートル当り2万円台と低いほうですが、広い土地を持っていたり、相続財産が多いと、相続税が発生しがちになります。
東日本大震災による原発事故の影響を受け、いまもなお、帰宅困難地域が広がっています。そのため、かつての住人のほとんどが戻らない地域もありますが、このような事故がなければ、相続税の課税件数はもっと多かったかもしれません。
(2)福島エリア
次に相続税がかかりやすいのは、福島エリアです。中通りの北部にあたり、福島市、伊達市、桑折町、国見町、川俣町が属しています。
桃や梨などの果物がよくとれるほか、「飯坂温泉郷」や「土湯温泉郷」など東北屈指の温泉街としても有名です。
相続税の課税割合は6.95%で県内2位、納付税額の平均は1,073万円です。
福島市の地価は5万円台/㎡であり、県内では2番目に高いです。市の中心部に土地を所有している場合は、相続税発生の可能性もあります。
(3)郡山エリア
郡山エリアは、同じく中通りにあり、県の中部に位置します。郡山市、田村市、三春町、小野町を含みます。
郡山市は東北新幹線が通るほか、東北自動車道と磐越自動車道が交差するポイントでもあり、交通・物流の要衝となっています。
相続税の課税割合は6.60%で県内3位、納付税額の平均は1,279万円です。納付税額は県内で最も高いです。
郡山市は県内で最も地価が高いエリアであり、6万円台/㎡で、近年さらに地価が上昇しています。
(4)いわき市
いわき市は、浜通りの南部に位置します。ここの税務署だけ、管轄する市町村は「いわき市」一つだけです。
いわき市は夏と冬の気温差が少なく温暖な気候の都市で、各種の野菜が栽培されており、漁業も盛んです。
相続税の課税割合は5.95%で県内4位、納付税額の平均は1,240万円です。
いわき市の地価は4万円台/㎡であり、県内では3番目に高いです。
その他のエリア
下記のエリアについては、相続税の課税割合は低く、2~4%台です。
- 会津若松エリア
- 白河エリア
- 須賀川エリア
- 喜多川エリア
- 二本松エリア
- 田島エリア
ただし、二本松エリアのように、課税割合は低くても、1件あたりの納付税額が2,077万円と高く、全国平均を上回るケースもあります。
一見、相続税が課税されにくい地域でも、山林や田畑を含め広大な土地を所有している場合は要注意です。
3.福島県で相続する際の注意点
福島県で相続するときの注意点をご紹介します。
(1)農業立県だから農業相続には万全の備えを
福島県の農業就業者数は、人口100人当たり4.06人で、47都道府県中7位という農業立県でもあります(※)。
ただし、農業に従事している人は、自分の財産を子供たちに相続するときも、親の財産を受け継ぐときも十分注意してください。「農業相続人」という言葉があるほど、農業従事者の相続は特別なものになります。
農業相続人とは、次の3つの性質を持った人のことです。
- 相続によって農地を取得する
- 相続税の納付期限までに農業を開始する
- その農地で引き続き農業を営むことが認められている
農業相続人は、相続した農地の一部の相続税の納付が猶予されます。相続税の支払いで優遇されるわけです。
しかも、次の3つのいずれかの条件に当てはまれば、猶予された相続税は免除されます。つまり支払わなくてよくなります。
- 農業相続人が死亡して、次の世代に農地が相続された場合
- 農業相続人が農業後継者に農地を生前一括贈与した場合
- 農業相続人が相続申告期限から20年以上農業を続けた場合
農業を引き継ぐ人も、農業を受け継ぐ人も、農業の相続のルールを知っておかないと「将来の大きな得」を取りこぼすことになるので注意してください。
※ 「都道府県別農業就業人口」|都道府県別統計とランキングで見る県民性より
(2)相続放棄をする場合はご注意を
福島県は相続税を課される割合が低く、1人当たり相続税額も低額です。
相続財産が、すべてプラスのものとは限りません。親の借金などを承継する「負の相続」が多くなると相続税の減額要因になります。
借金などのマイナス財産が、プラスの財産を超える場合は、相続放棄を検討することになると思います。相続放棄をした場合には、当然、相続税の納付義務はありませんが、受け取った被相続人の死亡保険金などの「みなし相続財産」が、相続税の基礎控除を上回ることになると、相続税の課税対象になります。
(3)相続税のことは税理士に相談しよう
財産を持っている方も、その財産を相続する方も、もし「相続が近づいている」と感じたら一度税理士に相談しておくことをおすすめします。
税理士は、相談者の利益を最大限にしながら、損失を最小限にする方法を提案してくれます。
特に相続税に関する知識は重要です。相続税のルールを知っているかどうかで、支払う税額は大きくり変わってくるからです。
節税のメリットは、節税の準備をした人だけが受けることができます。節税こそ、正しい税金の支払い方です。
ぜひ税理士に、相続税の節税の仕方を教わってください。
4.福島県の税理士情報:早めにコンタクトを取ろう
東北税理士会の福島支部連合会には、2021年7月現在、493人の税理士が所属しています。
福島支部連合会には、10の支部があり、税理士493人の内訳は次のようになっています。
支部名 | 単位:人 | 全体(493人)に占める割合 |
---|---|---|
福島 | 107 | 22% |
二本松 | 17 | 3% |
郡山 | 135 | 27% |
須賀川 | 24 | 5% |
田島 | 5 | 1% |
会津若松 | 54 | 11% |
喜多方 | 8 | 2% |
白河 | 31 | 6% |
いわき | 90 | 18% |
相馬 | 22 | 4% |
合計 | 493 | 100% |
福島県に占める福島市の人口割合は、16%ですから、福岡支部が占める22%という税理士の割合は、人口割合に比べて高いことがわかります。
また、郡山市の税理士の割合も27%と、郡山市が福島県に占める18%という人口割合を超えています。
このことから、福島県内の税理士は、福島と郡山に集中しており、その他の市町村の税理士が少ないことを意味します。
地方の場合、相続に関する困りごとが発生して税理士の力を借りたい場合でも、すぐに税理士がみつからない可能性があります。
なるべく早いうちから税理士にコンタクトを取っておいたほうがよいでしょう。
相続問題を解決するコツは、「問題」が起きる前に税理士に相談することです。