泉佐野市の相続税申告の特徴
泉佐野市は大阪市と和歌山市のほぼ中間地点に位置しており、日本を代表する世界の玄関口である「関西国際空港」がある都市です。
交通の利便性や、豊かな自然と豊富な水に恵まれ、商業・工業・農業・漁業がバランスよく栄えてきましたが、関西国際空港の開港に伴う人口増加によって、商業やサービス業が主な産業になってきています。
世界を飛び回る富裕層には優れた居住地であると言えますが、相続税課税の実態はどうなっているのでしょうか。
今回は、泉佐野市の相続税申告について詳しく解説していきます。
1-1.泉佐野市の相続税申告状況
令和元年の相続税申告状況のデータによると、泉佐野市を管轄している泉佐野税務署、大阪府、全国における相続税申告状況は次の通りとなっています。
申告割合 | 課税割合 | 相続1件当 納付税額 | |
---|---|---|---|
泉佐野税務署 管轄エリア | 6.94% | 5.53% | 938万円 |
大阪府平均 | 10.65% | 8.40% | 1,881万円 |
全国平均 | 10.71% | 8.35% | 1,714万 |
1-2.相続税課税の少ないエリア
泉佐野税務署の課税割合は5.53%で、大阪府と全国の平均値を大きく下回る結果となっています。
大阪府内の税務署31ヶ所のうち、下から4番目に低い数値となっており、大阪府内では相続税の課税が少ないエリアであるといえるでしょう。
1-3.納付税額も少ない
泉佐野税務署の相続1件当たりの納付税額は938万円となっており、大阪府平均のちょうど半分程度となっています。
大阪府内で納付税額が1000万円を切っている税務署は2ヶ所しかないことから、泉佐野税務署エリアは相続税について課税が起こりにくく、起こったとしても相続税額が少ない場合が多いということになります。
1-4.泉佐野市のみの課税割合は高い可能性
泉佐野税務署は泉佐野市の他にも泉南市、阪南市、熊取町、田尻町、岬町の3市3町を管轄しています。
上記の数値はこれらの平均値であり、6つもの市をまたいだ管轄であることにより、各市町の状況は薄れた数値となっています。この数値のみで泉佐野市の相続税の課税を考えてしまうのは危険でしょう。
3市3町の中で最も栄えているのは泉佐野市です。
むしろ泉佐野市以外は、自然の多い田舎エリアになるため、相続税の課税の多くは泉佐野市で発生していると予想されます。
泉佐野市のみでの課税割合は公表されていませんが、他の市町の数値がかなり低いと考えられることから、泉佐野税務署の5.53%よりも高い可能性があります。
納付税額についても同様のことがいえ、他の市町が平均値を下げている分、泉佐野市のみでは高いはずです。
2.泉佐野市の特徴
泉佐野市は、大阪府南部の泉南地域に位置しており、沿岸部から和歌山県にかけて南北に長い形をしています。
面積は約56.51平方キロメートル、人口は約10万人となっており、10年ほど前までは人口増加傾向にありましたが、ここ数年は減少が続いています。
瀬戸内式気候に属していることから、1年を通して温暖であり、降水量も比較的少ないため、暮らしやすい環境の街です。
沿岸部には日本で3番目に高いビル「SiSりんくうタワー」がそびえたち、「りんくうプレミアムアウトレット」には、県内外から多くの買い物客が訪れます。
充実した商業施設がある反面、市南部にある和泉山脈をはじめとして、山、海、畑などの自然が多く残されており、高い建物が少ないため、のどかな雰囲気が漂う街です。
大阪都心部へ難なく通勤できることから、魅力あるベッドタウンとしても人気があります。
それでは、泉佐野市の詳しい特徴とそれが相続税課税へどのように影響しているのかを見ていきましょう。
2-1.電車でも車でも主要都市へ好アクセスの街
市内には、JR阪和線、関西空港線、南海電気鉄道南海本線、空港線の4つの路線が走っており、中心駅である泉佐野駅は、南海本線唯一の全種別停車駅となっています。
関西国際空港駅までは10分程度、難波までは30分程度、梅田までは50分程度です。
道路は阪神高速、阪和自動車道、関西空港自動車道が縦横に通っており、インターチェンジも多いため車でのお出かけにも不便がありません。和歌山市にも1時間程度で行くことができます。
ただ、路線や高速道路は臨海部に集中しているため、南部の山側には路線がなく、車必須のエリアになるでしょう。
2-2.優良住宅街が多い
泉佐野市には、大豪邸が立ち並んでいるような目立つ高級住宅街はありません。しかし、大宮町、東佐野台、南中樫井、松風台、高松北、泉ケ丘、下瓦屋、南泉ケ丘などは、富裕層が多く居住しているエリアとなっています。
2-3.第1、2次産業も盛ん・事業用資産の相続に注意
泉佐野市は、農業、漁業の第1次産業、製造業などの第2次産業も盛んに行われています。
農業では泉州の土壌でしか育たないといわれている「水なす」、漁業では大阪湾のエビやカニなどの豊富なエサで育つ「泉だこ」が有名です。
製造業では、タオル発祥の地として、全国シェア約4割を占めるタオル製造が行われています。
そこで、個人事業主として事業を行っている方は、事業用資産も相続財産になることに注意しなければなりません。
畑にしている土地や、トラクター、船、漁網、工場建物、製造機械なども相続財産となります。
特に船は購入金額が非常に大きく、億を超える資産です。購入したばかりで相続が発生してしまうと、相続税評価額も購入金額に近い金額になる可能性があります。
個人事業を行っている方は、生前に一度は相続財産の総額を把握しておき、金額の大きな資産を購入するタイミングにも気を付けましょう。
2-4.泉佐野市の地価
泉佐野市の平均地価は1㎡あたり6万6781円で、大阪府全43位中32位となっています。
泉佐野税務署の同管轄内にあるその他の市町の地価は次の通りとなっており、泉佐野市が頭1つ抜き出ていることからも、相続税課税の中心地であることが分かります。
市名 | 1㎡当り | 大阪府での ランキング |
---|---|---|
熊取町 | 5万4416円 | 35位 |
田尻町 | 5万6025円 | 34位 |
泉南市 | 4万5145円 | 37位 |
阪南市 | 3万9405円 | 35位 |
岬町 | 2万1981円 | 42位 |
市内で最も地価が高いエリアは中心駅である南海本線泉佐野駅周辺で、1㎡あたり8万円となっています。
中でも駅がある地点では22万円にのぼることから、駅近マンションにお住いの場合には、不動産評価額にも注意が必要となります。
反対に、最も地価が低いエリアは山側にある長滝駅周辺で、1㎡あたり4万円となっています。
臨海部の市街地に比べて半分以下の地価にはなりますが、駅から離れて山ギリギリにある地点でも4万円を維持しており、市内の地価に大差はないといえるでしょう。
泉佐野市で不動産課税に注意が必要になるのは、地価が唯一抜きん出ている泉佐野駅に直近の不動産です。
これ以外のエリアについては、一般住宅を所有しているくらいでは相続税が課税される可能性は低いと思われます。
3.泉佐野市の税理士情報
全国には令和4年3月末日時点で80,163人の税理士がおり、そのうち近畿税理士会(大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、和歌山県、滋賀県)は15,219人となっています。
さらにそのうち、泉佐野税務署が管轄している3市3町の税理士が所属している近畿税理士会泉佐野支部には、102人となっています。
内訳は次の通りで、泉佐野市に半数が集中しており、特に泉佐野駅周辺に事務所を構えている税理士が多いようです。
近畿税理士会 泉佐野支部内訳 | 人数 |
---|---|
泉佐野市 | 53人 |
熊取町 | 19人 |
阪南市 | 17人 |
泉南市 | 11人 |
岬町 | 1人 |
田尻町 | 1人 |
合計 | 102人 |
泉佐野税務署の令和元年における相続税申告件数は212件であったことから、税理士1人あたりの相続税申告数は0.48件になります。
大阪府全体での0.95件(日本税理士会連合会 平成30年5月発行税理士界)は下回りますが、大阪府のベッドタウンでは0.3件台が多いことを考慮すると、比較的税理士が充足しているエリアといえます。
3-1.泉佐野市は小規模の相続税課税が多い
相続税が課税されるかどうか、相続税が高額になるかどうかは、一般的に相続財産の大部分を占めることになる不動産の金額にかかっています。
泉佐野市には高級住宅街がないこと、地価が高くないことから一般住宅について不動産課税が起こる可能性が低いことなどを考慮すると、多額の相続税が発生するような相続税申告は少ないと考えられます。
それは、相続税の額が、税理士の腕に左右されるような申告が少ないということです。課税されることはあっても、大阪トップクラスの税理士を探す必要まではないことがほとんどでしょう。
3-2.泉佐野市内の税理士に依頼するには早めの行動を
泉佐野税務署の管轄エリアの税理士は、泉佐野市に集中しています。
富裕層の住民数を考えると、相続税に強い税理士が最も多いのも泉佐野市になるでしょう。
ただ、周辺の市町の税理士数を見ると分かるように、これらエリアの人も泉佐野市に税理士探しに来る可能性が高くなります。
人気の税理士は争奪戦になるため、確保するには他の人より早めに動くしかありません。
3-3.相続税対策が必要な場合には大阪市が安心
大阪市は、日本二大都市大阪府の中心地であり、数多くの超富裕層が居住していることから、発生する相続税額は桁違いです。
そして、このような高度な需要に対応できる税理士が、大阪市には5000人超います。
もちろん5000人すべてが相続税に強いわけではありませんが、相続税に強い税理士数は、市内とは比にならないことは明らかです。
特に、大阪市で相続税専門税理士として長年看板を掲げている税理士は、ほぼ間違いなく相続税に強い税理士であり、相続税対策が必要な場合でも安心して任せることができるでしょう。
3-4.堺市もおすすめ
大阪市よりも泉佐野市側にある堺市には371人の税理士がいます。
堺市は大阪府第二の都市であり、高級住宅街も擁しています。近畿税理士会堺支部が堺市のみから構成されていることからも、その規模の大きさが分かるでしょう。
大阪市よりは規模が小さくなりますが、大阪市の税理士に依頼するまでもないが、市内の税理士では不安という場合には、堺市がちょうど良いでしょう。
【参考サイト】「税理士登録者数」 | 日本税理士会連合会、近畿税理士会HP、近畿税理士会泉佐野支部HP