大阪市の北部と隣接している堺市。大阪都市部のベッドタウンとして人気を集めるこの地域にはどのような相続税の特徴があるのでしょうか?地価や所得の状況から解説します。
1.堺市の相続事情
堺市の2016年の相続税申告件数は813件、実際に課税された件数は635件です。相続1件あたりの納付税額は約1,896万円、課税割合は7.81%となっています。大阪府の平均データでは、1件あたりの納付税額は約1,944万円、課税割合は8.41%です。
平均データと堺市のデータを比較すると、1件あたりの納付税額と課税割合、どちらも平均をやや下回っています。大阪府では1件あたりの納付税額や課税割合が二極化しており、高いところと低いところの差が大きいです。
つまり、堺市のような中間の数字では平均を下回ってしまうことが多いのです。そのため、堺市は平均以下の相続税の課税状況と捉えると失敗します。二極化が進む大阪府内でも高額な課税が行われている地域だと考え、相続税への備えておくことが必要です。
2.堺市の地価事情
堺市の相続税の特徴を、課税対象となりやすい土地の価格から考えていきましょう。
2-1.代表的な地域と地価
2-1-1.北区
堺市の北東部に位置する北区は、大阪市のベッドタウンとして機能しています。北区は1987年の市営地下鉄御堂筋線の開通により、大阪市の中心部へのアクセスが可能になりました。この鉄道路線の拡充によって、一気に北区の宅地化が進みました。
そのため、御堂筋線の沿線にはマンションが多く建設されており、堺市で最も多い人口を誇るようになりました。また、現在でも区の東部には農地が存在しています。しかし、市街化調整区域に指定されていることから、将来的には商業地や住宅地などへ転用されることが決定されています。
北区の地価平均は約18万1,200円、最も高額なのは約23万1,400円の三国ヶ丘です。三国ヶ丘は北区と堺区の境界にあたる部分で、堺区側に位置する地域です。この地域は、大阪市の中心部へ乗り換え無しでアクセスできる地域です。ベッドタウンとして機能する北区の中でも特に人気を集めていると考えられます。
さらに、北区の地価は2017年度よりも4.90%上昇しています。三国ヶ丘の変動率は最も高く、7.14%の上昇を見せています。加えて、中百舌鳥や堺市駅といった三国ヶ丘へアクセスが容易な地域の地価も5%以上上昇しています。したがって、三国ヶ丘を中心とした路線が北区の中で人気を集めている地域だといえるでしょう。
2-1-2.堺区
北区の西部、堺市の北西部に位置する堺区。市の名までが付けられているように、区の中でも中心的な存在となっています。市役所や裁判所などの行政機関は、この堺区に集中して建設されています。
堺区の沿岸部は主に埋立地となっており、工業地帯が広がっています。石油化学や金属などを扱う工場が多く、大阪府の製造品出荷額の約14%を占める重要な地域です。そのため、堺区では中心地の商業以外にも工業の経済活動が活発に行われています。
堺区の地価平均は約17万5,200円、最も地価が高額なのは北区と同じ約23万1,400円の三国ヶ丘です。この地域は大阪市に近いだけでなく、北区から北上する際に通過します。つまり、2つの区にまたがる重要な路線であることから、地価が高くなっています。
また、三国ヶ丘からさらに北上した堺東駅や堺市駅の地価は、区内で2位と3位を誇る重要な地域です。特に、堺東駅の西側には行政機関や商業施設が多く建設されているため、区の中心地域として機能しています。
2-1-3.東区
北区の北西、堺区の中等部に位置している東区。東区はもともと田園地帯であったところへ市街地や住宅地が整備されたため、田園都市として発展しています。特に、別荘地として開発された地域もあり、閑静な住宅街として人気を集めています。
東区の地価平均は約13万9,100円、最も高額な地域は約14万円の白鷺です。白鷺駅を中心としたこの地域は、東区と北区の境界になっている他、中区との境界にもなっています。つまり、3つの地域の交通拠点となっていることから地価が高額になっていると考えられます。
また、白鷺駅は三国ヶ丘駅へと繋がっています。そのため、東区から大阪市の中心部へ向かうための重要な路線です。景色の良い住宅街とベッドタウンとしての機能、どちらも兼ね備えた機能的な地域のため人気が高くなっているのです。
東区の地価は2017年よりも0.75%上昇しており、白鷺は2.31%の上昇を記録しています。さらに、他の地域では1%を下回りますが、各地で地価の上昇が見られています。全域で地価の上昇が起きているため、今後も地価が上昇する可能性が高い地域です。
2-2.堺市の地価の特徴
堺市全体の地価平均は約14万1,500円で、北区が市内の中で最も地価が高額な地域です。2位が堺区、3位が東区と続いており、これらの地域では2017年よりも地価が上昇しています。堺市全体でも地価が1.94%上昇していますので、ベッドタウンとしての人気の高さがうかがえます。
ただ、地価が上昇しているのは北区など中~北部に限られており、南部では地価の下落が起きています。中でも、南区や美原区はもともと地価が低い地域なため、より低い地価へと変動しています。
大阪市が堺市の北部にあるため、南部へ行くほどアクセスしにくくなります。さらに、南区や美原区では鉄道路線が限られているため、アクセス手段も限られます。こうした背景から区内の地域による地価の差がはっきりと現れています。
また、堺市の地価は大阪府内で14位と、ほぼ中位に位置しています。ただ、地価の上昇率では大阪市内の中心部に匹敵するほどの変動が起きています。そのため、今後の地価の上昇率によっては順位を上げる可能性があり、その変動には注意しておかなければいけません。
3.堺市の所得と富裕層
続いて、所得から堺市の相続税について考えていきましょう。堺市の所得税の納税者数は約34万3,000人、課税対象所得は約1兆1,461億円です。一人あたりの所得は約334万円になります。この所得金額は大阪府内で12位と上位に位置しています。
一方で、大阪府では所得金額が400万円を超える地域があります。こうした地域との差は大きいため、所得金額は高額ですが、府内全体を通してみるとそこまで高額ではありません。ただし、他の自治体と比較すると全国で200位以内に入る金額ですので所得が低いとはいえないのです。
また、地価と併せて考えると、地価の高い北区や堺区では高所得者が多いことが考えられます。そのため、堺市の北部と南部で所得にも差が現れ、北部になるほど富裕層が多いといえるでしょう。
さらに、区内の経済活動を見てみると、堺区は行政機関や工業、所業が活発に行われています。大阪市中心部への通勤者も多いことを考えると、経済の面から見ても富裕層は堺区や周辺の北区に集まりやすいのです。
4.堺市の税理士事情
堺市の北部では地価と所得が高額なケースが多いため、高額な相続税が課税されやすいです。そこで、相続税への有効な対策を講じるために必要な、堺市の税理士事情も調べておきましょう。
堺市内に在籍している税理士数は363名です。堺市の1年間の相続税申告件数は813件、課税件数が635件ですので、やや不足していると考えられます。ただ、課税件数の50%以上の税理士が在籍していることから、依頼できない状況に陥ることはないでしょう。
また、堺市は北部と南部で地価に差が現れています。そのため、地価の適切な評価を行うことが節税へと繋がります。そこで、不動産鑑定士などと連携している土地評価に強い税理士を見つけることが大切です。
堺市の相続税は大阪府内では平均以下の数字です。しかし、全国的に見た場合には対策が必要なほど高額な課税が行われています。油断せずに的確な対策を講じて、少しでも多くの遺産を手元に残しましょう。
【参考】堺市内の相続関連機関一覧
堺市内の相続に関連する各種機関の連絡先一覧をまとめました(2018年12月現在)。ただし、変更される可能性があることをご了承ください。
機関名 | 住所 | TEL |
---|---|---|
堺税務署 | 〒590-8550 大阪府堺市堺区南瓦町2番29号 堺地方合同庁舎 | 072-238-5551 (代表) |
泉北府税事務所 | 〒590-8558 大阪府堺市堺区中安井町3-4-1 | 072-238-7221 (代表) |
堺市役所 | 〒590-0078 堺市堺区南瓦町3番1号 | 072-233-1101 (代表) |
大阪法務局 堺支局 | 〒590-8560 大阪府堺市堺区南瓦町2番29号 堺地方合同庁舎 | 072-221-2756 (代表) |
堺公証役場 | 〒590-0076 大阪府堺市堺区北瓦町2-4-18 現代堺東駅前ビル4階 | 072-233-1412 (代表) |
大阪家庭裁判所 堺支部 | 〒590-0078 大阪府堺市堺区南瓦町2番28号 | 072-223-7001 |
大阪司法書士会 | 〒540-0019 大阪府大阪市中央区和泉町1丁目1番6号 | 06-6941-5351 |
近畿税理士会 堺支部 | 〒590-0955 大阪府堺市堺区宿院町東4丁2番10号 堺納税会館3階 | 072-223-0191 |
大阪弁護士会 | 〒530-0047 大阪府大阪市北区西天満1-12-5 | 06-6364-0251 |