相続税における土地の評価方法:路線価方式と倍率方式
相続税や贈与税では、土地の評価額は売買金額ではなく相続税評価額と呼ばれる特殊な計算方法によって決まります。ここでは、…[続きを読む]
宅地・家屋は利用の仕方によっていくつかに分類され評価額が異なります。自分が利用している場合よりも、他人に貸している場合には、利用方法が制限されて評価が低くなります。
目次
宅地は主に、①自用地、②借地権、③貸宅地、④貸家建付地の4つに分類されます。
Aさんの土地にAさんの家がある場合の土地です。つまり、土地の所有者が自分のために利用している宅地のことです。これを「自用地」といい、路線価方式または倍率方式で計算された金額は、自用地の評価額です。他の種類の宅地は、この自用地の評価額をもとにして計算します。
Aさんの土地をBさんが借りているある場合のBさんの権利(借地権)です。つまり、借地権が設定されている場合の宅地の賃借権(土地を使用できる権利)のことです。
「借地権割合」とは、借地権の割合のことであり、その土地が接する道路ごとに決まっています。路線価図に記号で明示されています。
町の中心部や商業地区では、A:90%、B:80%が多く、住宅地では、C:70%、D:60%が多いです。
国税庁が発表している「財産評価基準書」によって見ることができます。
【参考外部サイト】国税庁:路線価図、評価倍率表
Aさんの土地をBさんが借りているある場合のAさんの土地です。つまり、借地権が設定されている宅地のことです。「底地」とも言われます。
評価額=自用地評価額×(1-借地権割合)
元の土地の評価額から、借地権分の金額を引いたものが、貸宅地の評価額になります。
Aさんの土地にAさんの家があり、Cさんが借りている場合のAさんの土地です。つまり、自分の土地にアパートなどを建てて他人に貸している場合の宅地のことです。
「借家権割合」とは、借家権(家を借りる権利)の割合のことであり、一律で30%です。
「賃貸割合」とは、全体のうち実際にどのくらい借りているかの割合です。たとえば、10室あるアパートで5室埋まっており残りの5室が空いていたら賃貸割合は50%です。
元の土地の評価額から、家を借りている人の権利に相当する金額を引いたものが、貸家建付地の評価額になります。
やや複雑になりますが、②と④の複合パターンです。Aさんの土地をBさんが借りていて、その土地にBさんの家があり、Cさんが借りている場合のBさんの土地のことです。つまり、借地上にアパートなどを建てて他人に貸している場合の宅地のことです。
元の土地の評価額に借地権割合をかけ、家を借りている人の権利に相当する金額を引いたものが、貸家建付借地権の評価額になります。
まとめると、次の表のようになります
【宅地の分類と評価】
分類 | 利用形態 | 評価額 |
---|---|---|
自用地 | 自分の土地 | 路線価方式または倍率方式で計算された評価額 |
借地権 | 借りている土地 | 自用地評価額×借地権割合 |
貸宅地 | 貸している土地 | 自用地評価額×(1-借地権割合) |
貸家建付地 | アパートを貸している土地 | 自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合) |
貸家建付借地権 | 借りている土地の上に アパートを建て貸している土地 | 自用地評価額×借地権割合×(1-借家権割合×賃貸割合) |
土地を自分だけで利用しているよりも、土地自体を他人に貸す、または、アパートを建てて他人に貸すほうが、評価額が安くなります。
そのため、現在利用していない土地は放っておかずに、アパートを建てて貸すことで、土地の評価額が下がり相続税の節税につながります。
ただし、注意が必要なのが賃貸割合です。アパートを建ててうまく全ての部屋が埋まれば良いですが、仮にまったく埋まらず賃貸割合が0であった場合、自用地と同じ評価額になってしまいます。アパートを建てると、初期費用として建設資金が必要であり、建てた後も管理費と固定資産税等がかかりますので、十分にご注意ください。
自分の土地にアパートを他人に建てて貸している場合の土地は貸家建付地となり、その評価額を計算してみます。
自用地の評価額を1億円、借地権割合:70%、借家権割合:30%、賃貸割合:100%とすると、評価額は次のようになります。
評価額 = 1億円×(1-0.7×0.3×1) = 7,900万円
自分だけで利用している場合に比べて、2,100万円分だけ評価額が小さくなります。
上記の借地権や貸宅地は土地を有償で貸し借りしている場合ですが、土地を無償で貸すことがあります。たとえば、親が子供に無償で土地を貸して、子供がその上に自分の家を建てる場合です。これを「使用貸借」といいます。
借りている側は土地を無料で利用させてもらっているだけで、お金に換算できる権利はありませんので、借りている側の評価額は0円、貸している側の評価額は、自用地(貸し借りがない場合)と同じ評価額となります。
【使用貸借による土地の評価】
評価額 | |
---|---|
貸主 | 自用地としての評価額 |
借主 | 0円 |
【用語】賃貸者と使用貸借
お金を支払って貸し借りすることを「賃貸借」、無償で貸し借りすることを「使用貸借」といいます。
家屋(家、住宅)は、①自用家屋、②借家(貸付用建物)の2つに分類されます。
Aさんの家を自分で使用している場合のAさんの家屋です。つまり、自分のために利用している家のことです。これを「自用家屋」といい、固定資産税評価額と同じになります。
Aさんの家をCさんが借りている場合のAさんの家屋です。つまり、自分の家を他人に貸している場合の家のことです。
元の家屋の評価額から、家を借りている人の権利に相当する金額を引いたものが、借家(貸付用建物)の評価額になります。
【家屋の分類と評価】
分類 | 利用形態 | 評価額 |
---|---|---|
自用家屋 | 自分の家 | 固定資産税評価額 |
借家(貸付用建物) | 借している家 | 自用家屋評価額×(1-借家権割合×賃貸割合) |
自分の家を他人に建てて貸している場合の家は貸家(貸付用建物)となり、その評価額を計算してみます。
自用家屋の評価額を5,000万円、借家権割合:30%、賃貸割合:100%とすると、評価額は次のようになります。
評価額 = 5,000万円×(1-0.3×1) = 3,500万円
自分だけで利用している場合に比べて、1,500万円分だけ評価額が小さくなります。
賃貸アパート・マンションでは、同じ人が永遠に借りることはなく、前の賃借人が解約してから、リフォーム・修繕などを行い、新しい賃貸人を募集して契約するまでに、空き室となる期間が必ず存在します。
もし、たまたま入れ替えで空き室となっている時に相続が発生しまったらどうなるのでしょうか?
この場合、相続発生時に空き室となっていたのが入れ替えなど臨時的なものであれば、賃貸中とみなされて賃貸割合が計算されます。たまたま一部屋が新しい賃貸人の募集中のために空いていたとしても、賃貸割合は100%になります。
ただし、賃貸住宅が戸建ての場合は、当てはまりません。賃貸割合という概念はアパート・マンションなど共同住宅のためのものであり、戸建てには適用されないからです。賃貸用の戸建て住宅が相続発生時にたまたま空き室になっていたときは、借家ではなく自用家屋として扱われますので、ご注意ください。