1.河内長野市の相続税申告の特徴
河内長野市は大阪府の南東端、奈良県と和歌山県の県境に位置しています。
自然に溢れたエリアですが、大阪市へ近く交通アクセスも充実しており、ショッピングモールやレジャー施設もあるため、ベッドタウンとして十分に機能しています。
産業も発達しており、可鍛鋳鉄製品は伝統産業となっています。農業では稲や野菜、果樹が栽培され、南部では林業が盛んです。
ここでは、河内長野市の相続税申告について詳しく解説していきます。
1-1.河内長野市の相続税申告状況
令和元年の相続税申告状況のデータによると、河内長野市を管轄する富田林税務署、大阪府、全国における相続税申告状況は次の通りとなっています。
申告割合 | 課税割合 | 相続1件当 納付税額 | |
---|---|---|---|
富田林税務署 管轄エリア | 10.80% | 8.44% | 2,263万円 |
大阪府平均 | 10.65% | 8.40% | 1,881万円 |
全国平均 | 10.71% | 8.35% | 1,714万 |
1-2.富田林税務署エリアは相続税課税が多い
富田林税務署の課税割合は、全国と大阪府の平均値とほぼ同じ数値となっています。
「平均と同じ」と聞くと安心してしまいがちですが、大阪府平均の8.40%は、全国47都道府県ランキングにおいて12位となっています。
富田林税務署は8.44%であり、さらにその上をいくことから、相続税の課税には十分な注意を払わなければならないエリアであることが分かります。
1-3.高額な納付税額にも要注意
富田林税務署の相続1件当たりの納付税額は2,263万円となっており、全国と大阪府平均を大きく上回っています。
納付税額での全国47都道府県ランキングでは、東京都は3,029万円と突出しているものの、それ以外のすべての都道府県は1,000万円台以下となっています。
したがって、全国平均と同等の金額でも十分に高額であると考えられるため、富田林税務署の2,263万円は非常に高額であるということになります。
相続税を課税されやすいうえに、発生する相続税額も高額になりやすいエリアであるため、計画的な生前対策が重要です。
1-4.富田林税務署は8市町村を管轄している
富田林税務署は富田林市、河内長野市、羽曳野市、藤井寺市、大阪狭山市、河南町、太子町、 千早赤阪村の5市2町1村を管轄しており、上記の数値はこれらの平均値となります。
特に富田林税務署は管轄エリアが8市町村と多いことから、算出された平均値に各市町村の状況が反映されにくくなっているのが特徴です。
5市はいずれもベッドタウンですが、河内長野市、富田林市、羽曳野市の3市は一般的な住宅地で地価も同程度、藤井寺市と大阪狭山市については有名な高級住宅街がある人気の都市で、地価は先の3市に5万円以上の差を付けて突出しています。相続税が課税されやすいのはこの2市でしょう。
残りの2町1村については地価が2、3万円と比較的田舎のエリアになるため、相続税の課税が非常に少なく、平均値を大きく下げていると考えられます。
1-5.河内長野市の課税割合は富田林税務署の平均程度
河内長野市には高級住宅街がなく、富裕層の多いエリアではありません。富田林税務署の数値相当か、あるいは平均を少し下回る程度かもしれません。しかし、相続税について油断できるエリアでないことに変わりはありません。
2.河内長野市の特徴
河内長野市は面積約109.63㎢、人口約10万人の都市です。
府内3番目の広大な市域を擁していますが、その7割は森林で、北部に市街地が集中しています。
難波駅まで約30分、新大阪駅まで約45分と都心へのアクセスが良く、ベッドタウンとして機能しており、交通利便性がありながら田舎暮らしが叶う都市として人気を得ています。
それでは、河内長野市の特徴とそれが相続税課税へどのように影響しているのかを見ていきましょう。
2-1.河内長野市のニュータウン群
河内長野市の優れた立地と広大な未利用地を活用するため、1961年から各地区でニュータウン造成が始まりました。
河内長野市の場合は、「多摩ニュータウン」のような大規模なニュータウンではなく、多くの企業がそれぞれ各地に小規模なニュータウンを造成しています。
60年が経過した現在では、多くの相続が発生しているエリアであり、優良住宅地もあることから相続税の課税がなされる可能性があります。
2-2.優良住宅街が多い
河内長野市には、超富裕層が居住する高級住宅街はありませんが、優良住宅街は次の通り数多くあります。
市内の地価は大阪府にしては低めですが、このような住宅街の一部では突出した金額になることがあるため、土地を所有する場合は相続税が課税される可能性があります。
- 天野町
- 石見川
- 大師町
- 千代田南町
- 日東町
- 南貴望ケ丘
- 清見台
- 美加の台
2-3.兼業農家が多い
河内長野市は、肥沃な土壌と内陸性の湿潤温暖な気候を生かした、稲や野菜、みかんなどの果樹栽培が盛んに行われています。
兼業農家が主流となっていることから、都心部へ通勤して得る高所得と農業での所得があることによって、一般的なサラリーマンよりも収入が多く、結果として相続財産が多くなりやすくなります。
畑などの事業用資産が相続財産になる点には注意が必要です。
2-4.林業は山林も相続財産になる
河内長野市は林業も盛んで、良質なスギやヒノキは「おおさか河内材」としてブランド化に成功しています。
林業を行っている人は、山林をいくつも所有しているのが一般的であり、そのすべてが相続財産になります。
山林の相続税評価額は、その固定資産税評価額に倍率を乗じて計算されます。
山林の固定資産税評価額は1㎡あたり数十円である場合が多いですが、相続税評価額になるとその数倍以上になるため高額になる可能性があります。
特に河内長野市の場合には、都心に程近い立地にあることから、その可能性が高まります。
2-5.河内長野市の地価
河内長野市の平均地価は1㎡あたり7万1,087円で、大阪府全43位中31位の金額となっています。
地価の変動率は市内全域で下落傾向が強くなっており、大規模な再開発などがない限りは、相続時の評価額が跳ね上がっているということは考えにくいでしょう。
市内で最も地価が高いエリアは市北部の千代田駅で、1㎡あたり9万円弱、隣駅の河内長野駅が8万円で2位となっています。
河内長野市の地価は、大阪市に近い北端部ほど高くなる傾向が見えます。
千代田駅から150メートルほどのところにある優良住宅街、千代田南町の一部では15万円を超える地点もあることから、このエリアにマイホームを構えている人は評価額に注意しましょう。
反対に最も地価が低いエリアは、南部の山に近い美加の台で、1㎡あたり3万円となっています。
優良住宅街に入ってはいますが、地価自体は低いエリアになります。不動産だけで相続税が課税される可能性は低いと考えられます。
3.河内長野市の税理士情報
全国には80,163人(令和4年3月末日時点)の税理士がおり、そのうち大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、和歌山県、滋賀県の近畿2府4県の税理士が所属している近畿税理士会には15,219人がいます。
一方、河内長野市を管轄している近畿税理士会富田林支部には145人の税理士が所属しています。
近畿税理士会 富田林支部内訳 | 人数 |
---|---|
河内長野市 | 40人 |
富田林市 | 29人 |
大阪狭山市 | 16人 |
羽曳野市 | 27人 |
藤井寺市 | 24人 |
太子町 | 4人 |
河南町 | 4人 |
千早赤阪村 | 1人 |
合計 | 145人 |
高級住宅街の数や地価から考えると、税理士は大阪狭山市や藤井寺市に集中しているのかと思いきや、意外にも河内長野市が最も多い結果となっています。
ただその差は10人程度となっています。
富田林税務署の令和元年における相続税申告件数は568件であったことから、税理士1人あたりの相続税申告数は0.25件になります。
大阪府全体では0.95件(日本税理士会連合会 平成30年5月発行税理士界)であり、大阪市のベッドタウンとなっている都市では0.3件台が多いことからも、税理士が不足している環境であると考えられます。
しかし、河内長野市は、税理士が多く事務所を構える都心部に程近いため、過度な心配は不要です。
それでは最後に、河内長野市での税理士探しについて解説します。
3-1.市内の税理士探しではより早めの行動が大事
河内長野市の税理士数は40人です。超富裕層の数は少ないことから、相続税に強い税理士はそれほど多くはないかもしれません。
相続税に強い税理士の目安は、年間10件以上の相続税申告を行っていることです。限られた税理士数になるため、早めの行動がカギになります。
3-2.大阪市の税理士が安心
河内長野市は大阪市のベッドタウンとして機能しています。難波駅まで30分程度で行くことができ、日常的な往復が可能な立地にあります。
大阪府の超富裕層が集中して居住している大阪市は、5,000人超の税理士がおり、高額で複雑な相続税申告が日々行われていることが想定されます。
相続財産が多い、事業承継が絡む相続などには、相続税に強い税理士の力が必須になるため、大阪市での税理士探しをおすすめします。
3-3.堺市もおすすめ
居住地によっては大阪市まで気軽に行けない、大阪トップレベルの税理士に依頼するまでもないという場合には、より近い堺市での税理士探しをおすすめします。
堺市には大阪市と同様に高級住宅街が数多くあり、レベルの高い相続税申告がたくさん行われていることが考えられます。