雑種地と宅地での税金(固定資産税・相続税)の違い

雑種地 宅地

私たちの周りには数多くの雑種地が存在します。宅地と思っていた土地が、調べてみると雑種地だったということもあるのです。

その雑種地を相続するとなると、どのように評価すればいいのでしょうか。また、宅地との違いはどのように見つけるのでしょうか。今回は、「雑種地」と「宅地」の違いについて、固定資産税と相続税の税金に焦点を当てて解説していきます。

1.雑種地とは

「雑種地」という字から、「特定の用途が定まっていない土地」という、なんとなくのイメージは沸きますが、どのように定義づけられているのでしょうか。

1-1.どのような土地が雑種地になるのか

登記簿に記される地目の区分は、不動産登記規則99条によって、下記のように23種類が定められており、その中で雑種地は「いずれの地目にも該当しない土地」とされています。

登記簿上の地目の区分
田、畑、宅地、学校用地、鉄道用地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、墓地、境内地、運河用地、水道用地、用悪水路、ため池、堤、井溝、保安林、公衆用道路、公園、雑種地
(23種類)

一方、固定資産税や相続税の財産評価をするうえでは、下記の9種類の区分で評価を行います。

固定資産税・相続税の財産評価上の地目の区分
田、畑(あわせて農地)、宅地、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、雑種地
(9種類)

典型的な例としては、駐車場、資材置き場、ゴルフ場、公園などは雑種地として取り扱われることがほとんどです。

その他にも、更地や何年も使用していない農地(休耕地)も、雑種地と判断されることがあります。

固定資産税や相続税の評価上の地目は、登記簿上の地目とは関係なく、その年の1月1日時点の現況の地目になります。

1-2.雑種地の調べ方

その土地が雑種地であるかどうかを調べるには、次の方法があります。

  • 現地に直接確認しに行く
    土地を自分の目で見て、どのような使われ方をしているのか確認します。最も確実な方法です。
  • Googleマップのストリートビュー等で確認する
    土地が遠方にあったり、忙しくて見に行く時間がないという場合には、Googleマップのストリートビュー等を利用すると、現地に行ったような感覚で土地を見ることができます。 その他にもYahoo!地図の航空写真などを利用する方法もあります。

上の2つの方法でも、現状が分からない場合は固定資産税の課税地目を参考にするのも有効です。

1-3.固定資産税と相続税の評価方法は異なる

固定資産税は市区町村、相続税は国が課税する税金です。そのため、財産の評価方法は、一部共通部分もありますが、基本的には異なります。

地目、地積、周辺の土地の状況などを考慮に入れながら評価しますが、固定資産税は、それぞれの市区町村によって、方法が異なります。

2.雑種地の固定資産税の評価方法

固定資産税評価額は、市区町村から送付されてくる固定資産税納税通知書を確認するほか、固定資産課税台帳を閲覧するか、固定資産評価証明書を取得することで確認することができます。

まずは、固定資産税の評価方法について解説しましょう。

2-1.現況調査によって決定

実は、この税額の計算のもとになる地目は不動産登記上の地目ではなく、市区町村の担当者が現況調査を行って判断した地目により計算されるのです。現況調査は3年に一度の頻度で行われます。

よって、登記上の地目が「雑種地」となっていても、「宅地」であると判断された場合には、宅地の評価計算による固定資産税が通知されます。
したがって、登記変更によって、登記簿上の地目を宅地から雑種地に変更しても、固定資産税上の評価には影響しません。

ただし、膨大な量の土地を1つ1つ全て調査して回ることは難しいため、航空写真のみで判断したりする場合もありますので、絶対に現況で判断されるとは限りません。

2-2.雑種地の評価方法

その土地が「雑種地」と認定された場合、大きくわけて2つの評価方法があります。

①売買実例地比準方式

その雑種地と類似の雑種地が存在し、実際に売買された価格(売買実例価格)があれば、それを基に評価額を算出します。

②近傍地比準方式

売買実例価格がない雑種地の場合は、その雑種地の位置、利用状況等を考慮して、付近の土地の価格を基にして(比準して)評価額を算出します。

雑種地が宅地に隣接していれば「宅地」に比準して、農地に隣接していれば「農地」に比準して評価します。

利用状況に応じた評価になりますので、たとえば、駐車場の周囲にフェンス等がなく、隣接した宅地とほぼ一体になっている場合は、「宅地」として評価される可能性が高いです。一方、駐車場の周囲にフェンスがあり、隣接した宅地とつながっていなければ、宅地よりは低い金額の評価になる可能性があります。

宅地としての評価額に対して、どの程度の割合で評価するかは、それぞれの市区町村によって異なります。たとえば、淡路市では、「淡路市雑種地基準・宅地比準割合表」と基準が定められており、一部を抜粋すると、下記のようになっています。

  • 駐車場(舗装有):宅造地 ⇒ 60%
  • 駐車場(未舗装):ソーラーパネル設備 ⇒ 50%
  • 資材置き場(舗装有) ⇒ 40%
  • 平野部荒地(路線価区域):資材置き場(未舗装) ⇒ 30%

2-3.雑種地と宅地、固定資産税はどちらが高い?

すでに述べたように、雑種地がどのように評価されるかで異なります。

雑種地が宅地として評価されると、宅地とほぼ同等額の固定資産税となります。宅地の上に住宅が建っていれば、固定資産税が6分の1に軽減される「小規模住宅用地の特例」を受けられますが、駐車場であれば、軽減措置を受けられませんので、かなり不利になってしまいます。

一方、自治体によっては、雑種地の利用用途によって、宅地としての評価額に一定の割合をかけて減額してくれますので、通常の宅地の固定資産税よりも低くなります。

宅地であっても評価が異なる

宅地であっても全ての宅地が同一の評価方法というわけではありません。その土地が市街地に近いかどうかなどの立地条件や、土地形状などからそれぞれ評価されます。

小さな土地であっても市街中心部に近い場合には評価額は高くなりますし、広い土地でも田舎であれば低くなり、それに応じた固定資産税が課されます。そのため、宅地と他の地目の評価額を一概に比較することは難しいです。

3.雑種地の相続税の評価方法

3-1.現状で判断する

土地の相続税評価額は、相続発生時における使用状況により判断されます。特に、雑種地の評価単位はその土地の利用目的で決まります。不動産登記上の地目は関係ありません。

財産評価は、相続財産に土地などの不動産が含まれる場合には非常に難しい計算となります。専門知識がない場合には、税理士に依頼するのが無難でしょう。

また、その判断と評価額の計算は依頼した税理士が行うため、税理士によって金額が異なってきます。依頼する場合には、相続税に長けた税理士を選ぶことをおすすめします。

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3-2.評価計算の方法

通常、土地の評価は、路線価方式か倍率方式で決定されます。しかし、雑種地は土地評価の倍率が定められていません

そこで原則として、その雑種地の現況に似ている付近の土地について評価した1㎡当たりの価額をもとにして、その土地と評価対象地である雑種地との位置、形状等の条件の差を考慮して評定した価額に、その雑種地の地積を乗じて評価します。

雑種地としての評価方法があるわけではなく、その雑種地と類似している近くの土地に準じた評価となります。雑種地はその状況に応じて、評価上は宅地や山林など様々な土地に成り代わるのです。

【詳細】国税庁HP 第10節 雑種地及び雑種地の上に存する権利

3-3.市街化調整区域内にある場合の評価

雑種地の土地評価をする際に、その土地が市街化調整区域内(※)にある場合は、その雑種地の周囲の状況に応じて、下記の表を使用します。詳細は、下記の国税庁HPを参照してください。

※都市計画法に基づき指定されている、都市計画区域の区域区分

しんしゃく割合表図

【引用】国税庁HP 市街化調整区域内にある雑種地の評価

4.評価を下げる方法

高い評価額になりそうな土地をそのまま放置して、高い税金を払う必要はありません。次の方な節税方法があります。

4-1.賃貸物件を建てる

税金が最も高い地目は「宅地」です。雑種地を所有している場合には、宅地と判断されないことが重要です。
対策としては、太陽光発電の設置、駐車場を設けるなどが効果的です。

また、市街地に近いなどの理由で高く評価されてしまう土地の場合には、賃貸居住用建物を建てて収入を得る方法も有効です。
土地上に居住用の建物が建っていると、それだけで土地の評価額が1/61/3に軽減され、更に相続税では賃貸割合なども考慮され評価が下がります。そのうえ賃貸収入も入るので、納税資金も用意することができます。

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4-2.小規模宅地等の特例(相続税)

小規模宅地等の特例とは、相続財産の中に、被相続人や被相続人と生計一であった家族の居住用または事業用に使っていた一定要件を満たす土地がある場合には、その土地の評価額を最大で8割も減額できる制度です。

この特例の適用を受ければ、大きく評価額を下げることができ、相続税を節税することができます。

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まとめ

雑種地であろうが宅地であろうが、いずれの税金も現況により判断されます。地目が何であろうと関係ないのです。

思いもよらない評価額となり、突然高額な税金を納めることにならないように、雑種地を所有している人は、税理士などに相談しながら、事前に対策を行っておくと安心です。


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監修
税理士相談Cafe編集部
税理士ライター、起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)、行政書士資格者を中心メンバーとして、今までに、相続税や相続周りに関する記事を500近く作成(2023年4月時点)。
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